電力科目の解説

【電験三種・電力】地中送電の特性|ケーブルの種類・充電電流・許容電流を完全図解

😣 こんな経験はありませんか?
  • 「OFケーブル」「CVケーブル」「POFケーブル」が出てきてアルファベットの暗号に見える
  • 「地中送電は架空送電より静電容量が大きい」と書いてあるけど、だから何が問題なのかピンとこない
  • 正誤問題で「地中送電は架空送電に比べて送電容量が大きい」と出されて、○か✕か迷った
✅ この記事でわかること
  • 地中送電と架空送電の違いを「5つの比較軸」で完全整理
  • OFケーブル・CVケーブル・POFケーブルの構造と特徴の違い
  • 充電電流・許容電流・フェランチ効果など、地中送電特有の問題点

電験三種・電力科目では、送電分野の中で「地中送電」が毎年のように正誤問題で出題されます。とはいえ、出題パターンは「架空送電との比較」と「ケーブルの種類」の2つに絞られます。

この記事では、まず地中送電の全体像を掴んでから、ケーブルの種類を図解で整理し、最後に試験で狙われるポイントをまとめます。

地中送電とは?|架空送電との違いを一発整理

地中送電=地面の下にケーブルを敷設して電力を送る方式

地中送電は、鉄塔や電柱を使わず、地面の下にケーブルを埋設して電力を送る方式です。都市部では鉄塔を建てるスペースがなく、景観上の理由もあるため、地中送電が採用されます。東京都心部の送電はほぼすべて地中ケーブルです。

架空送電(鉄塔+電線で空中を送る方式)との違いを理解することが、試験対策の第一歩です。

比較項目 架空送電 地中送電
送電線路 鉄塔+裸電線(空中) 地中ケーブル(地下に埋設)
建設費 安い ◎ 高い ✕
(架空の10~20倍)
送電容量 大きい ◎ 小さい ✕
(放熱が困難)
静電容量 C 小さい ◎ 非常に大きい ✕
(架空線の約20~40倍)
充電電流 小さい ◎ 大きい ✕
(Cが大きいため)
インダクタンス L 大きい 小さい
(導体間距離が近い)
事故頻度 多い ✕
(雷・風・雪)
少ない ◎
(自然災害に強い)
事故復旧 早い ◎
(目視で発見しやすい)
遅い ✕
(掘削が必要で長時間)
フェランチ効果 長距離で発生 短い距離でも発生 ✕
(Cが大きいため)
主な用途 郊外・山間部の長距離送電 都市部の短距離送電
💡 この表の核心
地中送電の特性のほとんどは「静電容量Cが架空送電の20~40倍も大きい」という1つの事実から論理的に導けます。Cが大きい → 充電電流が大きい → フェランチ効果が起きやすい → 送電距離が長くできない。この因果関係を理解しておけば、個別に丸暗記する必要はありません。

なぜ地中ケーブルは静電容量が大きいのか?

ケーブルの構造そのものが「巨大なコンデンサ」

地中ケーブルは、中心の導体絶縁体で包み、その外側に金属シース(遮蔽層)が巻かれた構造をしています。これはまさに円筒形のコンデンサそのものです。

地中ケーブルの断面構造(同軸構造)
防食層(外装)
金属シース(遮蔽層)
絶縁体
導体
↑ これはコンデンサと同じ構造!
導体(内側電極)+ 絶縁体(誘電体)+ シース(外側電極)

架空送電の場合、導体と大地の間の「絶縁体」は空気であり、しかも距離が数十メートルもあります。一方、地中ケーブルでは絶縁体が薄い(数mm~数十mm)ため、コンデンサの公式 C = ε × S / d で考えると、dが小さく、εが大きいので、静電容量Cが桁違いに大きくなるのです。

📐 静電容量が大きい理由(まとめ)
① 導体と遮蔽層(アース)の距離 d が極めて短い(数mm~数十mm)
② 絶縁体の誘電率 ε が空気より大きい(油浸紙やCVの場合、空気の2~3倍)
→ 結果として C = ε × S / d が架空線の20~40倍になる

充電電流と送電容量の制約|地中送電が長距離に向かない理由

充電電流=負荷がなくても流れてしまう「無駄な電流」

地中ケーブルの静電容量Cに交流電圧がかかると、負荷が繋がっていなくても充電電流 Icが流れます。この充電電流は進み電流であり、無効電力を消費するだけで実際の電力輸送には寄与しません。

📐 充電電流の大きさ
Ic = ωCV = 2πfCV
f:周波数 [Hz]、C:静電容量 [F/km]、V:電圧 [V]
Cが大きいほど、ケーブルが長い(C合計が大きい)ほど、充電電流は大きくなる

充電電流が送電容量を食いつぶすメカニズム

ケーブルに流せる電流には上限(許容電流)があります。充電電流はこの「枠」を消費してしまいます。

ケーブルの許容電流と充電電流の関係
短距離ケーブル(充電電流:小さい)
負荷電流に使える容量 😊
充電電流
中距離ケーブル(充電電流:大きい)
負荷電流に使える容量 😐
充電電流
長距離ケーブル(充電電流:許容電流に達する)
充電電流だけで許容電流いっぱい! 😱
→ 負荷電流をまったく流せない=送電不能
⚠️ これが地中送電の最大の弱点
ケーブルが長くなるほど充電電流が増え、負荷電流に使える容量が減っていきます。ある距離を超えると、充電電流だけで許容電流に達してしまい、負荷電流をまったく流せなくなります。これが地中送電が長距離に向かない最大の理由です。
📘 関連記事
【電験三種・電力】フェランチ効果と調相設備|進相コンデンサ・分路リアクトルの役割を完全図解 →

充電電流が大きいということは、フェランチ効果も起きやすいということ。ケーブル系統でのフェランチ効果はこちら。

許容電流と放熱の問題|地中ケーブルは「暑がり」

ケーブルの許容電流は「放熱能力」で決まる

電流が流れると導体でジュール熱(I²R)が発生します。架空送電線は空気中にむき出しなので風で冷やされますが、地中ケーブルは土の中に埋まっているので放熱が困難です。

絶縁体の温度が許容温度(CVケーブルで90℃)を超えると絶縁が劣化するため、「絶縁体の温度が許容値を超えない範囲で流せる最大電流」が許容電流です。

🌬️

架空送電線

空気中にむき出し
→ 風で冷却される
放熱しやすい
→ 大きな電流を流せる

🔥

地中ケーブル

土の中に埋設
→ 熱がこもる
放熱しにくい
→ 許容電流が小さい

許容電流を上げるための対策

対策 内容
導体サイズの大型化 導体断面積を大きくして抵抗Rを下げ、発熱量(I²R)を抑える
強制冷却 ケーブル管路内に冷却水を循環させて放熱を助ける
管路の配置改善 ケーブル同士の間隔を広くして相互加熱を抑える
低損失ケーブルの採用 絶縁体の誘電損失が小さいCVケーブルを使って発熱を減らす

地中ケーブルの種類|OFケーブルとCVケーブル

電験三種で問われる地中ケーブルは、主にOFケーブルCVケーブルの2種類です。それぞれの構造と特徴を整理します。

OFケーブル(Oil Filled Cable)|油で絶縁する高信頼ケーブル

OFケーブルは、導体の中心に油通路を設け、絶縁油を常時加圧して流し続ける構造です。絶縁体は油浸紙(絶縁紙に油を含ませたもの)で、高い電圧での信頼性が非常に高いケーブルです。

OFケーブルの断面構造
油通路(中心):絶縁油を常時流す
導体:中空の撚線(油通路を囲む)
油浸紙絶縁:絶縁紙に油を含浸させたもの
金属シース(鉛またはアルミ)
防食層(外装)
⚠️ OFケーブルの「OF」は "Oil Filled"
なぜ油を加圧するのか?→ 絶縁紙の内部にわずかな空隙(ボイド)があると、部分放電(コロナ)が発生して絶縁劣化の原因になります。油を加圧して流し続けることで、空隙を油で埋めて部分放電を防止しています。

POFケーブル(Pipe type OF Cable)は、3本のケーブル心を1つの鋼管内に収納し、管内に絶縁油を充填した方式です。275kV以上の超高圧に使われます。

CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)|現在の主流

CVケーブルは、絶縁体に架橋ポリエチレン(XLPE)を使用したケーブルです。「CV」は「Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath」の略です。現在の地中送電では最も広く使われているケーブルです。

CVケーブルの断面構造
導体(銅またはアルミ)
架橋ポリエチレン(XLPE)絶縁体
遮蔽層(銅テープ等)
ビニルシース(外装)
💡 CVケーブルがOFケーブルに取って代わった理由
油が不要:油の補給・管理が不要。給油設備やタンクが不要で保守が容易
軽量・可とう性が高い:施工が容易。長尺製造が可能
許容温度が高い:XLPE=90℃(OFの油浸紙=80~85℃)で許容電流が大きい
誘電損失が小さいtanδ(誘電正接)が低く、高電圧でも発熱が少ない
環境にやさしい:油漏れのリスクがない

OFケーブル vs CVケーブル|完全比較表

比較項目 OFケーブル CVケーブル
絶縁体 油浸紙(絶縁紙+油) 架橋ポリエチレン(XLPE)
絶縁油 必要(加圧給油) 不要 ◎
許容温度 80~85℃ 90℃ ◎
誘電損失
(tanδ)
やや大きい 小さい ◎
保守 油漏れ管理が必要 保守容易 ◎
施工性 重い・硬い。接続部の油処理が必要 軽量・可とう性◎。長尺製造可能
環境性 油漏れのリスク 油漏れリスクなし ◎
現在の主流 新設はほぼなし
(既設の運用のみ)
現在の主流 ★★★
🔧 試験での狙われポイント
① 「OFケーブルは絶縁油を加圧して空隙を防ぐ」→ ○
② 「CVケーブルの絶縁体は架橋ポリエチレンである」→ ○
③ 「CVケーブルは油浸紙で絶縁している」→ (油浸紙はOFケーブル)
④ 「CVケーブルはOFケーブルに比べて保守が容易である」→ ○

ケーブルの布設方式|管路式・直接埋設式・暗きょ式

地中ケーブルを地面に敷設する方法も試験で問われます。大きく3つの方式があります。

🔵

管路式

あらかじめ地中に管路(コンクリート管や鋼管)を埋設し、その中にケーブルを引き入れる方式。日本で最も一般的。ケーブルの引き替えが容易。

🟠

直接埋設式

ケーブルを地面に直接埋設する方式。建設費が最も安いが、掘り返さないとケーブルに触れない。放熱は管路式より良い。

🟢

暗きょ式(洞道式)

人が入れる大きさのトンネル(洞道)を造り、その中にケーブルを敷設する方式。建設費は最も高いが、保守・増設が最も容易。多回線の都市部で採用。

比較項目 管路式 直接埋設式 暗きょ式
建設費 安い ◎ 高い ✕
保守・増設 容易 困難 ✕ 最も容易 ◎
放熱性 やや劣る 良い ◎ 良い ◎
日本での採用 最も一般的 ★ 郊外の一部 都心部の超高圧

電験三種で狙われる正誤問題パターン6選

パターン①:送電容量の比較(超頻出)

問題文:「地中送電は架空送電に比べて送電容量が大きい

→ ✕:地中送電は放熱が困難で充電電流も大きいため、送電容量は架空送電より小さい

パターン②:静電容量の大小

問題文:「地中ケーブルは架空送電線に比べて静電容量が大きく、充電電流が大きい」

→ ○:ケーブルの構造(導体と遮蔽層が近い+誘電率が高い絶縁体)から静電容量は架空線の20~40倍。

パターン③:ケーブルの種類の入れ替え

問題文:「CVケーブルは、絶縁体に油浸紙を使用したケーブルである」

→ ✕:油浸紙を使うのはOFケーブル。CVケーブルの絶縁体は架橋ポリエチレン(XLPE)

パターン④:OFケーブルの油の役割

問題文:「OFケーブルは、絶縁油を加圧して絶縁体内の空隙を埋め、部分放電を防止する」

→ ○:OFケーブルの最大の特徴。油の加圧によるボイド(空隙)抑制。

パターン⑤:事故頻度と復旧

問題文:「地中送電は架空送電に比べて事故頻度が低いが、事故時の復旧も早い

→ ✕:事故頻度は低いが、事故時は掘削が必要で復旧には長時間を要する。「事故が少ないが、起きたら大変」が地中送電の特徴。

パターン⑥:布設方式

問題文:直接埋設式は保守・増設が最も容易で、都市部の超高圧送電に多用される」

→ ✕:保守・増設が最も容易なのは暗きょ式(洞道式)。直接埋設式は建設費が安いが保守は困難。

💡 迷ったときの判定フロー
STEP 1:架空 vs 地中の比較 → 地中は「C大きい・放熱困難・送電容量小さい・事故少ないが復旧遅い」
STEP 2:ケーブルの種類 → OF=油浸紙+油加圧、CV=架橋ポリエチレン=主流
STEP 3:布設方式 → 管路式=最も一般的、暗きょ式=保守最良、直接埋設=安いが保守困難

まとめ|この記事の要点を30秒で振り返る

地中送電の最大の特徴 静電容量Cが架空線の20~40倍 → ここからすべてが派生
充電電流が大きい結果 送電容量を圧迫 / フェランチ効果が起きやすい / 長距離送電に不向き
許容電流の制約 地中は放熱困難 → 架空線より許容電流が小さい → 送電容量が小さい
OFケーブル 油浸紙絶縁+加圧給油。油で空隙を埋めて部分放電防止
CVケーブル 架橋ポリエチレン(XLPE)絶縁。油不要で保守容易。現在の主流
布設方式 管路式(最も一般的)/ 直接埋設式(安い)/ 暗きょ式(保守最良)

地中送電の問題は、「静電容量が大きいから○○になる」という因果関係を理解しているかどうかで決まります。Cが大きい → 充電電流大 → 送電容量小 → フェランチ効果起きやすい。この1本の論理の糸さえ持っていれば、どんな正誤問題にも対応できます。

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