電力科目の解説

地中送電の特性|ケーブルの種類・充電電流・許容電流を完全図解

地中送電の特性。ケーブルの種類・充電電流・許容電流

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こんな経験はありませんか?
  • 「OFケーブル」「CVケーブル」「POFケーブル」が出てきてアルファベットの暗号に見える
  • 「地中送電は架空送電より静電容量が大きい」と書いてあるけど、だから何が問題なのかピンとこない
  • 正誤問題で「地中送電は架空送電に比べて送電容量が大きい」と出されて、○かか迷った
○ この記事でわかること
  • 地中送電と架空送電の違いを「5つの比較軸」で完全整理
  • OFケーブル・CVケーブル・POFケーブルの構造と特徴の違い
  • 充電電流・許容電流・フェランチ効果など、地中送電特有の問題点

電験三種・電力科目では、送電分野の中で「地中送電」が毎年のように正誤問題で出題されます。とはいえ、出題パターンは「架空送電との比較」と「ケーブルの種類」の2つに絞られます。

この記事では、まず地中送電の全体像を掴んでから、ケーブルの種類を図解で整理し、最後に試験で狙われるポイントをまとめます。

地中送電とは?|架空送電との違いを一発整理

地中送電=地面の下にケーブルを敷設して電力を送る方式

地中送電は、鉄塔や電柱を使わず、地面の下にケーブルを埋設して電力を送る方式です。都市部では鉄塔を建てるスペースがなく、景観上の理由もあるため、地中送電が採用されます。東京都心部の送電はほぼすべて地中ケーブルです。

架空送電(鉄塔+電線で空中を送る方式)との違いを理解することが、試験対策の第一歩です。

比較項目 架空送電 地中送電
送電線路 鉄塔+裸電線(空中) 地中ケーブル(地下に埋設)
建設費 安い ◎ 高い
(架空の10~20倍)
送電容量 大きい ◎ 小さい
(放熱が困難)
静電容量 C 小さい ◎ 非常に大きい
(架空線の約20~40倍)
充電電流 小さい ◎ 大きい
(Cが大きいため)
インダクタンス L 大きい 小さい
(導体間距離が近い)
事故頻度 多い
(雷・風・雪)
少ない ◎
(自然災害に強い)
事故復旧 早い ◎
(目視で発見しやすい)
遅い
(掘削が必要で長時間)
フェランチ効果 長距離で発生 短い距離でも発生
(Cが大きいため)
主な用途 郊外・山間部の長距離送電 都市部の短距離送電
この表の核心
地中送電の特性のほとんどは「静電容量Cが架空送電の20~40倍も大きい」という1つの事実から論理的に導けます。Cが大きい → 充電電流が大きい → フェランチ効果が起きやすい → 送電距離が長くできない。この因果関係を理解しておけば、個別に丸暗記する必要はありません。
架空送電と地中送電の比較図。架空送電は冷却効果があり長距離向きだが落雷事故があり、地中送電は放熱が問題で短距離向き、事故は少ないが復旧が遅れる。地中ケーブルの静電容量Cは架空線の20〜40倍
地中ケーブルの静電容量は架空線の20〜40倍
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なぜ地中ケーブルは静電容量が大きいのか?

ケーブルの構造そのものが「巨大なコンデンサ」

地中ケーブルは、中心の導体を絶縁体で包み、その外側に金属シース(遮蔽層)が巻かれた構造をしています。これはまさに円筒形のコンデンサそのものです。

地中ケーブルの断面構造(同軸構造)
防食層(外装)
金属シース(遮蔽層)
絶縁体
導体
↑ これはコンデンサと同じ構造!
導体(内側電極)+ 絶縁体(誘電体)+ シース(外側電極)

架空送電の場合、導体と大地の間の「絶縁体」は空気であり、しかも距離が数十メートルもあります。一方、地中ケーブルでは絶縁体が薄い(数mm~数十mm)ため、コンデンサの公式 C = ε × S / d で考えると、dが小さく、εが大きいので、静電容量Cが桁違いに大きくなるのです。

静電容量が大きい理由(まとめ)
① 導体と遮蔽層(アース)の距離 d が極めて短い(数mm~数十mm)
② 絶縁体の誘電率 ε が空気より大きい(油浸紙やCVの場合、空気の2~3倍)
→ 結果として C = ε × S / d が架空線の20~40倍になる
地中ケーブルを円筒形コンデンサにたとえた図。導体(内側電極)・絶縁体(誘電体)・金属シース(外側電極)で、C=εS/dのdが小さく(mm単位)εが大きい(空気の2〜3倍)ので静電容量が巨大になる
ケーブルの構造そのものが巨大なコンデンサ

充電電流と送電容量の制約|地中送電が長距離に向かない理由

充電電流=負荷がなくても流れてしまう「無駄な電流」

地中ケーブルの静電容量Cに交流電圧がかかると、負荷が繋がっていなくても充電電流 Icが流れます。この充電電流は進み電流であり、無効電力を消費するだけで実際の電力輸送には寄与しません。

充電電流の大きさ
Ic = ωCV = 2πfCV
f:周波数 [Hz]、C:静電容量 [F/km]、V:電圧 [V]
Cが大きいほど、ケーブルが長い(C合計が大きい)ほど、充電電流は大きくなる

充電電流が送電容量を食いつぶすメカニズム

ケーブルに流せる電流には上限(許容電流)があります。充電電流はこの「枠」を消費してしまいます。

ケーブルの許容電流と充電電流の関係
短距離ケーブル(充電電流:小さい)
負荷電流に使える容量
充電電流
中距離ケーブル(充電電流:大きい)
負荷電流に使える容量
充電電流
長距離ケーブル(充電電流:許容電流に達する)
充電電流だけで許容電流いっぱい!
→ 負荷電流をまったく流せない=送電不能
これが地中送電の最大の弱点
ケーブルが長くなるほど充電電流が増え、負荷電流に使える容量が減っていきます。ある距離を超えると、充電電流だけで許容電流に達してしまい、負荷電流をまったく流せなくなります。これが地中送電が長距離に向かない最大の理由です。
関連記事
【電験三種・電力】フェランチ効果と調相設備|進相コンデンサ・分路リアクトルの役割を完全図解 →

充電電流が大きいということは、フェランチ効果も起きやすいということ。ケーブル系統でのフェランチ効果はこちら。

充電電流が大きいことは高圧ケーブルの絶縁耐力試験にも効いてきて、ケーブルが長いほど試験装置に大きな容量が要り、補償リアクトルで容量を小さくする計算まで、次の記事で解説しています。

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充電電流が送電容量を食いつぶす図。Ic=2πfCVで、ケーブルが長くなるほど充電電流が増えて負荷電流の分が減り、長いケーブルでは送電不能になる
ケーブルが長いほど充電電流が増え送電容量が減る

許容電流と放熱の問題|地中ケーブルは「暑がり」

ケーブルの許容電流は「放熱能力」で決まる

電流が流れると導体でジュール熱(I²R)が発生します。架空送電線は空気中にむき出しなので風で冷やされますが、地中ケーブルは土の中に埋まっているので放熱が困難です。

絶縁体の温度が許容温度(CVケーブルで90℃)を超えると絶縁が劣化するため、「絶縁体の温度が許容値を超えない範囲で流せる最大電流」が許容電流です。

架空送電線

空気中にむき出し
→ 風で冷却される
→ 放熱しやすい
→ 大きな電流を流せる

地中ケーブル

土の中に埋設
→ 熱がこもる
→ 放熱しにくい
→ 許容電流が小さい

許容電流を上げるための対策

対策 内容
導体サイズの大型化 導体断面積を大きくして抵抗Rを下げ、発熱量(I²R)を抑える
強制冷却 ケーブル管路内に冷却水を循環させて放熱を助ける
管路の配置改善 ケーブル同士の間隔を広くして相互加熱を抑える
低損失ケーブルの採用 絶縁体の誘電損失が小さいCVケーブルを使って発熱を減らす
架空電線と地中ケーブルの放熱の比較図。空中の電線は風で放熱でき、地中ケーブルは熱がこもるので強制冷却水や離隔距離で対策する。許容電流は絶縁体が耐えられる温度で流せる最大電流
地中ケーブルは熱がこもり許容電流が制約される

地中ケーブルの種類|OFケーブルとCVケーブル

電験三種で問われる地中ケーブルは、主にOFケーブルとCVケーブルの2種類です。それぞれの構造と特徴を整理します。

OFケーブル(Oil Filled Cable)|油で絶縁する高信頼ケーブル

OFケーブルは、導体の中心に油通路を設け、絶縁油を常時加圧して流し続ける構造です。絶縁体は油浸紙(絶縁紙に油を含ませたもの)で、高い電圧での信頼性が非常に高いケーブルです。

OFケーブルの断面構造
油通路(中心):絶縁油を常時流す
導体:中空の撚線(油通路を囲む)
油浸紙絶縁:絶縁紙に油を含浸させたもの
金属シース(鉛またはアルミ)
防食層(外装)
OFケーブルの「OF」は "Oil Filled"
なぜ油を加圧するのか?→ 絶縁紙の内部にわずかな空隙(ボイド)があると、部分放電(コロナ)が発生して絶縁劣化の原因になります。油を加圧して流し続けることで、空隙を油で埋めて部分放電を防止しています。

POFケーブル(Pipe type OF Cable)は、3本のケーブル心を1つの鋼管内に収納し、管内に絶縁油を充填した方式です。275kV以上の超高圧に使われます。
OFケーブル(Oil Filled)の構造図。中空導体の油通路に油を流し、油浸紙絶縁体・鉛被・外装で包む。油を加圧して空隙(ボイド)を埋め部分放電を防ぐ
OFケーブルは加圧した油で空隙を埋めて絶縁する

CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)|現在の主流

CVケーブルは、絶縁体に架橋ポリエチレン(XLPE)を使用したケーブルです。「CV」は「Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath」の略です。現在の地中送電では最も広く使われているケーブルです。

CVケーブルの断面構造
導体(銅またはアルミ)
架橋ポリエチレン(XLPE)絶縁体
遮蔽層(銅テープ等)
ビニルシース(外装)
CVケーブルがOFケーブルに取って代わった理由
① 油が不要:油の補給・管理が不要。給油設備やタンクが不要で保守が容易
② 軽量・可とう性が高い:施工が容易。長尺製造が可能
③ 許容温度が高い:XLPE=90℃(OFの油浸紙=80~85℃)で許容電流が大きい
④ 誘電損失が小さい:tanδ(誘電正接)が低く、高電圧でも発熱が少ない
⑤ 環境にやさしい:油漏れのリスクがない
CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)の構造の図。導体、XLPE絶縁体、半導電層・遮蔽層、ビニルシース。油が要らず軽く保守が楽で、90℃まで使え誘電損失が小さい。参考にOFケーブルの構造
CVケーブルは架橋ポリエチレン絶縁で現在の主流
おすすめの本

電験三種の試験でどう問われるかは、過去問で確かめるのがいちばんの近道です。電験三種の過去10年分の試験問題をまとめた過去問題集です(2026年度版)。

OFケーブル vs CVケーブル|完全比較表

比較項目 OFケーブル CVケーブル
絶縁体 油浸紙(絶縁紙+油) 架橋ポリエチレン(XLPE)
絶縁油 必要(加圧給油) 不要 ◎
許容温度 80~85℃ 90℃ ◎
誘電損失
(tanδ)
やや大きい 小さい ◎
保守 油漏れ管理が必要 保守容易 ◎
施工性 重い・硬い。接続部の油処理が必要 軽量・可とう性◎。長尺製造可能
環境性 油漏れのリスク 油漏れリスクなし ◎
現在の主流 新設はほぼなし
(既設の運用のみ)
現在の主流
試験での狙われポイント
① 「OFケーブルは絶縁油を加圧して空隙を防ぐ」→ ○
② 「CVケーブルの絶縁体は架橋ポリエチレンである」→ ○
③ 「CVケーブルは油浸紙で絶縁している」→ (油浸紙はOFケーブル)
④ 「CVケーブルはOFケーブルに比べて保守が容易である」→ ○
油浸紙絶縁と架橋ポリエチレン絶縁の比較図。油浸紙(OF)は許容温度80〜85℃で油管理が必要で新設はほぼなし、架橋ポリエチレン(CV)は90℃で保守が容易で現在の主流
OFケーブルとCVケーブルの比較

ケーブルの布設方式|管路式・直接埋設式・暗きょ式

地中ケーブルを地面に敷設する方法も試験で問われます。大きく3つの方式があります。

管路式

あらかじめ地中に管路(コンクリート管や鋼管)を埋設し、その中にケーブルを引き入れる方式。日本で最も一般的。ケーブルの引き替えが容易。

直接埋設式

ケーブルを地面に直接埋設する方式。建設費が最も安いが、掘り返さないとケーブルに触れない。放熱は管路式より良い。

暗きょ式(洞道式)

人が入れる大きさのトンネル(洞道)を造り、その中にケーブルを敷設する方式。建設費は最も高いが、保守・増設が最も容易。多回線の都市部で採用。

比較項目 管路式 直接埋設式 暗きょ式
建設費 中 安い ◎ 高い
保守・増設 容易 困難 最も容易 ◎
放熱性 やや劣る 良い ◎ 良い ◎
日本での採用 最も一般的 郊外の一部 都心部の超高圧
地中電線路の布設方式の比較図。管路式は費用中・メンテナンス性良、直接埋設式は費用低・メンテナンス性劣、暗きょ式(洞道式)は費用高・メンテナンス性優
地中電線路の布設方式:管路式・直接埋設式・暗きょ式

電験三種で狙われる正誤問題パターン6選

パターン①:送電容量の比較(超頻出)

問題文:「地中送電は架空送電に比べて送電容量が大きい」

→ :地中送電は放熱が困難で充電電流も大きいため、送電容量は架空送電より小さい。

パターン②:静電容量の大小

問題文:「地中ケーブルは架空送電線に比べて静電容量が大きく、充電電流が大きい」

→ ○:ケーブルの構造(導体と遮蔽層が近い+誘電率が高い絶縁体)から静電容量は架空線の20~40倍。

パターン③:ケーブルの種類の入れ替え

問題文:「CVケーブルは、絶縁体に油浸紙を使用したケーブルである」

→ :油浸紙を使うのはOFケーブル。CVケーブルの絶縁体は架橋ポリエチレン(XLPE)。

パターン④:OFケーブルの油の役割

問題文:「OFケーブルは、絶縁油を加圧して絶縁体内の空隙を埋め、部分放電を防止する」

→ ○:OFケーブルの最大の特徴。油の加圧によるボイド(空隙)抑制。

パターン⑤:事故頻度と復旧

問題文:「地中送電は架空送電に比べて事故頻度が低いが、事故時の復旧も早い」

→ :事故頻度は低いが、事故時は掘削が必要で復旧には長時間を要する。「事故が少ないが、起きたら大変」が地中送電の特徴。

パターン⑥:布設方式

問題文:「直接埋設式は保守・増設が最も容易で、都市部の超高圧送電に多用される」

→ :保守・増設が最も容易なのは暗きょ式(洞道式)。直接埋設式は建設費が安いが保守は困難。

迷ったときの判定フロー
STEP 1:架空 vs 地中の比較 → 地中は「C大きい・放熱困難・送電容量小さい・事故少ないが復旧遅い」
STEP 2:ケーブルの種類 → OF=油浸紙+油加圧、CV=架橋ポリエチレン=主流
STEP 3:布設方式 → 管路式=最も一般的、暗きょ式=保守最良、直接埋設=安いが保守困難
地中送電の正誤問題6選の図。地中送電は送電容量が大きい(誤)、架空送電は建設費が安い(正)、CVケーブルは油浸紙で絶縁(誤)、OFケーブルは油圧で絶縁を維持(正)、直接埋設式は保守が最も容易(誤)、管路式はケーブル増設が容易(正)
地中送電の正誤問題6選:Cが大きいと送電容量が小さい

まとめ|この記事の要点を30秒で振り返る

地中送電の最大の特徴 静電容量Cが架空線の20~40倍 → ここからすべてが派生
充電電流が大きい結果 送電容量を圧迫 / フェランチ効果が起きやすい / 長距離送電に不向き
許容電流の制約 地中は放熱困難 → 架空線より許容電流が小さい → 送電容量が小さい
OFケーブル 油浸紙絶縁+加圧給油。油で空隙を埋めて部分放電防止
CVケーブル 架橋ポリエチレン(XLPE)絶縁。油不要で保守容易。現在の主流
布設方式 管路式(最も一般的)/ 直接埋設式(安い)/ 暗きょ式(保守最良)

地中送電の問題は、「静電容量が大きいから○○になる」という因果関係を理解しているかどうかで決まります。Cが大きい → 充電電流大 → 送電容量小 → フェランチ効果起きやすい。この1本の論理の糸さえ持っていれば、どんな正誤問題にも対応できます。

地中送電の特性の全体像の図。大きな静電容量C、距離が長いと充電電流が増える充電電流制約、熱が逃げにくい放熱問題、OFケーブルとCVケーブルの種類
地中送電の特性の全体像
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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