- 会議で先輩が「200Vの線間電圧が…」と話していて、相電圧との違いが分からず黙っていた
- 電験三種の問題で「線間電圧V=200V、相電圧は?」と聞かれて手が止まる
- √3(≒1.732)がどこから出てくるのか、参考書を読んでも腑に落ちない
- Y結線とΔ結線で電圧の関係がごっちゃになって混乱する
- 線間電圧と相電圧の違いが「絵」で一発理解できる
- Y結線で√3倍になる理由を、ベクトル図と直角三角形で証明できる
- Δ結線では電圧が同じで電流が√3倍になる理由がわかる
- 計算問題で「V_l」と「V_p」を見て即座に式を立てられるようになる
結論を先に言います。「線間電圧」は電線と電線の間の電圧、「相電圧」は1つのコイル(相)にかかる電圧です。そしてY結線では 線間電圧 = √3 × 相電圧 になります。
この記事では、なぜ√3倍という中途半端な数字が出てくるのかを、ベクトル図と直角三角形を使って中学生でもわかるレベルで解説します。読み終わる頃には、電験三種の計算問題で「線間」「相」という言葉を見た瞬間に式が浮かぶようになります。
目次
そもそも「相」とは?三相交流のおさらい
線間電圧と相電圧を理解するには、まず「相(そう)」が何を指しているかを押さえる必要があります。
三相交流とは、120°ずつ位相がずれた3つの単相交流を1セットにしたものです。発電機の中に3つのコイルが120°ずつズレて配置されており、それぞれのコイルから出てくる電圧が「相電圧」です。
| 相電圧(V_p) | 1つのコイル(相)の両端にかかる電圧 |
| 線間電圧(V_l) | 2本の電線(外に出ている線)の間の電圧 |
| 相電流(I_p) | 1つのコイル(相)に流れる電流 |
| 線電流(I_l) | 電線に流れる電流 |
【電験三種・理論】三相交流とは?|単相との違いと「3本の電線」の秘密を完全図解 →

「電線の間」と「コイルの両端」が違う電圧になる
言葉だけだと混乱するので、絵で覚えてください。電圧計を「どこに当てるか」で名前が変わるだけです。
線間電圧 V_l
電圧計を「電線と電線の間」に当てる
- 外から見える電圧
- 銘板に書いてある電圧(例:AC200V)
- 記号:V_l, V_L, V_線
相電圧 V_p
電圧計を「コイル1つの両端」に当てる
- 機器の内部にかかる電圧
- 絶縁設計で重要
- 記号:V_p, V_P, V_相
工場の設備銘板に「AC200V 三相」と書かれていたら、それは線間電圧のことです。「200V系」「400V系」という呼び方も全部線間電圧。実務では線間電圧が基準になります。

Y結線で線間電圧が√3倍になる理由(直感で理解する)
ここが本記事の核心です。Y結線(スター結線)では、線間電圧 = √3 × 相電圧になります。
V_l = √3 × V_p
(√3 ≒ 1.732)
なぜ「2倍」じゃないのか?それは3つの相が120°ずつズレているからです。
イメージしてみてください。3人がそれぞれ違う方向に綱を引っ張っているとき、2人分の綱を「単純に足し算」できますか?できませんよね。方向が違うので、ベクトル(矢印)として合成する必要があります。
線間電圧は「2つの相電圧の差」です。同じ向きなら引き算でゼロですが、120°ズレているのでベクトルで引き算する必要があり、その結果が√3倍になります。

√3はどこから来る?直角三角形で証明する
「ベクトルで引き算」と言われてもピンとこない方のために、中学レベルの三角形で説明します。
STEP 1:2つの相電圧を矢印で描く
2つの相電圧V_aとV_bがあるとします。両者は120°ズレています。線間電圧V_abは「V_a − V_b」、つまりV_aの矢印の先からV_bの矢印の先へ向かう矢印です。
STEP 2:余弦定理を使う(または30-60-90の三角形)
2つの矢印の長さを「V_p(相電圧の大きさ)」、間の角度を「120°」とします。線間電圧の大きさは余弦定理で求められます。
余弦定理:
|V_l|² = V_p² + V_p² − 2・V_p・V_p・cos(120°)
cos(120°) = −1/2 を代入:
|V_l|² = 2V_p² − 2V_p² × (−1/2)
|V_l|² = 2V_p² + V_p² = 3V_p²
∴ |V_l| = √3 × V_p
2つのベクトルの「間の角度」は120°ですが、引き算(V_a − V_b)するときは片方を反転させるので、合成図では60°の角度が出てきます。どちらの角度を使っても、最終的に√3倍という答えに落ち着きます。
【図解で完全理解】位相と位相差|ベクトル図で電圧と電流の関係をマスター →

Y結線の電流は「線電流=相電流」
電圧が√3倍になったのに対し、Y結線では電流は同じです。
I_l = I_p
理由はシンプルで、電線とコイルが直列につながっているからです。電線を流れた電流は、そのままコイルを流れます。途中で分岐していないので、当然同じ値になります。
- 電圧:線間電圧 = √3 × 相電圧(電圧が「大きく」見える)
- 電流:線電流 = 相電流(電流はそのまま)

Δ結線(デルタ結線)はY結線と「真逆」の関係
ついでにΔ結線も覚えてしまいましょう。Y結線とちょうど真逆の関係になっているので、セットで覚えると忘れません。
Y結線(スター)
- 電圧:V_l = √3 × V_p
- 電流:I_l = I_p
- 電圧が「広がる」イメージ
Δ結線(デルタ)
- 電圧:V_l = V_p
- 電流:I_l = √3 × I_p
- 電流が「広がる」イメージ
Δ結線では、コイルが電線同士を直接つないでいるので電圧は同じです。一方、電線にはコイル2本分の電流が合流して流れ込むため、ベクトル合成の結果√3倍になります。Y結線とは「電圧」と「電流」の役割が入れ替わっただけです。
【完全図解】スター結線とデルタ結線の違い|Y結線・Δ結線の特徴とメリット・デメリットを徹底比較 →

Y結線とΔ結線の電圧・電流まとめ表
試験前にここだけ見れば思い出せる、最強のチートシートです。
| 項目 | Y結線(スター) | Δ結線(デルタ) |
|---|---|---|
| 線間電圧 V_l | √3 × V_p | V_p |
| 線電流 I_l | I_p | √3 × I_p |
| 三相電力 P | P = √3 × V_l × I_l × cosθ(共通) | |
| 位相差 | 線間が相より30°進む | 線電流が相電流より30°遅れる |
「Y電圧、Δ電流」と唱えるだけ。Yは電圧が√3倍、Δは電流が√3倍、と覚えれば試験中に迷いません。

実際の計算例|数字を入れて手を動かす
例題1:Y結線の相電圧を求める
問題:三相3線式200V(線間電圧)のY結線回路がある。相電圧はいくらか?
解答:
V_l = √3 × V_p より
V_p = V_l ÷ √3 = 200 ÷ 1.732
V_p ≒ 115.5 [V]
日本の一般的な動力電源「三相200V」の正体は、実は1相あたり約115Vのコイルが3つ集まったものなんです。
例題2:Δ結線の線電流を求める
問題:Δ結線で相電流が10Aのとき、線電流はいくらか?
解答:
Δ結線では I_l = √3 × I_p
I_l = √3 × 10 = 1.732 × 10
I_l ≒ 17.32 [A]
この計算は遮断器の選定で必ず使います。「コイルには10Aしか流れていないから10Aの遮断器でいいや」とやると、Δ結線では電線に17.32A流れているので即トリップ。事故の元です。

初心者がよく間違える3つのポイント
「200V三相」の200Vを相電圧と思ってしまう
銘板や仕様書に書かれている電圧はすべて線間電圧です。相電圧はその1/√3(約58%)です。
「線間電圧 = 相電圧 × 2」だと思ってしまう
同じ向きならその通りですが、三相は120°ズレています。ベクトル合成すると√3倍(≒1.732倍)です。2倍ではありません。
Y結線とΔ結線の関係を混同する
「Y結線で√3倍になるのは電圧、Δ結線で√3倍になるのは電流」と逆になることを覚えておいてください。
電験三種では「線間電圧V、相電圧は?」「相電流I、線電流は?」という問題が頻出します。結線方式(YかΔか)を必ず確認してから式を立ててください。問題文に図がない場合、文章中の「Y結線」「△結線」「スター」「デルタ」というキーワードを見逃さないように。

まとめ|√3はベクトル合成から生まれる魔法の数字
- 線間電圧は電線と電線の間、相電圧はコイル1つの両端の電圧
- Y結線:V_l = √3 × V_p、I_l = I_p
- Δ結線:V_l = V_p、I_l = √3 × I_p
- √3が出る理由は、3つの相が120°ズレているためベクトル合成が必要だから
- 余弦定理で|V_l|² = 3V_p²が導出され、ルートを取って√3倍に
- 覚え方は「Y電圧、Δ電流」
線間電圧と相電圧の関係は、三相交流計算のすべての土台です。ここを押さえれば、三相電力の計算、変圧器の結線、送電線の電圧降下など、電験三種のあらゆる単元で迷わなくなります。
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