電力科目の解説

系統用蓄電池(蓄電所)とは?仕組みと役割、kWとkWhの違い|計算ツール付き

蓄電所とは何かを表すアイキャッチ。白い蓄電池のコンテナが並び、変圧器と送電鉄塔につながっている

系統用蓄電池(蓄電所)とは、大きな蓄電池を送電線や配電線につなぎ、電気が余るときに充電して足りないときに放電する施設です。出力(kW)と容量(kWh)の違いはkWとkWhの節、放電できる時間は計算ツールで確かめられます。

結論|まず30秒でわかる答え

蓄電池・直流を交流に変えるパワーコンディショナ(PCS)・変圧器・制御システムでできていて、太陽光や風力の出力の変動をならしたり、電気の需要と供給のバランスや周波数を保ったりします。出力(kW)と容量(kWh)の2つの大きさで表し、容量÷出力が放電できる時間です。

蓄電所とは何かを表すアイキャッチ。白い蓄電池のコンテナが並び、変圧器と送電鉄塔につながっている

蓄電所とは?電力系統につながった「大きな電池の倉庫」

電気は、つくった瞬間に使われる量と、使われる量がいつもつり合っていなければなりません。ところが、太陽光は昼に多く夜は0、風力は風しだいで、発電量が天気で大きく変わります。そこで、電気が余るときにためて、足りないときに出す「電気の倉庫」が必要になります。電力系統につないだこの大きな蓄電池の施設が、蓄電所(系統用蓄電池)です。

構成する機器役目
蓄電池(バッテリー)電気を化学エネルギーとしてためる。たくさんのセルを並べたコンテナが何台も並ぶ
パワーコンディショナ(PCS)蓄電池の直流と系統の交流を、双方向に変換する(インバータ)
変圧器PCSの電圧を、つなぐ送電線・配電線の電圧に上げ下げする
制御システム(EMS)いつ・どれだけ充電・放電するかを決める。電池の温度や残量も見張る

2022年の電気事業法の改正(2023年4月施行)で、出力が1万kW(10MW)以上の系統用蓄電池から放電する事業は「発電事業」に位置づけられました。発電所・変電所と並ぶ電力設備として扱われるようになり、電験三種の電力の試験範囲にも「蓄電所」が入っています。

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直流を交流に変えるインバータ

蓄電所の構成の図。電気をためる蓄電池、直流と交流を変換するPCS、電圧を合わせる変圧器、充放電を決めるEMSでできている

蓄電所の5つの役割

役割何をするかどんなとき
① ピークシフト電気が余る時間に充電し、需要の多い時間に放電する昼の太陽光を夕方〜夜に使う
② 再エネの出力変動をならす太陽光・風力の急な増減を、充放電で打ち消す雲がかかって太陽光の出力が急に下がったとき
③ 周波数の調整需要と供給のずれで周波数が動いたとき、すばやく充放電して戻す大きな発電所が急に止まったとき
④ 出力制御をへらす余った再エネの電気を捨てずにためる春や秋の昼に太陽光が余るとき
⑤ 送電線の混雑をさける送電線がいっぱいの時間は送らずにため、空いた時間に送る再エネが集まる地域

蓄電池は、電子回路で充放電を切りかえるので、出力を1秒もかからずに上げ下げできるのが強みです。火力発電のように燃料の量を変えて出力を調整するより、ずっと速く反応できます。そのため、周波数を保つための調整力としても使われます。

蓄電所の役割の図。昼に太陽光の電気が余る時間に充電し、夕方の需要が多い時間に放電する。ピークシフト、再エネの変動をならす、周波数の調整に使う

蓄電所の大きさは「kW」と「kWh」の2つで表す

出力(kW・MW)容量(kWh・MWh)
意味一度にどれだけの電力を出し入れできるか全部でどれだけの電力量をためられるか
たとえ水道の蛇口の太さタンクの大きさ
決めるものPCSの大きさ蓄電池の数
公式

放電できる時間[h]= 容量[MWh]÷ 出力[MW]

例題

出力2MW・容量8MWhの蓄電所は、最大出力で 8÷2=4時間 放電できます。往復効率(充電した電力量のうち、放電で取り出せる割合)が85%なら、8MWhを放電するには 8÷0.85≒9.41MWh の充電が必要で、1回の充放電で約1.41MWhが熱などで失われます。

実際には、電池を長持ちさせるため、残量(SOC)を0〜100%いっぱいまでは使わず、たとえば10〜90%の範囲で運転します。その分、使える容量は小さくなります。

蓄電所の出力と容量の図。容量kWhはタンクの大きさ、出力kWは蛇口の太さ。2MW・8MWhなら8÷2で4時間放電でき、効率85%なら充電に9.41MWh必要

蓄電所に使われる電池と、揚水発電とのちがい

電池しくみ・特徴向いている使い方
リチウムイオン電池応答が速く、小さく軽い。熱の管理が大切周波数調整、数時間のピークシフト
NAS電池(ナトリウム硫黄)約300℃で動く。大容量で長時間の放電が得意。日本で実用化長時間のピークシフト
レドックスフロー電池電解液をタンクにためてポンプで流す。長寿命で、タンクを大きくすれば容量をふやせる大型・長時間、出力変動の吸収
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一次電池・二次電池・燃料電池

揚水発電とのちがい

蓄電所(系統用蓄電池)揚水発電
ため方電気を化学エネルギーでためる水を上の池にくみ上げて位置エネルギーでためる
応答とても速い(1秒以内)数分ほど
規模・時間数MW〜数百MW、数時間数百MW〜、長時間
場所空き地や変電所の近くに置ける高低差のある山あいに限られる。建設に時間がかかる

揚水発電は昔からある「大きな電気の倉庫」ですが、新しく作れる場所は限られています。蓄電所は置き場所を選ばず、短い期間で作れるので、再エネがふえるのにあわせて全国で計画がふえています。

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揚水式の発電と計算

蓄電所の電池と揚水発電の図。リチウムイオンは速く小型、NAS電池は大容量で長時間、レドックスフローは長寿命で大型、揚水発電は大規模だが場所を選ぶ

蓄電所の容量・放電時間の計算ツール

出力・容量・往復効率・使う残量(SOC)の範囲を入れてください。放電できる時間と、充電に必要な電力量を出します。

入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

蓄電所のよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
kWとkWhは同じ大きさkWは出し入れの速さ(出力)、kWhはためられる量(容量)
充電した分は全部取り出せる往復効率の分だけ失われる(目安で1〜2割)
容量はいつも0〜100%使える寿命を守るため、残量の上下を残して運転する
蓄電所は電気をつくる発電所電気をためて出す設備。ただし10MW以上の放電は法律上「発電事業」
揚水発電があれば蓄電池はいらない応答の速さと置き場所の自由さで役割がちがう
蓄電所のよくある間違いの図。kWとkWhは出力と容量で別、充電した分は効率の分だけ失う、残量の上下は残して使う、揚水発電とは速さと場所がちがう

よくある質問

Q. 蓄電所とは簡単にいうと?

A. 電力系統につないだ大きな蓄電池の施設です。電気が余るときにため、足りないときに出して、需給のバランスを保ちます。

Q. 系統用蓄電池と家庭用蓄電池の違いは?

A. 系統用は送電線や配電線につないで電力系統全体のために充放電します。家庭用は家の中の電気をまかなうためのものです。

Q. 蓄電所はなぜふえているの?

A. 太陽光や風力がふえ、天気で変わる発電をならす必要が大きくなったからです。置き場所を選ばず短期間で作れるのも理由です。

Q. kWとkWhの違いは?

A. kWは一度に出し入れできる電力(出力)、kWhはためられる電力量(容量)です。容量÷出力が放電できる時間です。

Q. 電験三種で蓄電所は出る?

A. 電力の試験範囲に「発電所、蓄電所及び変電所」とあります。役割や構成、kWとkWhの計算を押さえておくと安心です。

まとめ
  • 蓄電所=電力系統につないだ大きな蓄電池の施設
  • 蓄電池・PCS・変圧器・制御システムでできている
  • 役割は需給調整・再エネの変動吸収・周波数調整など
  • 大きさは出力kWと容量kWh。容量÷出力=放電時間
  • 10MW以上の放電は発電事業。揚水より速く、置き場所を選ばない
蓄電所のまとめの図。電力系統の大きな電池で、蓄電池・PCS・変圧器でできている。余る電気をためて出し、大きさは出力kWと容量kWhで表す
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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