系統用蓄電池(蓄電所)とは、大きな蓄電池を送電線や配電線につなぎ、電気が余るときに充電して足りないときに放電する施設です。出力(kW)と容量(kWh)の違いはkWとkWhの節、放電できる時間は計算ツールで確かめられます。

蓄電所とは?電力系統につながった「大きな電池の倉庫」
電気は、つくった瞬間に使われる量と、使われる量がいつもつり合っていなければなりません。ところが、太陽光は昼に多く夜は0、風力は風しだいで、発電量が天気で大きく変わります。そこで、電気が余るときにためて、足りないときに出す「電気の倉庫」が必要になります。電力系統につないだこの大きな蓄電池の施設が、蓄電所(系統用蓄電池)です。
| 構成する機器 | 役目 |
|---|---|
| 蓄電池(バッテリー) | 電気を化学エネルギーとしてためる。たくさんのセルを並べたコンテナが何台も並ぶ |
| パワーコンディショナ(PCS) | 蓄電池の直流と系統の交流を、双方向に変換する(インバータ) |
| 変圧器 | PCSの電圧を、つなぐ送電線・配電線の電圧に上げ下げする |
| 制御システム(EMS) | いつ・どれだけ充電・放電するかを決める。電池の温度や残量も見張る |
2022年の電気事業法の改正(2023年4月施行)で、出力が1万kW(10MW)以上の系統用蓄電池から放電する事業は「発電事業」に位置づけられました。発電所・変電所と並ぶ電力設備として扱われるようになり、電験三種の電力の試験範囲にも「蓄電所」が入っています。
直流を交流に変えるインバータ

蓄電所の5つの役割
| 役割 | 何をするか | どんなとき |
|---|---|---|
| ① ピークシフト | 電気が余る時間に充電し、需要の多い時間に放電する | 昼の太陽光を夕方〜夜に使う |
| ② 再エネの出力変動をならす | 太陽光・風力の急な増減を、充放電で打ち消す | 雲がかかって太陽光の出力が急に下がったとき |
| ③ 周波数の調整 | 需要と供給のずれで周波数が動いたとき、すばやく充放電して戻す | 大きな発電所が急に止まったとき |
| ④ 出力制御をへらす | 余った再エネの電気を捨てずにためる | 春や秋の昼に太陽光が余るとき |
| ⑤ 送電線の混雑をさける | 送電線がいっぱいの時間は送らずにため、空いた時間に送る | 再エネが集まる地域 |
蓄電池は、電子回路で充放電を切りかえるので、出力を1秒もかからずに上げ下げできるのが強みです。火力発電のように燃料の量を変えて出力を調整するより、ずっと速く反応できます。そのため、周波数を保つための調整力としても使われます。

蓄電所の大きさは「kW」と「kWh」の2つで表す
| 出力(kW・MW) | 容量(kWh・MWh) | |
|---|---|---|
| 意味 | 一度にどれだけの電力を出し入れできるか | 全部でどれだけの電力量をためられるか |
| たとえ | 水道の蛇口の太さ | タンクの大きさ |
| 決めるもの | PCSの大きさ | 蓄電池の数 |
例題
出力2MW・容量8MWhの蓄電所は、最大出力で 8÷2=4時間 放電できます。往復効率(充電した電力量のうち、放電で取り出せる割合)が85%なら、8MWhを放電するには 8÷0.85≒9.41MWh の充電が必要で、1回の充放電で約1.41MWhが熱などで失われます。
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実際には、電池を長持ちさせるため、残量(SOC)を0〜100%いっぱいまでは使わず、たとえば10〜90%の範囲で運転します。その分、使える容量は小さくなります。

蓄電所に使われる電池と、揚水発電とのちがい
| 電池 | しくみ・特徴 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| リチウムイオン電池 | 応答が速く、小さく軽い。熱の管理が大切 | 周波数調整、数時間のピークシフト |
| NAS電池(ナトリウム硫黄) | 約300℃で動く。大容量で長時間の放電が得意。日本で実用化 | 長時間のピークシフト |
| レドックスフロー電池 | 電解液をタンクにためてポンプで流す。長寿命で、タンクを大きくすれば容量をふやせる | 大型・長時間、出力変動の吸収 |
一次電池・二次電池・燃料電池
揚水発電とのちがい
| 蓄電所(系統用蓄電池) | 揚水発電 | |
|---|---|---|
| ため方 | 電気を化学エネルギーでためる | 水を上の池にくみ上げて位置エネルギーでためる |
| 応答 | とても速い(1秒以内) | 数分ほど |
| 規模・時間 | 数MW〜数百MW、数時間 | 数百MW〜、長時間 |
| 場所 | 空き地や変電所の近くに置ける | 高低差のある山あいに限られる。建設に時間がかかる |
揚水発電は昔からある「大きな電気の倉庫」ですが、新しく作れる場所は限られています。蓄電所は置き場所を選ばず、短い期間で作れるので、再エネがふえるのにあわせて全国で計画がふえています。
揚水式の発電と計算

蓄電所の容量・放電時間の計算ツール
出力・容量・往復効率・使う残量(SOC)の範囲を入れてください。放電できる時間と、充電に必要な電力量を出します。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
蓄電所のよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| kWとkWhは同じ大きさ | kWは出し入れの速さ(出力)、kWhはためられる量(容量) |
| 充電した分は全部取り出せる | 往復効率の分だけ失われる(目安で1〜2割) |
| 容量はいつも0〜100%使える | 寿命を守るため、残量の上下を残して運転する |
| 蓄電所は電気をつくる発電所 | 電気をためて出す設備。ただし10MW以上の放電は法律上「発電事業」 |
| 揚水発電があれば蓄電池はいらない | 応答の速さと置き場所の自由さで役割がちがう |

よくある質問


