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- 計器用変成器のVTとCT、どちらが「短絡禁止」でどちらが「開放禁止」か、いつも迷う
- CTの二次側を開くと、なぜ高電圧が出るのかがわからない
- 変成比が出てくる計算で、何を何倍すればいいのか混乱する
- VTとCTの役割・つなぎ方・取り扱いの違い
- CTの二次側を開放してはいけない本当の理由
- 変成比を使った電力の計算と、過去問の問われ方
計器用変成器は、変電所やキュービクル(高圧の電気を受けて変圧する箱型の設備)の中で、電気の量を測るために欠かせない機器です。VTとCTは見た目も名前も似ているので、はじめは混乱して当然です。この記事では、2つの違いを「なぜそうなるのか」から一つずつ整理します。
計器用変成器は、高電圧や大電流を、計器や保護継電器で扱える低い電圧・小さい電流に変える機器で、計器用変圧器(VT)と変流器(CT)の2種類があります。VTは線路に並列につなぎ、二次側を短絡してはいけません。CTは線路に直列につなぎ、二次側を開放してはいけません。CTの二次側を開くと、一次電流がすべて鉄心を磁化する電流になり、二次側に高電圧が出て鉄損が増え、焼損するおそれがあるからです。
計器用変成器とは?なぜ必要なのか
計器用変成器は、測りたい電圧や電流を、決まった比率で小さくして計器に渡す機器です。6,600Vの電圧や数百Aの電流を、そのまま電圧計や電流計につなぐことはできません。計器が大きく高価になるうえ、触れたら命にかかわるからです。
大きな川の水量を、川に入って直接はかるのは危険です。そこで、川の流れを正確に一定の割合で小さくした「模型の水路」をつくり、その水路の水量をはかって何倍かすれば、川の水量がわかります。計器用変成器は、この「正確に縮小した模型」をつくる装置です。
| 種類 | 何を小さくする? | 二次側の値の例 |
|---|---|---|
| 計器用変圧器(VT) | 電圧 | 6,600V → 110V |
| 変流器(CT) | 電流 | 100A → 5A |
小さくした電圧・電流は、電圧計・電流計・電力量計などの計器と、事故を見つけて遮断器に「切れ」と命令する保護継電器の両方に送られます。つまり計器用変成器は、高圧の設備の「目」の役割をしています。
計器用変成器が、変電所のどの機器とつながっているかを見渡せます

計器用変圧器(VT):並列につなぎ、短絡してはいけない
VTは、電圧を測るための小さな変圧器です。電圧計と同じく、測りたい2本の線の間に並列につなぎます。二次側には電圧計など、インピーダンス(交流の流れにくさ)が大きい計器をつなぐので、ふだんの二次電流はわずかです。
一次電圧 = 二次電圧の読み × 変圧比(例:6,600 ÷ 110 = 60)
例題:VT 6,600/110Vで、電圧計が105Vを指した
変圧比を出します。6,600V ÷ 110V = 60
読みに変圧比を掛けます。105V × 60 = 6,300V。高圧側の電圧は6,300Vです。
なぜ短絡してはいけないのか
VTは、ふつうの変圧器と同じく、一次側に決まった電圧がかかっています。二次側を短絡(2本の線を直接つなぐこと)すると、インピーダンスがほぼ0になり、巨大な短絡電流が流れます。巻線が焼けてしまうので、VTの二次側は短絡してはいけません。
VTは「電圧源」につながっている、と覚えると理解しやすくなります。家のコンセントの2つの穴を針金でつないではいけないのと同じ理由です。そのため、VTの一次側や二次側にはヒューズを入れて、短絡事故から守ります。二次の定格電圧は設備によって異なるので、実際の値は機器の銘板や資料で確認してください。

変流器(CT):直列につなぎ、開放してはいけない
CTは、電流を測るための変成器です。電流計と同じく、測りたい線路に直列につなぎます(線路をCTの中に通す形のものも多くあります)。二次側の定格電流は5Aが一般的で、線路に100A流れたら二次側に5A、というように比例した電流を出します。
一次電流 = 二次電流の読み × 変流比(例:100 ÷ 5 = 20)
例題:CT 100/5Aで、電流計が3.6Aを指した
変流比を出します。100A ÷ 5A = 20
読みに変流比を掛けます。3.6A × 20 = 72A。線路には72Aが流れています。
「低インピーダンスの負荷」を数字で見る
CTには、二次側につないでよい負荷の大きさ(負担、単位はVA)が決まっています。負担が10VAのCTで、二次電流5Aのとき、つないでよい合計のインピーダンスを計算してみます。
負担は「電流の2乗 × インピーダンス」です。10VA = 5² × Z
Z = 10 ÷ 25 = 0.4Ω。計器と配線を合わせて0.4Ω以下にする必要があります。
0.4Ωは、ほとんど短絡に近い小ささです。CTの二次側は、ふだんから「ほぼ短絡した状態」で使う機器だということです。負担の値はCTの種類で異なるので、実際の選定ではメーカーの資料で確認してください。
CTの電流を受け取って動く、保護継電器の種類と役割がわかります

なぜCTの二次側を開放してはいけないのか
CTの二次側を開放してはいけないのは、一次電流がCTではなく線路の負荷で決まっているからです。二次側を開いても一次電流は減らず、その電流がすべて鉄心を強く磁化し、二次側に高電圧を生みます。
ふだんは一次と二次で磁束を打ち消し合っている
ふだん:一次電流がつくる磁束を、二次電流がつくる逆向きの磁束がほぼ打ち消しています。鉄心の中の磁束は小さく、二次側の電圧も数V程度です。
二次側を開放:二次電流が0になり、打ち消す磁束がなくなります。それでも一次電流は線路の負荷で決まるので、72Aなら72Aのまま流れ続けます。
一次電流がすべて鉄心を磁化する電流になり、鉄心は飽和するほど強く磁化されます。磁束が急に変化するたびに、巻数の多い二次巻線に高電圧が生まれます。
高電圧で二次巻線の絶縁が壊れたり、鉄損(鉄心で熱になる損失)が過大になって焼損したりします。触れた人が感電するおそれもあります。
綱引きで、2チームが同じ力で引き合っている間は、綱はほとんど動きません。片方のチームが急に手を離すと、もう片方の力がそのまま綱にかかり、綱は勢いよく飛んでいきます。CTの一次と二次も同じで、二次側が手を離す(開放する)と、一次電流の力がすべて鉄心にかかって暴れます。
VTとCTで禁止事項が逆になります。VTは電圧源につながっているので「短絡」が危険、CTは電流源につながっているので「開放」が危険です。実務でCTの二次側の計器を外すときは、先に二次端子を短絡してから外します。

変成比を使って三相電力を計算する
高圧の三相電力は、VTとCTの読みを高圧側の値に直してから、三相電力の式に入れて求めます。
P = √3 ×(V読み × 変圧比)×(I読み × 変流比)× cosθ
例題:VT 6,600/110V・CT 100/5A
電圧計の読みが108V、電流計の読みが4A、力率が0.9のとき、高圧側の三相電力を求めます。
高圧側の電圧:108V × 60 = 6,480V
高圧側の電流:4A × 20 = 80A
電圧と電流を掛けます。6,480 × 80 = 518,400
√3を掛けます。518,400 × 1.732 = 約897,900
力率を掛けます。897,900 × 0.9 = 約808,100W = 約808kW
二次側の値だけで計算すると、√3 × 108 × 4 × 0.9 = 約673Wです。これに変圧比60と変流比20を掛けた1,200倍が、高圧側の電力(約808kW)になります。
電力量計の読みに掛ける「乗率」は、この変圧比×変流比のことです。VT 6,600/110V・CT 100/5Aなら乗率は1,200。キュービクルの電力量計で読んだ値に1,200を掛けると、実際に使った電力量になります。

実際にどこで使われている?仲間の機器も整理
高圧で受電している工場やビルのキュービクルには、VTとCTのほかに、役割の違う仲間の機器が入っています。名前が似ているので、まとめて整理しておきます。
| 機器 | 役割 | つながる先 |
|---|---|---|
| VT(計器用変圧器) | 電圧を小さくする | 電圧計・電力計・電力量計 |
| CT(変流器) | 電流を小さくする | 電流計・電力計・過電流継電器 |
| VCT(電力需給用計器用変成器) | VTとCTを1つの箱にまとめたもの | 電力会社との取引用の電力量計 |
| ZCT(零相変流器) | 3本の電流の合計(地絡で漏れた電流)を取り出す | 地絡継電器・漏電遮断器 |
ZCTは、3本の線をまとめて1つの鉄心に通します。ふだんは3本の電流の合計が0ですが、地絡(電気が大地へ漏れること)が起きると合計が0でなくなり、その差を検出します。家の漏電遮断器も同じ考え方で漏電を見つけています。
漏電遮断器が漏れた電流をどう見つけているかが、身近な例でわかります
VTやCTの二次側は、一次側の高電圧が漏れてきたときに備えて、接地(大地につなぐこと)します。点検でCTの二次回路にさわるときは、二次端子の短絡と接地を必ず確かめます。

電験三種の過去問で問われているポイント
計器用変成器は、電力科目の変電分野で、空欄穴埋め問題としてくり返し出題されています。問われる語句はほぼ決まっているので、ここを押さえれば確実に得点できます。
| 年度・問題 | 形式 | 空欄に入った語句 |
|---|---|---|
| 令和3年度 電力 問7 | 空欄穴埋め | 計器用変圧器/保護継電器/(CTの二次側は)低(インピーダンス)/(CTの一次側は)直列 |
| 令和5年度上期 電力 問7 | 空欄穴埋め | 令和3年度 問7と同じ問題(同じ語句・同じ正解) |
| 令和6年度下期 電力 問7 | 空欄穴埋め | 低インピーダンス/開放/電圧/鉄損/直列 |
ポイント1:同じ問題がそのまま再出題されている
令和3年度 問7と令和5年度上期 問7は、空欄も正解も同じ問題でした。年2回の試験になってから、過去の問題がそのまま、または少し変えて出ることがあります。過去問で一度解いた問題は、語句まで覚えておく価値があります。
ポイント2:CTは「低・開放・電圧・鉄損・直列」の5語でつながる
令和6年度下期 問7は、CTの取り扱いを5つの空欄で問う問題でした。次の1文で覚えると、どの空欄が出ても埋められます。
CTは、線路に「直列」につなぎ、二次側には常に「低インピーダンス」の負荷をつなぐ。一次電流が流れているときに二次側を「開放」すると、大きな「電圧」が出て「鉄損」が増え、焼損する。
ポイント3:選択肢は「VTとCTの入れ替え」でひっかける
選択肢には、並列と直列、短絡と開放、高と低を入れ替えた組み合わせが並びます。「VT=電圧計の仲間=並列・短絡禁止・高インピーダンスの計器」「CT=電流計の仲間=直列・開放禁止・低インピーダンスの負荷」と、計器の仲間で整理しておけば迷いません。

よくある間違い・つまずきポイント
計器用変成器で点を落とすのは、ほとんどが次の5つです。
1. VTとCTの禁止事項を逆にする
VTは短絡禁止、CTは開放禁止です。「電圧源は短絡がダメ、電流源は開放がダメ」と、電源の性質で覚えると入れ替わりません。
2. CTの二次側に「高インピーダンス」と答える
高インピーダンスの負荷は、開放に近い状態です。CTの二次側は、負担10VAなら0.4Ω以下のような、短絡に近い低インピーダンスでつなぎます。
3. CTを開放すると「電流」が増えると考える
開放すると二次電流は0になります。増えるのは二次側の「電圧」と鉄心の「鉄損」です。穴埋めで「誘導電流」「銅損」を選ばないよう注意します。
4. 変成比を掛け忘れる・割ってしまう
高圧側の値は「読み × 変成比」です。読みを変成比で割ると、もっと小さな値になってしまいます。答えが二次側の値より小さければ、向きを間違えています。
5. 三相電力で√3を忘れる
高圧側の電圧と電流を出したあと、三相電力の式には√3が入ります。忘れると、答えが約58%(1÷1.732)の小さな値になります。

よくある質問
まとめ:VTは電圧計の仲間、CTは電流計の仲間
- 計器用変成器=VT(電圧を小さく)とCT(電流を小さく)
- VT:並列につなぐ、二次側の短絡禁止(例:6,600/110V)
- CT:直列につなぐ、二次側の開放禁止、低インピーダンスの負荷(例:100/5A)
- CTを開放すると、二次側に高電圧が出て鉄損が過大になる
- 高圧側の値=読み×変成比。電力量計の乗率=変圧比×変流比
まずは「VTは電圧計の仲間、CTは電流計の仲間」とだけ覚えてください。つなぎ方も、禁止事項も、二次側の負荷の大きさも、すべてそこから導けます。

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次に読むべき記事
ここまでで、VTとCTが高圧設備の「目」として電圧と電流を測るしくみがわかりました。次は、その信号を受けて事故を切り離す遮断器や、地絡のときの電流を決める接地方式へ進みましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。