- テブナンの定理は理解した。でも過去問に「ノートンの定理を用いて」と出てきた瞬間フリーズする
- 「電流源」という概念が、そもそもピンとこない
- テブナンとノートンの違いがわからない。同じ問題なのに2つの方法があるのはなぜ?
- 「双対関係」という言葉が参考書に出てくるけど、何がどう双対なのか説明できない
- ノートンの定理が「テブナンの裏ワザ」で簡単に理解できる
- 電流源等価回路を5ステップで自分で作れる
- テブナンとノートンの使い分け(並列回路ならノートン圧勝)
- テブナン⇔ノートンの相互変換公式とその意味
電験三種の参考書を進めていくと、テブナンの定理の次に必ず「ノートンの定理」が出てきます。「テブナンが分かれば十分じゃないの?」と思いながら読んでいませんか?
結論を先に言います。ノートンの定理は、テブナンの定理と完全に対になっている「裏ワザ」です。テブナンが「電圧源で考える」のに対し、ノートンは「電流源で考える」。それだけの違いです。
そして並列回路の問題ではノートンを使った方が圧倒的に速く解けるケースが多々あります。テブナンしか使えない人は、試験で時間を浪費している可能性が高いのです。
【電験三種・理論】テブナンの定理|複雑な回路を等価回路に変換する →
目次
ノートンの前に|「電流源」って何?
ノートンの定理を理解するうえで、まず「電流源」という概念をクリアにしておく必要があります。電気回路で見慣れているのは「電圧源(電池の記号)」のはずです。
電圧源
- 常に一定の電圧を出し続ける
- 電流は負荷によって変わる
- 例:乾電池、コンセント、バッテリー
- 記号:丸の中に「+/−」
電流源
- 常に一定の電流を流し続ける
- 電圧は負荷によって変わる
- 例:トランジスタの定電流回路、太陽電池の一部動作
- 記号:丸の中に「↑」(矢印)
電流源は実生活では電圧源ほど見かけません。しかし電子回路設計(オペアンプの基準電流回路、LED駆動回路など)では超頻出です。電気主任技術者として工場の電気設備を扱う田中さんも、PLC内部のセンサー駆動回路などで電流源の概念に出会います。
電圧源の内部抵抗は「直列」に入りますが、電流源の内部抵抗は「並列」に入ります。これが後で出てくる「双対」の正体です。

ノートンの定理を一言で|「電流源+並列抵抗」に置き換える
ノートンの定理は、たった一文で表せます。
どんなに複雑な線形回路も、
「電流源 IN」と「並列抵抗 RN」の2つだけで表せる
テブナンの定理が「電圧源+直列抵抗」だったのに対し、ノートンの定理は「電流源+並列抵抗」。主役の電源と、抵抗のつなぎ方が違うだけです。
| 項目 | テブナン | ノートン |
|---|---|---|
| 電源の種類 | 電圧源 V₀ | 電流源 IN |
| 抵抗のつなぎ方 | 直列 | 並列 |
| 抵抗の値 | R₀ | RN(実は同じ値) |
| 得意な問題 | 直列回路の解析 | 並列回路の解析 |
テブナンの抵抗 R₀ と、ノートンの抵抗 RN は完全に同じ値です。なぜなら、どちらも「電源を取り除いて、外から見た抵抗」だからです。これは後の「相互変換」で重要になります。

「双対関係」とは|電圧源⇔電流源、直列⇔並列の鏡像
参考書に出てくる「双対(そうつい)」という言葉。意味は単純で、「あらゆる要素が対になっている関係」のことです。
テブナン
電圧源
+
直列抵抗
ノートン
電流源
+
並列抵抗
電気回路には、こうした「対になる概念」がたくさんあります。参考までに代表的なものを並べておきます。
| 概念A | 双対の概念B |
|---|---|
| 電圧 V | 電流 I |
| 直列接続 | 並列接続 |
| 抵抗 R | コンダクタンス G (=1/R) |
| キルヒホッフの電圧則 | キルヒホッフの電流則 |
| テブナンの定理 | ノートンの定理 |
テブナンの定理を理解しているなら、すべての文字を双対で置き換えるだけでノートンの定理も理解できます。新しく覚えることはほぼゼロ。これが「裏ワザ」と呼ぶ所以です。
【電験三種・理論】直列回路と並列回路の違い|合成抵抗の公式が一瞬で理解できる →

ノートン等価回路の作り方|5ステップで完全攻略
それでは実際にノートン等価回路を作る手順を見ていきます。テブナンの手順とほぼ同じで、違うのは「電圧」を求める代わりに「電流」を求める点だけです。
注目したい部分(負荷)を取り外す。残った回路の「2つの端子」を見る。テブナンと全く同じ手順。
2つの端子を「短絡(ショート)」する。そこに流れる電流を求める。これがノートン電流 IN(短絡電流 ISC)。
すべての電源を取り除く。電圧源は短絡(つなげる)、電流源は開放(切り離す)。
2つの端子から見た合成抵抗を求める。これがノートン抵抗 RN(テブナン抵抗 R₀ と同じ)。
等価回路を描く。電流源 IN と並列抵抗 RN を並べる。元の負荷を再びつなぎ直して計算完了。
STEP 2 です。テブナンでは「端子を開放したときの電圧」を求めましたが、ノートンでは「端子を短絡したときの電流」を求めます。
・テブナン:端子オープン → 電圧V₀
・ノートン:端子ショート → 電流IN
この違いだけで、残りの手順は完全に同じです。

例題|実際にノートン等価回路を作ってみる
それでは具体的な数値で、ノートン等価回路を作ってみましょう。
与えられた回路
内部抵抗:R₁ = 2Ω(電圧源と直列)
並列抵抗:R₂ = 6Ω(端子間に並列)
負荷:RL(端子間につながっている)
→ この回路の負荷RL側から見たノートン等価回路を求めよ
STEP 1〜2:負荷を外して短絡電流 IN を求める
RL を取り外し、その端子間を導線でショートします。すると R₂ も短絡されてしまうので、電流は R₁ だけを通って流れます。
IN = E / R₁ = 12V / 2Ω = 6A
STEP 3〜4:電源を消して RN を求める
電圧源 E を短絡(ただの導線に置換)すると、端子から見ると R₁ と R₂ が並列につながった状態になります。
RN = (R₁ × R₂) / (R₁ + R₂) = (2×6)/(2+6) = 12/8 = 1.5Ω
STEP 5:等価回路の完成
この回路のノートン等価回路は、電流源 IN = 6A と並列抵抗 RN = 1.5Ω で表せる。元の複雑な回路が、たった2つの素子だけになった!
あとは負荷 RL をこの等価回路につなぎ直すだけで、RL に流れる電流は分流の公式で一発計算できます。
IL = IN × RN / (RN + RL) = 6 × 1.5 / (1.5 + 3) = 2A
【電験三種・理論】分圧・分流の法則|電圧と電流の分け方を瞬時に計算 →

テブナン⇔ノートンの相互変換|公式は超シンプル
テブナン等価回路とノートン等価回路は、同じ回路を別の表し方で書いただけです。だから片方が分かれば、もう片方も即座に作れます。
変換公式
IN = V₀ / R₀
RN = R₀
V₀ = IN × RN
R₀ = RN
公式の意味を直感的に説明すると、「電流源と抵抗の並列回路の端子電圧 = IN × RN」がテブナンの電圧源そのもの、というだけです。オームの法則と全く同じ感覚です。
テブナンをノートンに変換
電圧源 V₀ を抵抗 R₀ で割って IN を求める。抵抗値はそのまま使い、つなぎ方を「直列→並列」に変える。
ノートンをテブナンに変換
電流源 IN に抵抗 RN を掛けて V₀ を求める。抵抗値はそのまま使い、つなぎ方を「並列→直列」に変える。
問題で「電流源+並列抵抗」が出てきたら、その瞬間にテブナン(電圧源+直列抵抗)に変換すると解きやすくなることがあります。逆もまた然り。「自分の得意な形」に変換するクセをつけると、計算スピードが2倍になります。

テブナンとノートン、結局どっちを使えばいい?
両方の定理を理解したうえで、実務・試験での使い分けの指針を示します。
| こんなときに使う | 推奨 |
|---|---|
| 直列回路の解析が中心、電圧源が複数ある | テブナン |
| 並列回路の解析が中心、電流源が含まれる | ノートン |
| 負荷の電圧を知りたい | テブナン |
| 負荷の電流を知りたい | ノートン |
| 問題文で指定されている | 指定通り |
「電圧の問題はテブナン、電流の問題はノートン」と覚えてください。例外もありますが、初学者はまずこの基準で十分です。
電験三種では「テブナンを用いて」と明示されることが多いですが、明示されない場合はノートンの方が早く解けるケースも多いです。両方使えるようにしておけば、試験本番で時間を稼げます。

ノートンの定理でよくある3つの間違い
ノートンの定理を学ぶ初心者が必ず陥る3つの落とし穴を、対処法とセットで紹介します。
間違い①:電流源を「電池」と同じだと思う
電流源は「電圧が変わっても、決まった電流を流し続ける装置」です。電池とは別物。「電流の蛇口」のようなイメージで、出てくる電流が常に一定だと考えてください。
間違い②:電源を消すときの処理を間違える
電源を消すとき、電圧源は短絡、電流源は開放です。これを逆にすると合成抵抗が間違います。覚え方は「電圧源は0V=ただの線、電流源は0A=切れた線」。
間違い③:短絡電流を求めるとき、負荷側で混乱する
ノートン電流 IN は「負荷を取り外して、その端子をショートしたときの電流」です。負荷をつけたままショートしたり、別の場所をショートしたりすると、まったく違う値になります。
□ 負荷を取り外したか?
□ 取り外した端子を導線でショートしたか?
□ そのショート部分に流れる電流(IN)を計算したか?
□ 電源を消すとき、電圧源は短絡・電流源は開放にしたか?
□ 端子から見た合成抵抗(RN)を求めたか?

まとめ|ノートンはテブナンの「裏ワザ」だった
お疲れ様でした。ノートンの定理を一通り見てきました。最後に、今日覚えて帰ってほしいポイントを3つにまとめます。
- ノートンの定理は「電流源 IN + 並列抵抗 RN」で回路を等価変換する手法。テブナンの双対関係。
- RN はテブナンの R₀ と同じ値。IN = V₀ / R₀ で相互変換できる。
- 「電圧の問題はテブナン、電流の問題はノートン」と使い分けると試験で時間を稼げる。
ノートンの定理は単独の知識として暗記するのではなく、テブナンとセットで「同じ回路の表現を切り替える技術」として身につけてください。これが試験本番での武器になります。
📚 次に読むべき記事
ノートンの双対であるテブナン。本記事と必ずセットで読むべき必須記事です。
テブナン・ノートンと並ぶ、回路解析の3大テクニックの一つ。
並列電源のときに使える便利な公式。ノートンの応用とも言えます。
回路解析のすべての土台。テブナン・ノートンもキルヒホッフから導出されます。
ノートン等価回路で負荷電流を求めるときに必須となる公式。
ノートン抵抗 RN を求めるための合成抵抗の計算技術。
直流回路全体の学習順序。今いる位置と次の一手がわかります。
回路図を手描きする練習には方眼ノートと製図用の道具があると効率が一気に上がります。
