- Y結線は「電圧が√3倍」?「電流が√3倍」?もうわからない…
- 線間電圧・相電圧・線電流・相電流の4つの用語が混乱する
- 「なぜ√3倍になるのか」の理屈を説明できない
- 問題のたびに公式を調べ直している
- 「線間」と「相」の4つの用語を二度と混同しなくなる
- Y結線で「電圧が√3倍」になる理由をベクトル図で導出
- Δ結線で「電流が√3倍」になる理由をベクトル図で導出
- 一発で覚える語呂合わせと、計算問題の解き方
三相交流の計算で、最初にぶつかる壁。それが「線間と相の変換」です。
Y結線は電圧が√3倍で電流はそのまま。Δ結線は電流が√3倍で電圧はそのまま。…あれ、どっちがどっちだっけ?
この記事では、この変換関係を「なぜそうなるのか」のベクトル導出から丁寧に解説します。理屈がわかれば、もう「どっちが√3倍だっけ?」と迷うことはなくなります。
目次
📖 まず用語を整理する|「線間」と「相」は何が違う?
4つの用語を「外」と「内」で分類する
三相回路には4つの値が登場します。これを「回路の外側から測れる値」と「内側の値」で分類すると、一気にスッキリします。
「線間」の値
(外側=電線から測れる)
線間電圧 VL
電線と電線の間の電圧
線電流 IL
電線を流れる電流
→ 測定器で直接測れる!
「相」の値
(内側=コイル1つの値)
相電圧 VP
コイル1つにかかる電圧
相電流 IP
コイル1つを流れる電流
→ 直接測れない(計算で求める)
「線」= Line(電線)= 外から見た値。「相」= Phase(相)= 内側のコイル1つの値。「外から測れるのは『線』、内側で計算するのが『相』」と覚えましょう。英語の頭文字 L(Line)と P(Phase)がそのまま記号に使われています。
結論を先にお見せします|変換関係の一覧表
| 結線方式 | 電圧の関係 | 電流の関係 | √3が付くのは? |
|---|---|---|---|
| ⭐ Y結線 | VL = √3 VP | IL = IP | 電圧 |
| 🔺 Δ結線 | VL = VP | IL = √3 IP | 電流 |
この表が三相回路の計算のすべての出発点です。ここから先の記事で、この関係が「なぜ成り立つのか」をベクトル図で完全に導出していきます。

⭐ Y結線|なぜ「線間電圧 = √3 × 相電圧」になるのか?
Y結線の構造を確認する
Y結線では、3つのコイルの一端を中性点Nで束ねています。外部の端子(U, V, W)から見ると、「2つのコイルを直列に経由して」隣の端子に到達します。
| 端子U ──コイルa── N(中性点) ──コイルb── 端子V |
| 相電圧VP = コイル1つにかかる電圧(U-N間、V-N間、W-N間) |
| 線間電圧VL = 端子間の電圧(U-V間、V-W間、W-U間) |
線間電圧VL(たとえばU-V間)は、「Uの相電圧」と「Vの相電圧」の差になります。でも、この2つの電圧は位相が120°ズレているので、単純な引き算(Va − Vb)ではなく、ベクトルの引き算をする必要があります。
ベクトル図で導出する|120°ズレた2つの電圧の差
Va(a相の電圧ベクトル)とVb(b相の電圧ベクトル)を考えます。どちらも大きさはVPで、120°の角度差があります。
線間電圧は Vab = Va − Vb です。この大きさを求めるには、余弦定理を使います。
|Vab|² = |Va|² + |Vb|² − 2|Va||Vb|cos60°
※ Va − Vb を求めるとき、2つのベクトルの「なす角」は60°になります
(120°の補角ではなく、引き算の幾何学的関係から60°)
= VP² + VP² − 2 VP² × (1/2)
= 2VP² − VP²
= 3VP²
∴ |Vab| = √3 × VP
120°ズレた2つの相電圧の差をとると、大きさが√3倍になる!
Y結線の電流|なぜ IL = IP(そのまま)なのか?
Y結線では、電線からの電流がそのまま1つのコイルを通って中性点に向かいます。電流が「分岐」する場所がないので、電線を流れる電流=コイルを流れる電流です。
電圧:外に出るとき√3倍に「拡大」される(VL = √3 VP)
電流:分岐なし、そのまま通過する(IL = IP)

🔺 Δ結線|なぜ「線電流 = √3 × 相電流」になるのか?
Δ結線の構造を確認する
Δ結線では、3つのコイルが三角形状に接続されています。各端子には2つのコイルの端が接続されており、電流は端子で「分岐」します。
| 端子U から電線の電流ILが流入 → コイルabへIab、コイルcaからIcaが合流 |
| 相電圧VP = コイル1つにかかる電圧 = 線間電圧VL(直接接続だから同じ) |
| 線電流IL = 端子に流れ込む電流 = 2つの相電流のベクトル差 |
ベクトル図で導出する|120°ズレた2つの電流の差
端子Uに流れ込む線電流ILは、キルヒホッフの電流則より IL = Iab − Ica です。IabとIcaはどちらも大きさIPで、120°の位相差があります。
これはY結線の電圧導出とまったく同じ構造です! 120°ズレた2つのベクトルの差をとるので、結果も同じく√3倍になります。
|IL|² = |Iab|² + |Ica|² − 2|Iab||Ica|cos60°
= IP² + IP² − 2IP² × (1/2)
= 3IP²
∴ |IL| = √3 × IP
120°ズレた2つの相電流の差をとると、大きさが√3倍になる!
Δ結線の電圧|なぜ VL = VP(そのまま)なのか?
Δ結線では、コイルの両端がそのまま2つの端子に接続されています。「端子U-V間の電圧」と「コイルabにかかる電圧」は、まったく同じ2点間の電圧です。だから VL = VP になります。
電圧:直接接続なので、そのまま同じ(VL = VP)
電流:端子で分岐するとき√3倍に「拡大」される(IL = √3 IP)

🧠 一発で覚える方法|語呂合わせと「対称性」
語呂合わせ:「ワイは電圧、デルタは電流」
√3が付くのは → Y結線なら電圧V、Δ結線なら電流I
これだけ覚えておけば、試験中に迷うことはありません。もう少し理屈で覚えたい方のために、「なぜそうなるか」の直感的な理由も整理しておきます。
直感的な理解|「分岐しない方」がそのまま
| 結線 | 電流は? | 電圧は? | √3が付くのは? |
|---|---|---|---|
| ⭐ Y結線 | コイルをそのまま通過 (分岐なし)→ IL=IP |
2つのコイルをまたぐ (ベクトル差)→ VL=√3VP |
電圧V |
| 🔺 Δ結線 | 端子で2つに分岐 (ベクトル差)→ IL=√3IP |
コイルに直接接続 (分岐なし)→ VL=VP |
電流I |
Y結線では電圧が「2つの相電圧のベクトル差」として現れる。Δ結線では電流が「2つの相電流のベクトル差」として現れる。ベクトル差をとる側に√3が登場する。どちらも同じ「120°→ベクトル差→√3倍」のメカニズムです。

✏️ 計算例|変換を使って三相回路を解いてみよう
例題①:Y結線の相電流とインピーダンスを求める
Y結線の平衡三相負荷に、線間電圧 VL = 200V を印加したところ、線電流 IL = 10A が流れた。
(1) 相電圧VP、(2) 相電流IP、(3) 1相のインピーダンスZ を求めなさい。
Y結線なので VL = √3 VP → VP = VL / √3 = 200 / √3 ≈ 115.5 V
Y結線なので IL = IP → IP = 10 A(そのまま!)
Z = VP / IP = 115.5 / 10 = 11.55 Ω
例題②:Δ結線の相電流とインピーダンスを求める
Δ結線の平衡三相負荷に、線間電圧 VL = 200V を印加したところ、線電流 IL = 10A が流れた。
(1) 相電圧VP、(2) 相電流IP、(3) 1相のインピーダンスZ を求めなさい。
Δ結線なので VL = VP → VP = 200 V(そのまま!)
Δ結線なので IL = √3 IP → IP = IL / √3 = 10 / √3 ≈ 5.77 A
Z = VP / IP = 200 / 5.77 = 34.64 Ω
同じ VL=200V、IL=10A でも、Y結線のZ≈11.55Ω に対してΔ結線のZ≈34.64Ω。その比は 34.64 / 11.55 = 3倍。これは Y-Δ変換でよく使われる関係で、ZΔ = 3 ZY が成り立ちます。

📝 まとめ|変換ルールを完全マスターする
この記事の要点を総整理
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 4つの用語 | 「線間」= 外側(Line)、「相」= 内側(Phase) |
| ⭐ Y結線 | VL = √3 VP(電圧に√3)、IL = IP |
| 🔺 Δ結線 | VL = VP、IL = √3 IP(電流に√3) |
| √3の理由 | 120°ズレた2つのベクトルの差 → 余弦定理で√3倍 |
| 語呂合わせ | 「YはV、ΔはI」に√3が付く |
| インピーダンス | ZΔ = 3 ZY(Δ結線は1相あたりのZが3倍) |
電流そのまま
電流に√3
「線間と相の変換」は三相回路の計算のすべての出発点です。この変換さえ間違えなければ、あとは単相の計算と同じ。「YはV、ΔはI」の語呂合わせと、「120°のベクトル差が√3を生む」という理屈を武器に、三相回路の問題を得点源にしていきましょう。

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