現場の品質管理

SPC管理とは?管理図の8つの異常判定ルールと異常時の対応|判定ツール付き

SPC管理とは何かを表すアイキャッチ。管理限界の内側でも、点が上がり続けるのを虫めがねで見つける

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • SPC管理とは何か、管理図とどう違うのかあいまい
  • 管理限界を超えていないのに「異常」と言われて、理由がわからない
  • ルールに当たったとき、何をすればいいのか決まっていない
この記事でわかること
  • SPC管理の考え方と、管理図のゾーンA・B・C
  • JIS Z 9020-2の8つの異常判定ルール(データを貼るだけの判定ツールつき)
  • 異常が出たときの対応の流れ
  • 「安定」と「工程能力(Cpk)」のちがい
結論|まず30秒でわかる答え

SPC管理とは(Statistical Process Control:統計的工程管理)、製造工程から取ったデータを管理図に記録して見張り、不良品が出る前に「いつもと違う」工程の変化をつかんで手を打つ管理の方法です。管理図では、点が管理限界の外に出たときだけでなく、中心線の片側に9点続く、6点続けて上がる・下がる、などの並び方からも異常を判定します。この判定のきまりが、JIS Z 9020-2に示されている8つの異常判定ルールです。

用語の早見表
言葉意味
SPCStatistical Process Control(統計的工程管理)。工程のデータで工程の変化を見張る管理
SQCStatistical Quality Control(統計的品質管理)。統計の手法で品質を管理すること全体。SPCはその中の工程を見張る部分
SPCチャート管理図のこと
CL・UCL・LCL中心線・上方管理限界・下方管理限界
ネルソンルール管理図の異常を見つける8つのルール。JIS Z 9020-2の8つと同じ内容
WECOルールウエスタン・エレクトリック社の手引き(1956年)の4つのルール。連は8点
SPC管理とは何かを表すアイキャッチ。管理限界の内側でも、点が上がり続けるのを虫めがねで見つける
SPC管理は管理限界の内側の異常も見つける

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SPC管理とは?管理図で「いつもと違う」を早くつかむ

SPCは、不良品を見つける検査ではなく、工程が安定しているかを見張り、不良が出る前に手を打つための管理です。中心の道具が管理図です。

管理図には、中心線(CL)と、その上下に±3σの位置に引いた上方管理限界(UCL)・下方管理限界(LCL)があります。点がすべて管理限界の内側にあり、並び方にくせがなければ、工程は「統計的管理状態(安定)」です。σは工程のばらつき(標準偏差)で、X̄-R管理図ならR̄/d₂などから推定します。規格の幅(上限・下限)とは別のものです。

ゾーンA・B・C|中心線から1σずつ帯に分ける

ゾーン範囲点が入る割合(正規分布)たとえ
C中心線から±1σ約68.3%いつもの場所
B1σ〜2σ約27.2%(片側13.6%)ときどき来る
A2σ〜3σ約4.3%(片側2.1%)めったに来ない
管理限界の外3σを超える約0.27%ほぼ起きない
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規格限界と管理限界、USLとUCLの違い

管理図のゾーンの図。中心線から±1σがゾーンC、1σから2σがゾーンB、2σから3σがゾーンA、その外が管理限界の外
管理図のゾーンA・B・Cは中心線から1σごと

8つの異常判定ルールは、工程の「バラつき」がふだんと違うかどうかを見るものです。バラつきの考え方は次の記事で。

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管理図を学ぶ前に知っておきたい「バラつき」の正体

管理図の8つの異常判定ルール(JIS Z 9020-2)

正常な工程ではめったに起きない並び方を8つ決めておき、それが起きたら「何か原因がある」と判断します。

No.判定のきまり何が起きているよくある原因
11点が管理限界(3σ)の外大きな突発の変化段取りミス、設備の故障、測定ミス
2連続する9点が中心線の片側(連)平均が少しずれた材料のロットの変化、作業者の交代
3連続する6点が増え続ける・減り続ける(傾向)じわじわ進む変化工具の摩耗、温度のドリフト、フィルターの詰まり
4連続する14点が交互に増減ジグザグのくせ調整のしすぎ、2台の設備や2つの材料を交互に使う
5連続する3点中2点がゾーンA以遠(同じ側)平均が大きくずれかけ設備の急な変化、条件の誤設定
6連続する5点中4点がゾーンB以遠(同じ側)平均の小さなずれ材料のロット、測定器の校正ずれ
7連続する15点がゾーンC(±1σ内)ばらつきが不自然に小さい管理限界の計算ちがい、群の中に別の工程がまざる、データの選別
8連続する8点がゾーンCの外(両側)2つの工程がまざっている昼と夜、2つのラインのデータを1枚にまとめた

正常な工程で偶然に起きる確率は、ルール1が約0.27%、ルール2が 2×0.5⁹=約0.39%、ルール3が約0.28%と、どれも数百回に1回ほどです。めったに起きないことが起きたので、「偶然ではなく原因がある」と考えます。

注意|点の数は基準によってちがう

上の表はJIS Z 9020-2:2025 の附属書B(参考)に示された8つのルールで、QC検定もこれに沿っています(JIS Z 9020-2:2025 は国際規格 ISO 7870-2:2023 を基に、一部を変えて作られています)。一方、自動車業界のAIAGのSPCマニュアルなど、「連」を7点とする基準もあります。社内や顧客がどの基準を使うかを、コントロールプランなどで決めておきます。

ネルソンルール・WECOルールとの関係

基準ルールの数特徴
JIS Z 9020-2(この記事の8つ)8QC検定もこれに沿う。並びと中身はネルソンルールと同じ
ネルソンルール8L. S. Nelson が1984年に Journal of Quality Technology で示した8つの検定
WECOルール(ウエスタン・エレクトリック)43σの外に1点、3点中2点が2σの外、5点中4点が1σの外、同じ側に8点連続
AIAG のSPCマニュアルなど—連を7点とするなど、点の数が違う基準もある

どの基準でも「めったに起きない並び方が起きたら原因を探す」という考え方は同じです。

管理図の8つの異常判定ルールの図。管理限界の外、片側に9点、6点増加・減少、14点交互、3点中2点がゾーンA、5点中4点がゾーンB以遠、15点がゾーンC内、8点がゾーンCの外
管理図の8つの異常判定ルール

8つのルールの判定ツール|データを貼るだけ

管理図に打つ値(X̄管理図なら群の平均)を、古い順にカンマ・スペース・改行で区切って入れてください。中心線とσ(UCLとCLから σ=(UCL−CL)÷3 で求めた値)も入れます。はじめは、途中から平均がずれていく例が入っています。

判定はJIS Z 9020-2の8つのルールに沿っています。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

はじめの例(中心線50、σ=1、管理限界は47〜53)は、20点すべてが管理限界の内側にあるので、ルール1では見つかりません。それでも、後半で平均が上にずれ、点が増え続けているので、18点目でルール2(中心線の片側に9点)とルール3(6点続けて増加)に、19点目でルール6(5点中4点が1σを超える)に当たります。「管理限界を超えていないのに異常」とは、こういうことです。

管理限界の内側の異常の図。点は管理限界を超えていないが、後半に中心線の片側に9点並び、6点続けて増加しているので異常と判定する
管理限界の内側でも片側9点・6点連続増加は異常

8つのルールは4つのパターンで覚える

パターンルールやること
大きなずれ1・5突発の原因をすぐ探す(段取り・設備・測定)
小さなずれ2・6いつから変わったかを探す(材料・人・環境の変化点)
傾向3管理限界を突き抜ける前に、工具交換などの手を打つ
データの取り方・調整のくせ4・7・8群の分け方、管理限界の計算、調整のしかたを見直す

ルール1〜3・5・6は「工程そのもの」の変化を、ルール4・7・8は「管理図の作り方や、人の調整のくせ」を知らせることが多いのがポイントです。ルール7のように、ばらつきが小さすぎるのも異常のサインです。

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群内変動と群間変動、群の分け方

8つのルールを4つのパターンに分けた図。大きなずれはルール1と5、小さなずれはルール2と6、傾向はルール3、取り方や調整のくせはルール4・7・8
8つのルールを4つのパターンに分けて覚える

異常が出たらどうする?対応の6ステップ

いきなり工程をいじらず、まず「記録」と「測り方」を疑い、それから工程の変化点を探します。

STEP 1

記録のミスを除く。転記・計算・点の打ち間違いがないか確かめる。

STEP 2

測定のしかたを確かめる。校正は有効か、測る人や測定器が変わっていないか、ゲージR&Rは良好か。

STEP 3

4Mの変化点を探す。人・設備・材料・方法に、異常が出たころの変化がなかったか。

STEP 4

原因を取りのぞき、再発を防ぐ。必要ならFMEAやコントロールプランを見直す。

STEP 5

決めておいた処置(反応計画)を行う。管理限界外なら対象のロットを隔離して全数確認、など。IATF16949ではコントロールプランに反応計画を書くことが求められる。

STEP 6

管理限界を計算し直す。原因がわかった点だけを除いて計算し直す。原因不明の点を安易に除かない。

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4M変更とは?変化点管理のやり方

管理図で異常が出たときの6ステップ。記録のミスを除く、測定を確かめる、4Mの変化点を探す、原因を除く、反応計画を行う、管理限界を計算し直す
管理図で異常が出たときの6ステップ

「安定」と「能力」は別もの|管理図とCpkの関係

管理図は工程が安定しているか(特別な原因がないか)を、Cpkは規格に収める力があるかを見ます。管理図で異常がなくても、Cpkが低いことはあります。

Cpk 1.33以上Cpk 1.33未満
管理図で安定理想。今の管理を続けるばらつきが大きい。工程そのものを改善する
管理図で異常特別な原因を取りのぞけばよいまず安定させ、それから改善する

順番は「管理図で安定を確かめる → 安定した状態でCpkを出す → 足りなければ改善」です。異常がある状態でCpkを計算しても、その値は工程の実力を表しません。Cpk1.33は両側の規格で不良率およそ63ppmにあたります。特殊特性にもっと高い値(1.67など)を求める顧客もあります。

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CpkとPpkの違い

QC検定での出題ポイント

8つのルールをすべて覚えるのは大変ですが、試験対策としては優先順位をつけることが重要です。

覚える優先順位(目安)

優先度 ルール キーワード 覚え方
最頻出 ①1点が限界線外 突発異常 これは常識!
超頻出 ②9点連続片側 連・シフト 「く(9)しで かたづけ」
頻出 ③6点連続傾向 トレンド 「む(6)かって トレンド」
よく出る ④⑤⑥ 周期・警告 14, 3/2, 5/4
たまに出る ⑦⑧ 層別・混合 15, 8

○ 試験で出るパターン

  • 管理図のグラフを見て「異常かどうか」を判定させる問題
  • 「どのルールに該当するか」を選ばせる問題
  • 「9点連続」「6点連続」などの数字を穴埋めさせる問題
  • ルールの名称(連、トレンドなど)を問う問題
管理図の安定と工程能力の関係の図。安定でCpk1.33以上は理想、安定でCpk不足は工程を改善、異常でCpk十分は原因を除く、異常でCpk不足はまず安定させてから改善
管理図の安定と工程能力(Cpk)の4つの組み合わせ
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管理図の見方は、QC検定でも計算とあわせて問われるところです。管理図・工程能力指数・検定をつなげて学びたい人は、講座を使う方法もあります。SATには、QC検定2級・3級の講座(テキスト・問題集と講義動画)があります。料金・内容は公式サイトで確かめてください。

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SPC管理でよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
管理限界の内側なら正常並び方のくせ(連・傾向など)も見る
管理限界に規格の上限・下限を使う管理限界は工程のばらつき(±3σ)から計算する
点が少しずれるたびに設備を調整する安定している工程をいじると、かえってばらつく(ルール4のジグザグ)
ルールは多いほど安心ルールを増やすほど空振り(誤った警報)も増える。目的に合わせて選ぶ
ばらつきが小さすぎるのは良いこと15点がずっとゾーンC内(ルール7)は、管理限界や群の取り方の異常のサイン
SPC管理のよくある間違いの図。限界の内側でも並び方を見る、管理限界はばらつきの±3σ、安定していれば調整しない、ばらつきが小さすぎるのも異常
SPC管理のよくある間違い:安定していれば調整しない

管理限界を平均±3σに置く理由は、次の記事で99.7%の意味から説明しています。

管理図の管理限界はなぜ±3σ?99.7%の意味と現場での答え方
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99.7%の意味と現場での答え方

よくある質問

Q. SPC管理とは簡単にいうと?

A. 工程のデータを管理図で見張り、不良が出る前に「いつもと違う」変化をつかんで手を打つ管理の方法です。

Q. 管理図の異常判定ルールはいくつ?

A. JIS Z 9020-2では8つです。管理限界の外、片側に9点、6点続けて増減、14点が交互、などがあります。

Q. 連は7点?9点?

A. JIS Z 9020-2とQC検定は9点です。AIAGのSPCマニュアルなど7点とする基準もあり、顧客の基準に合わせます。

Q. 8つのルールを全部使うべき?

A. 必ずしも全部ではありません。増やすほど誤った警報も増えるので、管理限界の外・連・傾向を基本に選ぶことが多いです。

Q. 異常が出たら最初に何をする?

A. 工程をいじる前に、記録のミスと測定のしかたを確かめます。そのあと4Mの変化点を探します。

Q. 管理図で異常なしなのにCpkが低いのは?

A. 安定しているがばらつきが大きい状態です。原因の除去ではなく、設備や方法など工程そのものを改善します。

Q. ネルソンルールとは?

A. 管理図の異常を見つけるための8つのルールで、L. S. Nelson が1984年に発表しました。JIS Z 9020-2 の8つの異常判定ルールと同じ内容です。

Q. SPCとSQCの違いは?

A. SQCは統計の手法で品質を管理すること全体、SPCはその中で工程のデータを見張って変化をつかむことです。

Q. WECOルールとは?

A. ウエスタン・エレクトリック社の品質管理の手引きにある4つのルールです。連(同じ側に続く点)を8点で判定するのが、ネルソンルール(9点)との違いです。

まとめ
  • SPCは、管理図で工程を見張り、不良が出る前に手を打つ管理
  • 中心線から1σごとにゾーンC・B・A
  • JIS Z 9020-2の8ルール:限界外、片側9点、6点増減、14点交互、3中2がA、5中4がB以遠、15点がC内、8点がCの外
  • 管理限界の内側でも、並び方で異常がわかる
  • 異常が出たら、記録→測定→4M→原因除去→反応計画→再計算
  • 安定(管理図)と能力(Cpk)は別もの
SPC管理のまとめの図。管理図で見張る、8つのルールで判定、記録と測定から疑う、安定と能力は別
SPC管理のまとめ:見張る・判定・疑う・安定と能力は別
この記事の理解を深める本と道具
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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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