過去問を解いていたら、こんな経験はありませんか?
「あれ、この問題は P=VI だっけ?それとも P=I²R?
交流になったら cosθ が出てきたし…
三相だと √3 もつくし、もう何が何だか…」
- P=VI、P=I²R、P=V²/R がどう違うのかわからない
- 交流の P=VIcosθ で「なぜ cosθ が掛かるのか」が腑に落ちない
- 三相電力の「√3」がどこから出てきたのか毎回忘れる
- 問題文を見て「どの公式を使えばいいか」が瞬時に判断できない
- 電力公式が「直流→単相交流→三相交流」と進化する全体像
- P=VI・P=I²R・P=V²/R の使い分け(問題文の何を見て判断するか)
- cosθ・√3 が「なぜ・どこから」出てくるのかの直感的理解
- 過去問で迷わない「公式選択フローチャート」
結論を先に言います。電力の公式が混乱する原因は、「直流・単相・三相で世界観が変わるのに、同じ "P" という記号を使い回しているから」です。
逆に言えば、3つの世界の「ルールの違い」さえ整理できれば、公式は1つも暗記しなくて大丈夫。この記事では、田中さん(仮名・自動車部品メーカー4年目)が会議で恥をかかないレベルまで、一気に整理していきます。
目次
そもそも「電力」とは何か?(全公式の出発点)
すべての電力公式は、たった1つの基本式から派生しています。
P = V × I [W]
電力(W) = 電圧(V) × 電流(A)
これは「1秒間にどれだけの電気エネルギーが消費されるか」を表しています。水道管でたとえるなら、水圧(電圧)と水量(電流)を掛け算した「水のパワー」のようなものです。
工場の動力盤に「30kW」と書いてあったら、それは「1秒間に30,000ジュールのエネルギーを消費する設備」という意味です。電気代の請求書に出てくる「kWh」は、この電力(W)に時間(h)を掛けたもの。

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直流回路の電力公式(3兄弟の正体)
まずは一番シンプルな直流回路から。ここで出てくるのが、田中さんを混乱させる「3兄弟」です。
電力公式の3兄弟は「同じものを3つの角度から見ているだけ」
① P = V × I
② P = I² × R
③ P = V² / R
この3つは、実は ①の P=VI に、オームの法則(V=IR)を代入しただけです。
P = V × I の V に、V=IR を代入
→ P = (IR) × I = I²R
P = V × I の I に、I=V/R を代入
→ P = V × (V/R) = V²/R
つまり、3つの式は「兄弟」というより「同じ人物の別アングル写真」なんです。問題文に「電圧と電流が両方与えられているか」「電流と抵抗だけか」「電圧と抵抗だけか」で、使い分ければOK。

3兄弟の使い分け早見表(問題文を見た瞬間に決める)
試験本番では「与えられている情報」で公式を選びます。以下の早見表を頭に入れてください。
| 問題文に与えられているもの | 使う公式 | 使用シーン例 |
|---|---|---|
| 電圧 V と 電流 I | P = VI | 電源と負荷電流が直接わかっているとき |
| 電流 I と 抵抗 R | P = I²R | 電線の電力損失、ジュール熱の計算 |
| 電圧 V と 抵抗 R | P = V²/R | 電熱線・電球の消費電力 |
特に P=I²R は「送電線の電力損失」で頻出します。電線の抵抗 R は固定で、流れる電流 I が変動するため、電流が2倍になると損失は4倍(I²の効果)になる、という現象を理解する基礎公式です。

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交流回路で「cosθ」が登場する理由
ここから世界が変わります。交流になると、突然 cosθ が出てくる。これが田中さんを混乱させる最大のポイントです。
なぜ cosθ が必要なのか?(直感的理解)
交流回路では、コイルやコンデンサが入ると電圧と電流の波がズレる(位相差θができる)。このズレた状態で、単純に V × I を掛け算しても「実際に消費される電力」にならないのです。
2人で重い荷物を運ぶとき、息が合っていれば軽いけど、片方が遅れて引っ張ると力が無駄になりますよね。電圧と電流もこれと同じ。cosθ は「息の合い具合」を表す数値です。
この3つは「電力の三角形」と呼ばれる関係で結ばれています。皮相電力Sが斜辺、有効電力Pが底辺、無効電力Qが高さ。だから S² = P² + Q² が成り立ちます。

単相交流の3兄弟もある(直流との対応)
直流に「3兄弟」があったように、交流の有効電力にも3兄弟があります。ただし、抵抗だけの回路(=cosθ=1)を考えると、ほぼ直流と同じ形になります。
| 直流 | 交流(一般) | 交流(抵抗のみ) |
|---|---|---|
| P = VI | P = VI cosθ | P = VI (cosθ=1) |
| P = I²R | P = I²R (Iは実効値) |
P = I²R |
| P = V²/R | P = V²/R (Vは実効値) |
P = V²/R |
交流の P=I²R で使う I は実効値です(最大値ではない)。コンセントの100Vも、実は実効値で、最大値は約141V。実効値を使うことで、直流と同じ感覚で電力計算ができるようになっています。
「I²R」で計算するのは抵抗で消費される電力そのもの。抵抗は電圧と電流の位相が一致するので、cosθ=1 です。だから cosθ を掛ける必要がない。これは送電線の損失計算で重要な視点です。

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三相交流で「√3」が出てくる理由
最後の山場が三相交流です。突然「√3」が登場して、田中さんの頭をさらに混乱させます。
三相電力の公式は「2種類」しかない
① 線間電圧 V・線電流 I で表すとき
P = √3 × V × I × cosθ [W]
② 相電圧 Vp・相電流 Ip で表すとき
P = 3 × Vp × Ip × cosθ [W]
「線間」と「相」の使い分けがポイントです。試験では「線間電圧で表す①の式」が圧倒的によく出てきます。なぜなら、現実の三相電源は線間電圧で表記されることが多いから(「三相200V」と言ったら線間200V)。
なぜ「√3」が出てくるのか?(2行で理解)
Y結線では、線間電圧V = 相電圧Vp × √3 という関係があります。これを ② P=3×Vp×Ip×cosθ に代入すると…
= 3 × (V/√3) × Ip × cosθ ← Vp = V/√3 を代入
= (3/√3) × V × Ip × cosθ
= √3 × V × I × cosθ ← 3/√3 = √3
つまり「√3」は魔法の数字ではなく、線間と相の換算で出てくる必然の値です。Y結線の幾何学(120度ずれた3つのベクトルの合成)から自然に湧き出てきます。
三相電力の公式|P=√3VIcosθの「√3」はどこから来るのか?導出過程を完全図解 →
Y結線とΔ結線の電圧・電流の変換|「線間」と「相」の関係を一発で覚える方法 →
線間電圧と相電圧の違い|なぜY結線では√3倍になるのか →

全公式まとめ表(直流→単相→三相)
ここまでの公式を1枚の表に整理しました。試験直前に見返してください。
| 回路の種類 | 有効電力 P [W] | 無効電力 Q [var] | 皮相電力 S [VA] |
|---|---|---|---|
| 直流 | VI = I²R = V²/R | なし | なし |
| 単相交流 | VI cosθ | VI sinθ | VI |
| 三相交流 (線間表示) |
√3 VI cosθ | √3 VI sinθ | √3 VI |
| 三相交流 (相表示) |
3 Vp Ip cosθ | 3 Vp Ip sinθ | 3 Vp Ip |
① 単相と三相の違いは 「√3」がつくかどうかだけ(線間表示の場合)
② 直流→単相の違いは 「cosθ」がつくかどうかだけ
③ つまり、ベースは P=VI。あとは「直流か?三相か?」で √3 と cosθ をつけるだけ

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問題文を見て使う公式を一発判定するフローチャート
本番でパニックにならないために、思考の手順を固定化しましょう。問題文を読んだら、以下の順番でチェックします。
「直流?単相交流?三相交流?」を判定する
・「3φ」「三相」「線間電圧」と書いてあれば → 三相
・「単相」「cosθ」「力率」と書いてあれば → 単相交流
・「直流」または何も書かれていなければ → 直流
「与えられている量」を確認する
・V と I が与えられている → P=VI 系
・I と R だけ → P=I²R 系(送電損失でよく出る)
・V と R だけ → P=V²/R 系(電熱・電球)
「修飾語」を付け足す
・三相 → 先頭に「√3」を付ける(線間表示なら)
・交流 → 末尾に「cosθ」を付ける(力率があるとき)
計算実行 → 単位を確認
W、kW のスケールを間違えないこと(三相モータの定格は kW で書かれていることが多い)
工場で「200V三相、力率0.85、出力15kW」のモータを見たら、入力電流は I = P / (√3 × V × cosθ) = 15000 / (1.732 × 200 × 0.85) ≈ 51A と一発で出せます。これが式を「使える」レベルの理解です。

実際の計算例で動かしてみる
3つの典型問題で公式選択の感覚を掴みましょう。
例題1:直流(P=I²R)の使用
直流100Vの電源に、抵抗4Ωの電線を介して負荷が接続されている。負荷電流が10Aのとき、電線で発生する電力損失を求めよ。
電線の損失なので、電流 I と抵抗 R を使う P=I²R を選択。
P = I² × R = 10² × 4 = 400 W
例題2:単相交流(P=VIcosθ)
単相100V、電流20A、力率0.8の負荷の有効電力を求めよ。
単相交流で力率があるので P=VIcosθ を選択。
P = 100 × 20 × 0.8 = 1600 W = 1.6 kW
例題3:三相交流(P=√3VIcosθ)
三相200V、線電流30A、力率0.9の三相負荷の有効電力を求めよ。
三相&線間電圧&力率があるので P=√3VIcosθ を選択。
P = √3 × 200 × 30 × 0.9
= 1.732 × 200 × 30 × 0.9
≈ 9352 W ≈ 9.35 kW
√3 ≈ 1.732 は試験頻出。電卓のない試験では、計算過程で √3 のまま残し、最後に約分する形にすることが多いです。

よくある間違い・引っかけポイント
よくある間違い
- 三相なのに「√3」を付け忘れる
- 抵抗だけの回路で「cosθ」を掛けてしまう
- 線間電圧と相電圧を混同して2回 √3 を掛けてしまう
- P=I²R に cosθ を掛けてしまう
正しい考え方
- 「三相」のキーワードを見たら √3 をマーク
- 抵抗のみ → cosθ=1 なので不要
- 「線間」と書かれていたら √3 を付ける(1回だけ)
- P=I²R は「抵抗そのもの」の電力なので cosθ 不要
三相送電線の電力損失は P損失 = 3 × I² × R で計算します(3線分あるので3倍)。ここで √3 ではなく「3」が出る理由を理解しておくと、混乱しません。
まとめ:電力公式は「ベース + 修飾語」で覚える
- 電力公式のベースは P=VI。すべてここから派生する
- 直流の3兄弟(VI、I²R、V²/R)は、オームの法則を代入しただけの兄弟
- 交流になると cosθ(力率)が登場。位相のズレを補正する係数
- 三相になると √3 が登場。線間電圧と相電圧の換算で出てくる
- 問題文の「直流?単相?三相?」と「与えられている量」で公式を一発選択
電力公式は、丸暗記するものではなく「世界観の違いを理解して、必要な修飾語を付けるだけ」のものです。今日からは、過去問を解くときに「あれ、どっちだっけ?」とフリーズすることは無くなるはずです。
資格を取るだけでなく、実務でも電力公式は毎日使います。動力盤の容量選定、ケーブルサイズの決定、力率改善コンデンサの容量計算…どれも今日学んだ公式の組み合わせです。「公式を覚える」ではなく「公式と友達になる」感覚で繰り返し触れてください。
📚 次に読むべき記事
交流の全体像を体系的に学びたい方へ。学習順序がこの1記事でわかります。
三相の「√3」がなぜ出るかを、結線の幾何学から完全理解できます。
P・Q・S の関係を視覚的に整理。力率改善の実務にも直結する内容です。
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