過去問でこんな問題が出てきて、固まった経験はありませんか?
「初速度0の電子が電圧 V で加速された後、磁界 B の領域に直角に入射した。
この電子の運動半径 r を求めよ」
…公式が3つも4つも出てきて、どれを使えばいいの?
- eV = ½mv² の式が「なぜそうなるのか」がわからない
- 電界中と磁界中で電子の動きが違うのが混乱する
- 磁界中の円運動半径 r = mv/eB の意味がイメージできない
- 過去問で「加速 → 円運動」のセット問題が出ると手が止まる
- 電子の運動が「エネルギー保存」の1本の軸で繋がる
- 電界中(直線加速)と磁界中(円運動)の違いが直感でわかる
- eV=½mv²、F=eE、r=mv/eB の3公式が「何を表すか」スッキリ整理
- 過去問の典型3パターンを「型」として暗記できる
結論を先に言います。電子の運動の問題は、「電界=直線で加速」「磁界=円運動」「両方=加速してから曲がる」の3パターンしかありません。
この3つの関係を1枚の絵でイメージできれば、公式は一切丸暗記せずに導けます。この記事では、田中さん(仮名・自動車部品メーカー4年目)が試験会場で迷わないレベルまで、徹底的に図解していきます。
目次
そもそも「電子の運動」とは何か
電子は、マイナスの電荷を持った非常に小さな粒です。原子の周りを回っているあの「電子」が、真空管や半導体、ブラウン管(古いテレビ)の中で、自由に飛び回っています。
電子を動かす2つの力
電子は電界と磁界という2種類の力を受けて動きます。それぞれ動き方が全然違います。
電界 E から受ける力
- 力の向き:電界と逆向き(電子はマイナスだから)
- 電子は直線的に加速される
- 速度が変わる(=エネルギーが増える)
磁界 B から受ける力
- 力の向き:速度に常に直角
- 電子は円運動する
- 速さは変わらない(エネルギー一定)
電界は「滑り台」のイメージ。電子はその傾斜に沿って加速する。
磁界は「ハンドルを切ったまま走る車」のイメージ。スピードは変わらないけど、進路が常にカーブする。
この違いを頭に焼き付ければ、もう公式は混乱しません。

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パターン1 - 電界中の電子(直線加速)
まずは電界中の電子から。電圧 V がかかった2枚の電極の間に電子を置くと、電界の力を受けて加速します。
電子が受ける力 F = eE
F = e × E [N]
e = 電気素量(1.6×10⁻¹⁹ C)、E = 電界の強さ(V/m)
ここで使う「e」は電子1個の電荷の大きさ(電気素量)です。電子はマイナスですが、計算では大きさだけを使うことが多いので、e はプラスの値として扱います。
最重要公式:eV = ½mv²(エネルギー保存則)
この公式は電子の運動のすべての出発点です。意味を完全に理解してください。
eV = ½mv²
電界が電子に与えた仕事 = 電子の運動エネルギー
eV = 電界が電子にしてくれた仕事
電圧 V[V] の電界を、電荷 e[C] の電子が通過すると、エネルギーは eV[J] もらえる
½mv² = 電子の運動エネルギー
質量 m[kg]、速度 v[m/s] の電子が持つエネルギー
eV = ½mv² は 「ジェットコースターのエネルギー保存」と同じ。位置エネルギー(eV)が、すべて運動エネルギー(½mv²)に変わる、という話。電子も「電界の坂を滑り落ちる」と速くなるのです。
電子の最終速度を求める
eV = ½mv² を v について解くと、加速後の速度が出ます。
v = √(2eV / m)
m = 電子の質量(9.1×10⁻³¹ kg)

パターン2 - 磁界中の電子(円運動)
電子が磁界の中に入ると、進路が常に直角に曲げられて、結果的に円運動をします。
なぜ円運動になるのか
磁界中の電子はローレンツ力 F = evB を受けます。この力は速度に常に直角。だから電子は加速も減速もせず、ただ進路だけが曲がっていく。すると一定の半径で円を描くことになります。
速度に直角な力が常に働くと、進む方向が少しずつ曲がります。そのまま続けると、自然に「同じ半径の円」を描くようになる。これは「ハンドルを少し切ったまま走る車」と同じです。一定半径で旋回し続けます。
円運動半径 r = mv / eB の導出
円運動半径の式は、「ローレンツ力 = 遠心力」の釣り合いから出てきます。
ローレンツ力 = 遠心力
e × v × B = m × v² / r
両辺を整理すると…
r = mv / (eB) [m]
m=質量、v=速度、e=電気素量、B=磁束密度
円運動の周期 T と周波数 f
円運動の1周にかかる時間も覚えておきましょう。これも頻出です。
T = 2πm / (eB) [s]
f = eB / (2πm) [Hz]
注目:T も f も「速度 v に依存しない」
速度が変わると半径は変わる(r=mv/eB)けど、周期 T は変わらないんです。速い電子は大きな円、遅い電子は小さな円を描くけど、1周にかかる時間は同じ。これは「サイクロトロン共鳴」という応用技術の基礎になっています。

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パターン3 - 加速 → 円運動の合体問題(電験頻出パターン)
電験三種で最も出題されるのがこのパターンです。「電圧 V で加速した電子を、磁界 B の中に入射させたら半径 r はいくらか」という典型問題です。
解法の3ステップ
電界中で速度 v を求める(エネルギー保存)
eV = ½mv² から → v = √(2eV/m)
その速度のまま磁界に突入
磁界中では速度の大きさは変わらない。同じ v で円運動を始める。
円運動半径 r を求める
r = mv/(eB) に v を代入
→ r = (1/B) × √(2mV/e)
例題:加速→円運動の典型問題
初速度0の電子を電圧 V=200V で加速した後、磁束密度 B=2.0×10⁻³ T の磁界に直角に入射させた。この電子の円運動の半径 r を求めよ。
電気素量 e=1.6×10⁻¹⁹ C、電子の質量 m=9.1×10⁻³¹ kg。
STEP 1:電子の速度 v を求める
v = √(2eV/m) = √(2 × 1.6×10⁻¹⁹ × 200 / 9.1×10⁻³¹)
= √(7.03×10¹³) ≈ 8.4×10⁶ m/s
STEP 2:円運動半径 r を求める
r = mv/(eB) = (9.1×10⁻³¹ × 8.4×10⁶) / (1.6×10⁻¹⁹ × 2.0×10⁻³)
= 7.64×10⁻²⁴ / 3.2×10⁻²² ≈ 0.024 m = 2.4 cm
指数計算が大量に出てきて混乱しがち。10の何乗かだけ別に計算してから、最後に数値部分と合体させると、ミスが減ります。

電界と磁界の比較表(これだけ覚えればOK)
ここまでの内容を1枚の表にまとめます。試験直前のチートシートとして使ってください。
| 項目 | 電界 E 中 | 磁界 B 中 |
|---|---|---|
| 受ける力 | F = eE | F = evB |
| 力の向き | 電界と逆向き | 速度に常に直角 |
| 運動の形 | 直線で加速 | 円運動 |
| エネルギー | 変化する(eV分増える) | 変化しない(一定) |
| 主な公式 | eV = ½mv² v = √(2eV/m) |
r = mv/(eB) T = 2πm/(eB) |
| 代表的な装置 | 電子銃、加速器 | サイクロトロン、CRT |
問題文に「加速」「電圧V」が出てくる → エネルギー保存(eV=½mv²)
問題文に「磁界B」「半径r」「円運動」が出てくる → r=mv/(eB)
両方出てくる → STEP1で速度を出して、STEP2で半径を出す合体パターン

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過去問の典型3パターン
パターンA:電界中の加速だけ
電圧 V で加速された電子の最終速度 v を求めよ。
使う公式:eV = ½mv² 一発
→ v = √(2eV/m)
パターンB:磁界中の円運動だけ
速度 v で磁束密度 B の磁界に入射した電子の円運動半径 r を求めよ。
使う公式:r = mv/(eB) 一発
v が直接与えられているのでそのまま代入
パターンC:加速 → 円運動の合体問題(最頻出!)
電圧 V で加速した電子を、磁束密度 B の磁界に直角入射させた。円運動半径 r は?
STEP 1:eV=½mv² で v を出す
STEP 2:r=mv/(eB) に v を代入
→ r = (1/B) × √(2mV/e)
この「加速→円運動」は、ブラウン管テレビ・電子顕微鏡・質量分析器など実用的な装置の基礎原理です。資格試験の枠を超えて、エンジニアとして知っておくべき知識。実機を見たことがあれば「あの動作はこの公式で決まっていたのか!」と腹落ちします。

よくある間違い・引っかけポイント
よくある間違い
- 磁界中で電子が「加速する」と思い込む
- eV と ½mv² の左右を逆にする
- r=mv/(eB) の e を mc² と混同する
- m(電子の質量)を VBE のような別の量と混同
- 10⁻¹⁹ や 10⁻³¹ の指数計算でミス
正しい考え方
- 磁界中は速さ一定(向きだけ変わる)
- 左辺=もらったエネルギー、右辺=現在の運動エネ
- e=1.6×10⁻¹⁹ C は試験で与えられる
- m=9.1×10⁻³¹ kg(電子の質量)も与えられる
- 指数だけ別計算 → 最後に合算
電子の運動の問題では SI 単位系で統一(電圧=V、電界=V/m、磁束密度=T)。CGS単位など他の単位系が混ざることはないので、与えられた数値をそのまま代入すればOKです。

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電子の運動が応用される実際の装置
ここで学んだ公式は、実は身近な装置や産業機器の中で大活躍しています。背景知識として知っておくと、試験勉強のモチベーションも上がります。
| 装置 | 使われる原理 | 用途 |
|---|---|---|
| CRT(ブラウン管) | 電界で加速 + 偏向磁界で曲げる | 古いテレビ・モニタ |
| 電子顕微鏡 | 高電圧で加速した電子で観察 | ナノメートル観察 |
| 質量分析器 | 磁界中の半径から質量を逆算 | 化学分析・医療 |
| サイクロトロン | 磁界中の周期一定の特性 | 放射線治療・物理研究 |
自動車部品メーカーでも、品質保証部で材料分析する際に SEM(走査型電子顕微鏡) を使うことがあります。「加速電圧20kV」という設定は、まさに eV=½mv² の世界。電験で学んだ知識が、実務の理解を深めてくれます。

まとめ:電子の運動は「電界=直線、磁界=円」で完全攻略
- 電子は電界中で直線加速、磁界中で円運動する
- 電界中の最重要公式:eV = ½mv²(エネルギー保存)
- 磁界中の最重要公式:r = mv/(eB)(ローレンツ力=遠心力)
- 磁界中はエネルギー一定 → 速さは変わらず方向だけ曲がる
- 過去問頻出は「加速→円運動」の合体パターン。3ステップで解ける
電子の運動の問題は、見た目は複雑そうでも、結局は2つの式(eV=½mv² と r=mv/eB)を順番に使うだけです。「電界=エネルギーをもらう」「磁界=円を描く」という2つの絵を頭に焼き付ければ、もう怖くありません。
電子の運動は、半導体・電子管・分析機器の世界の入口です。資格を取った後、エンジニアとして仕事をする上で「あの装置はこの原理で動いているんだな」と理解できる土台になります。電験三種の理論科目の中でも、特に「世界の見方が変わる」分野です。
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