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こんな経験はありませんか?
- 設計レビューで「ここはブラインドビアにしよう」と言われたけど、何のことかわからずに頷いてしまった
- 基板の見積りが急に高くなって、業者に聞いたら「ベリードビアが入ってますね」と言われた
- スルーホールとビア、何がどう違うのか説明できない
- 「貫通」「非貫通」「IVH」「BVH」…用語が多すぎて混乱する
○ この記事でわかること
- スルーホールとビアの本当の違い(実は同じものを指す場合もある)
- 貫通ビア・ブラインドビア・ベリードビアの構造の違い
- 3種類のビアのコスト差(同じ基板でも価格が大きく変わる)
- 初心者がやりがちな失敗と、賢い使い分けのコツ
基板設計の世界には、似たような用語がたくさん登場します。「スルーホール」「ビア」「貫通ビア」「ブラインドビア」「ベリードビア」…正直、最初は何が何だか分からなくなりますよね。
わからなくて当然です。これらは「基板に空ける穴」の話なのですが、用途や形状によって呼び名が変わるため、初心者が混乱しやすいポイントの一つです。
穴の話の前に、プリント基板(PCB)そのものの構造(層・銅箔・絶縁材)をおさえたい場合は、PCB(プリント基板)とは?構造・作り方・種類からどうぞ。
結論を先に言います。すべての穴は「層と層をつなぐ通路」ですが、どこからどこまで貫通するかで名前が変わります。そして、貫通範囲が狭いほど高機能ですが、その分コストも跳ね上がります。この記事では、3種類のビアを完全図解で解説していきます。
そもそもビアって何?
ビア(Via)とは、多層基板の「層と層をつなぐ穴」のことです。Viaという英語には「経由する」という意味があり、まさに「電気が通り抜ける道」を意味します。
基板は1枚の板に見えますが、内部は何層もの薄い銅箔(パターン)が重なってできています。たとえば4層基板なら、表面・内層1・内層2・裏面の4つの導体層があります。これらの層をつなぐ通路がビアの役割です。
基板=マンション
多層基板は、何階建てかのマンションのようなもの。各階(層)に部屋(パターン)があります。
ビア=エレベーター
ビアは階と階をつなぐエレベーター。1階から最上階までつなぐもの、特定の階だけをつなぐもの…色々あります。
ポイント
ビアは穴の内壁にメッキ(銅)が施されており、これが導体として機能します。「ただの穴」ではなく「銅メッキされた電気の通り道」です。
ビアは層と層をつなぐエレベーター
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ビアは、層を重ねたプリント基板だからこそ必要になる穴です。基板そのものの構造は次の記事で基礎から図解しています。
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スルーホールとビアの違い(実は曖昧)
ここで多くの初心者が混乱します。「スルーホール」と「ビア」って何が違うの?という疑問です。
正直に言うと、厳密な区別はなく、現場では曖昧に使われています。ただし、一般的には次のように使い分けられることが多いです。
| 用語 |
主な用途 |
サイズ感 |
スルーホール (Through Hole) |
リード部品(DIP IC、コネクタ等)の足を挿す穴として使う |
大きい(φ0.6mm以上) |
ビア (Via) |
層間接続のためだけに使う。部品の足は挿さない |
小さい(φ0.3mm前後) |
つまり、「部品が挿さる穴」がスルーホール、「層間接続専用の小さな穴」がビアと区別されることが多いです。ただし、構造的には同じ「貫通した銅メッキ穴」なので、技術文書では「スルーホール」を「貫通ビア(PTH: Plated Through Hole)」と呼ぶこともあります。
現場の声
実務では、設計者同士で会話するときに「スルーホール」と「貫通ビア」を区別なく使う人が多いです。文脈で判断できればOK。あまり厳密に考えすぎず、「貫通する穴のこと」と理解しておけば大丈夫です。
「スルーホール」のもう1つの意味と、めっきのない穴
「スルーホール」は、部品の足を基板の穴に差してはんだ付けする実装のしかた(スルーホール実装=挿入実装)や、その部品(スルーホール部品)を指すこともあります。くわしくは表面実装と挿入実装の違いで。
また、ねじ穴のように内側にめっきをしない穴は NPTH(Non-Plated Through Hole:めっきなしの穴)と呼び、層どうしは電気的につながりません。めっきのある穴は PTH です。
スルーホールは部品を挿す穴、ビアは層間接続の穴
3種類のビアを完全図解
ここからが本題です。ビアには大きく分けて3種類あります。それぞれ「どこからどこまで貫通するか」が違います。
①
貫通ビア(Through Hole Via / PTH)
表面から裏面まで完全に貫通する穴。もっとも基本的で安価。
②
ブラインドビア(Blind Via / BVH)
表面(または裏面)から、内層までで止まる穴。外から見ると穴が「見えない(=Blind)」。
③
ベリードビア(Buried Via)
内層と内層をつなぐ穴。表面・裏面のどちらからも見えない(=Buried = 埋もれた)。
「IVH」(Interstitial Via Hole)は、基板を貫通しないビアをまとめて呼ぶ言い方で、ブラインドビアにもベリードビアにも使われます。「BVH」はブラインドビア(Blind Via Hole)のことです。
4層基板を例に、それぞれの構造を見ていきましょう。
| 種類 |
貫通範囲 |
外観 |
| 貫通ビア |
L1 ⇔ L2 ⇔ L3 ⇔ L4(全層) |
表裏両方から穴が見える |
| ブラインドビア |
L1 ⇔ L2(or L3 ⇔ L4) |
片側だけ穴が見える |
| ベリードビア |
L2 ⇔ L3 |
どちらの面からも見えない |
貫通ビア・ブラインドビア・ベリードビアの断面比較
貫通ビア(もっとも基本)
貫通ビアは、その名の通り基板を表から裏まで完全に貫通する穴です。一般に「ビア」と言ったらこれを指すことが多く、もっとも一般的・安価なビアです。
メリット
- 製造が簡単で安い(ドリルで一気に貫通させるだけ)
- すべての層に接続できるので、配線設計の自由度が高い
- ほぼすべての基板製造業者が標準対応している
デメリット
- 表面と裏面の両側を占有してしまう(部品配置の邪魔になる)
- 使わない層も貫通するため、内層パターンの自由度が下がる(スタブ問題)
- 高密度実装には不向き
ポイント
迷ったら貫通ビア。一般的な民生品・産業機器の多くは、貫通ビアだけで設計されています。コスト最優先なら貫通ビア一択です。
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ブラインドビア(片側から潜るビア)
ブラインドビアは、表面(または裏面)から内層までで止まるビアです。「ブラインド(Blind)」は「目隠し」の意味で、反対側からは穴が見えないことに由来します。
メリット
- 反対側の面が空くので、部品配置の自由度が上がる
- BGA(裏面に多数のボールがあるIC)の真下にビアを配置できる
- 高密度実装が可能になる
デメリット
- 製造コストが上がる(工程が増える分、貫通ビアより高い)
- レーザーや深さを決めて止めるドリルで開けるため、対応できる業者が限られる
- 納期が長くなる傾向がある
注意
ブラインドビアは「BGA真下」のようなどうしても貫通ビアでは配線できない場所に限定して使うのがセオリーです。何も考えずに使うとコストが跳ね上がります。
ブラインドビア:BGAの真下に置けて高密度実装向き
ベリードビア(埋もれたビア)
ベリードビアは、内層と内層だけをつなぐビアです。「ベリード(Buried)」は「埋もれた」という意味。表面からも裏面からも見えず、基板の中に埋め込まれています。
メリット
- 表面・裏面のどちらにもビアの跡が残らない
- 表裏両方を100%部品配置に使える
- 究極の高密度実装が可能
デメリット
- 製造コストが激高(内層の穴あけ・めっき・積層が増え、さらに高い)
- 内層の板に先に穴を開けてめっきし、後から外層を重ねる(積層を2回以上に分ける)工程が必要
- 少量生産には不向き
現場の声
ベリードビアが登場するのは、スマホ・ノートPC・小型カメラなど「物理的にスペースがない」製品が中心です。一般的な産業機器では、まず使うことはありません。
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3種類のコスト比較
設計者がもっとも気にすべきは、ビアの種類によって基板のコストが大きく変わるという事実です。
| 種類 |
コスト(相対) |
納期 |
対応業者 |
| 貫通ビア |
基準 |
標準 |
ほぼ全て |
| ブラインドビア |
高くなる |
長くなりやすい |
対応できる業者が限られる |
| ベリードビア |
さらに高くなる |
さらに長くなりやすい |
さらに限られる |
コスト感を具体的にイメージしてもらうため、同じ4層基板(100mm×100mm)を100枚作る場合の考え方を示します。金額は層数・板厚・数量・基板メーカーで大きく変わるので、必ず見積りで確かめてください。
注意
「設計の自由度」と「コスト」はトレードオフです。後輩から「ブラインドビアにしたいです」と言われたら、まず「貫通ビアでは設計できないのか」を必ず確認してください。
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使い分けの判断フロー
3種類のビアをどう使い分ければいいか、判断フローで整理します。
Q1
その基板、本当に高密度実装が必要ですか?
YES → Q2へ / NO → 貫通ビアでOK
Q2
BGAなど、貫通ビアでは配線できない部品がある?
YES → Q3へ / NO → 貫通ビアで再検討
Q3
表裏両面とも、ビアの跡を完全になくしたい?
YES → ベリードビアを検討 / NO → ブラインドビアで十分
ポイント
鉄則は「貫通ビアで設計できないか、最後まで粘る」こと。ブラインド・ベリードは「貫通では絶対に解決できない問題」が出たときの最終手段です。
ビアの使い分けの判断フロー:貫通・ブラインド・ベリード
パワエレ基板で気をつけたいビアの使い方
パワーエレクトロニクス(パワエレ)の基板では、ビアにもう一つ重要な役割があります。それが「電流容量」と「放熱」です。
電流容量の問題
信号系の基板では、ビアは「信号を通すだけ」なので1個で十分です。でもパワエレでは、1個のビアでは電流が流せないことがあります。
たとえば、φ0.3mmの貫通ビア1個の電流容量は約1〜2A程度。10A流したい場合は、複数のビアを並列に配置する必要があります。
放熱の問題
パワーMOSFETやIGBTなどの発熱部品の真下にビアを配置することで、表面の熱を裏面(または内層)に逃がすことができます。これを「サーマルビア」と呼びます。
現場の声
サーマルビアの本数が足りないと、部品が熱で死にます。「ビアは小さい穴」と思って軽視せず、電流容量と放熱の両方を計算するのがパワエレ設計の鉄則です。
サーマルビアで部品の熱を裏面の銅ベタへ逃がす
初心者がやりがちな失敗
失敗①:気軽にブラインドビアを使ってコストが跳ね上がる
「設計が楽だから」という理由でブラインドビアを多用すると、見積りで青ざめます。必要な場所だけに限定するのが鉄則です。
失敗②:パワエレでビアを1個しか配置しない
信号系の感覚でビア1個にすると、大電流でビアが焼損します。発熱部・大電流部は必ず複数ビアの並列配置にしましょう。
失敗③:ビアを部品のランド(パッド)の真上に配置する
SMD部品のハンダ付けランドの真上にビアを配置すると、ハンダがビアの中に吸い込まれて、部品が浮く・接続不良になります。「Via in Pad」と呼ばれる特殊技術が必要で、追加コストがかかります。
注意
ビアの配置は、回路図には現れません。アートワーク段階で初めて発生する設計判断です。だから「回路図ができたから半分終わり」ではなく、ここから本番なのです。
大電流を流すビアは、1個に流せる電流から本数を決めます。
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1個何A?抵抗・発熱の計算と配置
まとめ|ビアは「層をつなぐエレベーター」
この記事のポイント
- ビア=多層基板の「層と層をつなぐ穴」。マンションのエレベーター
- スルーホールと貫通ビアはほぼ同義。文脈で判断
- 貫通ビア:表裏完全貫通。安価・自由度高・標準仕様
- ブラインドビア:片側から内層まで。BGA真下などに使う。コストは高め
- ベリードビア:内層同士のみ接続。スマホなど超高密度向け。コストはさらに高め
- 使い分けの鉄則は「貫通ビアで粘る」。それで無理なときだけブラインド・ベリードを検討
- パワエレでは電流容量と放熱を意識して、複数ビアの並列配置が基本
ビアは小さな穴ですが、基板設計の世界ではコスト・性能・信頼性すべてに影響する重要な要素です。次回の設計レビューで「ブラインドビアにしよう」と言われたら、もう困りません。「貫通ビアでは設計できないんですか?」と冷静に切り返せるはずです。
次に迷う点次に迷いやすいのは「ビア1個で何Aまで流せるか、何個並べればよいか」です。計算のしかたはビアの電流容量と本数の決め方で。
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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