基板設計

【完全図解】スルーホール・ビア・ブラインドビアの違い|「貫通する穴」と「隠れた穴」の使い分け

😣 こんな経験はありませんか?
  • 設計レビューで「ここはブラインドビアにしよう」と言われたけど、何のことかわからずに頷いてしまった
  • 基板の見積りが急に高くなって、業者に聞いたら「ベリードビアが入ってますね」と言われた
  • スルーホールとビア、何がどう違うのか説明できない
  • 「貫通」「非貫通」「IVH」「BVH」…用語が多すぎて混乱する
✅ この記事でわかること
  • スルーホールとビアの本当の違い(実は同じものを指す場合もある)
  • 貫通ビア・ブラインドビア・ベリードビアの構造の違い
  • 3種類のビアのコスト差(同じ基板でも価格が2〜3倍変わる)
  • 初心者がやりがちな失敗と、賢い使い分けのコツ

基板設計の世界には、似たような用語がたくさん登場します。「スルーホール」「ビア」「貫通ビア」「ブラインドビア」「ベリードビア」…正直、最初は何が何だか分からなくなりますよね。

わからなくて当然です。これらは「基板に空ける穴」の話なのですが、用途や形状によって呼び名が変わるため、初心者が混乱しやすいポイントの一つです。

結論を先に言います。すべての穴は「層と層をつなぐ通路」ですが、どこからどこまで貫通するかで名前が変わります。そして、貫通範囲が狭いほど高機能ですが、その分コストも跳ね上がります。この記事では、3種類のビアを完全図解で解説していきます。

そもそもビアって何?

ビア(Via)とは、多層基板の「層と層をつなぐ穴」のことです。Viaという英語には「経由する」という意味があり、まさに「電気が通り抜ける道」を意味します。

基板は1枚の板に見えますが、内部は何層もの薄い銅箔(パターン)が重なってできています。たとえば4層基板なら、表面・内層1・内層2・裏面の4つの導体層があります。これらの層をつなぐ通路がビアの役割です。

🏢

基板=マンション

多層基板は、何階建てかのマンションのようなもの。各階(層)に部屋(パターン)があります。

🛗

ビア=エレベーター

ビアは階と階をつなぐエレベーター。1階から最上階までつなぐもの、特定の階だけをつなぐもの…色々あります。

💡 ポイント
ビアは穴の内壁にメッキ(銅)が施されており、これが導体として機能します。「ただの穴」ではなく「銅メッキされた電気の通り道」です。

🔰 CADを触る前に知っておくべき「基板作りの基本」を網羅。
初めての基板設計から実装まで、手順に迷子にならないための分かりやすい入門書はこちら👇

スルーホールとビアの違い(実は曖昧)

ここで多くの初心者が混乱します。「スルーホール」と「ビア」って何が違うの?という疑問です。

正直に言うと、厳密な区別はなく、現場では曖昧に使われています。ただし、一般的には次のように使い分けられることが多いです。

用語 主な用途 サイズ感
スルーホール
(Through Hole)
リード部品(DIP IC、コネクタ等)の足を挿す穴として使う 大きい(φ0.6mm以上)
ビア
(Via)
層間接続のためだけに使う。部品の足は挿さない 小さい(φ0.3mm前後)

つまり、「部品が挿さる穴」がスルーホール、「層間接続専用の小さな穴」がビアと区別されることが多いです。ただし、構造的には同じ「貫通した銅メッキ穴」なので、技術文書では「スルーホール」を「貫通ビア(PTH: Plated Through Hole)」と呼ぶこともあります。

🔧 現場の声
実務では、設計者同士で会話するときに「スルーホール」と「貫通ビア」を区別なく使う人が多いです。文脈で判断できればOK。あまり厳密に考えすぎず、「貫通する穴のこと」と理解しておけば大丈夫です。

3種類のビアを完全図解

ここからが本題です。ビアには大きく分けて3種類あります。それぞれ「どこからどこまで貫通するか」が違います。

貫通ビア(Through Hole Via / PTH)
表面から裏面まで完全に貫通する穴。もっとも基本的で安価。

ブラインドビア(Blind Via / BVH)
表面(または裏面)から、内層までで止まる穴。外から見ると穴が「見えない(=Blind)」。

ベリードビア(Buried Via / IVH)
内層と内層をつなぐ穴。表面・裏面のどちらからも見えない(=Buried = 埋もれた)。

4層基板を例に、それぞれの構造を見ていきましょう。

種類 貫通範囲 外観
貫通ビア L1 ⇔ L2 ⇔ L3 ⇔ L4(全層) 表裏両方から穴が見える
ブラインドビア L1 ⇔ L2(or L3 ⇔ L4) 片側だけ穴が見える
ベリードビア L2 ⇔ L3 どちらの面からも見えない

貫通ビア(もっとも基本)

貫通ビアは、その名の通り基板を表から裏まで完全に貫通する穴です。一般に「ビア」と言ったらこれを指すことが多く、もっとも一般的・安価なビアです。

メリット

  • 製造が簡単で安い(ドリルで一気に貫通させるだけ)
  • すべての層に接続できるので、配線設計の自由度が高い
  • ほぼすべての基板製造業者が標準対応している

デメリット

  • 表面と裏面の両側を占有してしまう(部品配置の邪魔になる)
  • 使わない層も貫通するため、内層パターンの自由度が下がる(スタブ問題)
  • 高密度実装には不向き
💡 ポイント
迷ったら貫通ビア。一般的な民生品・産業機器の8〜9割はこれだけで設計されています。コスト最優先なら貫通ビア一択です。

🚀 入門書を読み終え、いざ実務レベルの基板設計へ!
もう一段上の「ノイズに強い・熱がこもらない」プロの設計手法を身につける実践集はこちら👇

\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

ブラインドビア(片側から潜るビア)

ブラインドビアは、表面(または裏面)から内層までで止まるビアです。「ブラインド(Blind)」は「目隠し」の意味で、反対側からは穴が見えないことに由来します。

メリット

  • 反対側の面が空くので、部品配置の自由度が上がる
  • BGA(裏面に多数のボールがあるIC)の真下にビアを配置できる
  • 高密度実装が可能になる

デメリット

  • 製造コストが上がる(貫通ビアの1.5〜2倍)
  • レーザー加工が必要で、対応できる業者が限られる
  • 納期が長くなる傾向がある
⚠️ 注意
ブラインドビアは「BGA真下」のようなどうしても貫通ビアでは配線できない場所に限定して使うのがセオリーです。何も考えずに使うとコストが跳ね上がります。

ベリードビア(埋もれたビア)

ベリードビアは、内層と内層だけをつなぐビアです。「ベリード(Buried)」は「埋もれた」という意味。表面からも裏面からも見えず、基板の中に埋め込まれています。

メリット

  • 表面・裏面のどちらにもビアの跡が残らない
  • 表裏両方を100%部品配置に使える
  • 究極の高密度実装が可能

デメリット

  • 製造コストが激高(貫通ビアの2〜3倍)
  • 内層を先に作って穴を開け、後から外層を貼り合わせる「ビルドアップ工法」が必要
  • 少量生産には不向き
🔧 現場の声
ベリードビアが登場するのは、スマホ・ノートPC・小型カメラなど「物理的にスペースがない」製品が中心です。一般的な産業機器では、まず使うことはありません。

💡 目に見えないスイッチングや波形の動きを、フルカラーで完全可視化。
数式だらけの専門書で挫折する前に読みたい、パワエレを「直感的に」理解できる決定版はこちら👇

¥2,228 (2026/02/21 14:41時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

3種類のコスト比較

設計者がもっとも気にすべきは、ビアの種類によって基板のコストが2〜3倍変わるという事実です。

種類 コスト(相対) 納期 対応業者
貫通ビア ★(1.0倍) 標準 ほぼ全て
ブラインドビア ★★(1.5〜2倍) +1週間 中〜大規模業者
ベリードビア ★★★(2〜3倍) +2週間以上 大規模業者のみ

コスト感を具体的にイメージしてもらうため、同じ4層基板(100mm×100mm)を100枚作る場合の概算を示します(業者・条件で大きく変わります)。

💴
貫通のみ
約5〜10万円
💴💴
+ブラインド
約10〜20万円
💴💴💴
+ベリード
約20〜30万円
⚠️ 注意
「設計の自由度」と「コスト」はトレードオフです。後輩から「ブラインドビアにしたいです」と言われたら、まず「貫通ビアでは設計できないのか」を必ず確認してください。

使い分けの判断フロー

3種類のビアをどう使い分ければいいか、判断フローで整理します。

Q1

その基板、本当に高密度実装が必要ですか?
YES → Q2へ / NO → 貫通ビアでOK

Q2

BGAなど、貫通ビアでは配線できない部品がある?
YES → Q3へ / NO → 貫通ビアで再検討

Q3

表裏両面とも、ビアの跡を完全になくしたい?
YES → ベリードビアを検討 / NO → ブラインドビアで十分

💡 ポイント
鉄則は「貫通ビアで設計できないか、最後まで粘る」こと。ブラインド・ベリードは「貫通では絶対に解決できない問題」が出たときの最終手段です。

パワエレ基板で気をつけたいビアの使い方

パワーエレクトロニクス(パワエレ)の基板では、ビアにもう一つ重要な役割があります。それが「電流容量」と「放熱」です。

電流容量の問題

信号系の基板では、ビアは「信号を通すだけ」なので1個で十分です。でもパワエレでは、1個のビアでは電流が流せないことがあります。

たとえば、φ0.3mmの貫通ビア1個の電流容量は約1〜2A程度。10A流したい場合は、複数のビアを並列に配置する必要があります。

放熱の問題

パワーMOSFETやIGBTなどの発熱部品の真下にビアを配置することで、表面の熱を裏面(または内層)に逃がすことができます。これを「サーマルビア」と呼びます。

🔧 現場の声
サーマルビアの本数が足りないと、部品が熱で死にます。「ビアは小さい穴」と思って軽視せず、電流容量と放熱の両方を計算するのがパワエレ設計の鉄則です。

初心者がやりがちな失敗

失敗①:気軽にブラインドビアを使ってコストが跳ね上がる

「設計が楽だから」という理由でブラインドビアを多用すると、見積りで青ざめます。必要な場所だけに限定するのが鉄則です。

失敗②:パワエレでビアを1個しか配置しない

信号系の感覚でビア1個にすると、大電流でビアが焼損します。発熱部・大電流部は必ず複数ビアの並列配置にしましょう。

失敗③:ビアを部品のランド(パッド)の真上に配置する

SMD部品のハンダ付けランドの真上にビアを配置すると、ハンダがビアの中に吸い込まれて、部品が浮く・接続不良になります。「Via in Pad」と呼ばれる特殊技術が必要で、追加コストがかかります。

⚠️ 注意
ビアの配置は、回路図には現れません。アートワーク段階で初めて発生する設計判断です。だから「回路図ができたから半分終わり」ではなく、ここから本番なのです。

まとめ|ビアは「層をつなぐエレベーター」

📌 この記事のポイント
  • ビア=多層基板の「層と層をつなぐ穴」。マンションのエレベーター
  • スルーホール貫通ビアはほぼ同義。文脈で判断
  • 貫通ビア:表裏完全貫通。安価・自由度高・標準仕様
  • ブラインドビア:片側から内層まで。BGA真下などに使う。コスト1.5〜2倍
  • ベリードビア:内層同士のみ接続。スマホなど超高密度向け。コスト2〜3倍
  • 使い分けの鉄則は「貫通ビアで粘る」。それで無理なときだけブラインド・ベリードを検討
  • パワエレでは電流容量と放熱を意識して、複数ビアの並列配置が基本

ビアは小さな穴ですが、基板設計の世界ではコスト・性能・信頼性すべてに影響する重要な要素です。次回の設計レビューで「ブラインドビアにしよう」と言われたら、もう困りません。「貫通ビアでは設計できないんですか?」と冷静に切り返せるはずです。

📚 次に読むべき記事

📘 【入門】パワエレ基板設計の全体像|信号基板との違いを理解する →

基板設計の全体像を学べる入門記事。基礎を固めたい方はこちらから。

📘 【保存版】ビアの電流容量と本数の決め方|計算と配置の全手順 →

ビアの本数を計算で決めるための実践記事。パワエレ設計者必読。

📘 サーマルビアの設計|放熱パッドからどう熱を逃がすか →

パワー部品の熱を逃がすサーマルビアの設計手法を完全解説。

📘 【完全図解】基板の層構成の決め方|2層・4層・6層をどう使い分けるか →

層構成によってビアの選択肢が変わります。セットで読みたい記事。

📘 サーマルリリーフとベタ接続の使い分け|はんだ付け性と放熱のトレードオフ →

ビアやランドの「ベタ接続」周りの設計判断について深掘り。

📘 【完全図解】プリント基板(PCB)とは?|電子部品をのせる「土台」の正体 →

そもそも基板の構造から学びたい方は、まずこの記事へ。

タグ

-基板設計