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前回の記事では「大電流基板で避けるべき設計ミス5選」を扱いました。その中で「ビアの本数不足で焼損」という話が出てきましたね。
今回扱う サーマルビア は、それと似ているようで、目的がまったく違います。
普通のビアは「電気を流す」のが仕事ですが、サーマルビアの仕事は「熱を逃がす」こと。同じ「ビア」でも、設計の考え方が変わります。
この記事では、ICの放熱パッドからの熱をどう内層GNDへ逃がすか、その設計のコツを「家の換気口」のたとえで完全図解していきます。
そもそもサーマルビアって何?=「熱の通り道」
サーマルビアとは、文字通り 「熱(thermal)を逃がすためのビア」 です。ICの裏側にある放熱パッド(=ICの中で発生した熱を基板に逃がすための金属露出面)と、内層や裏面のGNDプレーンを銅で繋ぎ、熱の通り道を作るのが役割です。
「家の換気口」をイメージしてください
夏場、エアコンのない部屋で料理をすると、室温がどんどん上がりますよね。窓を開けて換気口を作れば、熱が外へ逃げて快適になります。
サーマルビアも同じです。
ICの中で発生した熱は、放熱パッドという「熱源」に集まります。そのままでは熱は基板上層に閉じ込められて、IC自身の温度を上げてしまう。
そこで、サーマルビアという「下層への換気口」を開けて、内層GNDや裏面銅箔という「広い放熱の海」へ熱を逃がしてあげるのです。
![普通のビアとサーマルビアの違いの図。普通のビアは電気を流し設計指標は電流容量[A]、サーマルビアは複数を並べてICの熱をGNDプレーンへ逃がし設計指標は熱抵抗[℃/W]](https://shirasusolo.net/wp-content/uploads/2026/04/image-607-205-1024x1024.jpg)
サーマルビア1本がどれくらい熱を逃がせるか?
設計の前に、まず「ビア1本の実力」を知っておきましょう。
標準的なサーマルビア(ビア径φ0.3mm、ビア長1.6mm、銅メッキ厚25μm)の熱抵抗は約60〜100℃/Wです。「ビア1本で1Wの熱を流すと、約60〜100℃の温度差が生まれる」という意味になります。
つまり、ビア9本並列にすると熱抵抗は 約7〜11℃/W まで下がる、という計算になります。
| ビア本数 | 合成熱抵抗(目安) | 用途の例 |
|---|---|---|
| 1本 | 約60〜100℃/W | 小信号IC・低発熱(〜0.3W) |
| 9本(3×3) | 約7〜11℃/W | レギュレータ・小型LDO(〜2W) |
| 25本(5×5) | 約2.4〜4℃/W | DC-DCコンバータ(〜5W) |
| 49本(7×7) | 約1.2〜2℃/W | パワーMOSFET・大型IC(5W以上) |

ビア径とピッチはどう決める?
本数と並んで悩むのが、ビア径とピッチ(ビア間隔)です。それぞれの基本ルールを押さえましょう。
ビア径=φ0.3mmが標準。大きすぎても問題
「径を大きくすれば熱抵抗が下がるはず」と考えがちですが、ここに落とし穴があります。
大きいビアは、はんだリフロー時に 溶けたはんだが穴を伝って裏面へ抜けて行ってしまう 現象(ソルダーボイド・ソルダースルー)を起こします。結果、放熱パッドのはんだが足りなくなり、肝心の「IC↔パッドの熱伝達」が悪化する。本末転倒です。
ピッチ=1.0〜1.2mmが目安
ピッチ(ビアとビアの中心間距離)は、密にしすぎても効果が頭打ちになります。
| ピッチ | 特徴 |
|---|---|
| 0.6〜0.8mm | 密。効果は若干上がるが製造難度UP・コスト増 |
| 1.0〜1.2mm | 標準。熱性能・製造性のバランス◎ |
| 1.5mm以上 | 疎すぎ。本数が増えても効果が分散する |
ピッチが広すぎると、放熱パッド内に「熱が逃げない場所」ができて、その下のICの一部だけが集中的に熱くなることもあります。「均等に並べる」のが鉄則です。

内層GNDへの接続=「広い海」を用意する
サーマルビアで頑張って熱を内層に降ろしても、内層側のGNDが貧弱だとそこで熱が滞留します。下水管を太くしても、下水処理場が小さければ詰まるのと同じ。
サーマルビアの設計は「ビアそのもの」だけでなく、接続先のGNDプレーンの広さもセットで考えましょう。

サーマルビア設計の落とし穴3選
「ビアの本数を増やせばOK」と思っていると、痛い目に遭います。実際の現場でよく見る3つの落とし穴を紹介します。
落とし穴①:ビア径が大きすぎてはんだが抜ける
前述の通り、φ0.5mm以上のビアを放熱パッドに置くと、リフロー時にはんだが裏面へ流れていきます。結果、放熱パッドのはんだ層が薄くなって 熱伝達が悪化。本末転倒の典型例です。
対策は、ビア径φ0.2〜0.3mmを守るか、ビア埋め(filled via / capped via)仕様にすることです。
落とし穴②:内層GNDがブツ切り
「内層にもサーマルビアを通したぞ!」と安心していたら、内層のGNDが他の配線で分断されていて、熱が広がらなかった――というケース。
必ず内層GNDの「ベタの広さ」を確認してください。サーマルビアの直下が細い島になっていたら、いくらビアを増やしても効果は出ません。
落とし穴③:パッドの外側にビアを打つ
「ビアをはんだの邪魔にしないように」と、放熱パッドの外側にビアを並べるケースをたまに見ます。これではせっかくの熱が、パッドからビアまで遠回りすることになります。
サーマルビアは 放熱パッドの「中」 に配置するのが大原則です。はんだの問題はビア径やビア埋めで対処すべきで、配置を犠牲にしてはいけません。

放熱パッド(Exposed Pad)側の設計|パターン・はんだの塗り方・ボイド
QFN・DFNやパワーパッケージの裏にある金属面(Exposed Pad・Thermal Pad)は、チップの熱を基板に流す一番の通り道です。サーマルビアはその先の通り道なので、パッド側の作り方を間違えると、ビアをいくら打っても熱が逃げません。
パターンの4つの原則
はんだペーストは「全面ベタ塗り」にしない
広いパッドにペーストを全面に塗ると、リフローのときにフラックスから出るガスの逃げ場がなくなり、はんだの中に空洞(ボイド)が残りやすくなります。そこで、メタルマスクの開口を市松・格子・スリットなどに分けて、合計の塗布量をパッドより少なめにするのが一般的です。多くのデータシートに、推奨の開口(Stencil Aperture)が載っています。
| 分け方 | 特徴 |
|---|---|
| 市松(チェッカー) | ガスが抜けやすく、推奨されることが多い |
| 格子(ビアの間に塗る) | ビアの配置と合わせやすい。ビアの真上を避けられる |
| スリット(縞) | 作りやすいが、ガスの抜けは市松にやや劣る |
ビアの真上にペーストを塗ると、溶けたはんだがビアに吸い込まれてパッドのはんだが足りなくなります。塗る場所をビアから外すか、ビアを樹脂で埋めてふたをする仕様(埋めビア・Via-in-Pad)で発注します。埋めビアは費用が上がるので、必要な所だけに使います。
サーマルリリーフとベタ接続の使い分け
サーマルビアやパッドを内層・表層のベタ(銅で塗りつぶした面)につなぐとき、全面でつなぐ(ベタ接続)か、細い数本の橋でつなぐ(サーマルリリーフ)かを選びます。ここは「放熱」と「はんだ付けのしやすさ」の引き換えです。
放熱が目的のサーマルビアや放熱パッドは、ベタ接続が基本です。そのかわり、はんだ付けの条件(予熱・リフローの温度プロファイル・手はんだのこて先の熱容量)を製造部門と事前にすり合わせます。CADの設定はベタへの接続をまとめてサーマルリリーフにしてしまうことがあるので、放熱させたいパッドが細い橋になっていないかを必ず目で確かめます。
サーマルビア設計の手順=4ステップで完成
ここまでの話を、設計の手順としてまとめます。
![サーマルビア設計の4ステップの図。発熱量Pd[W]を確認、必要熱抵抗を計算、ビア本数を決める、φ0.3mm/ピッチ1.0mmで配置](https://shirasusolo.net/wp-content/uploads/2026/04/image-607-210-1024x485.jpg)
まとめ=サーマルビアは「熱の換気口」
今日の話を整理します。
サーマルビアの設計は、地味ですがパワーIC・MOSFET・LED系基板の寿命と信頼性に直結します。「ビアを9本並べておけばOK」という思い込みを今日で卒業して、熱抵抗ベースで設計できるようになりましょう。
次回は、サーマルビアと並んで重要な「放熱パッド・ヒートシンクの設計」について、より広い視点から解説していきます。お楽しみに。


