基板設計

SMDとDIPとは?表面実装と挿入実装の違いと使い分け|チップ部品のサイズとICパッケージ

表面実装(SMD)と挿入実装(DIP)の違い。「のせる部品」と「差す部品」の使い分け

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こんな経験はありませんか?
  • 基板を見ると、部品の付き方が2種類ある。「足が出てる部品」と「板にペタっとくっついてる部品」、何が違うの?
  • 「SMD」「DIP」「チップ部品」「リード部品」…用語が多すぎて混乱する
  • 設計レビューで「これSMDで行けない?」と聞かれたけど、選び方の基準がわからない
  • 古い基板は「足の長い部品」ばかりなのに、新しい基板は「板にペタっと」ばかりなのはなぜ?
○ この記事でわかること
  • SMD(表面実装)とDIP(挿入実装)の構造的な違い
  • なぜ最近の基板はSMDが主流なのか、その本質的な理由
  • SMDとDIP、それぞれが活躍する場面と使い分けの基準
  • 初心者が知っておくべき、それぞれのメリット・デメリット

スマホの中の基板と、昔のラジオやおもちゃの基板を見比べたことはありますか。同じ「電子基板」なのに、部品の付き方が全然違うんです。

最近のスマホやノートPCの基板は、米粒みたいな小さい部品が「板の上にペタッとのせられている」。一方で昔の家電や工作キットでは、足の長い部品が「板に挿さって裏で半田付けされている」。これがSMDとDIPの違いです。

結論を先に言います。SMDは「のせる部品」、DIPは「差す部品」です。今の基板設計では多くの部品がSMDですが、DIPにも明確な活躍場所があります。この記事では、両者の違いを完全図解で解説します。

SMDとは・DIPとは(用語の早見表)
言葉読み・正式名意味
SMDSurface Mount Device表面実装部品。基板の表面のランドにのせてはんだ付けする部品。チップ部品・面実装部品とも呼ぶ
SMTSurface Mount TechnologySMDを基板に付ける技術(表面実装)
DIP(ディップ)Dual In-line Package足(ピン)が2列に並んだ、穴に差すICの形。広い意味で挿入部品全体を指すこともある
THTThrough Hole Technology基板の穴に足を差してはんだ付けする実装(挿入実装)
リード部品(挿入部品)—足(リード線)を穴に差して付ける部品。抵抗・電解コンデンサ・コネクタなど

ほかの分野でも同じ言葉が出てきます。「SMD LED」は表面実装の形のLED、「DIPスイッチ」はDIPの形の小さなスイッチ(今は表面実装の品もあります)のことです。

SMDとDIPの基本的な違い

まずは用語を整理しましょう。両者は実装方法(部品の取り付け方)の違いです。

用語 正式名称 意味
SMD Surface Mount Device
(表面実装部品)
基板の表面にのせて半田付けする部品
SMT Surface Mount Technology
(表面実装技術)
SMDを実装する技術全般を指す
DIP Dual In-line Package
(デュアルインラインパッケージ)
2列に足が並んだ挿入型のIC。広い意味でリード部品全般を指すことも
THT Through Hole Technology
(スルーホール実装技術)
基板に穴を開けて足を差し込む実装方法
注意
厳密には「DIP」はICの一種類を指す用語です。でも現場では「DIP=リード部品全般」として使われがち。会話では「挿入実装の部品ね」と理解すればOKです。

この記事ではわかりやすさ優先で、SMD = 表面実装、DIP = 挿入実装として解説していきます。

SMDとDIPを寿司にたとえた図。SMDは握り寿司のように基板にのせ、DIPは串団子のように基板に差す
SMDは「のせる」握り寿司、DIPは「差す」串団子

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表面実装か挿入実装かは、基板の部品配置にも関わります。パワエレ基板で最初に決める配置のルールは次の記事で。

部品配置の鉄則|パワエレ基板で最初に決めるべき3つのこと
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見た目と構造の違い

両者の最大の違いは、「基板への取り付け方」です。

SMD(表面実装)

「のせる部品」

  • 基板の表面に直接のせる
  • 足は短いか、ほぼない(ランドに直接接する)
  • 基板に穴を開けない
  • 表裏どちらにも実装できる
  • サイズが極めて小さい(米粒〜砂粒サイズ)

DIP(挿入実装)

「差す部品」

  • 基板に穴を開けて足を差し込む
  • 足が長く、裏面で半田付け
  • 基板の表裏を貫通する
  • 片面(差した側)にしか実装できない
  • サイズが大きい(小指の先〜数cm)
ポイント
覚え方は簡単。DIPは「差し込む」、SMDは「のせる」。穴があるかないかでも見分けられます。
SMD実装とDIP実装の断面図。SMDはランドにはんだフィレットで付けて穴がなく両面に実装でき、DIPはリードピンを貫通穴に通して裏面ではんだ付けし片面しか実装できない
SMDとDIPの断面:穴なしで両面か、貫通穴で片面か

寿司に例えるとイメージしやすい

SMDとDIPの違いを、寿司に例えてみます。

SMD = 握り寿司

ネタ(部品)をシャリ(基板)の上にのせるだけ。

シャリには穴を開けない。だから両面使える。回転寿司のように高速で大量生産可能。

DIP = 串団子

団子(部品)に串を通して、台に差し込んで固定。

串が貫通するので片面のみ。でも一度差したら頑丈で、グラグラしない。

製造業の現場で考えると、もっとわかりやすいです。SMDは「自動機での量産向き」。マウンタという機械が部品を一つずつ吸着し、基板に高速でポンポン置いていきます。高速な機械では1時間に数万個の部品を置けるものもあります(機種による)。

一方、DIPは「手作業や人手が必要」な工程が多い。部品の足を曲げて、基板の穴に通して、裏でハンダ付けする。SMDより圧倒的に時間がかかります。

現場の声
量産の実装ラインでは、SMDの自動実装は、手作業の挿入よりずっと速いのがふつうです。1個あたりの時間はラインや部品で大きく変わりますが、生産量が多いほど差は大きくなります。
SMDとDIPの生産速度の違いの図。SMDはテープリールから自動機で1個1秒以下で実装して量産向き、DIPは手作業中心で数秒/個かかり小ロットや試作向き
SMDは自動機で量産、DIPは手作業中心

それぞれのメリット・デメリット

SMD(表面実装)のメリット・デメリット

メリット ○ デメリット ×
部品が小型 → 基板を小さくできる 小さすぎて手作業修理が困難
表裏両面に実装可 → 高密度化 機械的強度がDIPより弱い
自動機で超高速生産可能 熱・振動に弱いものもある
配線が短い → 高周波特性が良い 大電流・高耐圧の部品は少ない
基板に穴が要らない → コスト削減 試作・修理時の交換が大変

DIP(挿入実装)のメリット・デメリット

メリット ○ デメリット ×
機械的に頑丈(足が穴を貫通) 部品が大きい → 基板も大きくなる
大電流・高耐圧に対応しやすい 足が裏に出るので、その場所の裏は使えない
手作業で半田付け・修理しやすい 自動化が難しく、生産コスト高
熱・振動に強い 基板に穴が必要 → コスト増
試作・教育用として扱いやすい 配線が長い → 高周波特性が劣る
基板の断面図。SMDは表と裏の両方に置ける。挿入部品の足とはんだが出る所の裏は使えないが、それ以外の裏にはSMDを置ける
SMDなら基板の表と裏の両面に実装できる

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なぜ最近の基板はSMDだらけなのか

スマホ・PC・テレビ・自動車の電子部品…現代の基板はほぼSMDで構成されています。なぜでしょうか。理由は3つあります。

理由①

製品の小型化要求
スマホ・ウェアラブル機器・小型センサ…現代製品は「とにかく小さくしたい」。SMDなら基板面積を大きく小さくできる。

理由②

大量生産のコストメリット
自動機での実装が前提。高速な自動実装で、人件費を大きく減らせる。家電や自動車のような量産品ではこれが死活問題。

理由③

高速・高周波対応
SMDは配線が短いため、寄生インダクタンスが小さい。GHz帯の高速通信や高周波回路では必須。

特に注目すべきは「人件費の影響」。30年前の家電は基板上のDIPを人が一つずつ手でハンダ付けしていました。でも今、それでは中国・東南アジアの製品にコストで勝てません。SMD化+自動機化はもはや選択肢ではなく必須なのです。

現場の声
量産品の「コストダウン会議」では、よく「DIP→SMDへの置き換え」が議題に上がります。それくらい、製造コストへの影響が大きいのです。
スルーホール・ビア・ブラインドビアの違い|3種類の構造とコストを図解
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スルーホール・ビア・ブラインドビアの違い

SMDチップ部品のサイズ規格の図。3216(1206)、2012(0805)、標準の1608(0603)、1005(0402)、0603(0201)で、1608は米粒の長さの約1/3
SMDチップ部品のサイズ:3216から0603まで

それでもDIPが残っている場面

SMDが主流になった今でも、DIPには明確な活躍場所があります。適材適所で使い分けられているのです。

① 大電流・高耐圧の部品

パワエレで使うパワートランジスタ、大容量電解コンデンサ、リレーなどはDIPが主流です。物理的に大きく、SMDではパッケージに収まりません。

② コネクタ・端子台

外部ケーブルが何度も抜き差しされるコネクタ類はDIPが基本。SMDでは機械的強度が足りず、抜き差しで壊れます。

③ スイッチ類・大型部品

人が指で操作するスイッチ・ボタン・可変抵抗(ボリューム)も、押す力に耐える必要があるためDIPが多いです。

④ 試作・教育用基板

ブレッドボードや学校の電子工作キットではDIPが圧倒的に扱いやすい。手で挿せて、半田付けも目視で確認できます。

ポイント
実は、現代の基板はほとんどがSMDとDIPの混在実装です。基本はSMDで、大電流部品やコネクタだけDIPを使う。これがプロの設計です。
DIPが残り続ける4つの場面の図。大電流・高耐圧部品、コネクタ・端子台、スイッチ・操作部品、試作・教育用
DIPが今も使われる4つの場面

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選び方の判断フロー

迷ったときの判断フローをまとめました。

Q1

その部品、SMD版が存在しますか?
NO → DIP一択(選択肢なし)
YES → Q2へ

Q2

大電流(数A以上)または高耐圧(数百V以上)が必要?
YES → DIPを優先検討
NO → Q3へ

Q3

外部接続(コネクタ)または人が操作する部品?
YES → DIPを優先(機械的強度のため)
NO → Q4へ

Q4

量産品ですか?
YES → SMDがおすすめ(コスト・サイズ)
NO(試作・少量) → 用途次第(手作業しやすいDIPもアリ)

注意
迷ったら「同等部品のSMD版があるかどうか」をまずチェック。最近は同じスペックでSMD/DIP両方ラインアップしている部品が多いので、選択の幅が広がっています。
SMDかDIPかの判断フロー図。SMD版がなければDIP、大電流・高耐圧や操作系ならDIPを優先、量産品ならSMDがおすすめ
SMDかDIPかを選ぶ判断フロー

知っておくべきSMD部品のサイズ規格

SMDのチップ部品(抵抗・コンデンサ)にはサイズ規格があります。これを知らないと、基板設計のとき部品が選べません。

JIS規格
(日本)
EIA規格
(海外)
サイズ
(mm)
主な用途
3216 1206 3.2 × 1.6 大きめ。手ハンダしやすい
2012 0805 2.0 × 1.25 産業機器の標準
1608 0603 1.6 × 0.8 もっとも一般的。米粒サイズ
1005 0402 1.0 × 0.5 スマホ等の小型機器
0603 0201 0.6 × 0.3 最先端スマホ等。砂粒サイズ
注意
JIS規格とEIA規格は数字の意味が違います。例えば「1608(JIS)」と「0603(EIA)」は同じサイズ。海外メーカーのデータシートを読むときは要注意です。

迷ったら「1608(0603)」を選んでおけば間違いありません。これが現代のSMD設計の事実上の標準サイズです。

ICのパッケージ:DIP・SOP・QFP・QFN・BGAの違い

パッケージ付け方足(端子)の形特徴
DIP挿入2列のまっすぐな足手ではんだ付けしやすい。ブレッドボードに差せる
SOP表面2列のかもめの翼の形(ガルウィング)DIPのSMD版のような形。足が見えるので目で検査しやすい
QFP表面4辺に並んだ足ピンの多いマイコンなどに使う
QFN表面裏面の電極(横から足が出ない)小さく、熱を逃がしやすい。はんだは見えにくい
BGA表面裏面に並んだはんだボールピンがとても多いICに使う。検査にX線などを使う

BGAのはんだの検査はBGA実装の検査で解説しています。

初心者がやりがちな失敗パターンの図。シンボルとフットプリントの不一致、定格確認漏れで焼損、試作で1005を選ぶ、穴あけ忘れ
SMDとDIPで初心者がやりがちな4つの失敗

初心者がやりがちな失敗

失敗①:シンボルとフットプリントの不一致

回路図上のシンボルは同じでも、SMD版とDIP版でフットプリント(基板上のランド形状)は全く別物です。「シンボルは同じだから大丈夫」と思って間違ったフットプリントを選ぶと、基板に部品が乗りません。

失敗②:定格を確認せずSMD化

「小さくしたいから」とSMDを選んだら、電流容量や耐圧が足りずに焼損。例えば1Aを流したい抵抗を、1608サイズで選ぶと電力定格(0.1W程度)を超えてしまいます。

失敗③:試作で1005サイズを選んでしまう

「最近のスマホは1005だから」と試作機にも使うと、手ハンダが極めて困難。試作段階では2012〜1608が無難です。

失敗④:DIPを表面実装と勘違い

基板CADで「ピンのあるリード部品」を表面実装用ランドに割り当ててしまうケース。基板に穴を開け忘れて、部品が入らないという事故が起こります。

現場の声
「フットプリントの間違い」は、初心者の基板トラブルNo.1です。必ず実物の部品データシートを見ながらフットプリントを確認するクセをつけましょう。
SMDは「のせる」、DIPは「差す」と納得する技術者のイラスト
SMDは「のせる」、DIPは「差す」

SMD部品をのせる基板側の「足場」(ランド・パッド)の用語は、フットプリントの記事で整理しています。

フットプリントとは?ランド・パッドとの違いを図解|部品をのせる「足場」の用語
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ランド・パッドとの違いを図解

よくある質問

Q. SMDとSMTの違いは?

A. SMDは部品(表面実装部品)、SMTは部品を付ける技術(表面実装技術)です。

Q. DIPとTHTの違いは?

A. DIPはICの形(パッケージ)の名前、THTは穴に差して付ける実装方法の名前です。現場では、挿入部品をまとめてDIPと呼ぶこともあります。

Q. 手はんだで扱えるSMDの大きさは?

A. 慣れないうちは2012(0805)や1608(0603)くらいが扱いやすく、1005(0402)より小さいものはピンセットと拡大鏡があっても難しくなります。

Q. 挿入部品の基板の裏にSMDを付けられる?

A. 付けられます。足とはんだが出る所以外の裏にSMDを置き、挿入部品とまとめてフローはんだで付けるなどの方法があります。付け方は実装メーカーと相談して決めます。

まとめ|「のせる」と「差す」の使い分け

この記事のポイント
  • SMD=表面実装。基板に「のせる」。小型・自動機向き・量産向き
  • DIP=挿入実装。基板に「差す」。頑丈・大電流向き・手作業向き
  • 現代の主流はSMD(小型化・低コスト・高周波対応のため)
  • 大電流部品・コネクタ・スイッチなどはDIPが残る
  • 多くの基板はSMD+DIPの混在実装
  • SMDのサイズ規格で迷ったら「1608(0603)」が標準
  • 失敗の多くは「フットプリントの不一致」と「定格確認漏れ」

SMDとDIPの違いがイメージできましたか。基板を見るとき、「あ、これはSMDだな」「ここはDIPか、なるほど大電流部品なのね」と読み解けるようになると、設計者としての解像度が一気に上がります。

基板設計は、こうした「部品の選び方」と「配置の判断」の積み重ねです。次は実際の部品配置のテクニックや、放熱設計について学んでみましょう。

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電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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