基板設計

【完全図解】表面実装(SMD)と挿入実装(DIP)の違い|「のせる部品」と「差す部品」の使い分け

😣 こんな経験はありませんか?
  • 基板を見ると、部品の付き方が2種類ある。「足が出てる部品」と「板にペタっとくっついてる部品」、何が違うの?
  • 「SMD」「DIP」「チップ部品」「リード部品」…用語が多すぎて混乱する
  • 設計レビューで「これSMDで行けない?」と聞かれたけど、選び方の基準がわからない
  • 古い基板は「足の長い部品」ばかりなのに、新しい基板は「板にペタっと」ばかりなのはなぜ?
✅ この記事でわかること
  • SMD(表面実装)とDIP(挿入実装)の構造的な違い
  • なぜ最近の基板はSMDが主流なのか、その本質的な理由
  • SMDとDIP、それぞれが活躍する場面と使い分けの基準
  • 初心者が知っておくべき、それぞれのメリット・デメリット

スマホの中の基板と、昔のラジオやおもちゃの基板を見比べたことはありますか。同じ「電子基板」なのに、部品の付き方が全然違うんです。

最近のスマホやノートPCの基板は、米粒みたいな小さい部品が「板の上にペタッとのせられている」。一方で昔の家電や工作キットでは、足の長い部品が「板に挿さって裏で半田付けされている」。これがSMDとDIPの違いです。

結論を先に言います。SMDは「のせる部品」、DIPは「差す部品」です。今の基板設計では9割以上がSMDですが、DIPにも明確な活躍場所があります。この記事では、両者の違いを完全図解で解説します。

SMDとDIPの基本的な違い

まずは用語を整理しましょう。両者は実装方法(部品の取り付け方)の違いです。

用語 正式名称 意味
SMD Surface Mount Device
(表面実装部品)
基板の表面にのせて半田付けする部品
SMT Surface Mount Technology
(表面実装技術)
SMDを実装する技術全般を指す
DIP Dual In-line Package
(デュアルインラインパッケージ)
2列に足が並んだ挿入型のIC。広い意味でリード部品全般を指すことも
THT Through Hole Technology
(スルーホール実装技術)
基板に穴を開けて足を差し込む実装方法
⚠️ 注意
厳密には「DIP」はICの一種類を指す用語です。でも現場では「DIP=リード部品全般」として使われがち。会話では「挿入実装の部品ね」と理解すればOKです。

この記事ではわかりやすさ優先で、SMD = 表面実装、DIP = 挿入実装として解説していきます。

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見た目と構造の違い

両者の最大の違いは、「基板への取り付け方」です。

📍

SMD(表面実装)

「のせる部品」

  • 基板の表面に直接のせる
  • 足は短いか、ほぼない(ランドに直接接する)
  • 基板に穴を開けない
  • 表裏どちらにも実装できる
  • サイズが極めて小さい(米粒〜砂粒サイズ)
🔌

DIP(挿入実装)

「差す部品」

  • 基板に穴を開けて足を差し込む
  • 足が長く、裏面で半田付け
  • 基板の表裏を貫通する
  • 片面(差した側)にしか実装できない
  • サイズが大きい(小指の先〜数cm)
💡 ポイント
覚え方は簡単。DIPは「差し込む」、SMDは「のせる」。穴があるかないかでも見分けられます。

寿司に例えるとイメージしやすい

SMDとDIPの違いを、寿司に例えてみます。

🍣

SMD = 握り寿司

ネタ(部品)をシャリ(基板)の上にのせるだけ。

シャリには穴を開けない。だから両面使える。回転寿司のように高速で大量生産可能。

🍢

DIP = 串団子

団子(部品)に串を通して、台に差し込んで固定

串が貫通するので片面のみ。でも一度差したら頑丈で、グラグラしない。

製造業の現場で考えると、もっとわかりやすいです。SMDは「自動機での量産向き」。マウンタという機械が部品を一つずつ吸着し、基板に高速でポンポン置いていきます。1分間に何千個も実装できます。

一方、DIPは「手作業や人手が必要」な工程が多い。部品の足を曲げて、基板の穴に通して、裏でハンダ付けする。SMDより圧倒的に時間がかかります。

🔧 現場の声
自動車部品メーカーの実装ラインでは、「SMDは1秒以下/個」「DIPは数秒/個」が目安。100個の部品がある基板で、SMDだけなら1分、DIPがあると数分。生産量を考えると差は莫大です。

それぞれのメリット・デメリット

SMD(表面実装)のメリット・デメリット

メリット ✅ デメリット ❌
部品が小型 → 基板を小さくできる 小さすぎて手作業修理が困難
表裏両面に実装可 → 高密度化 機械的強度がDIPより弱い
自動機で超高速生産可能 熱・振動に弱いものもある
配線が短い → 高周波特性が良い 大電流・高耐圧の部品は少ない
基板に穴が要らない → コスト削減 試作・修理時の交換が大変

DIP(挿入実装)のメリット・デメリット

メリット ✅ デメリット ❌
機械的に頑丈(足が穴を貫通) 部品が大きい → 基板も大きくなる
大電流・高耐圧に対応しやすい 片面実装のみ(両面は使えない)
手作業で半田付け・修理しやすい 自動化が難しく、生産コスト高
熱・振動に強い 基板に穴が必要 → コスト増
試作・教育用として扱いやすい 配線が長い → 高周波特性が劣る

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なぜ最近の基板はSMDだらけなのか

スマホ・PC・テレビ・自動車の電子部品…現代の基板はほぼSMDで構成されています。なぜでしょうか。理由は3つあります。

理由①

製品の小型化要求
スマホ・ウェアラブル機器・小型センサ…現代製品は「とにかく小さくしたい」。SMDなら基板面積を1/3〜1/5に削減できる。

理由②

大量生産のコストメリット
自動機での実装が前提。1秒以下/個の高速実装で、人件費が激減。家電や自動車のような量産品ではこれが死活問題。

理由③

高速・高周波対応
SMDは配線が短いため、寄生インダクタンスが小さい。GHz帯の高速通信や高周波回路では必須。

特に注目すべきは「人件費の影響」。30年前の家電は基板上のDIPを人が一つずつ手でハンダ付けしていました。でも今、それでは中国・東南アジアの製品にコストで勝てません。SMD化+自動機化はもはや選択肢ではなく必須なのです。

🔧 現場の声
自動車部品メーカーで「コストダウン会議」をやると、必ず「DIP→SMDへの置き換え」が議題に上がります。それくらい、製造コストへの影響が大きいのです。

それでもDIPが残っている場面

SMDが主流になった今でも、DIPには明確な活躍場所があります。適材適所で使い分けられているのです。

① 大電流・高耐圧の部品

パワエレで使うパワートランジスタ、大容量電解コンデンサ、リレーなどはDIPが主流です。物理的に大きく、SMDではパッケージに収まりません。

② コネクタ・端子台

外部ケーブルが何度も抜き差しされるコネクタ類はDIPが基本。SMDでは機械的強度が足りず、抜き差しで壊れます。

③ スイッチ類・大型部品

人が指で操作するスイッチ・ボタン・可変抵抗(ボリューム)も、押す力に耐える必要があるためDIPが多いです。

④ 試作・教育用基板

ブレッドボードや学校の電子工作キットではDIPが圧倒的に扱いやすい。手で挿せて、半田付けも目視で確認できます。

💡 ポイント
実は、現代の基板はほとんどがSMDとDIPの混在実装です。基本はSMDで、大電流部品やコネクタだけDIPを使う。これがプロの設計です。

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選び方の判断フロー

迷ったときの判断フローをまとめました。

Q1

その部品、SMD版が存在しますか?
NO → DIP一択(選択肢なし)
YES → Q2へ

Q2

大電流(数A以上)または高耐圧(数百V以上)が必要?
YES → DIPを優先検討
NO → Q3へ

Q3

外部接続(コネクタ)または人が操作する部品?
YES → DIPを優先(機械的強度のため)
NO → Q4へ

Q4

量産品ですか?
YES → SMDがおすすめ(コスト・サイズ)
NO(試作・少量) → 用途次第(手作業しやすいDIPもアリ)

⚠️ 注意
迷ったら「同等部品のSMD版があるかどうか」をまずチェック。最近は同じスペックでSMD/DIP両方ラインアップしている部品が多いので、選択の幅が広がっています。

知っておくべきSMD部品のサイズ規格

SMDのチップ部品(抵抗・コンデンサ)にはサイズ規格があります。これを知らないと、基板設計のとき部品が選べません。

JIS規格
(日本)
EIA規格
(海外)
サイズ
(mm)
主な用途
3216 1206 3.2 × 1.6 大きめ。手ハンダしやすい
2012 0805 2.0 × 1.25 産業機器の標準
1608 0603 1.6 × 0.8 もっとも一般的。米粒サイズ
1005 0402 1.0 × 0.5 スマホ等の小型機器
0603 0201 0.6 × 0.3 最先端スマホ等。砂粒サイズ
⚠️ 注意
JIS規格とEIA規格は数字の意味が違います。例えば「1608(JIS)」と「0603(EIA)」は同じサイズ。海外メーカーのデータシートを読むときは要注意です。

迷ったら「1608(0603)」を選んでおけば間違いありません。これが現代のSMD設計の事実上の標準サイズです。

初心者がやりがちな失敗

失敗①:シンボルとフットプリントの不一致

回路図上のシンボルは同じでも、SMD版とDIP版でフットプリント(基板上のランド形状)は全く別物です。「シンボルは同じだから大丈夫」と思って間違ったフットプリントを選ぶと、基板に部品が乗りません。

失敗②:定格を確認せずSMD化

「小さくしたいから」とSMDを選んだら、電流容量や耐圧が足りずに焼損。例えば1Aを流したい抵抗を、1608サイズで選ぶと電力定格(0.1W程度)を超えてしまいます。

失敗③:試作で1005サイズを選んでしまう

「最近のスマホは1005だから」と試作機にも使うと、手ハンダが極めて困難。試作段階では2012〜1608が無難です。

失敗④:DIPを表面実装と勘違い

基板CADで「ピンのあるリード部品」を表面実装用ランドに割り当ててしまうケース。基板に穴を開け忘れて、部品が入らないという事故が起こります。

🔧 現場の声
「フットプリントの間違い」は、初心者の基板トラブルNo.1です。必ず実物の部品データシートを見ながらフットプリントを確認するクセをつけましょう。

まとめ|「のせる」と「差す」の使い分け

📌 この記事のポイント
  • SMD=表面実装。基板に「のせる」。小型・自動機向き・量産向き
  • DIP=挿入実装。基板に「差す」。頑丈・大電流向き・手作業向き
  • 現代の主流はSMD(小型化・低コスト・高周波対応のため)
  • 大電流部品・コネクタ・スイッチなどはDIPが残る
  • 多くの基板はSMD+DIPの混在実装
  • SMDのサイズ規格で迷ったら「1608(0603)」が標準
  • 失敗の多くは「フットプリントの不一致」と「定格確認漏れ」

SMDとDIPの違いがイメージできましたか。基板を見るとき、「あ、これはSMDだな」「ここはDIPか、なるほど大電流部品なのね」と読み解けるようになると、設計者としての解像度が一気に上がります。

基板設計は、こうした「部品の選び方」と「配置の判断」の積み重ねです。次は実際の部品配置のテクニックや、放熱設計について学んでみましょう。

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