部品選定

【完全図解】ダイオードのVf(順方向電圧降下)とは?|0.7Vの正体と損失計算

😣 こんな経験はありませんか?
  • 先輩から「Vfって0.7Vだよね?」と言われて頷いたけど、なぜ0.7Vなのかを聞かれたら答えられない
  • ショットキーバリアダイオードは「Vfが小さくて高効率」と聞いたけど、具体的に何がどう違うのかピンとこない
  • LEDの抵抗計算で「電源電圧 − Vf」と教わったが、なぜ引き算するのか本当の意味がわかっていない
  • 「ダイオードの発熱が問題」と言われたが、Vfから発熱量をどう計算すればいいかわからない
✅ この記事でわかること
  • Vf(順方向電圧降下)の本当の正体
  • シリコン0.7V・ショットキー0.3V・LED2〜3Vの違いが生まれる理由
  • Vfから発熱量を計算するたった1つの公式
  • LED駆動の抵抗計算が自力で解けるようになる
  • Vfが温度や電流で動く理由と設計上の注意点

こんにちは、シラスです。前の記事でデータシートの5大パラメータを学んだ田中さん。今日はその中のVF(順方向電圧降下)だけを深掘りします。

先に結論を言います。VFとは「ダイオードに電気を通すときに発生する電圧の損失」のこと。シリコンなら約0.7V、ショットキーなら約0.3Vです。そして、この値が発熱量・効率・LEDの明るさ・電源回路の出力電圧すべてを左右します。

この記事では、VF「高速道路の通行料」に例えて完全図解します。読み終わる頃には、なぜ0.7Vなのか、なぜショットキーが速いのか、LEDの抵抗計算がなぜ「電源 − VF」なのか、すべて自分の言葉で説明できるようになります。

VFとは「電気を通すときに支払う通行料」

まずVFFForward(順方向)の頭文字です。「ダイオードを順方向にONしたときに発生する電圧の損失」を表します。

高速道路の通行料と同じ仕組み

高速道路に乗ると、必ず通行料を取られますよね。財布から1000円札を出して入ると、出口では手元に残るお金が少なくなっています。ダイオードも全く同じで、電気を通すときに「通行料」として電圧を一定量だけ消費します

VFのイメージ(5.0V入力の場合)

入力
5.0V
電池側
VF=0.7V
(通行料)
出力
4.3V
負荷側

↑ 5.0V入れても、ダイオードを通すと4.3Vしか出てこない(0.7V損失)

💡 一行で覚える
VF = ダイオードを電気が通るときに「必ず取られる」電圧。この電圧は熱に変わって発熱の原因になります。

なぜシリコンは0.7V?——空乏層を壊す「最低コスト」

ここで田中さんが本当に知りたいのは「なぜ0.7Vという中途半端な数字なのか」ですよね。これにはちゃんと物理的な理由があります。

PN接合の「空乏層」を思い出してください

PN接合の原理の記事で説明したとおり、PとNをくっつけると境界線に空乏層という「電気を通さない壁」ができます。

電気を流すには、この空乏層を外から電圧をかけて消し去る必要があります。シリコンの場合、この壁を壊すのに必要な電圧が約0.7Vなのです。

空乏層を壊すのに必要な電圧

電圧 0V〜0.6V
🚫
壁が残っている
電流ほぼ流れない
電圧 0.7V付近
壁が崩れ始める
電流が流れ始める
電圧 0.7V以上
壁が完全消滅
電流がしっかり流れる

材料が変わると、Vfも変わる

ここがポイントです。0.7Vはシリコンの場合の値であって、材料が変われば空乏層の壁の高さも変わります。だから、材料ごとにVfが違うのです。

材料 VFの目安 なぜその値?
ゲルマニウム(Ge) 約 0.3V 壁が低い(昔の真空管時代の主流)
シリコン(Si) 約 0.7V 現代の主流。バランスが良い
炭化ケイ素(SiC) 約 1.5V 壁が高い。高耐圧・高温向け
窒化ガリウム(GaN) 約 3.0V 超高耐圧・高速スイッチング向け
🔧 現場の声
EV(電気自動車)やパワコンの世界では、最近SiC(炭化ケイ素)GaN(窒化ガリウム)が話題になっています。Vfは高いけれど、その代わり「高温に強い」「高速スイッチングできる」「高耐圧」という性能を持っているため、次世代パワー半導体として急速に普及中です。

ショットキーバリアダイオードはなぜ0.3Vなのか

ここでよくある混乱を解消します。「シリコンは0.7Vって言ったのに、ショットキーバリアダイオードもシリコン製なのに0.3Vって矛盾してない?」という疑問です。

通常のダイオードとショットキーの「構造の違い」

答えは構造の違いにあります。

  • 通常のダイオード:P型半導体 と N型半導体を接合 → 空乏層の壁が高い(0.7V)
  • ショットキーバリアダイオード金属 と N型半導体を接合 → 壁が低い(0.3V)

P型を使わず金属を使うことで、空乏層を壊すコストが下がります。これが「ショットキーはVfが低い=高効率」の正体です。

通常のダイオード(PN接合)

P型
⊕⊕⊕
空乏層
(壁が高い)
N型
⊖⊖⊖

VF ≈ 0.7V

ショットキーバリアダイオード

金属
⚙️
薄い壁
(壁が低い)
N型
⊖⊖⊖

VF ≈ 0.3V

ショットキーの「もう一つの強み」:高速

ショットキーの強みはVfだけではありません。P型を使わないので、前記事で説明したtrr(逆回復時間)もほぼゼロになります。電子と正孔が再結合する時間が不要だからです。

💡 ショットキーの「いいとこ取り」
Vf が低い(0.3V)→ 発熱が少ない=高効率
trr がほぼ0→ 高速スイッチング電源に最適
この2つの理由で、ショットキーはスイッチング電源・USB充電器・LED電源などで大活躍しています。
⚠️ ショットキーの弱点
高性能な代わりに弱点もあります。耐圧が低い(〜100V程度が多い)逆方向漏れ電流(IR)が大きい高温に弱い。万能ではないので、用途で使い分けが必要です。

LEDのVFが2〜3Vもある理由——「光」というエネルギーのコスト

ダイオードの一種であるLEDは、Vfが2V〜3.5Vと特別に大きいです。なぜでしょうか?

LEDは「光るためのエネルギー」を電圧から取っている

LEDは Light Emitting Diode(発光ダイオード)の略。電子と正孔が再結合するときに「光」としてエネルギーを放出します

通常のダイオードでは、再結合のエネルギーは「熱」になります。でもLEDは特殊な材料を使うことで、その大部分を「光」に変換します。光は熱より高エネルギーなので、それを生むには大きな電圧(Vf)が必要なのです。

LEDの色 VFの目安 主な材料
🟥 赤 約 1.8〜2.2V AlGaAs
🟧 橙 約 2.0〜2.2V AlGaInP
🟨 黄 約 2.0〜2.4V AlGaInP
🟩 緑 約 2.0〜3.0V GaP、InGaN
🟦 青 約 3.0〜3.5V InGaN(窒化物)
⬜ 白 約 3.0〜3.5V 青LED+蛍光体
💡 豆知識:青LEDがノーベル賞を取った理由
青色LEDは光のエネルギーが高いため、それを実現するには窒化ガリウム(InGaN)という難しい材料を使う必要がありました。これを実用化した日本人研究者3名が2014年にノーベル物理学賞を受賞しています。Vfの違いは、こんな歴史にもつながっているのです。

LEDの抵抗計算を「VF」で完全理解する

ここで、田中さんが学生時代に教わった「LEDの抵抗計算」を、Vfの概念で再理解しましょう。実はとても簡単な話だったとわかります。

例題:5V電源で赤LEDを光らせたい

条件は以下の通りとします。

  • 電源電圧:5.0V
  • 赤LED の VF:2.0V
  • LEDに流したい電流:20mA(=0.02A)
  • 必要な抵抗値は?

なぜ「電源電圧 − VF」と引き算するのか

回路の中で、LEDは必ずVF=2.0Vを取ります。これはLEDが「光るために必要な通行料」なので、誰にも譲りません。

すると、5V電源のうち2VはLEDが持っていくので、残った3.0Vが抵抗にかかることになります。これが「電源電圧 − VF」の正体です。

電圧の配分イメージ

抵抗(R)
3.0V
残り全部がここにかかる
2.0V
VF(固定)

↑ 電源 5V = 抵抗の 3V + LEDの 2V

オームの法則で抵抗値を計算

抵抗にかかる電圧(3.0V)と、流したい電流(20mA)がわかれば、あとはオームの法則(V=IR)で抵抗値を求められます。

📐 抵抗値の計算
R = (V電源 − VF) ÷ I
R = (5.0V − 2.0V) ÷ 0.02A
R = 3.0V ÷ 0.02A
R = 150Ω
💡 田中さん、これでわかった?
「電源 − VF」と引き算する理由は、LEDがVF分の電圧を必ず取るから。残った電圧を抵抗に振り分けるだけ。暗記ではなく、原理がわかれば一生忘れません

VFから発熱量を計算する——「通行料は熱になる」

Vfが「通行料」だと言いましたが、この通行料はどこに消えるのでしょうか? 答えはすべて熱になります。だからVfが大きいダイオードは発熱量が多くなります。

発熱量の計算式

📐 ダイオードの発熱量(電力損失)
P [W] = VF × IF
P:発熱量(ワット) / VF:順方向電圧降下 / IF:順方向電流

電流ごとの発熱量を試算してみる

シリコンダイオード(VF=0.7V)で、電流値ごとの発熱量を見てみましょう。

電流 IF 計算 発熱量 P 体感
0.1A 0.7 × 0.1 0.07W ほぼ温かくない
1A 0.7 × 1 0.7W 触ると温かい
5A 0.7 × 5 3.5W 熱い。放熱が必要
10A 0.7 × 10 7W ヒートシンク必須
30A 0.7 × 30 21W 電球並みの発熱

ショットキーと比較すると、効率の差は歴然

同じ10Aを流すとき、シリコンダイオード(Vf=0.7V)とショットキー(Vf=0.4V)でどれだけ差が出るか見てみましょう。

シリコンダイオード

VF=0.7V、IF=10A
7W発熱

大きな放熱対策が必要

ショットキー

VF=0.4V、IF=10A
4W発熱

3W分省エネ&放熱小

🔧 現場の声
「ダイオードの発熱で基板が焦げた」事故の9割は、このVF×IFの計算をサボった結果です。たった0.3Vの差が、10Aで3Wの差。これは決して小さくありません。USB充電器が小型化できる理由の1つも、ショットキーの省電力性です。

VFは実は「定数ではない」——I-V特性カーブの正体

ここまで「シリコンのVFは0.7V」と説明してきましたが、実はこれはおおよその値です。本当は、流す電流によって少しずつVfが変化します。

電流が増えるとVfも増える

データシートを見ると「I-V特性」というグラフが必ず載っています。これは「ダイオードに流れる電流(I)と、そのときのVfの関係」をグラフにしたものです。

ダイオードのI-V特性カーブ(イメージ)

  電流 IF[A] ↑
       │                              
   10A │                          ●━━━ V_F=0.9V
       │                       ╱       
    5A │                   ●━━━━━ V_F=0.8V
       │                ╱              
    1A │           ●━━━━━━━━ V_F=0.7V
       │       ╱                      
  0.1A │   ●━━━━━━━━━━ V_F=0.6V       
       │ ╱                            
    0A │━━━━━━━━━━━━━━━━━━━→ 電圧 VF[V]
       0   0.2  0.4  0.6  0.8  1.0
  

↑ 電流が増えるにつれてVfも少しずつ大きくなる

このグラフが示すのは、「Vfは流す電流によって変わる」という事実です。だからデータシートには「VF=0.7V (IF=1Aのとき)」のように必ず測定条件が書かれています。

温度が上がるとVfが下がる

もう1つ重要な性質があります。ダイオードのVfは温度が上がると小さくなります。具体的には1℃あたり約2mV低下します。

📐 温度によるVf変化の目安
・25℃で VF=0.70V のダイオード
・75℃(+50℃上昇)では VF≈0.70 − 0.002×50 = 0.60V に低下
→ 発熱量が少しだけ減るが、複数並列接続のとき「熱暴走」を起こすリスクあり
⚠️ 熱暴走(Thermal Runaway)の罠
複数のダイオードを並列に繋いだとき、1個だけ温度が上がるとその1個だけVfが下がる→電流が集中する→さらに発熱するという悪循環が起きます。これが熱暴走です。ダイオードを並列で使うときは、必ずバランス抵抗を入れるなどの対策が必要です。

実務でVFを「使いこなす」3つのチェックポイント

最後に、田中さんが明日から使えるVFの実務チェックポイントを3つにまとめます。

チェック① 出力電圧の計算

電源回路で「ダイオードを通った後の電圧」を計算するときは、必ず「電源 − VFを意識する。USB 5Vの後にダイオードを入れたら、4.3Vしか出てこないという事実。これが回路設計の落とし穴です。

チェック② 発熱量の見積もり

P = VF × IF の計算を必ずやる。1W以上発熱するなら放熱対策を検討。3W以上ならヒートシンク必須、5W以上なら基板設計レベルの放熱対応が必要です。

チェック③ Vfが測定条件で変わることを忘れない

データシートの「VF=0.7V」はある電流・ある温度のときの値。実際の使用条件に近いI-V特性グラフを必ず読んで、自分の回路条件でのVfを使う。グラフを読む癖がついた人だけが、本物の設計者になれます。

🔧 現場の声
「Vfを甘く見ていた」が原因のトラブルは、製造業の現場で日常茶飯事です。出力電圧が足りない、発熱で焦げた、効率が出ない……これら全てがVfに起因します。だからこそ、Vfの本質を理解している人は重宝されます。

まとめ:VFは「ダイオードの通行料」

🎯 この記事の5つのポイント
  1. VFとは:ダイオードを電気が通るときに発生する電圧の損失(通行料)
  2. シリコンが0.7Vなのは、空乏層という壁を壊すのに必要な電圧だから
  3. ショットキーが0.3Vなのは、金属とN型を接合する構造で壁を低くしているから
  4. LEDが2〜3Vなのは、光というエネルギーを生むために大きな電圧が必要だから
  5. 発熱量 P = VF × IF。これを計算しないと基板が焦げる

VFは、最初は「ただの数字」に見えますが、「通行料」という比喩を頭に置けば、出力電圧の計算もLEDの抵抗計算も発熱量の見積もりも、全部一本道で理解できます。

次に山田課長から「このダイオードの発熱大丈夫?」と聞かれたら、こう答えてください。

「VF×IFで発熱量を計算しました。○○Wです。データシートのI-V特性とパッケージの熱抵抗から見て、許容温度内に収まります。ショットキーに変えれば□□W削減できますが、コストとのトレードオフです。」

ここまで言えれば、もう「データシートに書いてあったので…」とは絶対に言わない田中さんです。

📚 次に読むべき記事

📘 【電験三種・理論】電子理論 完全攻略ロードマップ →

半導体・ダイオード・トランジスタを13ステップで攻略する学習ロードマップ。Vfの先に何を学ぶべきかが一目でわかります。

📘 【完全図解】PN接合の原理を中学生でも理解|なぜ電気が一方通行? →

そもそも空乏層とは何か。Vf=0.7Vの正体である「壁」を完全理解できます。本記事と合わせて読むと理解が一段深まります。

📘 【完全図解】ダイオードのデータシートの読み方|5大パラメータを徹底解説 →

Vfだけでなく、VRRM・IF・trr・IRも合わせて理解。データシートを5分で読めるようになる総合ガイド。

🛠️ 電験三種の勉強を本気で始めたい人へ

独学で挫折しないために、合格者が「これは買ってよかった」と本気で勧める勉強グッズをまとめました。

👉 電験三種の勉強が加速するおすすめグッズ10選 →

タグ

-部品選定
-