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電線の材料と変圧器の鉄心の材料は、電験三種の電力科目で毎年のように出題されます。数字や特徴を丸暗記するより、「なぜその材料を選ぶのか」を理解したほうが、言い回しを変えた選択肢にも強くなります。この記事では、計算も使いながら一つずつ整理します。
導電材料に求められる性質と「導電率○%」の意味
電線の材料には、電気をよく通すことに加えて、切れにくく、軽く、安く手に入ることが求められます。
| 性質 | 望ましい向き | 理由 |
|---|---|---|
| 導電率 | 大きい | 電力損失と電圧降下を小さくする |
| 引張強さ | 大きい | 鉄塔の間に張っても切れない |
| 質量(重さ) | 小さい | 鉄塔や電柱への負担を減らす |
| 線熱膨張率 | 小さい | 温度でたるみが変わりにくい |
| 資源量・価格 | 多い・安い | 大量に使うので、手に入りやすさが大切 |
導電率は「標準軟銅=100%」でくらべる
導電率(電気の通しやすさ)は、20℃の標準軟銅を100%として、百分率で表すのが決まりです。温度が上がると、金属の導電率は下がります。また、不純物が少ないほど導電率は高く、合金にすると導電率は下がるかわりに引張強さが上がります。
導電率と、その逆数の抵抗率の違いを整理できます

銅:軟銅と硬銅のちがい
銅は、20℃で銀に次いで導電率が高い金属です。電線の銅は、電気分解で純度を高めた電気銅を材料にします。同じ銅でも、加工のしかたで「硬銅」と「軟銅」に分かれます。
| 項目 | 硬銅 | 軟銅 |
|---|---|---|
| つくり方 | 冷たいまま引き伸ばす | 硬銅を焼きなます(熱してゆっくり冷ます) |
| 導電率 | 約97%(少し低い) | 100%(高い) |
| 引張強さ | 大きい | 小さい |
| 曲げやすさ(可とう性) | 曲げにくい | 曲げやすい |
| 主な使い道 | 架空送電線・架空配電線 | CVケーブルなどの地中ケーブル・屋内配線 |

アルミニウムと鋼心アルミより線:導電率が低いのに使われる理由
硬アルミの導電率は約61%で、銅よりかなり低い材料です。それでも送電線に広く使われるのは、とても軽いからです。同じ抵抗の電線をつくると、アルミのほうが太くはなりますが、重さはおよそ半分ですみます。
例題:同じ抵抗の電線を銅とアルミでつくる
長さ1km、断面積100mm²の軟銅線と同じ抵抗の硬アルミ線をつくります。導電率は軟銅100%・硬アルミ61%、密度は銅8.89g/cm³・アルミ2.70g/cm³とします。
同じ抵抗で、889kgが443kgへと約半分になりました。長い距離を鉄塔で支える送電線では、この軽さが大きな強みになります。
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鋼心アルミより線(ACSR)
アルミの弱点は、引張強さが小さいことです。そこで、中心に亜鉛めっきした鋼線をより合わせ、そのまわりに硬アルミ線をより合わせた「鋼心アルミより線」が使われます。強さは中心の鋼が、電気はまわりのアルミが受けもつ分業です。
鋼心アルミより線が、鉄塔のどこにどう張られているかがわかります

磁性材料に求められる性質と鉄損
磁性材料は、磁束(磁気の流れ)をよく通す材料です。鉄・ニッケル・コバルトとその合金は、磁石に強く引きつけられる強磁性体で、変圧器やモーターの鉄心に使われます。
| 性質 | 望ましい向き | 理由 |
|---|---|---|
| 透磁率(磁束の通しやすさ) | 大きい | 小さな電流で多くの磁束をつくれる |
| 飽和磁束密度 | 大きい | 鉄心を細く、機器を小さくできる |
| 鉄損 | 小さい | 発熱とむだな電力を減らす |
鉄損は2種類
交流で磁化すると、鉄心で熱になる損失(鉄損)が生まれます。鉄損は、次の2つに分かれます。
- ヒステリシス損:磁化の向きを変えるたびに失われるエネルギー。磁界と磁束密度の関係を表すループの面積と、周波数に比例する
- 渦電流損:磁束の変化で鉄心の中に起電力が生まれ、うず状の電流が流れて生じる熱。周波数の2乗と鉄板の厚さの2乗に比例する
ヒステリシス損と渦電流損が生まれるしくみを、図で詳しく理解できます
つまり、ヒステリシス損は「材料の性質」で、渦電流損は「電気の流れやすさと板の厚さ」で減らします。この2つの減らし方が、次のけい素鋼板とアモルファスにつながります。

けい素鋼板とアモルファス合金のちがい
けい素鋼板は、鉄にけい素を少し加えて電気を通しにくくし、渦電流を減らした鉄板です。薄い板の表面を絶縁して、磁束の向きに平行に重ね合わせ(積層し)て鉄心にします。アモルファス合金は、溶けた金属を急に冷やして固め、原子の並びを不規則(非結晶)にした薄い帯です。
| 項目 | けい素鋼板 | アモルファス合金 |
|---|---|---|
| 原子の並び | 結晶(規則正しい) | 非結晶(不規則) |
| 鉄損 | 標準的 | 大幅に少ない |
| 飽和磁束密度 | 高い | 低い(同じ容量だと変圧器が大きくなる) |
| 加工のしやすさ | しやすい | 硬くて、しにくい |
| 価格 | 安い | 比較的高い |

計算してみる:周波数が変わると鉄損はどうなる?
ヒステリシス損は周波数に比例し、渦電流損は周波数の2乗に比例します(最大磁束密度が同じとき)。この違いを、数字で確かめます。
例題:50Hzで鉄損1,000Wの鉄心を60Hzで使う
50Hzのとき、ヒステリシス損600W、渦電流損400Wの鉄心があります。最大磁束密度を同じにしたまま、60Hzで使います。
周波数が高くなるほど、2乗で効く渦電流損の割合が増えていきます。周波数の高い機器ほど、薄い板やアモルファスのような渦電流の少ない材料が必要になるのはこのためです。

電験三種の過去問で問われているポイント
電験三種の電力科目では、令和3年度から令和7年度下期まで、問14が毎回「電気材料」の論説問題でした。導電材料と磁性材料は、そのうち5回出題されています。
| 年度・問題 | テーマ | 誤りとされた選択肢 |
|---|---|---|
| 令和3年度 問14 | 送電線路の導体 | 「導電率は軟銅より硬銅が大きい」(正しくは軟銅100%・硬銅97%) |
| 令和5年度上期 問14 | アモルファス鉄心の柱上変圧器 | 「アモルファス鉄心材料は結晶構造である」(正しくは非結晶) |
| 令和5年度下期 問14 | 電線の導体材料 | 「硬銅線は曲げにくく、電線導体として使われることはない」(架空送電線に使われる) |
| 令和6年度下期 問14 | 銅 | 「焼きなますと可とう性はよくなり、導電率は低くなる」(導電率は高くなる) |
| 令和7年度下期 問14 | 磁性材料と損失 | 「磁束の周りに起電力が生じてヒステリシス損が発生する」(それは渦電流損) |
ポイント1:軟銅と硬銅は3回も問われた
5回のうち3回が、軟銅と硬銅の性質の入れ替えでした。「軟銅=導電率が高い・曲げやすい・地中ケーブル」「硬銅=強い・架空線」の表を言えるようにすれば、この3問はすべて解けます。
ポイント2:アモルファスは「弱点」も正しい選択肢になる
令和5年度上期では、「鉄損が少ない」という長所だけでなく、「加工性があまりよくない」「比較的高価」「磁束密度を高くできず大形になる」という短所も、正しい選択肢として並びました。誤りは「結晶構造」の1つだけです。長所と短所をセットで覚えてください。
ポイント3:2つの鉄損の「原因」を入れ替える
令和7年度下期は、渦電流損の原因(磁束の変化で生まれる起電力)を、ヒステリシス損の説明として書いたひっかけでした。「ヒステリシス損=ループの面積×周波数」「渦電流損=起電力でうず電流が流れる・薄く積層して減らす」と、原因と対策をペアで覚えます。

よくある間違い・つまずきポイント
1. 硬銅のほうが導電率が高いと考える
導電率は軟銅100%、硬銅約97%で、軟銅のほうが高いです。硬銅の強みは引張強さです。
2. アルミは導電率が低いから重いと考える
導電率と重さは別の性質です。アルミは同じ抵抗にすると太くなりますが、密度が小さいので、質量は銅の約半分ですみます。
3. 鋼心アルミより線の外側を鋼だと考える
中心が亜鉛めっき鋼線で、外側が硬アルミ線です。交流の電流は導体の外側を流れやすいので、外側に電気をよく通すアルミを置くのは理にかなっています。
4. アモルファスは何でも優れていると考える
鉄損は少ないですが、飽和磁束密度が低い・硬くて加工しにくい・高価、という短所があります。
5. 渦電流損も周波数に比例すると考える
周波数に比例するのはヒステリシス損で、渦電流損は周波数の2乗に比例します(最大磁束密度一定のとき)。

よくある質問
まとめ:電線は「通す・強い・軽い」、鉄心は「通す・損失が少ない」
まずは軟銅と硬銅の表、けい素鋼板とアモルファスの表の2つを、何も見ずに書けるか試してみてください。問14の導電材料・磁性材料の問題は、この2つでほとんど解けます。


