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- ランキンサイクルの4つの変化が、どの機器で起きているのかわからない
- 再熱サイクルと再生サイクルの違いがいつも混ざる
- 熱効率向上の論説問題で、2択から絞れない
- 水と蒸気がたどる4つの変化と、それぞれの機器
- 再熱・再生など、熱効率を上げる5つの方法
- 過去問で実際に使われたひっかけ
ランキンサイクルは、火力発電(汽力発電)のしくみの土台になる考え方です。名前はむずかしそうですが、中身は「水をお湯にして、蒸気で回して、また水に戻す」というくり返しです。この記事では、どこで熱を受け取り、どこで捨てているのかを追いながら、熱効率を上げる方法まで順番に整理します。
ランキンサイクルは、汽力発電で水と蒸気がたどる「給水ポンプで加圧→ボイラで加熱→タービンで膨張→復水器で冷却」の4つの変化をくり返す熱サイクルです。熱効率を上げるには、蒸気を高温高圧にする、復水器の真空度を高める、再熱サイクル(途中の蒸気を加熱し直す)、再生サイクル(タービンの蒸気を抜き出して給水を温める)などの方法があります。
ランキンサイクルとは?水と蒸気がたどる4つの変化
ランキンサイクルは、同じ水を何度も使い回しながら、熱を仕事(タービンを回す力)に変える流れです。水と蒸気は、次の4つの機器を順番に通ります。
| 順番 | 機器 | 水・蒸気に起きること |
|---|---|---|
| ① | 給水ポンプ | 水に圧力をかけてボイラへ送る(断熱圧縮) |
| ② | ボイラ・過熱器 | 水を加熱して高温高圧の蒸気にする(等圧受熱) |
| ③ | 蒸気タービン | 蒸気が膨張しながら羽根車を回す(断熱膨張) |
| ④ | 復水器 | タービンを出た蒸気を冷やして水に戻す(等圧放熱) |
やかんでお湯をわかし、出てきた湯気で風車を回し、湯気を冷たいお皿に当てて水滴に戻し、その水をまたやかんに戻す——これをぐるぐるくり返すのがランキンサイクルです。やかんがボイラ、風車がタービン、冷たいお皿が復水器にあたります。
汽力・ガスタービン・コンバインドサイクルなど、火力発電の全体像がわかります
つまり、ボイラで熱を受け取り、タービンで仕事を取り出し、復水器で残りの熱を捨てる、という流れです。捨てる熱をどれだけ減らせるかが、熱効率を上げるカギになります。

T-s線図で見るランキンサイクル
T-s線図は、縦軸に温度(T)、横軸にエントロピー(s:熱の受け渡しの量を表す目安)をとったグラフです。ランキンサイクルは、この図の上でひと回りする閉じた形になり、囲まれた面積がタービンで取り出せる仕事にあたります。
| 区間 | T-s線図での形 | 意味 |
|---|---|---|
| ポンプ(①) | ほぼ真上に短く上がる | 圧力を上げるだけで、温度はほとんど変わらない |
| ボイラ(②) | 右上へ大きく進む | 水が温まり、沸騰し、さらに過熱される |
| タービン(③) | 真下に下がる | 膨張して温度と圧力が下がる |
| 復水器(④) | 左へ水平に戻る | 一定の温度で熱を捨て、水に戻る |
囲まれた面積が大きいほど、同じ熱から多くの仕事を取り出せます。グラフの上の辺を高くする(高温にする)か、下の辺を低くする(復水器の温度を下げる)と面積が広がる、というのが熱効率を上げる考え方の出発点です。
試験では図そのものより、「どの区間がどの機器か」「何をすると面積が広がるか」が問われます。グラフの形と機器を、1対1で対応させておきましょう。

熱効率を上げる5つの方法
汽力発電の熱効率は、受け取った熱のうち、どれだけを電気に変えられたかの割合です。上げるための方法は、次の5つに整理できます。
| 方法 | どこで | なぜ効くか |
|---|---|---|
| 蒸気を高温高圧にする | ボイラ・過熱器 | 高い温度で熱を受け取るほど、仕事に変えられる割合が増える |
| 復水器の真空度を高める | 復水器 | タービン出口の圧力(背圧)と温度が下がり、取り出せる仕事が増える |
| 再熱サイクル | 再熱器 | 高圧タービンを出た蒸気を加熱し直して、低圧タービンでもう一度働かせる |
| 再生サイクル | 給水加熱器 | タービンの途中から蒸気を抜き出し(抽気)、給水温度を上げて、ボイラで加える熱を減らす |
| 排ガスの熱の回収 | 節炭器・空気予熱器 | 煙突へ捨てる燃焼ガスの熱で、給水や燃焼用空気を温める |
ボイラ・タービン・復水器・給水ポンプなど、主要機器の役割がわかります
給水加熱器で上げるのは「給水温度」です。「抽気温度を上げる」と書かれていたら誤りです。抽気は給水を温めるための熱源で、その温度を上げることが目的ではありません。この言い換えは、実際の過去問で誤りの選択肢になりました。

再熱サイクルと再生サイクルの違い
名前が一文字違いでまぎらわしい2つですが、「何を温めるか」がまったく違います。
| 項目 | 再熱サイクル | 再生サイクル |
|---|---|---|
| 温めるもの | タービンの途中の蒸気 | ボイラへ入る給水 |
| 使う機器 | 再熱器(ボイラの中) | 給水加熱器 |
| 熱の出どころ | ボイラの燃料の熱 | タービンから抜き出した蒸気(抽気) |
| 主な効果 | 熱効率の向上と、タービン出口の湿り(水滴)の減少 | 熱効率の向上(ボイラで加える熱が減る) |
再熱は、マラソンの途中で給水所に寄って、ランナー(蒸気)に栄養補給をしてもう一度走ってもらうイメージです。再生は、ゴールした人の体の熱で、次のスタートを待つ人を温めておくイメージです。温めておけば、スタートに必要なエネルギーが少なくてすみます。
実際の大きな火力発電所では、再熱と再生の両方を組み合わせた「再熱再生サイクル」が使われています。つまり2つは対立するものではなく、組み合わせて使う工夫です。

計算してみる:熱サイクル効率と必要な蒸気量
1kgの水・蒸気がもつエネルギーを比エンタルピー(単位kJ/kg)で表すと、熱サイクル効率は簡単な引き算と割り算で求められます。ここでは、ポンプの仕事は小さいので省略します。
熱サイクル効率 =(タービン入口 − タービン出口)÷(タービン入口 − 給水)
例題:比エンタルピーから効率と蒸気量を求める
タービン入口の蒸気が3,400kJ/kg、タービン出口が2,200kJ/kg、ボイラへ入る給水が150kJ/kgとします(練習用の値です。実際の値は蒸気表で確認してください)。
タービンで取り出す仕事:3,400 − 2,200 = 1,200kJ/kg
ボイラで加える熱:3,400 − 150 = 3,250kJ/kg
熱サイクル効率:1,200 ÷ 3,250 = 0.369 → 約36.9%
タービン出力を100MW(=100,000kJ/s)にするための蒸気量:100,000 ÷ 1,200 = 約83.3kg/s
1時間あたりに直すと、83.3 × 3,600 = 約300,000kg/h = 約300t/h
カルノー効率とくらべる
最高温度600℃(873K)、復水器30℃(303K)の間で動く理想の熱機関(カルノーサイクル)の効率は、1 − 303 ÷ 873 = 約65.3%です。実際のランキンサイクルが約37%にとどまるのは、ボイラで水を低い温度から温める間の熱の受け取り方が理想から遠いことや、各機器の損失があるからです。
発熱量・所内率から、発電端・送電端の熱効率を求める計算を練習できます

燃焼ガスの熱を回収する機器の順番
ボイラで燃料を燃やしたガスは、煙突から出る前に、いくつもの機器を通って熱を回収されます。この順番も、試験でよく問われます。
| 流れ | 通る順番 |
|---|---|
| 水 | 給水ポンプ → 節炭器 → 蒸気ドラム |
| 蒸気 | 蒸気ドラム → 過熱器 → 高圧タービン → 再熱器 → 低圧タービン → 復水器 |
| 燃焼ガス | 火炉 → 過熱器 → 節炭器 → 空気予熱器 → 電気集じん装置 → 煙突 |
節炭器(エコノマイザ)は、燃焼ガスの熱で給水を温める機器です。空気予熱器は、燃焼ガスの熱で燃焼用の空気を温める機器です。どちらも、煙突へ捨てる熱を減らして熱効率を上げます。
燃焼ガスは温度の高いところから順に熱を渡していくので、「高温を使う過熱器 → 中くらいの節炭器 → 低めの空気予熱器」と並びます。電気集じん装置は熱回収の機器ではないので、空気予熱器のあとに置かれます。

電験三種の過去問で問われているポイント
汽力発電の熱サイクルと熱効率は、電力科目の発電分野でくり返し出題されています。最近の問題を整理します。
| 年度・問題 | 形式 | ポイント |
|---|---|---|
| 令和6年度下期 問2 | 論説(誤りを選ぶ) | 熱効率向上対策。誤りは「給水加熱器で抽気温度を上げる」(正しくは給水温度) |
| 令和7年度上期 問3 | 論説(誤りを選ぶ) | 水・蒸気・燃焼ガスの通過順序。誤りは「節炭器→電気集じん装置→空気予熱器」(正しくは空気予熱器が先) |
| 令和5年度上期 問3 | 空欄穴埋め | 燃焼ガスの余熱で「給水」を温める「節炭器」、「燃焼用」空気を温める「空気予熱器」 |
ポイント1:正しい対策の中に「1語だけ違う」選択肢がまぎれる
令和6年度下期は、高温高圧、復水器の真空度、再熱サイクル、節炭器と、正しい対策が並ぶ中で、「給水温度」を「抽気温度」に変えた1つだけが誤りでした。この記事の5つの方法の表を、語句まで正確に覚えておくと見抜けます。
ポイント2:順番の問題は「温度の高い順」で考える
令和7年度上期の通過順序は、燃焼ガスが温度の高い順に熱を渡すと考えれば、空気予熱器が電気集じん装置より先だと判断できます。水・蒸気の流れも、サイクルの4つの変化と機器を結びつけておけば迷いません。
ポイント3:計算問題は「比エンタルピーの差」で解く
令和7年度上期 問2(タービン効率と使用蒸気量)や令和4年度上期 問3(タービン効率)のように、比エンタルピーから効率や蒸気量を求める計算問題も出ています。この記事の例題と同じく、「取り出した分 ÷ 加えた分」と「出力 ÷ 1kgあたりの仕事」の2つで解けます。

よくある間違い・つまずきポイント
1. 再熱と再生を逆に覚える
再熱は「蒸気」を加熱し直し、再生は「給水」を温めます。再熱には再熱器、再生には給水加熱器を使います。
2. 給水加熱器で上げるのを「抽気温度」と答える
上げるのは給水温度です。抽気はそのための熱源です。
3. 復水器の真空度を下げると効率が上がると考える
真空度を「高める」(圧力を下げる)ほど、タービン出口の温度が下がり、取り出せる仕事が増えます。
4. 空気予熱器と電気集じん装置の順番を逆にする
燃焼ガスは、熱回収の機器(節炭器・空気予熱器)を通ってから、電気集じん装置へ進みます。
5. 効率の分母をタービン入口の値そのものにする
熱サイクル効率の分母は「ボイラで加えた熱」(タービン入口 − 給水)です。タービン入口の値だけで割ると、効率が小さく出ます。

よくある質問
まとめ:熱を受け取る温度を上げ、捨てる熱を減らす
- ランキンサイクル=ポンプ(加圧)→ボイラ(加熱)→タービン(膨張)→復水器(冷却)
- 効率を上げる5つ:高温高圧・復水器の真空度向上・再熱・再生・排ガスの熱回収
- 再熱=蒸気を加熱し直す(再熱器)/再生=抽気で給水を温める(給水加熱器)
- 熱サイクル効率=(入口−出口)÷(入口−給水)。例:約36.9%
- 燃焼ガスは過熱器→節炭器→空気予熱器→電気集じん装置の順
まずは4つの機器の順番と、5つの方法の表を何も見ずに書き出せるか試してみてください。それができれば、熱効率の論説問題はほとんど迷わずに解けるようになります。

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次に読むべき記事
ここまでで、汽力発電の熱サイクルと、熱効率を上げる方法がわかりました。次は、同じく蒸気でタービンを回す原子力や地熱、そしてタービンにつながる発電機へと、発電の知識を広げていきましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。