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- 配電の電気方式で、単相3線式や三相4線式が「得」と言われても、何が得なのかわからない
- 電線量37.5%や75%という数字を、丸暗記するしかないと思っている
- 三相の電流や損失の計算で、√3や本数をいつも間違える
- 4つの電気方式の、電線の本数と電圧の違い
- 単相3線式で損失が4分の1になる理由(計算つき)
- 電線量の比を、自分で導き出す手順
配電の電気方式とは、変圧器から建物や機械まで、何本の電線でどんな電圧を送るかの決め方です。名前が似ていて、はじめは混乱して当然です。この記事では、同じ電力を送るときに電線の量や損失がどう変わるかを、実際に数字を入れて比べていきます。
配電の電気方式には、単相2線式・単相3線式・三相3線式・三相4線式の4つがあります。同じ電力を同じ距離・同じ損失で送るとき、必要な電線の量は単相2線式を100%とすると、単相3線式37.5%、三相3線式75%、三相4線式33.3%です(単相3線式と三相4線式は、中性線との間の電圧をそろえた場合)。電線が少なくてすむので、住宅には単相3線式、工場やビルには三相式が使われます。
そもそも電気方式とは?4つの方式をひと目で
電気方式は、「単相か三相か」と「電線が何本か」の組み合わせで名前がついています。単相は1つの波で送る電気、三相はタイミングを3分の1ずつずらした3つの波で送る電気です。
| 方式 | 電線の本数 | 取り出せる電圧の例 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 2本 | 100V(または200V)のどちらか1つ |
| 単相3線式 | 3本(外線2本+中性線1本) | 100Vと200Vの両方 |
| 三相3線式 | 3本 | 三相200V(高圧では6.6kV) |
| 三相4線式 | 4本(3本+中性線1本) | 三相415Vと単相240Vの両方 |
中性線(ちゅうせいせん)とは、真ん中の電位をとるための線で、大地とつないで0V近くにしてあります。中性線を足すと、1つの方式から2種類の電圧を取り出せるようになります。
電線は、荷物を運ぶトラックの道路のようなものです。道路を何本つくるか(電線の本数)と、トラックをどう走らせるか(単相か三相か)で、同じ量の荷物を運ぶのに必要な道路の広さが変わります。道路をつくる費用が電線の費用、道路で失うガソリンが電力損失にあたります。
つまり、電気方式をくらべるとは、「同じ電力を送るのに、どの方式がいちばん電線を節約できて、損失が少ないか」をくらべることです。

単相3線式はなぜ得なのか?損失が4分の1になる計算
単相3線式は、電線を1本足すだけで電圧を2倍の200Vにでき、電流を半分にできる方式です。電力損失は電流の2乗に比例するので、電流が半分になると損失は4分の1になります。
電線1本の損失 = I²R(電流の2乗 × 電線の抵抗)
例題:6kWを100Vで送るか、100/200Vで送るか
6kWの負荷(電気を使う機器)に電気を送ります。電線は1本あたり0.1Ω、力率(電気を有効に使えている割合)は1とします。
単相2線式100Vの場合
電流を出します(電力÷電圧)。6,000W ÷ 100V = 60A
行きと帰りの2本に60Aが流れます。損失 = 2本 × 60² × 0.1 = 2 × 3,600 × 0.1 = 720W
電圧降下(電線で失う電圧)は、2本 × 60A × 0.1Ω = 12V。機器には88Vしか届きません。
単相3線式100/200Vの場合
6kWを、中性線の両側に3kWずつ均等に分けてつなぎます。
外線どうしの電圧は200Vなので、電流は 6,000W ÷ 200V = 30A。半分になりました。
両側の負荷が等しいと、中性線の電流は打ち消し合って0Aです。電流が流れるのは外線2本だけ。損失 = 2本 × 30² × 0.1 = 2 × 900 × 0.1 = 180W
100Vの機器から見た電圧降下は、外線1本ぶんの 30A × 0.1Ω = 3V。中性線は0Aなので0V。機器には97Vが届きます。
同じ太さの電線で、損失は720Wから180Wへ4分の1、電圧降下は12Vから3Vへ4分の1になりました。電線は1本増えましたが、そのぶんを差し引いても大きな得です。
家のコンセントと工場の電気が、なぜ別の方式なのかがわかります
中性線の電流が0Aになるのは、両側の負荷が等しいときだけです。負荷が片寄ると中性線にも電流が流れ、損失が増えます。また、中性線が切れると片側の電圧が上がって機器が壊れることがあるので、中性線は切れないように扱います。

三相3線式とは?3本で「帰りの線」をなくす方式
三相3線式は、3本の電線が互いに行きと帰りを兼ねる方式です。3つの電流はタイミングが3分の1ずつずれているので、どの瞬間も合計が0になり、専用の帰りの線がいりません。
3人で回す回転ドアを思い浮かべてください。誰かが押しているとき、ほかの誰かが引いている状態になっていて、ドアは止まらずに回り続けます。単相2線式が「行きの道と帰りの道を1本ずつ」つくるのに対し、三相3線式は3本の道を交代で行き来に使うので、道路の無駄が少なくなります。
三相の電力 P = √3 × V(線間電圧)× I × cosθ
例題:6kWを200Vの単相と三相で送りくらべる
電圧を200Vにそろえて、単相2線式と三相3線式をくらべます。電線は1本0.1Ω、力率は1のままです。
単相2線式200V:電流 = 6,000 ÷ 200 = 30A。損失 = 2本 × 30² × 0.1 = 180W
三相3線式200V:公式を電流について並べ替えると I = P ÷(√3 × V)。I = 6,000 ÷(1.732 × 200)= 6,000 ÷ 346.4 = 約17.3A
I² を出します。17.3²は約300(正確には 6,000² ÷ 120,000 = 300)。
3本すべてに電流が流れます。損失 = 3本 × 300 × 0.1 = 90W
電線を2本から3本に増やしただけで、損失は180Wから90Wへ半分になりました。つまり、三相3線式は「電線1.5倍で損失半分」という、割のよい方式です。
三相の電力の式に√3が出てくる理由を、導出からたどれます

三相4線式とは?大きなビルで使われる2つの電圧
三相4線式は、Y結線(スター結線)の中心から中性線を引き出して、4本で送る方式です。3本の線どうしからは三相の電圧(線間電圧)、線と中性線の間からは単相の電圧(相電圧)を取り出せます。
| つなぐ場所 | 電圧の例 | 使う機器 |
|---|---|---|
| 線と線の間(線間電圧) | 415V | 大きなモーター・ポンプ・空調機 |
| 線と中性線の間(相電圧) | 240V | 照明(さらに変圧してコンセントにも) |
415Vは240Vのちょうど√3倍(240 × 1.732 = 約415.7V)です。Y結線では、線間電圧が相電圧の√3倍になるからです。
線間電圧が相電圧の√3倍になる理由が、図でわかります
三相4線式も、3相の負荷が等しければ中性線の電流は0Aです。電圧が高いぶん電流が小さくなり、4つの方式の中でいちばん電線を節約できます。そのため、電気をたくさん使う大型ビルや工場で使われます。電圧の組み合わせは設備によって異なるので、実際の値は設計図や電力会社の資料で確認してください。

必要な電線の量をくらべる(37.5%・75%・33.3%の出し方)
電線量の比較は、「同じ電力を、同じ距離、同じ損失で送るには、どれだけの銅が必要か」をくらべるものです。銅の量は「本数×太さ」で決まり、太さは抵抗に反比例します(太い電線ほど抵抗が小さい)。
電線量 ∝ 本数 ÷ 1本の抵抗
三相3線式の75%を導いてみる
送る電力をP、電圧をV、力率をcosθとします。単相2線式の電線1本の抵抗をR₁、三相3線式の電線1本の抵抗をR₃とします。
単相2線式の電流は I₁ = P ÷(V cosθ)。損失は2本分なので、2 × I₁² × R₁ = 2P²R₁ ÷(V cosθ)²
三相3線式の電流は I₃ = P ÷(√3 V cosθ)。I₃² = P² ÷(3(V cosθ)²)なので、損失は3本分で 3 × I₃² × R₃ = P²R₃ ÷(V cosθ)²
損失を等しくします。共通の P² ÷(V cosθ)² を消すと、2R₁ = R₃。三相3線式は、抵抗が2倍(太さが半分)の電線でよいことがわかります。
電線量の比 =(3本 ÷ 2R₁)÷(2本 ÷ R₁)= 3/2 ÷ 2 = 3/4 = 75%
同じやり方で、単相3線式は抵抗4倍の電線3本で 3/4 ÷ 2 = 3/8 = 37.5%、三相4線式は抵抗6倍の電線4本で 4/6 ÷ 2 = 1/3 = 約33.3%になります。
| 方式 | 本数 | 1本の抵抗(損失を等しくしたとき) | 電線量 |
|---|---|---|---|
| 単相2線式 | 2 | R₁ | 100% |
| 単相3線式 | 3 | 4R₁ | 37.5% |
| 三相3線式 | 3 | 2R₁ | 75% |
| 三相4線式 | 4 | 6R₁ | 33.3% |
この表は、単相3線式は「外線と中性線の間の電圧」、三相4線式は「線と中性線の間の電圧(相電圧)」を、単相2線式の電圧と同じにした場合の値です。中性線は外線と同じ太さ、負荷は平衡(各相が等しい)としています。条件が変わると数字も変わるので、問題文の条件を必ず確かめてください。

1線あたりに送れる電力と、電圧降下の式の違い
電線1本あたりにどれだけの電力を送れるかでくらべても、同じ順位になります。電線1本に流せる電流と、電圧をそろえて計算します。
例題:電圧100V・電流10A・力率1でくらべる
| 方式 | 送れる電力 | 1線あたり | 単相2線式との比 |
|---|---|---|---|
| 単相2線式 | 100 × 10 = 1,000W | 1,000 ÷ 2 = 500W | 100% |
| 単相3線式 | 2 × 100 × 10 = 2,000W | 2,000 ÷ 3 = 約667W | 約133% |
| 三相3線式 | √3 × 100 × 10 = 約1,732W | 1,732 ÷ 3 = 約577W | 約115% |
| 三相4線式 | 3 × 100 × 10 = 3,000W | 3,000 ÷ 4 = 750W | 150% |
単相3線式と三相4線式の100Vは、中性線との間の電圧です。単相3線式は100Vの負荷を2組、三相4線式は3組つなげるので、2倍・3倍の電力になります。
電圧降下は「係数」だけが違う
電圧降下の近似式は、どの方式も v = K × I ×(R cosθ + X sinθ)の形です。Rは電線の抵抗、Xはリアクタンス(交流の流れにくさ)です。方式で変わるのは、前につく係数Kだけです。
| 方式 | 係数K | 理由 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 2 | 行きと帰りの2本で電圧が下がる |
| 単相3線式(平衡) | 1 | 中性線に電流が流れず、外線1本分だけ下がる |
| 三相3線式 | √3 | 1本分の降下を、線間電圧に直すと√3倍になる |
| 三相4線式(平衡・相電圧で見る) | 1 | 中性線に電流が流れず、1本分だけ下がる |
つまり、係数Kさえ覚えておけば、どの方式でも同じ式で電圧降下を計算できます。

実際にどこで使われている?
4つの方式は、計算上の得だけでなく、「どんな機器を動かすか」で使い分けられています。
| 方式 | 主な使い道 | 選ばれる理由 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 小規模な住宅・街路灯、建物内のコンセント回路 | いちばん簡単で、小さな電力なら十分 |
| 単相3線式 | 住宅・店舗・ビルへの引込み | 100Vの家電と200Vのエアコン・IHを両方使える |
| 三相3線式 | 工場・ビルの動力(200V)、電柱の高圧配電線(6.6kV) | モーターを回しやすく、電線を節約できる |
| 三相4線式 | 大型ビル・工場(415V/240V) | 大きな電力を、少ない電線で、2つの電圧で送れる |
家の分電盤の主幹ブレーカーに電線が3本来ていれば、それが単相3線式です。工場の動力盤やキュービクル(高圧の電気を受けて変圧する箱型の設備)から先は、三相3線式200Vが多く見られます。
電柱を見上げると、上のほうに高圧の三相3線式(3本)、その下に低圧の線が張られていることが多いです。柱上変圧器で6.6kVを100/200Vに下げ、単相3線式で各家庭へ引き込んでいます。

よくある間違い・つまずきポイント
電気方式の計算でつまずくのは、ほとんどが次の5つです。答えを出したら、この順に見直してください。
1. 基準の電圧をそろえずにくらべる
単相3線式の「100V」と「200V」のどちらを単相2線式とそろえるかで、結果が変わります。電線量37.5%は、中性線との間の100Vをそろえた場合です。問題文の条件を最初に確認します。
2. 平衡なのに中性線の損失を数える
負荷が平衡なら中性線の電流は0Aで、損失も0Wです。単相3線式の損失を3本分で計算すると、1.5倍の値になってしまいます。
3. 三相の電流で√3を忘れる
三相3線式の電流は I = P ÷(√3 V cosθ)です。√3を忘れて P ÷ V で出すと、電流が約1.73倍、損失は3倍に計算されます。
4. 三相の損失を2本分で計算する
単相2線式の「2本分」のくせで、三相も2本分にしてしまう間違いです。三相3線式は3本すべてに電流が流れるので、損失は3I²Rです。
5. 電線量を「本数」だけで考える
本数が多い三相4線式が、いちばん電線が少なくてすみます。電線量は「本数×太さ」で、損失を等しくしたときの太さまで含めてくらべます。

よくある質問
まとめ:電圧を上げて電流を減らすほど、電線は少なくてすむ
- 電気方式は、単相2線式・単相3線式・三相3線式・三相4線式の4つ
- 電線量(単相2線式=100%):単相3線式37.5%、三相3線式75%、三相4線式33.3%
- 1線あたりの電力:単相3線式133%、三相3線式115%、三相4線式150%
- 単相3線式は電流が半分になり、損失と電圧降下が4分の1
- 電圧降下の係数Kは、単相2線式2、三相3線式√3、平衡した単相3線式・三相4線式1
どの方式の得も、もとをたどれば「電圧を高くして電流を小さくすると、損失は電流の2乗で減る」という1つの理由に行きつきます。まずは6kWの例題を自分の手で計算して、4分の1になることを確かめてみてください。

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次に読むべき記事
ここまでで、電気方式によって電線の量や損失がどう変わるかがわかりました。次は、配電線をどんな形に張りめぐらせるか、そして長い線路で電圧と電力がどれだけ失われるかへ進みましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。