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📚 この記事でわかること
- 2標本t検定がどんな場面で使えるかわかる
- 「プールした分散」の意味と計算方法が理解できる
- 具体的な計算手順を例題で実践できる
- 一標本t検定との違いがスッキリわかる
前回までは、「1つのグループ」を基準値と比較するt検定を学びましたね。
でも実務では、こんな場面の方が多くないですか?
🤔 「A組とB組、どっちのテストの平均が高い?」
🤔 「新薬と従来薬、効果に差はあるの?」
🤔 「A工場とB工場、品質に違いはある?」
これらは全て、「2つのグループの平均を比較する」問題です。
今回学ぶ「2標本t検定」を使えば、この疑問に統計的な根拠を持って答えられるようになります。
結論|まず30秒でわかる答え
2標本t検定は、独立した2つのグループの平均に差があるかを確かめる検定です。2つの分散をデータ数で重み付けして1つにまとめた「プールした分散」で検定統計量tを計算し、t分布の値と比べて判定します。前提は独立・正規性・等分散の3つで、分散が等しいと言えないときはウェルチのt検定を使います。
t検定とは?種類の早見表
t検定は、平均に差があるかどうかを、t分布を使って確かめる検定の総称です。t値は「平均の差が、そのばらつき(標準誤差)の何倍あるか」を表す数で、大きいほど偶然では説明しにくい差です。データの取り方で、次の4つを使い分けます。
| こんなとき | 使うt検定 |
| 1つのグループの平均を、基準値(規格値など)と比べる | 一標本のt検定 |
| 別々の2つのグループを比べる(ばらつきが同じくらい) | 2標本のt検定(この記事。スチューデントのt検定) |
| 別々の2つのグループを比べる(ばらつきが違う) | ウェルチのt検定 |
| 同じ人・同じ部品の前後を比べる | 対応のあるt検定(前後の差を1つのデータとみなし、一標本のt検定と同じ計算をする) |
2標本t検定とは?|「2つのグループ」を比べる検定
一標本と二標本の違い
まず、一標本と二標本の違いを整理しましょう。
t検定は「仮説検定」の1つです。帰無仮説・P値・有意水準の考え方は次の記事で手順から確かめられます。
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仮説検定とは?帰無仮説・P値・有意水準と手順5ステップを例題で図解|検定の計算ツール付き
検定の手順5ステップを例題で。計算ツールつき
📊
一標本t検定
1つのグループ vs 基準値
例:「この部品の平均は
規格50mmから外れていないか?」
📊 ⚔️ 📊
二標本t検定
グループA vs グループB
例:「A組とB組の平均に
差はあるか?」
「スチューデントのt検定」という名前の由来
2標本t検定は、別名「スチューデントのt検定(Student's t-test)」とも呼ばれます。
📜 豆知識:なぜ「スチューデント」?
この検定を発明したのは、イギリスの統計学者ウィリアム・ゴセットさん。
彼はギネスビール社で働いていましたが、会社の方針で本名での論文発表が禁止されていました。
そこで「Student(学生)」というペンネームで論文を発表。
それが今でも「スチューデントのt検定」と呼ばれる理由です🍺
2標本t検定を使う前提条件
この検定を使うには、いくつかの前提条件があります。
⚠️ 2標本t検定の前提条件
- 2つのグループが独立している(別々の人・モノから取ったデータ)
- 各グループのデータが正規分布に従う(または十分なデータ数がある)
- 2つのグループの分散が等しい(等分散)
※ 3つ目の「等分散」の条件が満たされない場合は、ウェルチのt検定を使います。
「等分散かどうか」は、F検定で事前に確認できます。
「プールした分散」のイメージ|2つを合体させる
2標本t検定で最も重要な概念が「プールした分散(pooled variance)」です。
たとえ話で理解しよう|「2つのプールを合体」
🏊 「プール」でたとえると…
+
→
🏊♂️
合体プール
水温:約27.5℃
(加重平均)
2つのプールを合体させると、水温は「水量で重み付けした平均」になりますよね。
水量が多いプールBの水温(28℃)に近くなります。
「プールした分散」も同じ考え方。
2つのグループの分散を「データ数で重み付けして合体」させるのです。
プーリングについてもっと基礎からちゃんと学びたい方はこちらの記事がおすすめです。
プールした分散の公式
📐 プールした分散の公式
s²p = [(n₁−1)s₁² + (n₂−1)s₂²] / (n₁ + n₂ − 2)
s₁²:グループ1の不偏分散
s₂²:グループ2の不偏分散
n₁, n₂:それぞれのデータ数
n₁ + n₂ − 2:合計の自由度
難しそうに見えますが、やっていることは単純です。
💡 公式の意味
分子:各グループの「偏差平方和」を足し合わせる
分母:全体の自由度で割る
→ つまり、「2つのグループのバラつき情報を、データ数で重み付けして平均する」ということ!
2標本t検定の公式
プールした分散を使って、t値を計算します。
📐 2標本t検定の公式
t = (x̄₁ − x̄₂) / √[s²p(1/n₁ + 1/n₂)]
x̄₁, x̄₂:それぞれの標本平均
s²p:プールした分散
自由度:n₁ + n₂ − 2
🔄 一標本t検定との比較
|
一標本t検定 |
二標本t検定 |
| 比較対象 |
x̄ と μ₀ |
x̄₁ と x̄₂ |
| 分散 |
s²(1つだけ) |
s²p(プール) |
| 自由度 |
n − 1 |
n₁ + n₂ − 2 |
具体例で計算してみよう
実際に手を動かして計算してみましょう。
例題:A組とB組のテスト成績に差はある?
📋 問題設定
ある学校で、A組とB組に異なる勉強法を試した後、同じテストを実施しました。
|
A組 |
B組 |
| データ数 |
n₁ = 8人 |
n₂ = 10人 |
| 平均点 |
x̄₁ = 75点 |
x̄₂ = 68点 |
| 不偏分散 |
s₁² = 36 |
s₂² = 49 |
問い:A組とB組の平均に有意な差はあるか?
(有意水準α = 5%、両側検定、等分散を仮定)
Step 1:仮説を立てる
帰無仮説 H₀:μ₁ = μ₂(A組とB組の母平均は等しい=差がない)
対立仮説 H₁:μ₁ ≠ μ₂(A組とB組の母平均は異なる=差がある)
Step 2:プールした分散を計算する
🧮 プールした分散の計算
s²p = [(n₁−1)s₁² + (n₂−1)s₂²] / (n₁ + n₂ − 2)
s²p = [(8−1)×36 + (10−1)×49] / (8 + 10 − 2)
s²p = [7×36 + 9×49] / 16
s²p = [252 + 441] / 16
s²p = 693 / 16
s²p = 43.31
💡 計算のイメージ
A組の分散(36)とB組の分散(49)を、データ数で重み付けして平均。
B組の方がデータ数が多い(10人 vs 8人)ので、結果はB組の分散(49)に近い43.31になりました。
Step 3:t値を計算する
🧮 t値の計算
t = (x̄₁ − x̄₂) / √[s²p(1/n₁ + 1/n₂)]
t = (75 − 68) / √[43.31 × (1/8 + 1/10)]
t = 7 / √[43.31 × (0.125 + 0.1)]
t = 7 / √[43.31 × 0.225]
t = 7 / √9.74
t = 7 / 3.12
t = 2.24
Step 4:自由度と臨界値を確認する
自由度はn₁ + n₂ − 2 = 8 + 10 − 2 = 16です。
t分布表から、自由度16、α=5%(両側)の臨界値を調べると…
自由度16、α=5%(両側)の臨界値
t = ±2.120
Step 5:判定する
計算結果はt = 2.24です。これは2.120を超えているので…
🎯 判定結果
帰無仮説を棄却する
→ A組とB組の平均に有意な差があると言える
A組の平均75点とB組の平均68点の差(7点)は、「たまたま」ではなく、統計的に意味のある差だと判断されました。
有意差の判断方法|臨界値で見るか、P値で見るか
① 臨界値で見る:|t| が下の表の値(両側検定)より大きければ有意差あり。
② P値で見る:P値が有意水準(ふつう0.05)より小さければ有意差あり。この例題では t=2.24・自由度16 で、両側のP値は約0.039 です。
Excelなら、P値は =T.DIST.2T(2.24,16)、データからそのまま求めるなら =T.TEST(範囲1,範囲2,2,2)(両側・等分散)で出せます。
| 自由度 | 有意水準5%(両側) | 有意水準1%(両側) |
| 5 | 2.571 | 4.032 |
| 10 | 2.228 | 3.169 |
| 16 | 2.120 | 2.921 |
| 20 | 2.086 | 2.845 |
| 30 | 2.042 | 2.750 |
| 60 | 2.000 | 2.660 |
| ∞(とても大きい) | 1.960 | 2.576 |
表の値は t 分布表の値です。ほかの自由度はt分布表の見方で。
🔧 現場ではこう使う/ここでつまずく
この検定が製造現場で出てくる典型は「ライン変更」「材料切り替え」「金型更新」の前後で、寸法や強度の平均が動いたかを判定する場面です。たとえば部品の長さを旧ロットと新ロットで各10個ずつ測り、平均に差があるかを2標本t検定で確認する、といった使い方をします。
ここで初心者が最もつまずくのが「いきなり等分散のt検定を回してしまう」ことです。本文の例題は「等分散を仮定」とありますが、現場のデータは新条件のほうがバラつくことが珍しくありません。順番としては、まずF検定で2群の分散が等しいかを確認し、等しければ本記事のプール分散を使うt検定、等しくなければウェルチのt検定、と分岐させるのが基本です(最近は、F検定を挟まずに最初からウェルチのt検定を使う考え方も広まっています)。この一手を飛ばすと「分散が違うのに同じ物差しで比べた」ことになり、判定そのものが信用できなくなります。
もう一つの落とし穴が「対応の有無」の取り違えです。同じ部品を加工前後で測った(同じ個体を2回測る)データに2標本t検定を当てると、個体差というノイズを消せず差を見逃します。この場合は対応のあるt検定が正解です。「別々のモノか/同じモノの前後か」を最初に切り分けるクセをつけると、検定選びでほぼ迷わなくなります。
❓ よくある質問
Q. 2標本t検定とウェルチのt検定はどう使い分ける?
A. F検定で2群の分散が等しければ本記事のt検定、等しくなければウェルチを使います。迷ったらウェルチでも可です。
Q. データ数が2群で違っても使える?
A. 使えます。例題のようにn₁=8、n₂=10と違ってもプール分散がデータ数で重み付けして処理します。
2つのグループのバラつき(分散)が違うときは、プールした分散ではなくウェルチのt検定を使います。
あわせて読みたい
ウェルチのt検定|バラつきが違う2群を比較する方法
バラつきが違う2群を比較する方法
2標本t検定の計算ツール|平均・分散かデータを入れるだけ
2つのグループの「データの数・平均・不偏分散」を入れるか、測ったデータをそのまま貼ってください。プールした分散・t値・自由度・棄却域の境界・P値を、上の例題と同じ順番で出して判定します。最初の値は上の例題(A組 n₁=8・平均75・s₁²=36、B組 n₂=10・平均68・s₂²=49)です。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。この検定は2つの分散が等しいことを前提にしています。分散が大きく違うときは、F検定で確かめてからウェルチのt検定を使ってください。
ツールで出している「プールした分散」は、2つのグループの誤差をまとめる「プーリング」の考え方です。
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プーリングとは?誤差を併合する意味と手順
誤差を併合する意味と手順
2標本t検定の手順まとめ
📋 2標本t検定(等分散)の5ステップ
1
仮説を立てる
H₀: μ₁ = μ₂、H₁: μ₁ ≠ μ₂
2
プールした分散 s²p を計算
2つの分散をデータ数で重み付けして合体
3
t値を計算
t = (x̄₁ − x̄₂) / √[s²p(1/n₁ + 1/n₂)]
4
t分布表から臨界値を調べる
自由度 = n₁ + n₂ − 2
等分散でない場合は?|ウェルチのt検定
今回の検定は、「2つのグループの分散が等しい(等分散)」という前提で計算しました。
でも、等分散でない場合はどうするのでしょうか?
⚠️ 等分散かどうかの確認方法
2標本t検定を使う前に、F検定で等分散性を確認するのがベストです。
F検定の結果
・「等分散である」→ 今回のスチューデントのt検定を使う
・「等分散でない」→ ウェルチのt検定を使う
次の記事で、等分散でない場合に使う「ウェルチのt検定」を学びましょう。
まとめ|2標本t検定は「2グループ対決」の検定
📝 この記事のまとめ
- 2標本t検定は、2つの独立したグループの平均を比較する検定
- 別名「スチューデントのt検定」(発明者のペンネームが由来)
- プールした分散=2つの分散をデータ数で重み付けして合体
- 前提条件は「独立」「正規性」「等分散」の3つ
- 等分散でない場合はウェルチのt検定を使う
🎓 覚え方のコツ
2標本t検定 = 「A vs B」の対決審判
「プール」した分散で公平にジャッジ!
S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年
製造業の品質保証の現場で、ロット間の差の判定や工程変更前後の比較に、本記事のt検定をはじめとする検定手法を実際に使ってきました。F検定で等分散を確認してからt検定を選ぶ、対応の有無で手法を切り替えるといった「教科書には一行で書かれているが現場では迷いやすい」部分を、自分でつまずいた経験を踏まえて解説しています。
この記事の理解を深める本と道具
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