電力科目の解説

調整池式水力発電所の計算|ピーク運転の使用水量と有効貯水量を過去問で図解

調整池式水力発電所のアイキャッチ。川の水を調整池にためて、発電所でまとめて使う

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調整池式水力発電所は、川の水を調整池に1日〜1週間ほどためて、ピークの時間に自然流量より多くの水を使って発電する方式です。計算は「1日に入る水の量=使う水の量」と P=9.8QHη の2つで、式は3つの式の節、解き方は過去問の節へ。

結論|まず30秒でわかる答え

調整池式水力発電所とは、川の水を小さな池(調整池)に1日〜1週間ほどためておき、電気が多く使われる時間帯(ピーク)に、自然に流れてくる量(自然流量)より多くの水を使って発電する水力発電所です。計算は「1日に池へ入る水の量=1日に発電で使う水の量」というつり合いの式と、出力 P=9.8QHη[kW]の2つで解けます。

調整池式水力発電所のアイキャッチ。川の水を調整池にためて、発電所でまとめて使う

調整池式水力発電所とは?夜にためて、昼にまとめて使う

電気の使われる量は、1日の中で大きく変わります。昼間や夕方は多く、夜中は少なくなります。川の水は一日中ほぼ同じ量で流れてくるので、そのまま使う流込式(ながれこみしき)では、出力を時間帯に合わせて変えられません。

調整池式は、発電所の上流に小さな池をつくり、電気があまり要らない時間に水をため、ピークの時間にまとめて流して大きな出力を出します。

たとえると

お小遣いの貯金と同じです。毎日100円ずつもらって(自然流量)、ふだんは使わずに貯金し(貯水)、週末にまとめて使えば(ピーク運転)、一度に大きな買い物ができます。ただし、使えるお金の合計は、もらった合計を超えられません。

方式水のため方調整する期間
流込式ためない。流れてきた水をそのまま使う調整しない
調整池式小さな池にためる1日〜1週間ほど
貯水池式大きなダムにためる季節(雨の多い時期にためて、渇水期に使う)
揚水式下の池から上の池へ、電気を使ってくみ上げる1日〜数日(電気が余る時間にくみ上げる)
POINT

つまり、調整池式は「1日に使える水の総量は自然流量で決まっているが、使う時間を寄せられる」発電所です。計算問題は、すべてこの一文から式が立ちます。

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調整池式水力発電所のしくみの図。夜は調整池に水をため、ピークの時間にまとめて使う。1日に入る水と1日に使う水は等しい

調整池式の計算で使う3つの式

調整池式の計算は、次の3つの式の組み合わせです。流量(1秒あたりの水の量)を、時間をかけて「水の量」に直すのがポイントです。

求めるもの式ポイント
水の量[m³]流量[m³/s]×3,600×時間[h]1時間=3,600秒
1日のつり合い自然流量×24時間=Σ(使用水量×その時間)池に入る量と使う量は等しい
必要な有効貯水量(使用水量−自然流量)×3,600×ピークの時間ピークで足りない分を池から出す
出力[kW]P=9.8QHηHは有効落差[m]、ηは水車×発電機の効率
注意|ここで間違えやすい

有効貯水量は「ためている時間にたまる水の量」でも求められます。どちらで求めても同じ値になるのは、ピークで池から出す量と、ほかの時間に池へためる量が等しいからです。問題の運転パターンに合わせて、計算しやすいほうを選びましょう。

例題:1日の電力量は同じでも、出力はピークに集められる

自然流量が8m³/sで一定、有効落差50m、水車と発電機の総合効率0.85の調整池式発電所を考えます(自作の例題です)。

一定の流量で24時間発電した場合

STEP 1

出力:P=9.8×8×50×0.85≒3,332kW

STEP 2

1日の電力量:3,332×24≒79,968kWh

4時間のピークに水をまとめた場合

STEP 1

1日に入る水:8×3,600×24=691,200m³

STEP 2

4時間で使う使用水量:Q=691,200÷(3,600×4)=48m³/s

STEP 3

必要な有効貯水量:(48−8)×3,600×4=576,000m³(ためる20時間の量 8×3,600×20 と同じ)

STEP 4

ピークの出力:P=9.8×48×50×0.85≒19,992kW

STEP 5

1日の電力量:19,992×4≒79,968kWh

POINT

1日の電力量は同じ約80,000kWhのまま、出力は約3,300kWから約20,000kWへ6倍になりました。調整池式の値打ちは「電気の量を増やす」ことではなく、「必要な時間に大きな出力を出せる」ことにあります。

調整池式の例題の図。自然流量8m³/sで一定運転なら約3,332kWで24時間、4時間のピーク運転なら約19,992kW。どちらも1日約79,968kWh

電験三種の過去問で確かめる

調整池式の計算は、電力科目だけでなく法規科目(電気施設管理)でも出題されています。運転パターンの図を読んで、つり合いの式を立てる問題です。

年度・問題条件答え
令和4年度上期 問13(法規)自然流量10m³/s、12時間貯水、残り12時間のうち10時間でQₚ有効貯水量 432,000m³、Qₚ=22m³/s、出力 約14,700kW
平成30年度 問15(電力)自然流量6m³/s、ピーク10m³/sで6時間有効貯水量 86,400m³、オフピーク 約4,000kW
令和7年度上期 問15(電力)渇水量8m³/sで1日6時間運転使用流量32m³/s、貯水量518,400m³
平成24年度 問13(法規)有効容量360,000m³、河川流量10m³/s満水まで10時間 → 運転終了は22時

平成30年度 問15の解き方

STEP 1

ピークで池から出す水:(10−6)×3,600×6=86,400m³ → これが必要な有効貯水量

STEP 2

1日のつり合い:6×24=10×6+Q₀×18 → 144=60+18Q₀

STEP 3

オフピークの使用水量:Q₀=84÷18≒4.667m³/s

STEP 4

オフピークの出力:P=9.8×4.667×100×0.90×0.96≒3,951kW → 約4,000kW

注意|ここで間違えやすい

つり合いの式では、両辺の「×3,600」は約分できます。m³/s と時間[h]のまま掛け算して比べても、答えは同じです。

調整池式の計算でよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
有効貯水量をピークの使用水量×時間にする自然流量はピーク中も入ってくるので、差(Q−自然流量)だけ池から出る
3,600を掛け忘れるm³/sを1時間あたりにするには×3,600
1日の電力量が増えると考える水の総量は同じなので、電力量は(効率が同じなら)変わらない
効率を片方しか掛けない水車効率と発電機効率の両方を掛ける
運転パターンの時間を数え間違える図の時刻から、貯水・ピーク・オフピークの時間を先に書き出す
調整池式の計算のよくある間違いの図。有効貯水量は使用水量と自然流量の差で求め、3,600を掛け、電力量は増えず、効率は水車と発電機の両方を掛ける

よくある質問

Q. 調整池式水力発電所とは何ですか?

A. 川の水を小さな池に1日〜1週間ほどため、電気が多く使われる時間にまとめて使って発電する水力発電所です。

Q. 調整池式と貯水池式の違いは?

A. 調整池式は1日〜1週間ほどの短い期間で水量を調整し、貯水池式は大きなダムで季節をまたいで調整します。

Q. 必要な有効貯水量の求め方は?

A. ピークで足りない分、つまり(使用水量−自然流量)×3,600×ピークの時間で求めます。

Q. 水力発電の出力の式は?

A. P=9.8QHη[kW]です。Qは使用水量[m³/s]、Hは有効落差[m]、ηは水車と発電機の総合効率です。

Q. 調整池式にすると発電電力量は増えますか?

A. 増えません。使える水の総量は自然流量で決まるので、出力をピークに集めるだけです。

この記事の要点
  • 調整池式は、ためた水をピークにまとめて使う水力発電所
  • 計算の土台は「1日に入る水=1日に使う水」
  • 水の量=流量×3,600×時間
  • 必要な有効貯水量=(使用水量−自然流量)×3,600×ピークの時間
  • 出力 P=9.8QHη。電力量は増えず、出力を寄せるだけ
参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

「調整池式水力発電所」を試験の得点につなげるなら、電力科目の教科書で前後の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「電力」の教科書と問題集が1冊になった本です。

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S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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