電力科目の解説

ベルヌーイの定理とは?3つの水頭と連続の式を水力発電の過去問で図解|計算ツール付き

ベルヌーイの定理を表すアイキャッチ。ダムから発電所へ下る水圧管の中を水が流れている

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ベルヌーイの定理は「位置水頭 h + 圧力水頭 p/ρg + 速度水頭 v²/2g = 一定」という、水のエネルギー保存の式です。連続の式 Q=Av と組み合わせた解き方は流速と水圧を求める手順、答えは計算ツールで確かめられます。

結論|まず30秒でわかる答え

ベルヌーイの定理は、管の中を流れる水について「位置水頭 h + 圧力水頭 p/ρg + 速度水頭 v²/2g = 一定」が成り立つという、水のエネルギー保存の式です。損失を無視すると、水が低い所へ下りるほど、その高さの分が水圧と流速に変わります。水力発電の計算では、流量が管のどこでも同じという連続の式 Q=Av と組み合わせて、ある断面の流速と水圧を求めます。

ベルヌーイの定理を表すアイキャッチ。ダムから発電所へ下る水圧管の中を水が流れている

ベルヌーイの定理とは?水がもつ3つのエネルギーの合計は一定

管の中を流れる水は、3種類のエネルギーをもっています。高い所にあることによるエネルギー、押されていること(水圧)によるエネルギー、動いていることによるエネルギーです。ベルヌーイの定理は、損失がなければ、この3つの合計がどの断面でも同じだという決まりです。

公式
h + p/(ρg) + v²/(2g) = 一定
項意味単位をそろえると
位置水頭 h基準からの高さm
圧力水頭 p/(ρg)水圧 p を、同じ圧力を生む水の高さに直したものm
速度水頭 v²/(2g)流速 v を、その速さを生む落下の高さに直したものm

3つとも「高さ[m]」にそろえてあるので、水頭と呼びます。ρ は水の密度(1,000kg/m³)、g は重力加速度(9.8m/s²)です。

たとえると

ジェットコースターと同じです。高い所では速度がゆっくりでも、下りるにつれて高さのエネルギーが速さに変わります。水の場合は「速さ」のほかに「水圧」にも変わるのが違いです。

ベルヌーイの定理の図。位置水頭h、圧力水頭p÷ρg、速度水頭v²÷2gの合計は損失がなければ一定で、3つとも単位はm

連続の式 Q=Av:細い所ほど速く流れる

水は押し縮められないので、管に水が満ちて流れているとき、どの断面でも1秒間に通る水の量(流量 Q[m³/s])は同じです。これが連続の式です。

公式
Q = A₁v₁ = A₂v₂(A:断面積[m²]、v:流速[m/s])

円い管なら A=π(内径/2)² なので、内径が2.5mから2.0mに細くなると、断面積は (2.5/2.0)²=1.5625分の1 になり、流速は1.5625倍になります。

たとえると

ホースの先を指でつぶすと、水が勢いよく飛ぶのと同じです。通る水の量は変わらないので、通り道が狭いほど速く流れます。

水頭の大きさの目安

量水頭に直すと
水圧 9.8kPa1m
水圧 98kPa10m
水圧 3,000kPa約306m
流速 3m/s約0.46m(3²÷19.6)
流速 6.25m/s約1.99m
POINT

つまり、水力発電の水圧管では、高さと水圧の水頭が大きく、速度水頭は数mにとどまることがほとんどです。それでも計算の答えの差になるので、省略せずに入れます。

連続の式の図。内径2.5mから2.0mに細くなる管では、流量Q=A₁v₁=A₂v₂が同じなので、流速は(2.5÷2.0)²=1.5625倍になる

水圧管の流速と水圧を求める手順

試験の問題は、ほとんどが「断面Aの内径・流速・水圧と、断面Bの内径・高さの差がわかっていて、断面Bの流速と水圧を求める」形です。次の順で解きます。

STEP 1

断面積を出す:A=π×(内径/2)²

STEP 2

連続の式で断面Bの流速を出す:vB=vA×AA/AB

STEP 3

低いほうの断面を高さの基準(h=0)にして、ベルヌーイの定理の式を立てる

STEP 4

両辺に ρg を掛けて、圧力[Pa]の式にする:pB=ρg(hA−hB)+pA+½ρvA²−½ρvB²

STEP 5

Pa を kPa に直す

注意|ここで間違えやすい

4つ目の形にすると、kPa と m の換算がいりません。ρg×高さ[m]が「高さの差でふえる水圧」、½ρv² が「流速の分の圧力」です。½ρv² は、令和7年度下期 問2で問われた「単位体積あたりの運動エネルギー[J/m³]」と同じ形です。

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ベルヌーイの定理の計算手順の図。断面Aは内径2.2m・流速3m/s・24kPa、断面Bは30m低く内径2m。断面積を出し、連続の式で断面Bの流速約3.63m/s、水圧は294,000+24,000+4,500−6,588で約316kPa

電験三種の過去問で確かめる

令和3年度 問2:流速と水圧を求める

断面Aは内径2.2m・流速3m/s・圧力24kPa。断面Aより30m低い断面Bは内径2m。断面Bの流速と水圧は?(円周率3.14)

STEP 1

AA=3.14×1.1²≒3.799m²、AB=3.14×1²=3.14m²

STEP 2

vB=3×3.799÷3.14≒3.63m/s

STEP 3

pB=1,000×9.8×30+24,000+½×1,000×3²−½×1,000×3.63²

STEP 4

=294,000+24,000+4,500−6,588≒315,900Pa → 約316kPa(答3)

平成18年度 問12:細くなる管

点Aは内径2.5m・流速4.0m/s・圧力25kPa。点Aより30m低い点Bは内径2.0m。vB=4.0×(2.5/2.0)²=6.25m/s、pB=294,000+25,000+8,000−19,531≒307,500Pa → 約307kPa(答4)。

平成26年度 問15:全水頭から水車出力を求める

ペルトン水車の中心線上のA点で、圧力3,000kPa・流速5.3m/s・内径1.2m。(a) 流量 Q=3.14...×0.6²×5.3≒6m³/s。(b) 有効落差 H=3,000×10³÷(1,000×9.8)+5.3²÷(2×9.8)≒306.1+1.4≒307.6m、出力 P=9.8×5.99×307.6×0.885≒16,000kW(どちらも答4)。

ベルヌーイの定理は、電力の水力の範囲で、計算問題(A問題・B問題)として何度も出ています。問題文で式が与えられないこともあるので、形ごと覚えておきましょう。

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ベルヌーイの定理の計算ツール

2つの断面の内径と高さの差、断面Aの流速と水圧を入れると、断面Bの流速と水圧を求めます。断面Bのほうが低いときは、高さの差を正の値で入れます。

入れた数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

水の密度1,000kg/m³、重力加速度9.8m/s²、円周率はπで計算します。損失は無視しています。円周率を3.14とする問題では、小数点以下の値が少し変わります。

ベルヌーイの定理でよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
水圧[kPa]と水頭[m]をそのまま足す圧力は ρg で割って m に直すか、全部を ρg 倍して Pa にそろえる
細い所ほど流速が遅い連続の式 Q=Av で、断面積が小さいほど流速は速い
内径をそのまま断面積にする断面積は π×(内径/2)²。内径の比は2乗で効く
速度水頭は小さいので省く答えの選択肢の差になる。v²/2g まで入れる
高さの基準をどちらの断面にするかで答えが変わる基準はどこでもよい。差だけが効くので、低いほうを0にすると楽
ベルヌーイの定理のよくある間違いの図。水圧と水頭は単位をそろえて足す、細い所ほど流速は速い、断面積はπ×(内径÷2)²、速度水頭も省かない

よくある質問

Q. ベルヌーイの定理とは何ですか?

A. 流れる水の位置水頭・圧力水頭・速度水頭の合計が、損失を無視するとどの断面でも一定になるという、エネルギー保存の式です。

Q. 水頭とは何ですか?

A. 水がもつエネルギーを、水の高さ[m]に直して表したものです。位置水頭・圧力水頭・速度水頭の3つがあります。

Q. 連続の式とは何ですか?

A. 管に水が満ちて流れるとき、どの断面でも流量が同じという式で、Q=A₁v₁=A₂v₂と表します。

Q. 水圧1mは何kPaですか?

A. 水の密度1,000kg/m³、重力加速度9.8m/s²なら、水頭1mは約9.8kPaの水圧にあたります。

Q. ベルヌーイの定理は水力発電の何に使いますか?

A. 水圧管の流速や水圧、有効落差を求めるのに使います。流量と有効落差から水車の出力も計算できます。

この記事の要点
  • ベルヌーイの定理:h+p/(ρg)+v²/(2g)=一定(損失なし)
  • 3つの項はどれも高さ[m]にそろえた「水頭」
  • 連続の式 Q=A₁v₁=A₂v₂。細い所ほど速く流れる
  • Pa の式 pB=ρgΔh+pA+½ρvA²−½ρvB² にすると換算がいらない
  • 水頭1m≒9.8kPa
ベルヌーイの定理のまとめの図。位置水頭・圧力水頭・速度水頭の合計は一定、3つとも単位はm、連続の式Q=A₁v₁=A₂v₂、水頭1mは約9.8kPa
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

「ベルヌーイの定理」を試験の得点につなげるなら、電力科目の教科書で前後の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「電力」の教科書と問題集が1冊になった本です。

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S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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