機械科目の解説

【完全理解】変圧器の並行運転の条件|4つのルールを図解でマスター

😰 こんな悩み、ありませんか?

  • 並行運転の条件が4つもあって覚えられない
  • なぜその条件が必要なのか理由が分からない
  • 「極性」や「位相」の意味がピンとこない
  • 条件を満たさないと何が起こるのか想像できない

📌 この記事の結論

並行運転の条件は「同じ向き」「同じ電圧」「同じ性格」「同じタイミング」の4つ。2人で荷物を運ぶときと同じで、息が合わないとケンカ(循環電流)が起きます!

📚 前提知識: この記事を読む前に「三相変圧器の結線」を読んでおくと理解が深まります。用語は「変圧器の用語辞典」で確認できます。

変圧器シリーズもいよいよ最終回です!

今回のテーマは「並行運転」。2台以上の変圧器を同時に動かして、大きな電力を送るための技術です。

でも、変圧器を並べればOKというわけではありません。条件を満たさないと、変圧器同士がケンカして壊れてしまうこともあるのです。

この記事では、4つの条件を「2人で重い荷物を運ぶ」たとえ話で、直感的に理解できるように解説します!

🔌 そもそも「並行運転」って何?

並行運転とは、2台以上の変圧器を並列につないで、同時に運転することです。

なぜ並行運転が必要なの?

✅ 並行運転の3つのメリット

  • 大容量化:1台では足りない電力を、複数台で供給できる
  • 信頼性向上:1台が故障しても、他の変圧器で運転継続
  • 効率的な運用:需要が少ないときは1台だけ運転して省エネ

☕ たとえ話:2人で重い荷物を運ぶ

一人では持てない重い荷物も、二人で持てば運べますよね。でも、二人の息が合っていないと大変なことになります。片方が急に走り出したり、違う方向に進もうとしたら、荷物を落としたりケガをしたりします。変圧器の並行運転も同じです。「息を合わせる」ための条件が4つあるのです。

条件を満たさないと何が起こる?

4つの条件を満たさずに並行運転すると、循環電流という厄介な電流が発生します。

⚠️ 循環電流とは

負荷に電力を送らず、変圧器同士の間をグルグル流れる無駄な電流のこと。この電流が流れると、変圧器が過熱したり、効率が悪くなったり、最悪の場合は故障します。

つまり、4つの条件は「循環電流を起こさないため」に必要なのです。

① 極性が同じ

最初の条件は「極性が同じ」です。

これは最も重要な条件で、守らないと大事故につながります。

「極性」ってなに?

極性とは、電圧の「向き」のことです。

変圧器には一次側と二次側がありますが、電圧が上がる瞬間・下がる瞬間が同じ向きかどうかを表しています。

☕ たとえ話:シーソーの向き

2人でシーソーに乗るとき、同じ側に座ったらバランスが取れませんよね。片方が上がるとき、もう片方も上がってしまう。変圧器の極性が逆だと、電圧が「足し算」ではなく「引き算」になったり、最悪の場合は2倍の電圧が発生して短絡事故を起こします。

極性が逆だとどうなる?

🔥 極性が逆の状態で接続すると...

二次電圧が 2倍 になり、大きな短絡電流が流れる
→ 変圧器が焼損・爆発する危険性!

だから、極性の確認は並行運転の絶対条件なのです。

💡 実務での確認方法:変圧器の端子には「●」や「U」「V」などの記号がついています。同じ記号どうしを接続すれば極性が揃います。

② 巻数比(変圧比)が同じ

2つ目の条件は「巻数比が同じ」です。

巻数比が違うと、二次電圧に差が生まれ、循環電流が流れてしまいます。

なぜ巻数比が同じでないといけないの?

☕ たとえ話:身長差のある2人で荷物を運ぶ

身長が違う2人で大きな板を運ぶと、どうなりますか?板が傾いて、背の高い人に負担が集中しますよね。変圧器も同じで、巻数比が違うと「電圧の高い方」から「電圧の低い方」へ電流が流れ込み、バランスが崩れます。

巻数比が違うとどうなる?

例えば、2台の変圧器を並列接続したとき:

📝 例:巻数比が違う2台を並列接続

変圧器A:二次電圧 = 210V

変圧器B:二次電圧 = 200V

電圧差:210V − 200V = 10V

→ この10Vの差が、変圧器間に循環電流を発生させる!

わずか10Vの差でも、インピーダンスが小さい変圧器では大きな循環電流になります。

🎯 試験のポイント

実務では巻数比が完全に一致するのが理想ですが、多少の差(±0.5%程度)は許容されることもあります。ただし試験では「巻数比が同じ」と覚えておけばOKです。

③ 百分率インピーダンス(%Z)が等しい

3つ目の条件は「%Zが等しい」です。

これは「性格が似ている」と言い換えると分かりやすいです。

%Zってなに?(復習)

%Z(百分率インピーダンス)は、変圧器の試験で学んだ通り、「電流の流れにくさ」を表す値です。

💡 復習:%Zが大きい変圧器 = 電流が流れにくい(「頑固」な性格)
%Zが小さい変圧器 = 電流が流れやすい(「素直」な性格)

なぜ%Zが同じでないといけないの?

☕ たとえ話:走るスピードが違う2人

荷物を一緒に運ぶとき、一人は早く走りたがり、一人はゆっくり歩きたがったら大変ですよね。速い人(%Z小)に負担が集中して、疲れ果ててしまいます。変圧器も同じで、%Zが小さい方に電流が集中してしまうのです。

負荷分担の公式

%Zが違う2台の変圧器を並行運転すると、負荷は次のように分担されます:

負荷分担の法則

負荷分担は %Zに反比例 する

PA : PB = %ZB : %ZA

📝 例:%Zが違う2台の負荷分担

変圧器A:容量 100kVA、%Z = 4%

変圧器B:容量 100kVA、%Z = 8%

負荷分担比:PA : PB = 8 : 4 = 2 : 1

→ 変圧器Aに2倍の負荷が集中!(過負荷の危険)

同じ容量の変圧器でも、%Zが違うと均等に負荷を分担できないのです。

④ 位相が一致(三相の場合)

最後の条件は「位相が一致」です。

これは三相変圧器の場合に特に重要な条件です。

「位相」ってなに?

位相とは、電圧の波形の「タイミング」のことです。

交流は波のように上がったり下がったりしていますが、その波の山と谷のタイミングが揃っているかどうかを表します。

☕ たとえ話:ブランコを押すタイミング

ブランコを押すとき、前に行くタイミングで押せばどんどん高く揺れますよね。でも後ろに来たタイミングで押すと、ブランコは止まってしまいます。変圧器も同じで、電圧の「押すタイミング」が揃っていないと、エネルギーが打ち消し合ってしまうのです。

なぜ位相がズレるの?

三相変圧器では、結線の組み合わせによって位相がズレることがあります。

結線の組み合わせ 位相差 並行運転
Y-Y と Y-Y ⭕ 可能
Δ-Δ と Δ-Δ ⭕ 可能
Y-Δ と Y-Δ 30°(同じなら0°) ⭕ 可能
Y-Y と Y-Δ 30° ❌ 不可
Δ-Δ と Y-Δ 30° ❌ 不可

🎯 覚え方

「同じ結線どうし」なら並行運転OK!
Y-YとY-Y、Δ-ΔとΔ-Δ、Y-ΔとY-Δ のように、同じ組み合わせなら位相が揃います。異なる結線を組み合わせると30°のズレが生じて並行運転できません。

📋 4つの条件を一覧表で確認

ここまでの内容を表にまとめます。試験直前の確認にも使ってください!

条件 イメージ 守らないと?
① 極性が同じ 同じ向きに進む 短絡事故・変圧器焼損
② 巻数比が同じ 同じ身長で板を運ぶ 循環電流が発生
③ %Zが等しい 同じペースで走る 負荷分担の不均衡
④ 位相が一致 同じタイミングで押す エネルギーの打ち消し

🎯 最強の覚え方

①同じ向き(極性)
②同じ電圧(巻数比)
③同じ性格(%Z)
④同じタイミング(位相)

2人で息を合わせて荷物を運ぶ」イメージで完璧!

📌 まとめ|変圧器シリーズ完結!

この記事のポイント

  • 並行運転とは、2台以上の変圧器を並列に接続して同時に運転すること
  • 条件を満たさないと循環電流が発生して効率が下がる or 故障する
  • 4つの条件:極性が同じ / 巻数比が同じ / %Zが等しい / 位相が一致
  • 覚え方:「同じ向き・同じ電圧・同じ性格・同じタイミング」
  • %Zが違う場合、負荷分担は%Zに反比例する

お疲れ様でした!これで変圧器シリーズ全7回が完結です。

変圧器は電験三種の機械科目で頻出のテーマです。基本原理から始まり、基本式、等価回路、損失と効率、試験、三相結線、そして並行運転まで、すべてつながっています。

何度も復習して、試験で自信を持って解答できるようになってくださいね!

📕 前の記事

三相変圧器のY結線・Δ結線、4つの結線パターンを解説しています。

← 1-6. 三相変圧器の結線

📖 用語が分からないときは → 変圧器の用語辞典

🎉 変圧器マスターへの道、完走おめでとうございます!

ここまで学んだ知識は、必ず試験で活きます。
自信を持って本番に臨んでくださいね!

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