機械科目の解説

【図解で完全理解】滑り(すべり)s|誘導電動機の超重要キーワードをイメージでマスター

💭 こんな悩みはありませんか?

  • 「滑り」って何?モーターが滑るの?
  • s = (Ns - N) / Ns の公式、意味がわからない...
  • 滑りが0とか1とか、イメージできない

✅ この記事の結論

滑りとは「回転磁界にどれだけ置いていかれているか」を表す数値です。犬が飼い主を追いかけるイメージで、すべてが理解できます!

📚 誘導機シリーズ(全8回)

2-1 原理 → 2-2 滑り → 2-3 比例推移 → 2-4 トルクと出力 → 2-5 等価回路 → 2-6 始動法 → 2-7 速度制御 → 2-8 単相誘導電動機

🔙 前回のおさらい

三相誘導電動機では、回転子(ロータ)は回転磁界を追いかけます。でも絶対に追いつけないんでしたね。追いついたら誘導がなくなり、力が消えてしまうから。

🐕 滑りとは?|犬と飼い主でイメージ!

滑り(すべり)を理解するには、犬と飼い主の追いかけっこをイメージするのが一番です!

飼い主と犬の関係 = 回転磁界と回転子の関係

🏃

飼い主

= 回転磁界(Ns)

常に一定速度で走る

🐕

= 回転子(N)

飼い主を追いかける

📏

距離の差

= 滑り(s)

どれだけ置いていかれたか

飼い主が時速10kmで走っていて、犬が時速9kmで追いかけているとします。

この場合、犬は飼い主より10%遅れていることになりますよね。

この「10%の遅れ」が滑り s = 0.1(10%)ということなんです!

📐 滑りの公式

公式を覚えよう!

📐 滑りの公式

s = (Ns − N) / Ns

記号 意味 イメージ
s 滑り(slip) 遅れの割合(0〜1)
Ns 同期速度 [min⁻¹] 🏃 飼い主の速度
N 回転子の速度 [min⁻¹] 🐕 犬の速度

💡 公式を分解してみよう!

Ns − N = 飼い主と犬の速度差(どれだけ置いていかれたか)

÷ Ns = 飼い主の速度で割る(割合にする)

= s = 遅れの割合!

🎯 滑りの値と意味|3つの状態を理解しよう

滑り s の値によって、モーターの状態が変わります。これを犬と飼い主でイメージしてみましょう!

① s = 0(滑りゼロ):追いついた!

🏃🐕

並んで走っている

N = Ns(回転子が同期速度に追いついた)

⚠️ でも実際にはありえない!

追いついたら誘導がなくなり、力が消えてしまう

② s = 1(滑り100%):完全に止まっている!

🏃‍♂️💨 🐕💤

飼い主だけ走っている

N = 0(回転子が停止している)

📍 これは始動時(スイッチを入れた瞬間)

まだ回転子が動き始めていない状態

③ s = 0.02〜0.05(通常運転):ちょっとだけ遅れて追いかけている

🏃‍♂️ 🐕

少し後ろを追いかけている

N ≒ Ns(ほぼ同期速度)

✅ これが普通の運転状態!

2〜5%だけ遅れて安定して回転している

📊 滑りの値まとめ

滑り s 状態 イメージ
s = 0 同期速度(理論上) 🏃🐕 並走(実際はありえない)
s = 1 停止(始動時) 🏃💨 🐕💤 犬は寝てる
s = 0.02〜0.05 通常運転 ✅ 🏃 🐕 少し後ろを追走

📝 計算例|実際に計算してみよう!

例題1:滑りを求める

📋 問題

同期速度 Ns = 1500 min⁻¹ の誘導電動機が、N = 1455 min⁻¹ で回転している。滑り s を求めよ。

✏️ 解答

公式に代入するだけ!

s = (Ns − N) / Ns

s = (1500 − 1455) / 1500

s = 45 / 1500

s = 0.03(3%)

💡 ポイント:通常運転の滑りは2〜5%なので、3%は正常な運転状態ですね!

例題2:回転速度を求める

📋 問題

4極、50Hzの誘導電動機が、滑り s = 0.04(4%)で運転している。回転子の回転速度 N を求めよ。

✏️ 解答

Step 1:まず同期速度を求める

Ns = 120f / p = 120 × 50 / 4 = 1500 min⁻¹

Step 2:変形公式でNを求める

N = Ns(1 − s)

N = 1500 × (1 − 0.04)

N = 1500 × 0.96

N = 1440 min⁻¹

🔄 滑りの公式変形|これも覚えよう!

滑りの公式は、変形して使うことも多いです。

📐 滑りの公式(3つの形)
s = (Ns − N) / Ns ← 滑りを求める
N = Ns(1 − s) ← 回転速度を求める
Ns − N = s × Ns ← 速度差を求める

🧠 覚え方のコツ

N = Ns(1 − s) は特に重要!

「回転速度 = 同期速度 ×(1から滑りを引いたもの)」

例:滑り5%なら、同期速度の95%で回転している!

❓ なぜ回転子は追いつけないのか?

ここで、誘導電動機の本質を深堀りしましょう。

追いついたら「誘導」がなくなる!

もし回転子が回転磁界に完全に追いついたら(s = 0になったら)、何が起きるでしょう?

🔴 追いついたら起きること(悪循環)

1

相対速度がゼロになる

2

磁界が回転子を「横切らなくなる」

3

電磁誘導が起きない→ 電流が流れない

4

電磁力が発生しない→ 力が消える

5

回転子が減速する → また遅れる → 誘導が起きる → 回転する...

つまり、滑りがないと誘導電動機は動けないのです!

💡 だから「誘導」電動機!

滑りがあるからこそ電磁誘導が起き、電流が流れ、力が生まれる。滑りは誘導電動機の存在意義そのものなんです!

📝 まとめ

🏆 これだけ覚えて帰ろう!

滑りとは 回転磁界にどれだけ遅れているかの割合
公式 s = (Ns − N) / Ns
s = 0 同期速度(実際はありえない)
s = 1 停止(始動時)
通常運転 s = 0.02〜0.05(2〜5%)

🚀 次の記事へ進もう!

滑りがわかったら、次は比例推移です。「滑りが小さい範囲では、いろんなものが滑りに比例する」という計算問題頻出のテーマ!

2-3. 比例推移を学ぶ →
📘 機械科目の基礎はこちら
機械科目の全体像|学習ロードマップ →

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