QC検定 実践編

【完全図解】特性要因図(フィッシュボーン)の書き方|4Mで原因を漏れなく洗い出す

😣 こんな経験はありませんか?
  • 不良の原因を聞かれて「たぶん○○だと思います」としか答えられなかった
  • 上司に「特性要因図で要因を整理して」と言われたが、何を書けばいいかわからない
  • ブレインストーミングで出た意見がバラバラで、結局どれが真因か絞れなかった
  • QC検定の過去問で「特性要因図」が出てきたけど、4Mの使い方がピンとこない
✅ この記事でわかること
  • 特性要因図(フィッシュボーン図)とは何か?なぜ「魚の骨」の形をしているのか
  • 4M(Man・Machine・Material・Method)の大骨を使った書き方の全手順
  • 製造業の具体例で「背骨→大骨→中骨→小骨」を実際に展開する方法
  • 特性要因図となぜなぜ分析の違いと使い分け
  • 初心者がやりがちな失敗5選と回避策

客先からクレームが来た。上司に「原因を調べて報告して」と言われた。あなたはどこから手をつけますか?

「たぶん作業者のミスだと思います」──こう答えてしまうと、上司は「たぶんじゃなくて、ちゃんと調べてくれ」と返してきます。そして客先には「原因分析が不十分」と突き返されます。

結論を先に言います。特性要因図(フィッシュボーン図)は、「思いつきの犯人探し」を「漏れのない要因リスト」に変えるための道具です。4M(Man・Machine・Material・Method)という4つの視点で要因を洗い出せば、「見落とし」がなくなります。この記事を読めば、今日から特性要因図を書けるようになります。

目次

特性要因図とは?|「魚の骨」の形に原因を整理する手法

🐟 完成形が「魚の骨」に見えるからフィッシュボーン図

特性要因図とは、ある「結果(特性)」に対して、それを引き起こしている可能性のある「原因(要因)」を体系的に洗い出し、魚の骨のような図で整理する手法です。QC7つ道具の1つで、英語ではFishbone Diagram(フィッシュボーン図)、または考案者の名前からIshikawa Diagram(石川ダイアグラム)とも呼ばれます。

1950年代に東京大学の石川馨教授が考案したこの手法は、品質管理の世界で70年以上使われ続けている「古典にして最強」の原因分析ツールです。

🐟 特性要因図の構造イメージ

Man(人)
Material(材料)
キズ不良
(特性)
spacer
Machine(機械)
Method(方法)

※実際の図では各大骨から中骨・小骨がさらに枝分かれします

📐 特性要因図の構成要素
頭(右端):解決したい問題=特性(例:「キズ不良が多い」)
背骨:頭に向かう太い横線(結果に向かう幹)
大骨:背骨に斜めに入る太い枝=要因の大分類(4M:Man, Machine, Material, Method)
中骨:大骨から枝分かれする=要因の中分類(例:「作業手順」「教育」など)
小骨:中骨からさらに枝分かれ=具体的な要因(例:「手順書の版が古い」)

つまり特性要因図は、「なぜこの問題が起きたのか?」をツリー状に展開して、原因の候補を"漏れなく"リストアップするための地図です。「犯人はこいつだ!」と決め打ちするのではなく、「犯人候補を全員洗い出す」のが特性要因図の役割です。

4Mとは?|大骨に使う「4つの視点」で原因の見落としを防ぐ

🔍 Man・Machine・Material・Methodの頭文字で「4M」

特性要因図を書くとき、いきなり「原因を思いつくままに書いて」と言われても困りますよね。そこで登場するのが4Mというフレームワークです。製造業で発生する問題の原因は、ほぼ必ずこの4つのカテゴリのどれかに分類できます。

👤

Man(人)

作業者のスキル、経験年数、教育訓練、注意力、疲労、体調、シフト、人員配置など

⚙️

Machine(機械)

設備の状態、治具・工具、金型、メンテナンス頻度、経年劣化、精度、キャリブレーションなど

📦

Material(材料)

原材料の品質、ロットばらつき、仕入先の変更、保管状態、受入検査の基準、副資材など

📋

Method(方法)

作業手順書、工程条件(温度・圧力・速度)、検査方法、段取り替え手順、標準作業の有無など

📊 4M → 5M → 6M:場面に応じて大骨を増やす

4Mは基本形ですが、分析テーマに応じて大骨を追加することもあります。以下の拡張版を知っておくと、応用が効きます。

名称 大骨 主な用途
4M Man, Machine, Material, Method 製造業の基本形(最もよく使う)
5M 4M + Measurement(測定) 検査・測定の問題を切り分けたい場合
5M+1E 5M + Environment(環境) 温度・湿度・クリーン度が影響する場合
6M 5M + Management(管理) 管理体制・仕組みの問題を含めたい場合
💡 ポイント
迷ったらまずは4Mで始めてください。大骨が多すぎると図が複雑になり、かえって整理できなくなります。4Mで書いてみて「測定系の要因が多いな」と感じたら、その時に5Mに拡張すればOKです。

特性要因図の書き方|6ステップで完成する手順

✏️ 紙とペンがあれば10分で書ける

特性要因図はExcelやツールがなくても、A3用紙とペンがあれば作れます。ホワイトボードに書いてもOK。以下の6ステップに沿って進めましょう。

STEP 1

「特性」を決めて右端に書く

解決したい問題(=特性)を具体的に書きます。「不良が多い」ではなく「プレス工程のキズ不良が月45件発生」のように、数値を含めて具体的に。右端に四角で囲んで書きます。

⚠️ 注意
特性があいまいだと、要因もあいまいになります。「品質が悪い」ではなく「外径寸法がφ10±0.05に対して上限を超える」のように限定してください。
STEP 2

「背骨」を引く

特性に向かって左から右へ太い横線を引きます。これが「背骨」です。矢印の先端を特性(右端の四角)に向けます。

STEP 3

「大骨」を4本書く(4M)

背骨から斜め上・斜め下に4本の太い枝(大骨)を引きます。それぞれの先端に「Man(人)」「Machine(機械)」「Material(材料)」「Method(方法)」と書きます。上2本・下2本にするのが一般的です。

STEP 4

「中骨」を書く(各4Mの要因を掘り下げる)

各大骨に対して「この4Mの中で、何が原因の候補か?」を考え、中骨として枝分かれさせます。例:「Man(人)」の大骨に対して「スキル不足」「注意力低下」「新人」などの中骨を書きます。

STEP 5

「小骨」を書く(さらに深掘りする)

中骨に対して「なぜそれが起きるのか?」をさらに掘り下げます。例:「スキル不足」→「教育訓練が不十分」→「OJTのチェックリストがない」。この小骨レベルまで掘り下げると、具体的なアクションが見えてきます。

STEP 6

要因に漏れがないかチェックし、重要要因に印をつける

図が完成したら、4Mの各骨を見渡して「抜けている視点はないか?」を確認します。その後、チーム全員で議論し、特に影響が大きそうな要因に赤丸(◎)をつけます。この赤丸がついた要因が「次に検証すべき最有力候補」です。

【具体例】プレス工程の「キズ不良」を特性要因図で分析する

🏭 製造業の実例で4Mの展開を体感しよう

ここでは、「プレス工程でキズ不良が月45件発生」という特性に対して、4Mで要因を展開する具体例を示します。実際に手を動かして自分の工程に置き換えてみてください。

特性:プレス工程でキズ不良が月45件発生

👤 Man(人)
中骨 小骨(具体的な要因)
スキル不足 新人が多い/OJTチェックリストがない/教育時間が不足
注意力低下 残業過多で疲労/夜勤明けのヒューマンエラー/ながら作業
人員配置 1人で2ライン掛け持ち/応援者が工程を知らない
⚙️ Machine(機械)
中骨 小骨(具体的な要因)
金型の劣化 ショット数が管理基準を超過/磨耗チェック未実施
搬送装置 コンベアのガイドにバリ/シューターの表面が荒れている
メンテナンス 定期点検が遅れている/予防保全の基準がない
📦 Material(材料)
中骨 小骨(具体的な要因)
材料硬度 ロット間で硬度ばらつきがある/受入検査で硬度を測っていない
表面状態 コイル材の表面にスケール付着/保管中に錆が発生
仕入先変更 先月から仕入先Bに変更/材料成分が微妙に違う
📋 Method(方法)
中骨 小骨(具体的な要因)
作業手順 手順書の版が古い/手順書通りに作業していない
工程条件 プレス圧力の設定値が適切でない/ストローク長の管理幅が広すぎる
検査方法 自主検査の頻度が少ない(1回/100個)/目視検査の限度見本が曖昧
🔧 現場の声
完成した特性要因図を見渡すと、「あれ、この視点は考えていなかった」という発見が必ずあります。たとえば「Man(人)ばかり疑っていたけど、よく見たら金型のショット数が管理基準を超えていた」というケースは製造業あるあるです。4Mの力は「自分の思い込みの外側にある原因」に気づけることです。

パレート図 → 特性要因図の「黄金コンビ」で使う

🤝 パレート図で「何を」、特性要因図で「なぜを」

パレート図と特性要因図は、QC7つ道具の中でもセットで使うと最強の組み合わせです。パレート図が「何が問題か(What)」を教えてくれるのに対して、特性要因図は「なぜ問題が起きるか(Why)」を教えてくれます。

📊
STEP 1
パレート図
「キズが最多」
と特定する
🐟
STEP 2
特性要因図
「なぜキズが
起きるか」展開
🔬
STEP 3
データで検証
重要要因を
裏付ける
STEP 4
対策 → 再パレート
効果を確認

前の記事で解説したパレート図で「キズ不良が最大の問題だ」と特定した後、この記事の特性要因図で「なぜキズが発生するのか」を4Mで分析する。この流れがQCストーリーの基本形です。

特性要因図と「なぜなぜ分析」の違い|どっちを使えばいい?

🆚 「広く浅く」 vs 「狭く深く」

品質管理で原因分析というと、「特性要因図」と「なぜなぜ分析」の2つが定番です。どちらも原因を追究する手法ですが、役割がまったく違います。

🐟

特性要因図

目的原因の候補を漏れなく洗い出す
方向広く浅く(横展開)
使うタイミング「原因が何かわからない」とき
アウトプット要因の候補リスト(仮説一覧)
🔍

なぜなぜ分析

目的1つの原因を根本まで深掘りする
方向狭く深く(縦展開)
使うタイミング「原因はわかったが、なぜそれが起きたか」を知りたいとき
アウトプット根本原因(真因)1つ
📐 ベストな使い方は「特性要因図 → なぜなぜ分析」の2段構え
① まず特性要因図で要因を広く洗い出す(20〜30個の候補が出る)
② その中からデータや経験で重要要因を2〜3個に絞る(赤丸をつける)
③ 絞った要因に対して、なぜなぜ分析で深く掘り下げる(「なぜ?」を5回繰り返す)
④ 根本原因が特定できたら、対策を立てる

特性要因図には2種類ある|「管理用」と「解析用」の違い

📋 目的が違えば、書き方のスタンスも違う

QC検定で出題されるポイントとして、特性要因図には「管理用」と「解析用」の2種類があることを知っておいてください。

管理用特性要因図 解析用特性要因図
目的 品質を維持するため、管理すべき要因をあらかじめ整理する 問題が起きた後、原因を特定するために要因を洗い出す
作成タイミング 工程設計時・標準作業書の作成時(事前) 不良発生時・クレーム対応時(事後)
書き方 考えられる要因を網羅的に書き出す 現象から逆算して重要な要因に絞って深掘りする
イメージ 「この工程で品質を守るためのチェックリスト」 「この不良の犯人探しの捜査マップ」
関連ツール QC工程図、コントロールプランに展開 なぜなぜ分析、8D報告書に展開
💡 ポイント
この記事で解説してきた書き方は主に「解析用」です。不良やクレームが発生して「原因は何だ?」と追究する場面で使います。一方、工程設計の段階で「どの要因を管理すべきか」を洗い出す場合は「管理用」を作ります。QC検定ではこの2つの違いが選択肢で問われることがあるので注意してください。

特性要因図のよくある失敗5選|初心者がやりがちなNG例

❌ これをやると「形だけの特性要因図」になってしまう

# ❌ よくある失敗 😱 何が起きるか ✅ 正しいやり方
1 特性があいまい
「品質が悪い」
要因が拡散して収拾がつかない 「プレス工程A1ラインのキズ不良が月45件」のように工程・不良モード・件数を限定する
2 大骨が「人のせい」だけ
Man偏重型
「結局ヒューマンエラー」で思考停止する 4M全てに必ず中骨を書く。Machine・Material・Methodが空白ならやり直し
3 大骨しかない
中骨・小骨の掘り下げ不足
「人」「機械」と書いただけで終わり、具体的なアクションにつながらない 各大骨に最低3つの中骨を書く。中骨には最低1つの小骨をつける
4 1人で黙々と書く 自分の経験の範囲でしか要因が出ない(視野が狭い) 作業者・設備保全・品質管理・生産技術など異なる立場の3〜5人で書く
5 書いて満足して終わり
検証しない
「要因を洗い出した」だけで真因がわからないまま 重要要因に◎をつけ、データや実験で検証する。特性要因図はあくまで「仮説の一覧」
⚠️ 最も多い失敗:「作って終わり」
特性要因図は「原因を特定する図」ではなく、「原因の候補を洗い出す図」です。特性要因図を書いた後は、重要要因をデータで検証し、真因を特定してから対策に進んでください。書いただけで満足するのが最大のNGです。

特性要因図がグッとよくなる3つのコツ

🎯 プロっぽい特性要因図を書くための実践テクニック

コツ 1

要因は「名詞+動詞」で書く

NG例:「金型」(名詞だけ) → これでは何が問題かわかりません。
OK例:「金型の磨耗が進んでいる」(名詞+動詞) → 何がどうなっているかが明確です。要因を書くときは「○○が△△している(していない)」の形にしてください。

コツ 2

「対策」を書かない。あくまで「原因」を書く

NG例:「教育を強化する」 → これは対策であって原因ではありません。
OK例:「教育訓練が不十分である」 → 原因です。特性要因図に対策を混ぜると、原因分析が中途半端になります。対策は特性要因図の後のステップで考えましょう。

コツ 3

「現場を見ながら書く」──デスクで空想しない

最もよくある失敗は、会議室で座ったまま特性要因図を書くことです。実際の不良品を手に取り、現場の設備を見て、作業者に話を聞きながら書くと、デスクでは絶対に出てこない要因が見つかります。これは「三現主義(現場・現物・現実)」と呼ばれる品質管理の基本思想です。

💡 ポイント
特性要因図の完成度を上げるのは「書き方のテクニック」ではなく、「参加メンバーの多様性」と「現場の観察」です。製造・品証・設備保全・生産技術の4部門から1人ずつ参加するだけで、見落としが激減します。

特性要因図の「その先」へ|FMEAとの連携で再発防止を仕組み化する

🔗 特性要因図で見つけた要因をFMEAに落とし込む

特性要因図で洗い出した要因は、そのままFMEA(故障モード影響解析)の「潜在的な故障原因」の欄に転記できます。特性要因図が「いま起きている問題の犯人探し」だとすれば、FMEAは「将来起こりうる問題を事前に潰す仕組み」です。

🐟
特性要因図
要因を洗い出す
(仮説の一覧)
📋
要因をリスク評価し
優先順位をつける
🛡️
対策実行
高リスク要因から
順に対策する

自動車業界ではIATF 16949の要求でFMEAが必須です。FMEAの「故障原因」欄を埋めるのに苦労している人は、まず特性要因図で4Mの要因を書き出してから転記すると、漏れなく効率的に作業できます。

まとめ|特性要因図は「思い込みの外側」にある原因に気づくための地図

📌 この記事のまとめ
特性要因図とは 結果(特性)に対する原因(要因)を魚の骨の形で整理する手法
4M Man(人)・Machine(機械)・Material(材料)・Method(方法)の4つの大骨
書き方 特性を決める → 背骨 → 大骨(4M) → 中骨 → 小骨 → 重要要因に◎
パレート図との連携 パレート図で「何が問題か」→ 特性要因図で「なぜ起きるか」
なぜなぜ分析との違い 特性要因図は「広く浅く」、なぜなぜ分析は「狭く深く」
2種類 管理用(事前に要因を管理)と解析用(事後に原因を追究)

特性要因図の本当の価値は、「自分が思いもしなかった原因に気づける」ことです。「たぶん作業者のミスだろう」という思い込みを4Mの枠組みで壊し、Machine・Material・Methodの視点から漏れなく要因を洗い出す。これが特性要因図の力です。

次にクレーム対応や不良分析の場面が来たら、まずA3用紙を1枚取り出して、右端に特性を書き、4本の大骨を引いてみてください。10分で「原因の全体像」が見えるようになります。

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特性要因図で要因を特定し対策を打ったら、管理図で工程が安定しているか監視しましょう。

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