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学科の合格率は約6割、技能は約7割。
第二種電気工事士とは何か、どれくらい難しいのかを、電気をほとんど学んだことがない人に向けてまとめました。この記事を書いたのは、電気工事士の受験者には電気の勉強をしてこなかった人が多いと聞いたこと、そして検索の数字でも電気の資格の中でいちばん多く調べられていたからです。
筆者は電験三種(電気主任技術者)の資格を持ち、メーカーで電気の設計をしてきましたが、電気工事士の試験は受けていません。そこで、試験を行う電気技術者試験センターの受験案内・問題用紙・合格者数の表を読み、わかったことを図と動く図で並べます。

第二種電気工事士とは:家やお店の配線をしてよい資格
第二種電気工事士は、一般の住宅や小さな店舗の屋内配線・コンセント・照明・スイッチの工事をしてよい国家資格です。持っていない人がこれらの工事をすることは、電気工事士法で禁じられています。
たとえるなら、車の運転免許です。車そのものは誰でも買えますが、公道で運転できるのは免許を持つ人だけ。電気の配線も同じで、電線や器具はホームセンターで買えても、壁の中の配線をつなぐ作業は資格を持つ人しかできません。
| できる工事の例 | 理由(なぜ資格が要るか) |
|---|---|
| コンセントを増やす・場所を変える | 壁の中で100V の電線をつなぐ。つなぎ方が悪いと発熱して火事になる |
| 照明器具とスイッチの配線 | スイッチを正しい側の線に入れないと、切っても器具に電気が来たままになる |
| エアコン用の200V のコンセント | 電線の太さとブレーカーの大きさを合わせないと、電線が熱を持つ |
| 分電盤から部屋までの配線 | ブレーカー・漏電遮断器と電線の組み合わせを決める |
一方で、電球の交換や、コンセントにプラグを挿す家電の設置は、資格がなくてもできます。どこからが資格の要る工事か、細かい線引き(軽微な工事・簡易電気工事)は法律の記事で一覧にしています。
資格を取った人が実際に使う「工事の種類」。金属管・合成樹脂管・ケーブル工事の違い

第一種電気工事士との違いは「工事できる建物の大きさ」
第一種と第二種の違いは、工事できる範囲です。第二種は低圧(600V 以下)で受電する住宅・店舗まで、第一種はそれに加えて高圧で受電する最大電力500kW 未満の工場・ビルの設備まで工事できます。
| 第二種電気工事士 | 第一種電気工事士 | |
|---|---|---|
| 工事できる範囲 | 一般用電気工作物等(住宅・小さな店舗・小規模な太陽光など) | 第二種の範囲+自家用電気工作物(最大電力500kW 未満の需要設備) |
| 受電の電圧の例 | 低圧(100V・200V) | 高圧(6,600V)で受電する工場・ビル |
| 受験資格 | なし(誰でも受けられる) | なし(誰でも受けられる) |
| 免状をもらう条件 | 試験に合格して申請 | 試験に合格+一定期間の実務経験 |
「需要設備」は、電気を使う側の設備のこと。たとえるなら、第二種は一戸建てやコンビニの配線、第一種はそれに加えて小さな工場やビルの受電設備(高い電圧を受けて下げる部屋)まで、という分け方です。
はじめての人は、第二種から受けるのがふつうの順番です。試験の科目は似ていて、第二種で学ぶ配線の基本がそのまま第一種の土台になります。

試験の流れと日程:上期と下期の年2回
第二種電気工事士の試験は、上期と下期の年2回です。申込み → 学科試験 → 技能試験 → 免状の申請の順に進み、学科に合格した人だけが技能を受けられます。
| 上期(令和8年度) | 下期(令和8年度) | |
|---|---|---|
| 申込み | 3/16〜4/6 | 8/17〜9/3 |
| 学科(CBT) | 4/23〜6/7 の中で予約した日 | 9/24〜11/8 の中で予約した日 |
| 学科(筆記) | 5/24 | 10/25 |
| 技能 | 7/18 または 7/19 | 12/12 または 12/13 |
| 受験手数料 | インターネット 11,100円・書面 12,500円 | 同じ |
電気技術者試験センター「令和8年度電気工事士試験の実施日程等のご案内」から。技能は試験地(47都道府県)ごとに土曜か日曜に分かれる。
CBT は Computer Based Testing の略で、テストセンターのパソコンで解く方式です。期間の中から自分で日時と会場を予約できます。
学科試験:50問の4択で、30問正解すれば合格
学科試験は、一般問題30問と配線図問題20問の計50問を、2時間で解く4択の試験です。1問2点の100点満点で、60点、つまり30問の正解で合格します。
| 中身 | |
|---|---|
| 問題数 | 50問(一般問題 30問・配線図問題 20問) |
| 時間 | 2時間 |
| 配点と合格 | 1問2点・60点で合格(30問正解) |
| 方式 | CBT(パソコン)か筆記(マークシート) |
| 電卓 | 使えない。√2=1.41、√3=1.73、π=3.14 は問題に書いてある |
科目は7つあります。電気の基礎理論(計算)、配電と配線の設計、機器・材料・工具、施工方法、検査の方法、配線図、法令です。ここで混乱しやすいのですが、計算問題は全体のごく一部。令和8年度上期の問題用紙では、数字を計算して答える問題は、一般問題の問1〜問12のうち8問でした。残りの多くは、器具や工具の写真を見て名前や使い道を選ぶ問題と、配線図の記号を読む問題です。
電気が初めての人がつまずくのは、たいてい計算と配線図です。計算はオームの法則(電圧=電流×抵抗)から順に積み上げれば、使う式は多くありません。
学科の計算の入口。V・A・W の関係を、家電の例と水道のたとえで

技能試験:40分で、配線図どおりの作品を作る
技能試験は、配られた材料と自分の工具で、配線図どおりの小さな配線の作品を40分で作る試験です。点数ではなく、作品に「欠陥」が1つもなければ合格です。
出題は、事前に公表される13問の候補問題の中から1問。令和8年度の候補問題は、試験の約半年前に試験センターのホームページで公表されました。受験する人は13問すべてを練習して、本番でどれが出ても40分で作れるようにしておきます。
| 欠陥の例(欠陥の判断基準から) | どういうことか |
|---|---|
| 未完成 | 40分で作り終わらない |
| 誤接続・誤結線 | つなぐ相手をまちがえる |
| 電線の色別の誤り | 白と黒を逆につなぐ(ランプの受金ねじ部やコンセントの W 側に白がつながっていない) |
| リングスリーブの刻印の誤り | 電線の本数・太さに合わない大きさで圧着した |
| 電線の傷 | 被覆をむくときに芯線に深い傷をつけた |
電気技術者試験センター「電気工事士技能試験(第一種・第二種)欠陥の判断基準」と「技能試験の概要と注意すべきポイント(令和8年3月更新)」から抜き出した。
工具は自分で持っていきます。リングスリーブ(電線どうしをつなぐ金属の筒)の圧着工具は、JIS に合った握りの黄色いものを使うよう受験案内に書かれています。テスターや電動ドライバーは使えません。
ここは正直に書いておきます。筆者は技能試験を受けていないので、40分でどこが苦しいか、手の感覚の話は書けません。この連載では、公表されている候補問題と欠陥の判断基準を、配線の図と動く図で読み解く形にします。
技能試験で使う VVF ケーブル。CV・VCT との違いと、記号の読み方

難易度と合格率:学科は約6割、技能は約7割が合格
第二種電気工事士の合格率は、令和6〜8年度の5回で学科が55.4〜62.2%、技能が69.5〜73.4%でした。国家資格の中では、電気が初めての人でも勉強すれば届く難易度です。
| 回 | 学科 受験者 | 学科 合格率 | 技能 受験者 | 技能 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和6年度上期 | 70,139人 | 60.2% | 50,668人 | 71.0% |
| 令和6年度下期 | 62,323人 | 55.9% | 43,570人 | 69.5% |
| 令和7年度上期 | 70,945人 | 57.7% | 51,576人 | 72.0% |
| 令和7年度下期 | 68,142人 | 55.4% | 48,034人 | 71.4% |
| 令和8年度上期 | 78,290人 | 62.2% | 58,393人 | 73.4% |
電気技術者試験センター「試験結果の推移」の受験者数と合格者数から、合格率を筆者が計算した(学科は CBT と筆記の合計)。
この表は、試験センターの表の受験者数と合格者数を割り算して作りました。センターの表には合格率の列がないためです。割ってみると、学科は5回とも55〜62%の間、技能は70%前後でほとんど動いていません。
学科と技能の両方に通る人の割合は、ざっくり掛け算すると 0.6 × 0.7 ≒ 0.42 で、約4割になります。ただし技能の受験者には前回の学科合格者なども含まれるので、これは目安です。

勉強時間の目安:電気が初めてなら100〜200時間
第二種電気工事士の勉強時間は、電気の知識がない人の独学で100〜200時間ほどが目安です(講座会社の案内)。学科の暗記と計算、技能の13問の練習に分けて考えると、時間の使い方が決めやすくなります。
書きながら迷ったのが、この数字です。調べた講座会社2社の案内は、アガルートが「100〜200時間程度」、ユーキャンが「200時間程度」と分かれました。どちらも電気を学んだことがない人を前提にした数字です。この記事は、幅のある100〜200時間の方。工業高校で電気を学んだ人や、仕事で配線を見ている人は下の方、まったく初めての人は上の方、と読むのがよいと考えたからです。
| やること | 中身 | 時間の配分の案 |
|---|---|---|
| 学科:器具・工具・材料 | 写真を見て名前と使い道を覚える | 大きめ(問題数が多い) |
| 学科:配線図 | 図記号と、単線図から電線の本数を読む | 中くらい |
| 学科:計算 | オームの法則・電力・電圧降下など | 小さめ(8問前後) |
| 学科:法令 | 電気工事士法・電気用品安全法 | 小さめ |
| 技能:候補問題13問 | 複線図を描く → 実際に作る、を全問 | 学科と同じくらい |
配分は、令和8年度上期の問題用紙の問題数と、技能試験の概要と注意すべきポイントから考えた筆者の案。測った時間ではない。
計算が苦手でも、学科は30問正解で受かります。計算の8問前後を全部落としても、ほかの42問から30問取れれば合格。とはいえ計算はオームの法則から積み上げれば点にしやすい分野なので、この連載の次の記事で、出る式を1つずつ解いていきます。
学科が免除になる人:電験三種の免状・電気の学科の卒業など
学科試験は、前回か前々回の学科に合格した人、学校で電気工学の課程を修めて卒業した人、電気主任技術者(電験)の免状を持つ人などは免除され、技能試験から受けられます。
| 免除になる人(主なもの) | 必要な書類 |
|---|---|
| 前回・前々回の学科に合格した人 | 不要 |
| 電気工学の課程を修めて高校・高専・大学などを卒業した人 | 学校長の証明(学科試験免除証明書) |
| 第一種〜第三種電気主任技術者の免状を持つ人 | 免状の写し |
電気技術者試験センター「第二種電気工事士試験の概要」から主なものを抜き出した。ほかの条件は同じページと受験案内で確かめる。
学科に受かって技能に落ちた人は、次の回は学科なしで技能だけを受けられます。年2回あるので、たとえば上期の学科に受かれば、上期と下期の2回、技能に挑戦できます。
筆者は電験三種の免状を持っているので、受けるなら学科は免除の対象です。電験三種から電気の仕事に入った人が、技能だけ受けて第二種電気工事士を取る、という順番もあります。
はじめての人がしやすい勘違い4つ
第二種電気工事士で多い勘違いは、「工場の配線もできる」「学科に受かれば工事できる」「技能は点数で決まる」「電卓が使える」の4つです。どれも誤りです。
| 勘違い | 実際 |
|---|---|
| 第二種があれば、工場やビルの配線もできる | 高圧で受電する工場・ビルの設備(自家用電気工作物)は第一種の範囲 |
| 学科に受かれば、もう工事ができる | 技能に合格し、都道府県に免状を申請してから |
| 技能は、少しの失敗なら点数で救われる | 点数ではなく欠陥の有無。欠陥が1つあれば不合格 |
| 学科の計算は電卓で解ける | 電卓は使えない。√3=1.73 などは問題に書いてある |
4つ目は、計算が不安な人ほど気になる所です。電卓が使えない代わりに、数字は手で割り切れるように作られています。令和8年度上期の問題では、たとえば電熱器の発熱量を 300W × 2時間 で求める問題がありました。掛け算と割り算だけで、答えまで届く作り。


