機械科目の解説

減速機のトルク計算|減速比・効率と回転速度の関係を過去問で図解|計算ツール付き

減速機を表すアイキャッチ。電動機の速い回転が減速機の歯車で遅く強い回転になって巻上げドラムを回す

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減速比 a・効率 η の減速機では、負荷の回転速度は電動機の 1/a、負荷の軸トルクは ηa 倍、負荷への軸入力は η 倍です。理由は動力から導く節、数字は例題と計算ツールで確かめられます。

結論|まず30秒でわかる答え

減速機は、歯車などで電動機の回転を遅くし、そのぶんトルク(回す力)を大きくする装置です。減速比を a、効率を η とすると、負荷の回転速度は電動機の 1/a、負荷の軸トルクは電動機の ηa 倍、負荷への軸入力(動力)は電動機の軸出力の η 倍になります。迷ったら「P=ωT」で動力に直して考えると、取り違えが起きません。

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減速機とは?回転を遅くしてトルクを大きくする装置

電動機は、1分間に1,000回転を超える速さで回るものが多くあります。一方、コンベヤや巻上機、かくはん機などの機械は、もっとゆっくり、強い力で回したいことがほとんどです。この「速さ」と「力」の交換をするのが減速機です。

たとえると

自転車のギヤと同じです。軽いギヤにすると、ペダルを何回もこぐ(回転が多い)代わりに、坂道を楽にのぼれます(力が大きい)。減速機は、電動機の「たくさん回る」を「強く回す」に交換しています。

減速比 a の意味

減速比 a は、電動機側の回転速度 n1 を負荷側の回転速度 n2 で割った値です。歯車なら、かみ合う歯の数が等しいことから、歯数の比でも表せます。

公式
a = n₁ / n₂ = t₂ / t₁(t:歯数)

たとえば電動機側の歯車が10枚、負荷側が60枚なら a=60÷10=6 です。電動機が6回転すると、負荷はやっと1回転します。

POINT

つまり、減速比が大きいほど、負荷はゆっくり、強い力で回ります。

減速比の図。電動機側の歯車10枚と負荷側の歯車60枚がかみ合い、減速比は60÷10=6。減速比は回転速度の比で歯数の比でもある

トルクが ηa 倍になる理由を動力から導く

速度とトルクの関係は、「動力(仕事をする速さ)は減速機を通っても、損失の分しか減らない」という考えから導けます。

STEP 1

回転する軸の動力は P=ωT(ω:角速度[rad/s]、T:トルク[N·m])。回転速度 n[min⁻¹]からは ω=2πn/60

STEP 2

減速機の効率を η とすると、負荷への軸入力は P2=ηP1

STEP 3

ω2T2=ηω1T1 の両辺の 2π/60 を消すと n2T2=ηn1T1

STEP 4

T2=η×(n1/n2)×T1=ηaT1

量電動機側 → 負荷側覚え方
回転速度 nn₂=n₁/a遅くなる(a で割る)
トルク TT₂=ηaT₁強くなる(a を掛けて、損失の η も掛ける)
動力 PP₂=ηP₁減速比に関係なく、損失の分だけ減る
注意|ここで間違えやすい

効率 η は「トルク」にも「動力」にも掛かりますが、「回転速度」には掛かりません。歯車は滑らないので、回転速度は歯数の比で決まるからです。

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トルクと出力の関係 P=ωT を、誘導電動機の式とあわせて確かめられます

減速機で変わる3つの量の図。回転速度はn₂=n₁÷aで遅くなり、トルクはT₂=ηa×T₁で強くなり、動力はP₂=η×P₁で損失の分だけ減る。P=ωT、ω=2πn÷60

例題:減速比10の減速機で負荷の軸トルクを求める

電動機が回転速度 1,500min⁻¹、トルク 20N·m で回っています。減速比 10、効率 0.9 の減速機を通したとき、負荷の回転速度・軸トルク・軸入力を求めます。

STEP 1

負荷の回転速度:nL=1,500÷10=150min⁻¹

STEP 2

電動機の角速度:ωm=2π×1,500÷60≒157.08rad/s。電動機の軸出力:Pm=157.08×20≒3,141.6W

STEP 3

負荷への軸入力:PL=0.9×3,141.6≒2,827W(約2.83kW)

STEP 4

負荷の軸トルク:TL=0.9×10×20=180N·m

動力の式で検算する

負荷の角速度は ωL=2π×150÷60≒15.708rad/s です。TL=PL÷ωL=2,827.4÷15.708≒180.0N·m となり、ηaT の式と一致します。

POINT

つまり、20N·m しか出せない電動機でも、減速比10の減速機を通せば、負荷は180N·m の力で回せます。その代わり、回転速度は10分の1です。

例題の計算手順の図。電動機1,500min⁻¹・20N·m、減速比10・効率0.9のとき、負荷の回転速度は150min⁻¹、電動機の軸出力は約3,141.6W、負荷への軸入力は約2,827W、負荷の軸トルクは180N·m

負荷の慣性モーメントを電動機の軸に換算する

加速や減速の計算では、負荷の「回しにくさ」(慣性モーメント J[kg·m²])を、電動機の軸から見た値に直して考えます。減速機をはさむと、負荷の慣性モーメントは減速比の2乗で割った値に見えます。

公式
J(電動機軸に換算)= J_L / a²

理由は運動エネルギーです。回転体の運動エネルギーは ½Jω² で、損失を無視すれば、負荷側と電動機側で同じエネルギーです。½JLωL²=½Jωm²、ωL=ωm/a を入れると、J=JL/a² になります。

たとえば、負荷の慣性モーメントが 5kg·m² で減速比が 10 なら、電動機の軸から見ると 5÷100=0.05kg·m² です。重い負荷を小さな電動機で動かせるのは、このためです。

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慣性モーメントの換算の図。負荷の慣性モーメント5kg·m²は、減速比10の減速機を通して電動機の軸から見ると5÷10²=0.05kg·m²になる

電験三種の過去問で確かめる

減速機の計算は、機械の「電動機応用」で、数値を変えて何度も出題されています。

年度・問題条件答え
令和7年度下期 問11・令和6年度下期 問11(再出題)nm=1,200min⁻¹、Tm=100N·m、減速比6、効率0.96nL=200min⁻¹、TL≒576N·m、PL≒12.1kW
令和5年度上期 問11・平成20年度 問11(再出題)nm=1,150min⁻¹、Tm=100N·m、減速比8、効率0.95nL≒143.8min⁻¹、TL=760N·m、PL≒11.4kW

令和7年度下期 問11の解き方

STEP 1

nL=1,200÷6=200min⁻¹

STEP 2

Pm=(2π×1,200÷60)×100≒12,566W

STEP 3

PL=0.96×12,566≒12,064W→約12.1kW

STEP 4

TL=0.96×6×100=576N·m

注意|ここで間違えやすい

選択肢には、回転速度を減速比で「掛けた」7,200min⁻¹や、トルクを「割った」16.0N·m が並びます。「遅くなって、強くなる」を先に確かめてから計算すると、引っかかりません。

同じ電動機応用では、巻上機の所要動力(令和8年度上期 問11ほか)や、はずみ車のエネルギー(令和5年度下期 問11ほか)もよく出ます。

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減速機の計算ツール

電動機の回転速度とトルク、減速比、効率を入れると、負荷の回転速度・軸トルク・軸入力を求めます。負荷の慣性モーメントを入れると、電動機の軸に換算した値も出します。

入れた数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

慣性モーメントの換算は、減速機の損失と、減速機そのものの慣性モーメントを無視した値です。

減速機の計算でよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
回転速度に減速比を掛ける減速すると遅くなるので、減速比で割る
トルクを減速比で割る減速するとトルクは大きくなる。ηa 倍
回転速度にも効率を掛ける効率はトルクと動力に掛ける。回転速度は歯数の比だけで決まる
min⁻¹ のまま P=nT とする角速度 ω=2πn/60[rad/s]に直してから P=ωT
慣性モーメントを a 倍・a² 倍する電動機の軸から見ると JL/a²(小さく見える)
減速機の計算のよくある間違いの図。回転速度は減速比で割る、トルクはηa倍、効率はトルクと動力にだけ掛ける、回転速度は角速度に直してからP=ωT

よくある質問

Q. 減速機を使うとトルクはどうなりますか?

A. 減速比をa、効率をηとすると、負荷の軸トルクは電動機のトルクのηa倍になります。回転は遅くなり、力は大きくなります。

Q. 減速比とは何ですか?

A. 電動機側の回転速度を負荷側の回転速度で割った値です。歯車なら、負荷側の歯数を電動機側の歯数で割った値と同じです。

Q. 減速機の効率はどこに掛けますか?

A. トルクと動力に掛けます。負荷の軸入力は電動機の軸出力のη倍で、回転速度は効率に関係なく決まります。

Q. 回転速度からトルクを求める式は?

A. 動力P[W]と回転速度n[min⁻¹]から、T=60P÷(2πn)で求めます。角速度に直して計算するのがポイントです。

Q. 慣性モーメントは減速機でどう変わる?

A. 電動機の軸から見ると、負荷の慣性モーメントは減速比の2乗で割った大きさになります。運動エネルギーが等しいことから導けます。

この記事の要点
  • 減速機は回転を遅くして、トルクを大きくする装置
  • 減速比 a=n₁/n₂=t₂/t₁(歯数の比)
  • n₂=n₁/a、T₂=ηaT₁、P₂=ηP₁
  • 計算は P=ωT、ω=2πn/60 で動力に直すと迷わない
  • 負荷の慣性モーメントは、電動機の軸から見ると J/a²
減速機の計算のまとめの図。回転速度はn₁÷a、トルクはηa×T₁、動力はη×P₁、慣性モーメントは電動機の軸から見てJ_L÷a²
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

「減速機のトルクと回転速度」を試験の得点につなげるなら、機械科目の教科書で前後の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「機械」の教科書と問題集です。フルカラーの教科書に重要な過去問が付いています。

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S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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