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テスターの使い方を教わらないまま、1台を渡された。ダイヤルには V・A・Ω の記号が10個ほど並び、テストリードを挿す穴は3つか4つ。どこに挿して、どこに合わせれば壊さずに測れるのか。最初の1回で迷う所は、だいたい決まっています。
この記事を書いたのは、「テスター 使い方 初心者」で調べる人が多いと、検索の数字でわかったからです。読み方を覚えるのは、ダイヤルの記号と端子の名前の2つだけ。そこから先は、測るものごとの手順を1つずつ見ていきます。

最初に見るのはダイヤルと端子(COM・V・A)
テスターで最初に見るのは、ダイヤルの記号と、テストリードを挿す端子の名前です。黒は必ず COM、赤はふつう V・Ω の端子に挿し、電流を測るときだけ mA や A の端子に挿し替えます。
| ダイヤルの表示 | 測るもの | 例 |
|---|---|---|
| V と直線(DCV) | 直流電圧 | 乾電池、マイコンの電源(5V・3.3V) |
| V と波線(ACV) | 交流電圧 | コンセントの100V、200V |
| Ω | 抵抗 | 抵抗器、ヒーター、モーターの巻線 |
| スピーカーの記号(・)))) | 導通(つながっているか) | 断線、配線のつながり、ヒューズ |
| ダイオードの記号 | ダイオードの順方向の電圧 | ダイオード・LED の向き |
| A・mA・µA | 電流 | 回路に流れる電流(回路を切って直列に入れる) |
| 端子 | 挿すテストリード | 使う場面 |
|---|---|---|
| COM | 黒(いつもここ) | すべての測定 |
| V・Ω(機種により VΩHz など) | 赤 | 電圧・抵抗・導通・ダイオード |
| mA・µA | 赤(挿し替える) | 小さい電流 |
| A(10A など) | 赤(挿し替える) | 大きい電流。上限は機種の表示どおり |
COM は common(共通)の略。どの測定でも、黒はここから動かしません。赤だけを、測るものに合わせて挿し替えます。
ダイヤルの表示は、メーカーや機種で少しずつ違います。同じ「V」でも、直線と波線で直流と交流を分ける機種もあれば、1つの V の位置でボタンを押して切り替える機種もあります。手元の取扱説明書の最初のページで、ダイヤルの図を一度見てください。

初心者がやってはいけない5つ
テスターで初心者がやってはいけないのは、①電流・抵抗レンジのまま電圧を当てる ②本体の測定カテゴリを超える場所で使う ③電気が来ている回路で抵抗・導通を測る ④測定中にダイヤルを回す ⑤傷んだテストリードや濡れた手で使う、の5つです。
| やってはいけないこと | 何が起きるか | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 電流・抵抗レンジのまま電圧を当てる | 電流レンジは中がほぼ短絡。大きな電流が流れ、ヒューズが切れるか本体が壊れる | 当てる前にダイヤルと赤の端子を指差しで確かめる |
| 測定カテゴリ(CAT)を超える場所で使う | 雷などの瞬間的な高い電圧(インパルス)に耐えられないことがある | 本体とテストリードの CAT の表示を見る(次の節) |
| 電気が来ている回路で抵抗・導通を測る | 抵抗レンジにはテスターの電池から電流を流している。外から電圧がかかると壊れるか、値が狂う | 電源を切り、コンデンサを放電してから測る |
| 測定中にダイヤルを回す | 途中で電流や抵抗のレンジを通る | テストリードを外してから回す |
| 傷んだテストリード・濡れた手で使う | 感電 | 亀裂や金属の露出があれば使わない。手を乾かす |
共立電気計器 MODEL 1110 の取扱説明書(危険・警告の欄)と、三和電気計器 CD772 の取扱説明書(安全の注意)で、両方に書かれていた項目をまとめた。
この表は、共立電気計器と三和電気計器の取扱説明書を読み比べて作りました。2社とも「危険」「警告」の欄に、言い回しは違っても同じことを書いています。いちばん先に書かれていたのが、①のレンジの取り違えでした。
①がなぜ危ないのか。電流を測るとき、テスターは回路の途中に入ります。そのため電流の端子の中は、電流を邪魔しないよう、ほとんど抵抗がありません。そこへコンセントの100V を当てると、ほぼ短絡です。ヒューズが守ってくれる機種でも、ヒューズは切れて交換。
測る前のひと手間も、取扱説明書に書かれています。初めに、電圧がわかっている電源(乾電池など)で、正しい値が出るかを確かめること。テスターが壊れていて0V と出たのに「電気は来ていない」と思い込むのが、いちばん怖い間違いだからです。
テスターの値がどこまで正しいかは、校正で確かめます。校正と調整の違い、トレーサビリティの意味

測定カテゴリ(CAT II・III・IV)の読み方
測定カテゴリ(CAT)は、テスターを使ってよい場所の区分です。CAT II はコンセントにつなぐ機器、CAT III は分電盤からコンセントまでの配線、CAT IV は引込線から電力量計・分電盤の入口までで、数字が大きいほど瞬間的な高い電圧に耐えます。
| 区分 | 場所(共立電気計器の取扱説明書) | 例(Fluke の資料) |
|---|---|---|
| CAT II | コンセントに接続する電源コード付機器の電気回路 | 家電、携帯工具 |
| CAT III | 直接配電盤から電気を取り込む機器の1次側、分岐部からコンセントまで | 三相の配電、開閉器、固定されたモーター |
| CAT IV | 引込み線から電力量計、1次過電流保護装置(配電盤)までの電路 | 電力会社との接続点、屋外の電線、電力量計 |
区分の定義は IEC 61010-1(JIS C 1010-1)による。場所の書き方は共立電気計器 MODEL 1110 の取扱説明書、例は Fluke「IEC カテゴリ定格」から。電池だけの回路など、商用の電源につながらない所は CAT I や「O」として扱われる。
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CAT の後ろの電圧は、その場所で測ってよい電圧の上限です。たとえば三和電気計器の CD772 は「CAT III 600V、CAT II 1000V」。分電盤の200V の回路は CAT III の 600V の範囲に入ります。一方、電力量計や引込口(CAT IV)では使えません。
同じ600V でも、CAT II 600V と CAT III 600V は別物。数字が大きい区分ほど、雷などで入ってくる瞬間的な電圧が大きい場所。CAT III で作られたテスターは、CAT II のものより高いインパルスに耐えるよう設計されています。
書きながら迷ったのは、本体とテストリードの表示が違うときに、どちらで読むかです。共立の取扱説明書には、テストピンのキャップを外すと CAT II、付けると CAT III・IV に対応する、とありました。テストリードの側でも、区分が変わるということ。この記事は、本体とテストリードの低い方の区分と電圧で読む方を採ります。理由は1つ。弱い方が先に壊れるからです。
分電盤の漏電ブレーカーが落ちたとき、どの回路が漏れているかの確かめ方

直流電圧の測り方:乾電池で練習する
直流電圧は、ダイヤルを直流の V に合わせ、黒を測りたい回路のマイナス(GND)、赤をプラスに当てて読みます。電圧は、測りたい2点の間に並列に当てます。
最初の練習は乾電池で。1.5V なら手が触れても危なくないからです。ここで「黒を先に当てて、赤を後に」の順番を体に覚えさせます。
三和電気計器の取扱説明書は、つなぐときは黒(COM)から、外すときは黒を最後に、と書いています。理由までは書かれていません。ただ、基準になる黒を先に固定しておけば、電圧のかかった側に当てるのは赤の1本だけで済みます。

交流電圧の測り方:コンセントの100V を測る
交流電圧は、ダイヤルを交流の V に合わせ、2本のテストリードをコンセントの2つの穴に差し込んで読みます。表示は実効値で、ふつうの家のコンセントなら100V 前後です。
手順は直流とほぼ同じ。違いは、交流には向き(プラス・マイナス)がないので、赤と黒をどちらの穴に入れても同じ値が出ること。ただし手はテストリードのフィンガーガード(指を止めるつば)より後ろに置き、片方ずつゆっくり差し込みます。
コンセントの穴で測るのは、区分の境目です。共立の取扱説明書の書き方では、コンセントまでの配線は CAT III、コンセントにつなぐ機器は CAT II。筆者は境目なら上の区分で読み、CAT III の表示がある機種を使う方をすすめます。分電盤のブレーカーの端子なら、迷わず CAT III です。
表示は実効値です。コンセントの100V は実効値で、波の山の高さ(最大値)は約141V。インバーターの出力のように波形がゆがんだ電圧は、テスターの方式で読み方が変わります。「真の実効値(True RMS)」と書かれた機種はゆがんだ波形でも実効値で読み、書かれていない平均値方式の機種は値がずれます。三和の取扱説明書も、インバーターの出力を測ると誤差が出ることがあると書いています。
コンセントの100V の山の高さが141V になる理由。実効値・最大値・平均値の違い
抵抗と導通の測り方:必ず電源を切ってから
抵抗と導通は、必ず回路の電源を切ってから測ります。テスターは自分の電池から小さな電流を流して抵抗を測るので、外から電圧がかかっていると壊れるか、値が狂います。
回路の中で測ると、小さく出る
回路につながったままの抵抗を測ると、並列につながったほかの部品も一緒に測ってしまいます。たとえば 10kΩ の抵抗に、4.7kΩ の抵抗が並列についていたとします。
かけ算が 10×4.7=47、足し算が 10+4.7=14.7。割ると約3.20kΩ です。10kΩ のつもりで測った値が、3分の1ほどに出ます。部品の片方の足を基板から外して測れば、本来の 10kΩ が出ます。
導通のブザーは「0Ω」ではない
導通の機能は、抵抗が小さいときにブザーで知らせるものです。共立電気計器の MODEL 1110 は約100Ω 以下で鳴る、と取扱説明書にあります。鳴った=数十Ω以下、という意味で、ぴったり0Ω ではありません。
鳴り始める値は機種で違います。手元にない機種の値は、言えません。100Ω 前後の抵抗が入った回路を「つながっている」と読み違えないよう、気になるときは Ω のレンジで値を読んでください。
ダイオードの記号のレンジもあります。向きを確かめるためのものです。赤をアノード、黒をカソードに当てると、シリコンのダイオードでおよそ0.6V 前後の値が出ます。逆に当てると表示が出ません(OL など)。
ダイオードのアノード・カソードと、電流が一方にしか流れない仕組み

電流の測り方:回路を切って直列に入れる
電流は、回路を1か所切り、そこにテスターを直列に入れて測ります。赤を mA や A の端子に挿し替え、測り終わったら必ず V の端子に戻します。
STEP5 を忘れると、次に電圧を測ろうとした人が、電流の端子のまま電圧を当てることになります。やってはいけないことの①は、たいていこうして起きます。電流を測ったら、赤を戻すまでが1回の測定です。
電流の端子には、ヒューズが入っています。たとえば共立 MODEL 1110 は、速断型の 500mA のヒューズです。測っても0A のままなら、まずヒューズが切れていないかを疑います。
テスターとクランプメーターの使い分け
テスターは電圧・抵抗・導通と、回路を切って入れる小さな電流向き。クランプメーターは、電線をはさむだけで大きな交流の電流を測れるので、回路を切れない設備の電流に使います。
| テスター(マルチメーター) | クランプメーター | |
|---|---|---|
| 得意なもの | 電圧・抵抗・導通・ダイオード | 交流の電流(電線をはさむ) |
| 電流の測り方 | 回路を切って直列に入れる | 電線を1本はさむ。回路を切らない |
| 電流の大きさ | mA〜10A 程度(機種による) | 数百 A〜1000A 程度(機種による) |
| 向く場面 | 基板・試作の回路、乾電池、コンセント | 分電盤の回路、モーターの電流、動いている設備 |
注意が1つ。クランプメーターで電線をはさむときは、行きと帰りの2本を一緒にはさまないこと。2本の電流は向きが逆で打ち消し合い、0A に近い値が出ます。漏れ電流をわざと見るとき以外は、1本だけをはさみます。
電流が大きい設備の配線は、電線の太さと許容電流で決まっています。測った電流が電線の許容電流に近いかどうかは、早見表で確かめられます。


