回路設計

消費電流の見積もり|部品表から電源の容量を決める5ステップ

Wi-Fiマイコンのモジュール・青いリレー・レギュレータ・光る赤いLEDが載った小さな基板にUSBケーブルが挿さった写真に、消費電流の見積もり・ピークは438mA・部品の電流を足す→×1.5で電源 の文字

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

消費電流の計算は、部品ごとにデータシートの typ(ふだん)と max(最大)を拾い、電源ごとに足して、ピークに余裕をかけて電源を選ぶ順で進めます。手順は5ステップの節、Wi-Fi マイコン基板で足した例は5V系の電流の積み上げにあります。

結論|まず30秒でわかる答え

消費電流の見積もりは、次の5ステップです。
①電流を使う部品を書き出す ②データシートから typ(ふだん)と max(最大)を拾う ③電源ごとに足す ④ピークに余裕をかけて電源を選ぶ ⑤レギュレータの発熱を確かめる
Wi-Fi マイコン・センサ・LED・リレーの基板では、5V のピークが約438mA。USB 2.0 のポート(500mA)では余裕が足りず、5V・1A のアダプタを選びます。

この記事に出てくる言葉

わからない言葉が出てきたら、ここに戻ってきてください。本文でも、初めて出たところで言い換えます。

消費電流部品や基板が動くときに、電源から流れ込む電流
typ(ティピカル)データシートの「ふつうの値」。ふだんの見積もりに使う
max(マックス)データシートの「最大の値」。いちばん大きい瞬間の見積もりに使う
ピーク電流が一瞬だけ大きくなるときの値。Wi-Fi の送信の瞬間など
レギュレータ電圧を下げてそろえる部品。この記事では 5V を3.3V にする LM1117
突入電流電源を入れた瞬間に、コンデンサの充電で一瞬だけ流れる大きな電流
余裕率見積もった電流に対して、電源の容量を何倍にするか
熱抵抗(℃/W)1W の熱で温度が何℃上がるかの値

消費電流の見積もりは、回路図を描き終えたら最初にやる計算です。電源が足りないと、マイコンがリセットしたり、レギュレータが熱くなったりします。作ってから気づくと、電源の部品や基板を作り直すことになります。

この記事では、USB の5V で動く小さな基板を例に、部品表から電源の容量を決めるまでを順に計算します。数字は実在の部品のデータシートから拾います。

Wi-Fiマイコンのモジュール・青いリレー・レギュレータ・光る赤いLEDが載った小さな基板にUSBケーブルが挿さった写真に、消費電流の見積もり・ピークは438mA・部品の電流を足す→×1.5で電源 の文字

この記事で見積もる基板:USB 5VのWi-Fiマイコン基板

例にするのは、USB の5V で動き、Wi-Fi マイコン・センサ・表示用 LED・リレーが載った小さな基板です。リレーは5V から直接、そのほかは5V を3.3V に下げて使います。

部品は次の5つです。電子工作でも仕事でもよく見る組み合わせです。

部品この記事の型番つなぐ電源
マイコン(Wi-Fi つき)ESP32-WROOM-32E3.3V
温湿度・気圧センサBME2803.3V
表示用 LED赤色・130Ω3.3V(マイコンの端子)
リレーOmron G5V-1(5V)5V(トランジスタで ON/OFF)
レギュレータTI LM1117-3.35V → 3.3V

ここで大事なのは、電流の流れる道が2本あることです。リレーは USB の5V から直接、マイコンやセンサはレギュレータを通った3.3V から電流をもらいます。

つまり、この記事のゴールは「5V で何 mA 流れるか」を出し、電源とレギュレータが足りるかを確かめることです。

USB 5V(最大500mA)からリレー(typ30mA・max35mA)へ直接、レギュレータLM1117-3.3を通った3.3VからESP32(typ112mA・ピーク379mA)・BME280・表示用LED10mA・プルアップとベース電流へ分かれる系統図

なぜ消費電流を見積もる?足りないと起きる3つのこと

消費電流が電源の能力を超えると、電圧が下がってマイコンがリセットする・レギュレータが熱くなる・USB の上限を超える、の3つが起きます。

1. 電圧が下がる

電源が電流を出しきれないと、電圧が下がります。マイコンは電圧が下がるとリセットするので、「ときどき再起動する」という見つけにくい不具合になります。Wi-Fi の送信のように、電流が一瞬だけ増える所で起きやすくなります。

2. 部品が熱くなる

この記事のレギュレータ(リニアレギュレータ)は、下げた電圧の分を熱にします。電流が多いほど熱くなり、ひどいと保護の働きで出力が止まります。

3. 電源の上限を超える

パソコンの USB 2.0 のポートから取り出せる電流は、500mA までです。超えると、給電が止まったり、電圧が下がって動きが不安定になったりします。

たとえると

電源は「水道の蛇口」です。家じゅうで同時に水を使うと、蛇口の能力を超えて水の勢いが落ちます。見積もりは、同時に使う水の量を先に足しておく作業です。

つまり、見積もりは「作る前に電源の能力と比べる」ための計算。後から直すほど手間が大きくなります。

電圧が下がってマイコンがリセット、レギュレータが熱くなる、USB 2.0のポートの500mAを超える、の3枚のカードと、電圧の落ち込み・温度計・上限を超えるゲージの絵

データシートの電流はtypとmaxで3倍以上違う

データシートの電流は、いつの値かで大きく違います。ESP32 は Wi-Fi の受信中が112mA、送信の瞬間のピークは379mA で、約3.4倍です。

データシートの電流の表には、ふつう typ(ふつうの値)と max(最大の値)、または平均(Average)とピーク(Peak)が並んでいます。

ESP32-WROOM-32E の動き平均ピーク
Wi-Fi で受信している112mA112mA
Wi-Fi で送信(802.11n)183mA258mA
Wi-Fi で送信(802.11b・最大出力)239mA379mA

見積もりでは、両方を拾います。ふだんの値(typ)は発熱や電池の持ちに、いちばん大きい瞬間の値(max・ピーク)は電源の能力を決めるのに使います。

POINT|データシートの測った条件も見る

ESP32 の表は「3.3V・25℃、送信は100%の時間送り続けたとき」の値です。条件が違えば値も変わるので、表の上や下にある条件の文を読みます。

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つまり、電流は1つの数字ではなく「ふだん」と「最大」の2つ。この記事では、typ=受信の112mA、max=送信のピーク379mA を使います。

ESP32-WROOM-32Eの電流の棒グラフ。Wi-Fi受信112mA、送信を続けたときの平均239mA、送信の瞬間のピーク379mA(データシート表16、3.3V・25℃)

消費電流の見積もりは5ステップ

消費電流の見積もりは、部品を書き出す・typ と max を拾う・電源ごとに足す・余裕をかけて電源を選ぶ・熱を確かめる、の5ステップです。

STEP 1:部品を書き出す

部品表から、電流を使う部品をすべて書き出す。抵抗やプルアップも忘れない

STEP 2:typ と max を拾う

データシートから、ふだんの値と最大の値を拾う。表がなければ自分で計算する

STEP 3:電源ごとに足す

5V 系・3.3V 系のように、どの電源から流れるかで分けて足す

STEP 4:余裕をかけて電源を選ぶ

ピークに余裕(この記事では1.5倍)をかけ、それ以上を出せる電源を選ぶ

STEP 5:熱を確かめる

レギュレータの発熱を計算し、温度が上限に入るかを確かめる

このあと、例の基板で STEP 1 から順に計算します。

つまり、足し算そのものは簡単。迷うのは「どの値を拾うか」と「どこで分けて足すか」の2つです。

5枚のカード。STEP1部品を書き出す、STEP2 typとmaxを拾う、STEP3電源ごとに足す(5V系159mA・ピーク438mA)、STEP4余裕をかけて選ぶ(438×1.5≒657mA)、STEP5熱を確かめる(0.24W→+15℃)

STEP 1・2:部品を書き出し、typとmaxを拾う

例の基板の3.3V 系は typ 123.6mA・max 392.7mA、5V 系の合計は typ 158.6mA・max 437.7mA です。小さな電流も書き出すのが足し忘れを防ぐコツです。

部品typmax根拠
マイコン(ESP32)112mA379mA受信112・送信のピーク379
センサ(BME280)0.004mA0.71mA1秒に1回測る平均3.6µA・気圧の測定中714µA
プルアップ 4.7kΩ×20mA1.40mA通信の線が L のとき 0.70mA×2
表示用 LED10.0mA10.0mA(3.3−2.0)÷130Ω
トランジスタのベース電流1.6mA1.6mA(3.3−0.7)÷1.6kΩ
3.3V 系の合計123.6mA392.7mA
レギュレータ自身5mA10mALM1117 の自分の電流
リレーのコイル(5V)30mA34.9mA定格30mA。max は5.25V÷(167Ω×0.9)
5V 系の合計158.6mA437.7mAUSB から流れる電流

データシートに電流の表がない部品は、自分で計算します。LED・プルアップ・ベース電流は、どれもオームの法則(電流=電圧÷抵抗)で出せます。

リレーの max は、コイルの抵抗の許容差(±10%)と、USB の電圧の上限(5.25V)を使って計算しました。抵抗が10%小さく、電圧が高いときに、電流がいちばん大きくなるからです。

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つまり、STEP 1・2 の答えは「部品ごとの typ と max の表」。根拠の欄を書いておくと、あとで見直すときに迷いません。

部品ごとの電流の表。ESP32 112/379mA、BME280 0.004/0.71mA、プルアップ0/1.40mA、LED10mA、ベース1.6mA、3.3V系合計123.6/392.7mA、レギュレータ自身5/10mA、リレー30/34.9mA、5V系合計158.6/437.7mA

STEP 3:電源ごとに足す

3.3V 系の電流は、レギュレータを通って5V からも流れます。5V 系の合計は、レギュレータの入口の電流 128.6mA に、リレーの30mA を足した 158.6mA(typ)です。

この記事のレギュレータ(リニアレギュレータ)は、電流を「通すだけ」の部品です。出口で124mA 流れていれば、入口にもほぼ同じ124mA が流れ込みます。そこに、レギュレータ自身が使う電流(LM1117 は typ 5mA)が足されます。

5V 系の合計
(3.3V 系 123.6 + レギュレータ自身 5) + リレー 30 = 158.6mA

ピークも同じように足します。(392.7+10)+34.9=437.7mA。

注意|スイッチング電源は電流が変わる

スイッチング方式の電源(DC-DC コンバータ)は、電圧を下げると入口の電流が出口より小さくなります。この記事の足し方は、リニアレギュレータのときの計算です。

つまり、足すときは「どの電源から流れるか」で分ける。リニアレギュレータなら、出口の電流をそのまま入口に足します。

USB 5V(typ159mA・ピーク438mA)から、リレー(30・35mA)と、レギュレータ(入口129mA・ピーク403mA)を通って3.3V系(124・393mA)へ流れる図と、5V系の合計の式

5V系の電流の積み上げ:ふだん159mA、ピーク438mA

5V 系の電流を部品ごとに積み上げると、ふだんは約159mA、ピークは約438mA です。どちらも大半はマイコンで、ピークはふだんの約2.8倍になります。

積み上げた棒で見ると、どの部品が効いているかがひと目でわかります。この基板では、マイコンが7〜9割を占めています。

電流を減らしたいときは、大きい部品から手をつけます。センサやプルアップを減らしても、合計はほとんど変わりません。Wi-Fi の送信の回数を減らす・使わないときは眠らせる、のようにマイコンの使い方を変えるほうが効きます。

つまり、積み上げると「どこを減らせば効くか」が見える。見積もりは、電源を選ぶだけでなく、電流を減らす手がかりにもなります。

部品ごとに色分けした積み上げ棒グラフ。ふだんはマイコン112・LED・センサなど・レギュレータ自身・リレー30で159mA、ピークはマイコン379・リレー35などで438mA

消費電流は時間で変わる:突入電流・ピーク・ふだん

基板の電流は一定ではありません。電源を入れた瞬間の突入電流、Wi-Fi の送信のピーク、リレーの ON で、時間とともに上下します。

電源を入れた瞬間は、基板のコンデンサを充電するために、大きな電流が一瞬だけ流れます。これを突入電流と呼びます。その後は、ふだんの電流に落ち着きます。

Wi-Fi の送信は、短い時間に何度もくり返されます。そのたびに、電流がピークまで跳ね上がります。リレーを ON にすると、コイルの30mA が足され、ふだんの電流が一段上がります。

POINT|一瞬のピークはコンデンサが助ける

電源の近くの大きめのコンデンサ(バルクコンデンサ)は、一瞬のピークの電流を手元から出して、電圧の落ち込みを小さくします。電源の容量と、このコンデンサの両方で一瞬のピークに備えます。

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つまり、電流は「一瞬の大きな値」と「ふだんの値」に分けて考える。図の波形は形をわかりやすくしたイメージです。

5Vの電流の時間変化のイメージ。電源を入れた瞬間の突入電流、ふだん約130mA、Wi-Fi送信のピーク、リレーONで30mA上がる段差と、USB 2.0の上限500mAの線

ピークと平均の使い分け:何を決めるかで見る値が違う

電源の容量はピーク(max)で、レギュレータの発熱や電池の持ちは平均(typ)で決めます。

決めたいもの使う値この例
電源(アダプタ・USB)の容量ピーク438mA
レギュレータの最大出力電流ピーク393mA(LM1117 は800mA)
レギュレータの発熱・温度平均約0.24W
電池でどれだけ動くか平均159mA

熱は、時間をかけてたまります。一瞬のピークでは温度はほとんど上がらないので、発熱は平均の電流で計算します。反対に、電源の能力は一瞬でも足りないと電圧が下がるので、ピークで決めます。

つまり、「一瞬で困るもの」はピーク、「たまって困るもの」は平均。迷ったらこの言葉で振り分けます。

ピーク(max)で決めるもの(電源の容量・レギュレータの最大出力・コンデンサ、この例438mA→657mA以上)と、平均(typ)で決めるもの(発熱・電池・電力量、この例159mA→約0.24W)の2枚のカードと波形

STEP 4:ピークに余裕をかけて電源を選ぶ

ピーク 438mA に余裕率1.5倍をかけると約657mA。パソコンの USB 2.0 のポート(500mA)では足りず、5V・1A のアダプタを選びます。

見積もりには、データシートにない電流や、部品のばらつきが入りきりません。そのため、電源の容量には余裕を持たせます。この記事では、ピークの1.5倍を目安にします。

電源出せる電流ピークに対する余裕判定
パソコンの USB 2.0 のポート500mA1.14倍余裕が足りない
5V・1A の USB アダプタ1000mA2.3倍OK

ESP32 のデータシートも、外部の電源から0.5A 以上を出せることを求めています。マイコンだけで0.5A なので、ほかの部品を足すとさらに余裕が要ります。

注意|余裕率は決まりごとがあれば従う

1.5倍はこの記事の目安です。会社や製品の分野ごとに、余裕率の決まりがあることがあります。決まりがあれば、そちらに従います。

つまり、電源は「ピーク×余裕率」以上。USB で動かすなら、ポートではなく1A 以上のアダプタを前提にします。

横棒グラフ。ピークの見積もり438mA、×1.5の目安657mA、PCのUSB 2.0 500mA(余裕1.14倍)、5V 1Aのアダプタ1000mA(余裕2.3倍)

STEP 5:レギュレータの発熱=(入力−出力)×電流

リニアレギュレータの発熱は、下げた電圧×電流です。5V を3.3V に下げて124mA 流すと、自分の電流の分と合わせて約0.24W になります。

リニアレギュレータの発熱
P =(入力電圧 − 出力電圧)× 電流 + 入力電圧 × 自分の電流

ふだん:(5.0−3.3)×0.1236A=0.210W。自分の電流の分は 5.0V×0.005A=0.025W。合計 約0.24W です。

送信を続け、USB の電圧が上限の5.25V のときは、出口の電流が約253mA、自分の電流を最大の10mA として、(5.25−3.3)×0.2527+5.25×0.010=約0.55W です。

たとえると

リニアレギュレータは「水道の減圧弁」です。高い水圧を低くするとき、下げた分の勢いは弁のところで熱になって消えます。下げる幅が大きいほど、熱も大きくなります。

つまり、発熱は「電圧の差×電流」。5V→3.3V の差は1.7V なので、電流が少なければ小さな熱で済みます。

入力5.0V 129mAからLM1117-3.3で出力3.3V 124mAへ。(5.0−3.3)×0.1236A=0.210W、5.0V×0.005A=0.025W、合計約0.24W、送信を続け5.25Vのときは約0.55W

発熱を温度に直す:上がる温度=熱抵抗×電力

上がる温度は、熱抵抗×電力で計算します。LM1117(SOT-223)の熱抵抗は61.6℃/W なので、ふだんの0.24W で約14.5℃、送信を続けた0.55W で約33.6℃上がります。

温度の上がり方
上がる温度(℃)= 熱抵抗(℃/W)× 電力(W)
場面電力上がる温度チップの温度
ふだん(部屋25℃)0.235W+14.5℃約39℃
送信を続ける(箱の中40℃)0.545W+33.6℃約74℃

LM1117 のチップの温度の上限は125℃ なので、どちらも余裕があります。

注意|熱抵抗は基板で変わる

61.6℃/W は、規格で決められた試験用の基板に付けたときの値です。小さな基板や、銅箔の少ない基板では、熱が逃げにくく温度はもっと上がります。余裕が少ないときは、銅箔を広くするか、部品を見直します。

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つまり、発熱は温度に直して上限と比べる。0.5W を超えるあたりから、基板の作りまで気にします。

チップの温度の棒グラフ。ふだん(25℃の部屋)+14.5℃で約39℃、送信を続ける(40℃の箱の中)+33.6℃で約74℃、上限125℃の線

もう1つの確かめ:レギュレータの入力電圧の下限

LM1117 で3.3V を出すには、入力が約4.55V 以上要ります。USB の電圧の下限4.75V との差は0.2V しかありません。

リニアレギュレータは、出力より少し高い入力がないと、出力の電圧を保てません。この差の最小値をドロップアウト電圧と呼びます。LM1117 は500mA のとき最大1.25V です。

必要な入力電圧
3.3V + 1.25V = 4.55V 以上

USB 2.0 の電圧は、5V の±5%(4.75〜5.25V)と決められています。下限の4.75V でも4.55V を上回るので動きますが、差は0.2V だけです。

細く長い USB ケーブルや、抜き差しの多いコネクタでは、電流が流れると電圧が下がります。ピークの電流が流れた瞬間に4.55V を切ると、3.3V が保てなくなります。

つまり、電流だけでなく「電圧が足りるか」も確かめる。差が小さいときは、ドロップアウトの小さいレギュレータを選ぶ手があります。

電圧のはしご。USBの上限5.25V、5.0V、下限4.75V、LM1117に要る入力4.55V、出力3.3V。4.75と4.55の差0.2V、ドロップアウト最大1.25V(500mA)。細く長いケーブルの注意

足し忘れやすい電流4つ:プルアップ・レギュレータ自身・ベース・LED

見積もりで足し忘れやすいのは、プルアップ抵抗・レギュレータ自身の電流・トランジスタのベース電流・点けっぱなしの LED の4つです。

電流流れるときこの例
プルアップ抵抗線が L の間だけ3.3V÷4.7kΩ=0.70mA×2本
レギュレータ自身いつもtyp 5mA・max 10mA
ベース電流リレーを ON にしている間(3.3−0.7)÷1.6kΩ=1.6mA
表示用 LED点いている間(3.3−2.0)÷130Ω=10mA

1つずつは小さくても、数が集まると効きます。電池で動かす基板では、ふだんの電流の数 mA が、電池の持ちを大きく左右します。

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つまり、部品表を上から順に見て「この部品に電流は流れるか」を1行ずつ確かめる。これだけで足し忘れはほぼ防げます。

4枚のカード。プルアップ抵抗3.3V÷4.7kΩ=0.70mA、レギュレータ自身typ5mA・max10mA、トランジスタのベース電流(3.3−0.7)÷1.6kΩ=1.6mA、表示用LED(3.3−2.0)÷130Ω=10mA

作ったら測って確かめる:USBの電流チェッカーとテスター

基板ができたら、電流を測って見積もりと比べます。USB の電流チェッカーなら挿すだけ、テスターなら線を切って直列に入れて測ります。

方法1:USB の電流チェッカー

電源と基板の間に挿すだけ。電圧と電流がその場で見られる

方法2:テスターを直列に入れる

3.3V 系の線を1か所切り、テスターを電流(mA)レンジでつなぐ

比べる

ふだんの見積もり(5V で約159mA、3.3V 系で約124mA)と、大きく違わないかを見る

テスターやチェッカーは、表示が落ち着くまでの平均に近い値を示します。Wi-Fi の送信のような一瞬のピークは追えません。ピークを見たいときは、電流を測る専用の抵抗(シャント抵抗)の電圧をオシロスコープで見ます。

見積もりより大きく多いときは、足し忘れか、部品の不具合(はんだのショート・向きの逆)を疑います。

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つまり、見積もりと実測をそろえて初めて安心できる。ずれは、回路を見直す大事な手がかりです。

電源と基板の間に挿したUSBの電流チェッカー(0.16A・5.02V、表示はイメージ)と、3.3V系の線に直列に入れたテスター(124mA、表示はイメージ)。ピークは追えない

よくある失敗3つ:平均で選ぶ・熱を忘れる・系統を混ぜる

消費電流の見積もりの失敗は、平均で電源を選ぶ・レギュレータの熱を忘れる・5V 系と3.3V 系を混ぜて足す、の3つが代表です。

失敗1:平均で電源を選ぶ

ふだん159mA だから500mA で十分、と考えると、送信の瞬間に電圧が下がってリセットします。電源はピーク(438mA)で選びます。

失敗2:レギュレータの熱を忘れる

同じ回路を12V から3.3V に下げると、電圧の差は8.7V。124mA でも(12−3.3)×0.124+12×0.005=約1.1W になり、SOT-223 の LM1117 では約70℃も温度が上がります。電圧の差が大きいときは、スイッチング方式の電源(DC-DC コンバータ)を考えます。

失敗3:5V 系と3.3V 系を混ぜて足す

電源の違う部品を1つの表で足すと、どの電源が足りないのかがわからなくなります。表は電源ごとに分け、レギュレータの入口でつなぎます。

つまり、「電源はピーク・熱は平均・足すのは電源ごと」。この3つを守れば、見積もりで大きく外すことはありません。

3枚のカード。平均159mAで500mAの電源を選ぶと送信の瞬間にリセット(ピークで選ぶ438×1.5≒657mA)、12Vから3.3Vに下げると124mAでも約1.1Wで約70℃上がる、5V系と3.3V系を混ぜて足すとどの電源が足りないかわからない

よくある質問(FAQ)

Q. 消費電流の見積もりはどうやる?

A. 部品を書き出し、typとmaxを拾い、電源ごとに足して、ピークに余裕をかけて電源を選び、最後に発熱を確かめます。

Q. 消費電流はtypとmaxのどちらで足す?

A. 両方で足します。電源の容量はmax(ピーク)、レギュレータの発熱や電池の持ちはtyp(平均)で決めます。

Q. 電源の余裕率はどれくらい?

A. この記事ではピークの1.5倍を目安にしました。会社や製品の決まりがあれば、それに従って決めます。

Q. USBの電源で何mAまで使える?

A. USB 2.0のポートは500mAまでです。Wi-Fiマイコンを使う基板では足りないことがあり、1A以上のアダプタが安心です。

Q. レギュレータの発熱はどう計算する?

A. (入力電圧−出力電圧)×電流に、入力電圧×レギュレータ自身の電流を足します。5Vから3.3Vで124mAなら約0.24Wです。

Q. 消費電流を減らすにはどこから?

A. 電流の大きい部品からです。多くの基板ではマイコンが大半なので、送信の回数を減らす・使わないときに眠らせるのが効きます。

まとめ
  • 消費電流の見積もりは5ステップ:書き出す・typ と max を拾う・電源ごとに足す・余裕をかける・熱を確かめる
  • データシートの電流は「いつの値か」で3倍以上違う。ESP32 は受信112mA、送信のピーク379mA
  • リニアレギュレータは入口=出口+自分の電流。例の基板は5V で typ 159mA・ピーク 438mA
  • 電源の容量はピーク、発熱と電池の持ちは平均で決める
  • ピーク×1.5≒657mA → USB 2.0 のポートでは足りず、5V・1A のアダプタ
  • 発熱は(入力−出力)×電流。約0.24W で約14℃上がる。入力電圧の下限(4.55V)も確かめる

次の一歩として、手元の回路の部品表を開き、この記事の表と同じ形で typ と max を書き出してみてください。電源ごとに足し、ピーク×1.5 と電源の能力を比べるだけで、作る前に電源の不足に気づけます。

参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの道具

USB で動く基板の電流を、見積もりと比べて実際に確かめるなら、USB の電圧・電流チェッカーが手軽です。ルートアールのUSB Type-C電圧・電流チェッカー RT-TC6VABKです。USB PDに対応し、充電中の電圧(4〜20V)・電流(50mA〜5A)・電力と、電流の向きを表示できます。

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おすすめの道具

回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。

おすすめの本

電源回路の設計を、要求仕様から短時間でまとめる実務の考え方まで知りたい人に向いています。要求仕様どおりの電源を短時間で設計するための、電源回路設計の本です(CQ出版、馬場清太郎 著)。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
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