電力科目の解説

火力発電の環境対策|脱硫・脱硝・電気集じん器の仕組みと順番

火力発電の環境対策。脱硫・脱硝・電気集じん器の仕組みと順番

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火力発電の環境対策は、SOx を排煙脱硫装置、NOx を排煙脱硝装置、ばいじんを電気集じん器で取り除き、CO2 は発電の効率を上げて減らす、の4本立てです。機器が並ぶ順番は排ガスが通る機器の順番、電気集じん器のしくみはばいじん対策の節にまとめました。

火力発電所の煙突から出る排ガスは、そのまま出すと大気汚染の原因になります。そこで発電所には、煙突に行くまでの間に、汚れを取り除く装置がいくつも並んでいます。この記事では、何を、どの装置で、どんなしくみで取り除いているのかを、計算も使いながら整理します。

結論|まず30秒でわかる答え

火力発電の環境対策は、燃料を燃やしたときに出る硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじん、二酸化炭素(CO2)を減らすことです。SOxは排煙脱硫装置(石灰石で石こうに変える)、NOxは燃焼の工夫と排煙脱硝装置(アンモニアで窒素と水に分解)、ばいじんは電気集じん器(コロナ放電で帯電させて集める)で取り除きます。CO2は、発電効率を上げて燃料の使用量そのものを減らすことで抑えます。

火力発電の排ガスに含まれる4つの物質

燃料を燃やすと、熱と一緒に、取り除かなければならない物質が出てきます。どれが何の原因になり、どの装置で減らすのかを、まず一覧で押さえます。

物質出てくる理由引き起こす問題主な対策
硫黄酸化物(SOx)燃料に含まれる硫黄が燃える酸性雨・ぜんそくなど排煙脱硫装置、硫黄の少ない燃料
窒素酸化物(NOx)空気中や燃料中の窒素が高温で酸素と結びつく酸性雨・光化学スモッグ燃焼の工夫、排煙脱硝装置
ばいじん燃え残りや灰の細かい粒大気の汚れ・健康被害電気集じん器
二酸化炭素(CO2)燃料の炭素が燃える地球温暖化発電効率の向上、LNGなど炭素の少ない燃料
たとえると

料理にたとえると、魚を焼いたときの煙(ばいじん)、こげたにおい(SOx・NOx)、部屋の温度上昇(CO2)のようなものです。換気扇のフィルターで煙を取り、消臭剤でにおいを取り、そもそも火を使う時間を短くして熱を減らす——発電所の対策も、この3つの考え方に分かれます。

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つまり、SOxとNOxとばいじんは「出てきたものを取り除く」、CO2は「出る量そのものを減らす」という、違う方向の対策になります。

SOx対策:排煙脱硫装置(石灰石-石こう法)

日本の大きな火力発電所で多く使われているのが、湿式の石灰石-石こう法です。石灰石(炭酸カルシウム)を水に混ぜた液を排ガスに吹きかけ、二酸化硫黄と反応させて石こう(硫酸カルシウム)として取り出します。

公式
CaCO3 + SO2 + 1/2O2 + 2H2O → CaSO4・2H2O + CO2

例題:二酸化硫黄1tを処理する

分子量(分子1個の重さの目安)は、石灰石CaCO3が100、二酸化硫黄SO2が64、石こうCaSO4・2H2Oが172とします。反応式から、SO2が1個に対してCaCO3が1個使われ、石こうが1個できます。

STEP 1

SO2 1tに含まれる「分子の数の目安」は、1 ÷ 64 に比例します

STEP 2

必要な石灰石:1t × 100 ÷ 64 = 約1.56t

STEP 3

できる石こう:1t × 172 ÷ 64 = 約2.69t

できた石こうは、セメントや石こうボードの原料として再利用されます。汚れを取り除くだけでなく、資源として使えるのがこの方法の強みです。

POINT

排煙脱硫装置は水を使う湿式なので、排ガスの温度が低いほうが都合がよく、燃焼ガスの流れのいちばん最後(煙突の手前)に置かれます。順番の問題で使う大事な理由です。

NOx対策:燃焼の工夫と排煙脱硝装置

NOxは、燃焼温度が高く、酸素が多いほど多く出ます。そこで、まず燃やし方を工夫して出る量を減らし、それでも出た分を排煙脱硝装置で分解します。

対策しくみ
低NOxバーナ炎の温度が局所的に高くなりすぎないように燃やす
二段燃焼空気を2回に分けて入れ、酸素が少ない状態で燃やし始める
排ガス再循環排ガスの一部を燃焼用空気に戻して、炎の温度と酸素濃度を下げる
排煙脱硝装置(アンモニア接触還元法)アンモニアを吹きこみ、触媒の上でNOxを窒素と水に分解する
公式
4NO + 4NH3 + O2 → 4N2 + 6H2O
たとえると

アンモニアは、NOxを「無害な窒素と水」に変身させる相棒です。触媒は、その変身を手早く進める「お見合いの仲人」のような役割で、自分は変わらずに、何度でも反応を助けます。

注意|ここで間違えやすい

排煙脱硝装置の触媒は、およそ300〜400℃くらいの温度でよく働きます。そのため脱硝装置は、排ガスがまだ熱いうち、つまりボイラを出てすぐ、空気予熱器より前に置かれます。脱硫装置(いちばん最後)と置き場所が正反対になる理由です。具体的な温度範囲は装置で異なるので、設備の資料で確認してください。

ばいじん対策:電気集じん器のしくみ

電気集じん器は、排ガスの中の細かい粒(ばいじん)に電気を帯びさせ、電気の力で電極に吸い寄せて取り除く装置です。

STEP 1

平板の集じん極と、線状の放電極の間に、高い直流電圧をかけます

STEP 2

線電極のまわりでコロナ放電(電線のまわりの空気がわずかに電気を通す現象)が起き、電子やイオンが飛び出します

STEP 3

排ガス中のばいじんが、そのイオンをもらって電気を帯びます

STEP 4

帯電したばいじんが、クーロン力(電気の引き合う力)で平板の集じん極に引き寄せられ、くっつきます

STEP 5

たまったばいじんは、電極を槌でたたいて下へ落とし、取り出します

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たとえると

下敷きを髪の毛でこすると、細かい紙くずを吸い寄せますね。電気集じん器は、排ガスの粒にわざと電気を帯びさせて、大きな「下敷き」(集じん極)に吸い寄せる装置です。

POINT

放電極は線電極、集じん極は平板電極です。「線のまわりでコロナ放電を起こし、広い板で受け止める」と覚えると、どちらがどちらか入れ替わりません。

排ガスが通る機器の順番と、その理由

排ガス処理の装置は、それぞれが得意な温度に合わせて並んでいます。代表的な並び方は次のとおりです。

順番機器この位置にある理由
①ボイラ(過熱器・節炭器)燃焼ガスの熱で蒸気と給水を温める
②排煙脱硝装置触媒がよく働く高い温度のうちに通す
③空気予熱器残った熱で燃焼用の空気を温める
④電気集じん器ばいじんを取り除く
⑤排煙脱硫装置水を使う湿式なので、温度が下がってから通す
⑥煙突きれいになった排ガスを出す
覚え方

温度が高い順に「脱硝 → 空気予熱器 → 集じん → 脱硫」。脱硝は熱いうちに、脱硫は冷めてから、と覚えます。

発電所によっては、集じん器を脱硫装置の後ろにもう一段置くなど、組み合わせが異なることがあります。試験では、問題文の流れに沿って、温度の考え方で判断するのが確実です。

CO2対策:効率を上げて燃料を減らす

CO2は、燃料の炭素が燃えれば必ず出るので、排ガスから取り除くよりも「同じ電気をつくるのに使う燃料を減らす」ことが基本の対策です。発電効率が上がれば、1kWhあたりのCO2は減ります。

例題:効率40%を50%に上げると、CO2はどれだけ減る?

STEP 1

同じ電力量をつくるのに必要な燃料の熱量は、効率に反比例します

STEP 2

効率40%のときの燃料を100とすると、効率50%では 100 × 40 ÷ 50 = 80

STEP 3

燃料が80になるので、CO2も80。つまり20%減ります

汽力発電の効率が40%前後なのに対し、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電は、より高い効率を出せます。さらに、同じ熱量で比べると炭素の少ないLNG(液化天然ガス)を使うと、CO2をいっそう減らせます。

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電験三種の過去問で問われているポイント

火力発電の環境対策は、装置のしくみを問う空欄穴埋めと、CO2排出量の計算の両方で出題されています。

年度・問題形式ポイント
令和3年度 問4空欄穴埋め電気集じん装置。集じん極は「平板電極」、放電極は「線電極」、「高電圧」で「コロナ」放電、ばいじんは「槌でたたいて」落とす
令和7年度上期 問3論説(誤りを選ぶ)燃焼ガスの通過順序。正しくは節炭器→空気予熱器→電気集じん装置
令和5年度上期 問15・令和6年度下期 問15・令和7年度下期 問15計算(B問題)火力発電所の燃料消費量や熱効率と、二酸化炭素の排出量

ポイント1:電気集じん装置は「線と板」「コロナ」「槌」

令和3年度の空欄は、この記事の5つのステップをそのまま問うものでした。放電極と集じん極の形を入れ替えた選択肢が並ぶので、「線で放電、板で集める」を確実に覚えておきます。

ポイント2:順番の問題は温度で判断する

令和7年度上期のように、機器の順番を1か所だけ入れ替えた選択肢が出ます。空気予熱器は熱回収の機器なので集じん器より前、脱硫は湿式なので最後、と温度の理由で考えれば迷いません。

ポイント3:CO2の計算は電力科目のB問題の定番

問15は、燃料の消費量と発熱量から熱効率を求め、さらに燃料中の炭素からCO2の量を出す計算問題がくり返し出ています。炭素が燃えると、炭素12に対してCO2が44の重さでできる、という比を使います。

よくある間違い・つまずきポイント

1. 脱硫と脱硝を逆に覚える

「硫」は硫黄(SOx)、「硝」は窒素(NOx)です。脱硫は石灰石、脱硝はアンモニアを使います。

2. 放電極と集じん極の形を入れ替える

放電極が線、集じん極が平板です。線のまわりでコロナ放電が起きます。

3. 脱硫装置を高温の位置に置くと考える

湿式の脱硫装置は、温度が下がってから通すので、煙突の手前に置かれます。高温で通すのは脱硝装置です。

4. CO2も装置で取り除くのが基本だと考える

基本の対策は、効率を上げて燃料そのものを減らすことです。効率が40%から50%になれば、CO2は20%減ります。

5. NOxは燃料の窒素からしか出ないと考える

空気中の窒素も、高温の炎の中で酸素と結びついてNOxになります。だから炎の温度を下げる燃焼の工夫が効きます。

よくある質問

Q. 火力発電の環境対策には何がありますか?

A. SOxは排煙脱硫装置、NOxは燃焼の工夫と排煙脱硝装置、ばいじんは電気集じん器で減らし、CO2は効率向上で減らします。

Q. 排煙脱硫装置のしくみは?

A. 石灰石を混ぜた液を排ガスに吹きかけ、二酸化硫黄と反応させて石こうとして取り出す、石灰石-石こう法が多く使われます。

Q. 排煙脱硝装置のしくみは?

A. 排ガスにアンモニアを吹きこみ、触媒の上で窒素酸化物を無害な窒素と水に分解する、アンモニア接触還元法が使われます。

Q. 電気集じん器のしくみは?

A. 線電極のまわりのコロナ放電でばいじんに電気を帯びさせ、クーロン力で平板の集じん極に集めて取り除きます。

Q. 脱硝装置が空気予熱器より前にあるのはなぜですか?

A. 脱硝の触媒は排ガスが高い温度のときによく働くので、熱を回収して温度が下がる空気予熱器より前に置かれます。

まとめ:取り除く3つと、減らす1つ

この記事の要点
  • SOx=排煙脱硫装置(石灰石-石こう法)。SO2 1tで石灰石約1.56t、石こう約2.69t
  • NOx=燃焼の工夫+排煙脱硝装置(アンモニア接触還元法)
  • ばいじん=電気集じん器(線電極でコロナ放電、平板電極で集める、槌でたたいて落とす)
  • 順番:脱硝 → 空気予熱器 → 集じん → 脱硫(熱いうちに脱硝、冷めてから脱硫)
  • CO2=効率を上げて燃料を減らす(40%→50%で20%減)

まずは「4つの物質と対策」の表と、「機器の順番」を、理由と一緒に書き出せるか試してみてください。しくみと理由がつながれば、空欄穴埋めも論説も迷わずに解けます。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

「火力発電の環境対策」を試験の得点につなげるなら、電力科目の教科書で前後の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「電力」の教科書と問題集が1冊になった本です。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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