- 「整流器・チョッパ・インバータ・サイクロコンバータ」の名前は覚えたが、正誤問題で「これはどの変換か」を即答できない
- 「順変換」「逆変換」の言葉が出た瞬間に混乱する
- 試験直前にパラパラと4つの回路記事を読み直す時間がない
- AC→DC/DC→DC/DC→AC/AC→ACの4変換を1枚の比較表に集約
- 各回路の「使用素子・制御方式・用途」の対応関係
- 「順変換・逆変換」「電圧形・電流形」など試験用語の整理
- 試験の正誤問題で引っかかるポイントを網羅したチートシート
電験三種のパワエレ分野は整流・チョッパ・インバータ・サイクロコンバータと複数の回路が登場します。個別に覚えるより、「何を何に変換するか」という1軸で全部整理すると記憶が定着します。この記事はパワエレシリーズの総まとめとして、試験直前に見返す「チートシート」として使ってください。
目次
電力変換の4分類:「何を何に変えるか」で全部決まる
電力変換回路は入力(AC or DC)と出力(AC or DC)の組み合わせで4種類に分類されます。この分類を頭に入れるだけで、試験の選択肢を半分に絞れます。
AC→DCの変換を順変換(整流)、DC→ACの変換を逆変換(インバータ)と呼びます。「順」は「電力系統→機器」の自然な流れ、「逆」はその逆方向という意味です。試験では「逆変換器はインバータである」という正誤問題でそのまま出ます。

電力変換回路の完全比較表【試験直前チートシート】
以下の表が試験前の最終確認に使えます。特に「使用素子」と「制御方式」の列が穴埋め問題の定番です。
| 回路名 | 変換 | 主な使用素子 | 制御方式 | 出力電圧の制御量 | 主な用途 | 別名・関連用語 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ダイオード整流 | AC→DC | ダイオード (整流ダイオード) |
なし (受動整流) |
制御不可 (固定) |
電源回路・充電器・前段整流 | 受動整流器 コンバータ |
| サイリスタ整流 (位相制御) |
AC→DC | サイリスタ (SCR) |
位相制御 (制御角α) |
α で連続可変 | 直流電動機速度制御・電気炉・直流送電 | 順変換器 コンバータ |
| 降圧チョッパ (バック) |
DC→DC | IGBT・MOSFET +ダイオード+L |
PWM制御 (通流率γ) |
Vd = γE (Vd ≤ E) |
DC電動機速度制御・スイッチング電源 | DC-DCコンバータ バックコンバータ |
| 昇圧チョッパ (ブースト) |
DC→DC | IGBT・MOSFET +ダイオード+L |
PWM制御 (通流率γ) |
Vd = E/(1-γ) (Vd ≥ E) |
EV回生・太陽電池昇圧 | ブーストコンバータ |
| 昇降圧チョッパ | DC→DC | IGBT・MOSFET +ダイオード+L |
PWM制御 (通流率γ) |
Vd = γE/(1-γ) 極性反転 |
フライバック電源 | バック-ブースト 反転型コンバータ |
| 電圧形 インバータ(VSI) |
DC→AC | IGBT・MOSFET +フリーホイールD |
PWM制御 (変調度m) |
m・周波数 で制御 |
誘導電動機VVVF UPS・太陽光パワコン・EV |
逆変換器 VSI |
| 電流形 インバータ(CSI) |
DC→AC | サイリスタ・IGBT +リアクトル |
電流制御 | 出力電流が 矩形波 |
大容量同期電動機 | CSI |
| サイクロ コンバータ |
AC→AC (周波数変換) |
サイリスタ (多数) |
位相制御 | 出力周波数 < 入力周波数 |
大型電動機 低速可変速(セメント工場等) |
直接周波数変換器 |
| AC電圧 コントローラ |
AC→AC (電圧制御) |
サイリスタ逆並列 トライアック |
位相制御 | 実効値電圧 を可変 |
電灯調光・電熱制御 誘導電動機制動 |
交流電力調整器 |
サイクロコンバータは入力交流から直接低周波交流を作ります。原理上、出力周波数は入力周波数(50/60Hz)以下に制限されます。「サイクロコンバータで入力より高い周波数の出力が得られる」→ 誤り。

① 整流回路(AC→DC):「順変換器」の2種類
ダイオード整流
| 素子 | ダイオード(整流素子) |
| 制御 | なし(受動動作) |
| 出力 | 固定直流(調整不可) |
| 単相半波Vd | √2V/π ≈ 0.45V |
| 単相全波Vd | 2√2V/π ≈ 0.90V |
サイリスタ整流(位相制御)
| 素子 | サイリスタ(SCR) |
| 制御量 | 制御角α(0°〜180°) |
| α=0° | 出力電圧最大(ダイオードと同じ) |
| α大→ | 出力電圧低下 |
| α>90° | 逆変換(回生)動作可能 |
「制御角αを大きくすると出力電圧が大きくなる」→ 誤り(αが大きくなると電圧は下がる)
「ダイオード整流で出力電圧を制御できる」→ 誤り(ダイオードは制御不可)
「単相全波ブリッジの無負荷出力電圧はほぼ2√2V/πである」→ 正しい

② 直流チョッパ(DC→DC):通流率γで3種類
降圧:Vd = γE (Vd ≤ E、同極性)
昇圧:Vd = E / (1−γ) (Vd ≥ E、同極性)
昇降圧:Vd = γE / (1−γ) (γ=0.5でVd=E、逆極性)
| 種類 | γ↑のとき Vd は? | γ=0.5のとき | 極性 | 用途例 |
|---|---|---|---|---|
| 降圧 | ↑ 上がる | Vd = 0.5E | 同 | DC電動機速度制御 |
| 昇圧 | ↑ 上がる(急激) | Vd = 2E | 同 | EV回生・太陽電池 |
| 昇降圧 | ↑ 上がる | Vd = E(同じ) | 逆(反転) | フライバック電源 |
「昇圧チョッパではγを小さくすると出力電圧が上がる」→ 誤り(γ大→Vd大)
「昇降圧チョッパの出力は入力と逆極性になる」→ 正しい
「降圧チョッパの出力電圧が入力電圧を超えることはない」→ 正しい(Vd=γE≤E)

③ インバータ(DC→AC):「逆変換器」の2種類
電圧形インバータ(VSI)【主流】
| 素子 | IGBT・MOSFET+フリーホイールD |
| 直流側 | コンデンサ(電圧源) |
| 単相動作 | S1・S4 ON→+E / S2・S3 ON→-E |
| 三相180° | 常に3スイッチON、120°ずれ出力 |
| PWM変調度m | m大→出力電圧大 |
電流形インバータ(CSI)
| 素子 | サイリスタ・IGBT |
| 直流側 | リアクトル(電流源) |
| 出力 | 電流が矩形波(電圧は負荷依存) |
| 用途 | 大容量同期電動機 |
「電圧形インバータの直流側にはリアクトルが接続されている」→ 誤り(コンデンサ。リアクトルは電流形)
「フリーホイールダイオードは誘導性負荷の電流を還流させる目的で設ける」→ 正しい
「インバータの出力周波数はスイッチング周期Tで決まる(f=1/T)」→ 正しい
「単相フルブリッジでS1とS2を同時にONにすると正の半波が出る」→ 誤り(短絡事故)

④ AC→AC変換:サイクロコンバータとAC電圧コントローラ
サイクロコンバータ:DC段なしで直接周波数を変換
サイクロコンバータは直流段(整流→インバータ)を経由せずに、交流から直接異なる周波数の交流を作る回路です。多数のサイリスタを使って、入力交流の一部を切り出して合成します。
| 出力周波数の制限 | 出力周波数 < 入力周波数(入力の1/3程度が上限の目安) |
| 使用素子 | サイリスタ(正逆両方向の電流に対応するため逆並列接続) |
| DC段の有無 | なし(整流・平滑不要。直接AC→AC) |
| メリット | 効率が高い・大容量に対応・回生が容易 |
| 主な用途 | セメント工場の大型ロータリーキルン・製鉄の圧延機・大型艦船の推進モータ |
AC電圧コントローラ:周波数はそのまま、電圧の実効値を変える
AC電圧コントローラは周波数を変えずに交流電圧の実効値のみを制御する回路です。サイリスタを逆並列(またはトライアック)で接続し、位相制御で電圧を変えます。
- 周波数は変化しない
- 実効値電圧を0〜最大まで可変
- トライアック1個で単相制御可能
- 電灯調光(白熱灯・ハロゲン)
- 電熱制御(電気ヒータ)
- 誘導電動機の制動(速度制御ではない)
「サイクロコンバータの出力周波数は入力周波数より高くなることがある」→ 誤り(出力は入力以下)
「サイクロコンバータは整流回路と逆変換回路を組み合わせたものである」→ 誤り(DCを経由しない)
「AC電圧コントローラは交流電圧の実効値を変化させるが周波数は変えない」→ 正しい

正誤問題チートシート:試験によく出る15問
以下の15問は電験三種の過去問で繰り返し出てきた問いのパターンです。正誤と理由をセットで覚えましょう。
| # | 問題文 | 正誤 | 理由・ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | インバータは直流を交流に変換する逆変換器である | ✅ 正 | DC→AC = 逆変換器(インバータ) |
| 2 | サイリスタ整流器の制御角αを大きくすると出力電圧が上がる | ❌ 誤 | α↑ → 点弧が遅くなる → Vd↓ |
| 3 | 降圧チョッパの出力電圧は電源電圧を超えない | ✅ 正 | Vd=γE、0≤γ≤1なのでVd≤E |
| 4 | 昇圧チョッパの通流率γを小さくすると出力電圧が上がる | ❌ 誤 | Vd=E/(1-γ)。γ↑→(1-γ)↓→Vd↑ |
| 5 | 昇降圧チョッパの出力は入力と逆極性になる | ✅ 正 | 昇降圧(バック-ブースト)は反転型 |
| 6 | 電圧形インバータの直流側にはリアクトルが接続される | ❌ 誤 | 電圧形→コンデンサ。リアクトル→電流形 |
| 7 | 単相フルブリッジでS1・S4をONにすると正の半波が出力される | ✅ 正 | 対角スイッチONで正方向の電流経路が形成 |
| 8 | サイクロコンバータは出力周波数を入力周波数より高くできる | ❌ 誤 | 出力f < 入力f が原理上の制限 |
| 9 | PWMインバータでは変調度mを大きくすると出力電圧が大きくなる | ✅ 正 | m=変調波/搬送波振幅。m↑→パルス幅↑→Vout↑ |
| 10 | フリーホイールダイオードは誘導性負荷の電流を還流させる目的で設ける | ✅ 正 | コイルの電流を安全に還流し素子を保護 |
| 11 | サイクロコンバータは整流器とインバータを組み合わせた回路である | ❌ 誤 | DC段なし。AC→ACを直接変換 |
| 12 | ダイオード整流回路では出力直流電圧を制御できない | ✅ 正 | ダイオードはゲート制御がないため受動動作のみ |
| 13 | VVVF制御でV/f一定を保つのはモータの磁束を一定に保つためである | ✅ 正 | Φ=V/f。磁束一定 = トルク一定制御 |
| 14 | 三相インバータの180°通電方式では常に2個のスイッチがONしている | ❌ 誤 | 180°通電では常に3個がON |
| 15 | AC電圧コントローラは交流の周波数を変えることができる | ❌ 誤 | 電圧の実効値のみ変える。周波数は変えない |

使用素子の使い分け早見表
「この回路に使われる素子は?」という穴埋め問題にも即答できるよう、素子と回路の対応を整理します。
| 素子 | 特徴 | 使われる回路 | ターンオフの方法 |
|---|---|---|---|
| ダイオード | 受動素子、制御信号なし | 整流回路、フリーホイール | 逆電圧で自然にOFF |
| サイリスタ(SCR) | ゲートでON、自然転流でOFF | 整流(位相制御)・サイクロコンバータ | 逆電圧(自然転流・強制転流) |
| MOSFET | 高速スイッチング・低電圧向き | 小型チョッパ・低電圧インバータ | ゲート電圧を0Vに |
| IGBT | 高電圧・大電流・中速スイッチング | 大容量チョッパ・インバータ(EV・鉄道) | ゲート電圧を0V(または負)に |
| トライアック | 双方向サイリスタ | AC電圧コントローラ(調光器) | 交流ゼロクロスで自然にOFF |
【一目でわかる】半導体素子の比較表|ダイオード・サイリスタ・BJT・MOSFET・IGBTを総整理! →

まとめ:「何を何に変換するか」で全部整理できる
| AC→DC(整流) | ダイオード(制御不可)またはサイリスタ位相制御(制御角αで可変) |
| DC→DC(チョッパ) | IGBT/MOSFET+PWM。降圧γE・昇圧E/(1-γ)・昇降圧γE/(1-γ)の3式 |
| DC→AC(インバータ) | IGBT+FWD。電圧形が主流。S1・S4/S2・S3の交互ON。同側上下ONは禁止 |
| AC→AC(直接変換) | サイクロコンバータ(f変換、出力f<入力f)とAC電圧コントローラ(V変換のみ) |
パワエレ分野は「入力と出力の種類」という1本の軸で整理できます。この記事の比較表と正誤問題チートシートを試験直前に見返すことで、穴埋め・正誤問題の大半に対応できます。各回路の詳細は個別記事で確認してください。
📚 パワエレシリーズ各記事へのリンク
AC→DC変換の詳細。制御角αと出力電圧の関係式・計算例・還流ダイオードの役割。
DC→DC変換の詳細。通流率γと3つの出力電圧式・B問題の計算パターン。
DC→AC変換の詳細。4スイッチのON/OFF順序・PWM制御・VVVF制御の原理。
各回路に使われる素子の詳細比較。「どの素子がどの回路に使われるか」を完全整理。
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