- 公式は覚えているのに、問題文の数値をどこに代入すればいいか迷って時間を浪費する
- チョッパの計算は合っているのに、電流・電力の変換で失点する
- インバータのB問題で「IGBT損失を求めよ」が出た瞬間に手が止まる
- B問題で繰り返し出る3パターン(降圧チョッパ・単相整流・インバータ損失)の解法テンプレート
- 問題文を読んだ瞬間に「このパターンだ」と判断する方法
- 途中式を全部書いた計算例(省略なし)
- よくある計算ミスと防止策
電験三種の機械科目B問題(各10点×2問=20点)はパワエレが最頻出です。一見複雑に見えますが、問われているパターンは毎年ほぼ同じです。この記事で3つのテンプレートを手に入れれば、初見の問題でも迷わず立式できるようになります。
目次
まず「問題文の読み方」:3秒でパターンを判定する
B問題を解くとき、最初の10秒は計算より「回路の種類を特定すること」に使ってください。問題文に出てくるキーワードで一瞬でパターンが決まります。
キーワード:「通流率」「ON時間」「OFF時間」「直流電動機の速度制御」
求めるもの:Vd・Id・Is・効率
キーワード:「制御角α」「半波」「全波ブリッジ」「ダイオード整流」
求めるもの:Vd・Id・電力P
キーワード:「IGBT」「スイッチング損失」「導通損失」「PWM」「デューティ」
求めるもの:損失P・効率η
① 回路の種類は何か(チョッパ / 整流 / インバータ)
② 求めるものは何か(電圧 / 電流 / 電力 / 効率 / 損失)
③ 単位は合っているか(kW とW が混在していないか)
この3点を確認してから計算を始めると、大部分のミスが防げます。

パターンA:降圧チョッパ回路の計算
② Vd = γ × E
③ Id = Vd / R(負荷が抵抗Rのとき)
④ 電源電流(平均)Is = γ × Id または Is = Vd × Id / E(電力保存)
⑤ 効率 η = (Vd × Id) / (E × Is) × 100[%]
電源電圧 E = 250 V の降圧チョッパ回路がある。スイッチングの ON 時間 ton = 1.5 ms、OFF 時間 toff = 0.5 ms である。負荷抵抗 R = 20 Ω とする。
(a)通流率 γ を求めよ。
(b)出力電圧 Vd を求めよ。
(c)出力電流の平均値 Id を求めよ。
(d)入力電流の平均値 Is を求めよ。
(e)電力変換効率 η を求めよ(損失なしとする)。
T = ton + toff = 1.5 + 0.5 = 2.0 ms
γ = ton / T = 1.5 / 2.0 = 0.75
Vd = γ × E = 0.75 × 250 = 187.5 V
Id = Vd / R = 187.5 / 20 = 9.375 A
方法①:Is = γ × Id = 0.75 × 9.375 = 7.03 A
方法②(電力保存):Is = Vd × Id / E = 187.5 × 9.375 / 250 = 1757.8 / 250 = 7.03 A ← 一致を確認
損失なしの場合:η = 出力電力 / 入力電力 = (Vd × Id) / (E × Is)
= (187.5 × 9.375) / (250 × 7.03) = 1757.8 / 1757.8 = 1.00 → 100%
※ 損失がある場合は損失分を入力電力に加算して分母を修正する
電源電圧 E = 200 V の降圧チョッパで直流電動機を駆動する。電動機の電機子抵抗 Ra = 0.5 Ω、定常時の電機子電流 Ia = 30 A。通流率 γ = 0.8 とする。
(a)出力電圧 Vd を求めよ。
(b)電動機の逆起電力 Em を求めよ。
(c)チョッパの入力電流 Is の平均値を求めよ。
Vd = γ × E = 0.8 × 200 = 160 V
電動機:Vd = Em + Ia × Ra
Em = Vd − Ia × Ra = 160 − 30 × 0.5 = 160 − 15 = 145 V
Is = γ × Ia = 0.8 × 30 = 24 A

パターンA発展:昇圧チョッパ・昇降圧チョッパ
昇降圧:Vd = γE / (1 − γ) ← 出力極性が逆に注意
入力電流 Is:電力保存 E × Is = Vd × Id から求める
電源電圧 E = 100 V、通流率 γ = 0.6 の昇圧チョッパがある。出力側に 50 Ω の抵抗を接続した。
(a)出力電圧 Vd を求めよ。
(b)出力電流 Id を求めよ。
(c)入力電流の平均値 Is を求めよ(損失なし)。
(d)入力電力 Pin を求めよ。
Vd = E / (1 − γ) = 100 / (1 − 0.6) = 100 / 0.4 = 250 V
Id = Vd / R = 250 / 50 = 5 A
Pout = Vd × Id = 250 × 5 = 1250 W
損失なしなので Pin = Pout = 1250 W
Is = Pin / E = 1250 / 100 = 12.5 A
Pin = E × Is = 100 × 12.5 = 1250 W (出力電力と一致 ✅)
「入力電流 Is = γ × Id」と計算してしまうパターン。これは降圧チョッパの式です。昇圧チョッパでは Ia = Is(電源電流 = 電機子電流)が連続して流れるため、電力保存の式 E × Is = Vd × Id から求めるのが確実です。

パターンB:単相整流回路の計算
ダイオード全波:Vd = 2√2V / π ≈ 0.90V
サイリスタ単相全波(制御角α):Vd = (√2V / π)(1 + cosα)
三相全波(制御角α):Vd ≈ 2.34Vp cosα
出力電力 P = Vd × Id = Vd² / R
交流電圧の実効値 V = 100 V の単相全波ブリッジ整流回路(ダイオード4個)に、負荷抵抗 R = 50 Ω を接続した。
(a)出力電圧の平均値 Vd を求めよ。
(b)出力電流の平均値 Id を求めよ。
(c)出力電力 P を求めよ。
単相全波ブリッジ(ダイオード整流):Vd = 2√2V / π
= 2 × 1.4142 × 100 / 3.1416
= 282.84 / 3.1416
= 90.0 V
Id = Vd / R = 90.0 / 50 = 1.80 A
P = Vd × Id = 90.0 × 1.80 = 162 W
別解:P = Vd² / R = 90.0² / 50 = 8100 / 50 = 162 W ✅
交流実効値 V = 200 V の単相全波サイリスタ整流回路(制御角 α = 60°)に、負荷抵抗 R = 10 Ω を接続した。
(a)出力電圧の平均値 Vd を求めよ。
(b)制御角 α = 0° のときの出力電圧 Vd0 と比較した比率を求めよ。
(c)出力電力 P を求めよ。
単相全波:Vd = (√2V / π)(1 + cosα)
cos 60° = 0.5
Vd = (√2 × 200 / π) × (1 + 0.5)
= (1.4142 × 200 / 3.1416) × 1.5
= (282.84 / 3.1416) × 1.5
= 90.0 × 1.5
= 135.0 V
Vd0(α=0°)= (√2V / π)(1 + cos 0°) = 90.0 × 2 = 180.0 V
比率 = Vd / Vd0 = 135.0 / 180.0 = 0.75(75%)
※ α=60° は(1+cosα)/2 = (1+0.5)/2 = 0.75 → α=0°の75%と覚えられる
Id = Vd / R = 135 / 10 = 13.5 A
P = Vd × Id = 135 × 13.5 = 1822.5 W ≈ 1.82 kW

パターンC:インバータ・IGBT損失の計算
IGBT損失の問題は近年の頻出パターンです。「導通損失」と「スイッチング損失」の2種類を分けて計算するのがポイントです。
(δ:デューティ比 = ON時間の割合)
スイッチング損失(1素子):Psw = ½ × VDC × IC × (tr + tf) × fsw
(tr:ターンオン時間、tf:ターンオフ時間、fsw:スイッチング周波数)
1素子の合計損失:Ptotal = Pcon + Psw
インバータ全体の損失:Pinv = Ptotal × 素子数(単相は4個、三相は6個)
単相フルブリッジインバータ(IGBT 4個)がある。直流電源電圧 E = 300 V、負荷電流(実効値)I = 20 A。各 IGBT の仕様は以下の通り。
・飽和電圧 VCE(sat) = 2.0 V
・デューティ比 δ = 0.5(各 IGBT は半周期 ON)
・スイッチング周波数 fsw = 10 kHz
・ターンオン時間 ton = 1 μs、ターンオフ時間 toff = 2 μs
・電流波高値 Î = √2 × 20 = 28.3 A(問題文中に与えられることが多い)
(a)1個の IGBT の導通損失 Pcon を求めよ。
(b)1個の IGBT のスイッチング損失 Psw を求めよ。
(c)インバータ全体の損失 Pinv を求めよ。
(d)出力電力 Pout = 4 kW のとき、インバータの効率 η を求めよ。
平均電流 = Î × δ の関係を用いる(正弦波の場合、実効値I で近似する場合もあるが、ここでは問題文に従う)
Pcon = VCE(sat) × IC(avg)
IC(avg) = I × δ = 20 × 0.5 = 10 A(平均電流の簡易近似)
Pcon = 2.0 × 10 = 20 W
Psw = ½ × VDC × Î × (ton + toff) × fsw
= ½ × 300 × 28.3 × (1×10-6 + 2×10-6) × 10×103
= ½ × 300 × 28.3 × 3×10-6 × 104
= ½ × 300 × 28.3 × 0.03
= ½ × 254.7
= 127.4 W
1素子の損失 = Pcon + Psw = 20 + 127.4 = 147.4 W
単相フルブリッジは IGBT 4個
Pinv = 147.4 × 4 = 589.6 W ≈ 590 W
Pin = Pout + Pinv = 4000 + 590 = 4590 W
η = Pout / Pin = 4000 / 4590 = 0.8714…
= 87.1 %
① 電流に実効値Iを使うか波高値Îを使うか:問題文をよく読み、指定された値を使う。スイッチング損失は通常波高値Î
② 素子数の掛け算を忘れる:単相は×4、三相は×6(フリーホイールダイオードが入る場合はさらに追加)
③ 単位の混乱:時間はμsをsに、周波数はkHzをHzに揃えてから計算する

計算ミス防止:単位変換チェックシート
パワエレB問題の失点の多くは計算ミスではなく単位の混乱です。以下を試験前に確認してください。
| 量 | 問題文でよく出る単位 | 式に代入する単位 | 変換例 |
|---|---|---|---|
| 時間 | ms, μs | s(秒) | 1 ms = 10⁻³ s, 1 μs = 10⁻⁶ s |
| 周波数 | kHz | Hz | 10 kHz = 10,000 Hz = 10⁴ Hz |
| 電力 | kW | W | 4 kW = 4000 W |
| 電流(実効値/波高値) | A | A | 波高値 Î = √2 × 実効値I(正弦波の場合) |
| 効率 | % | 小数(0〜1)または % | η = 0.875 → 87.5% 問題文の指示に従う |
どの回路でもPin = Pout + Plossが成り立ちます。損失なしなら Pin = Pout。計算後にこれを確認すると、掛け算ミスや単位ミスを発見できます。時間が1分余ったら必ずチェックする習慣をつけましょう。

B問題の解き方フローチャート
問題文を読んでから計算を始めるまでの「判断フロー」です。このフローを頭に入れておくと、本番で迷わなくなります。

よくある計算ミス総まとめ:これで10点を守る
| # | やりがちなミス | 正しい対処 | 防止策 |
|---|---|---|---|
| 1 | 昇圧で Vd = γE を使う | 昇圧は Vd = E/(1−γ) | 「昇圧は分母に(1-γ)」と唱えてから代入 |
| 2 | チョッパで Is = Id と置く | 降圧:Is = γ×Id 昇圧:電力保存で求める | 回路種類を確認してから Is の式を選ぶ |
| 3 | 整流で α = 0° の最大値式にαを代入しない(α=0のまま) | Vd = (√2V/π)(1+cosα)に α を正しく代入 | cos値を先に計算してメモする(cos60°=0.5等) |
| 4 | IGBT損失で素子数を掛け忘れる | 単相×4、三相×6(FWD含む場合は×8 or ×12) | 問題文の回路図で素子数を数えてから計算開始 |
| 5 | μs や kHz をそのまま代入する | 必ず SI 単位(s、Hz、W)に統一してから代入 | 計算欄の最初に「1 μs = 10⁻⁶ s」とメモ |
| 6 | 効率を Pout/Ploss で計算する(分母を損失にする) | η = Pout / Pin = Pout / (Pout + Ploss) | 「効率 = 出力 ÷ 入力」を声に出して確認 |

まとめ:3パターンのテンプレートで10点を取りに行く
| パターンA 降圧チョッパ | γ = ton/T → Vd = γE → Id = Vd/R → Is = γ×Id(電力保存で検算) |
| パターンA 昇圧チョッパ | γ = ton/T → Vd = E/(1-γ) → Id = Vd/R → Is = Vd×Id/E(電力保存必須) |
| パターンB 整流回路 | 回路種類確認 → 公式選択 → α代入(cos値を先に計算)→ P = Vd²/R |
| パターンC IGBT損失 | Pcon + Psw(単位変換に注意)→ ×素子数 → η = Pout/(Pout + Pinv) |
| 共通チェック | 単位統一(ms→s、kHz→Hz、kW→W)→ 電力保存で検算(Pin = Pout + Ploss) |
B問題の10点はテンプレートを正確に使えるかどうかで決まります。この記事の計算例を紙に書いて自分で再現してみてください。3回繰り返せば、本番でも手が自動的に動くようになります。
📚 次に読むべき記事
パターンAの理論背景。「なぜVd = γEになるのか」をスイッチング波形から理解しよう。
パターンBの理論背景。位相制御の公式の導き方と還流ダイオードの役割を確認しよう。
パターンCの理論背景。4スイッチの動きとPWM制御を理解してから損失計算に取り組もう。
【2026年完全版】電験三種の勉強が加速するおすすめグッズ10選 →