作業者8人に新しい治具を使ってもらい、改善の前と後で作業時間を測った。平均は 50.6秒 から 48.4秒 へ、2.25秒 短くなった。この差は本物か。
この記事は、統計の記事を作り直す中で、改善の効果を確かめたいという場面にいちばん近い検定なのに、専用の解説が無かったために書きました。上の8人の例では、対応のある t検定なら差は明らか、対応のない検定にすると「差があるとはいえない」と、結論が逆になります。
対応のあるデータとは?対応のないデータとの違い
対応のあるデータとは、2つの測定値が1組ずつ同じ対象から取られているデータです。組の相手を入れ替えると意味がなくなるのが目印です。
2つのラインのように別々の物を比べるときは2標本の t検定、ばらつきが違うならウェルチの t検定です。
対応のある t検定の公式|差の平均を1標本で検定する
差 d を1つのデータとみなすと、「差の平均が0と違うか」という1標本の t検定そのものです。基準値を0にした1標本の t検定と同じ計算になります。
対応のある t検定のやり方5ステップ|作業時間の改善の例題
説明のために作った数字
差の平均の95%信頼区間は 2.25±2.365×0.412=1.28〜3.22秒。0を含まないことも、上の判定と合います(信頼区間)。
この例題の t・p値・区間は、手計算とは別に統計ソフトの対応のある t検定の関数でも出し、小数第2位まで一致を確かめました。

対応なしで計算すると結論が逆になる
同じ数字を、前の8個と後の8個という別々のグループとして2標本の t検定にかけると、t=1.93、p値 約7.4% で、5%では「差があるとはいえない」になります。
理由は人ごとの違いです。前の時間は 47〜55秒 と人によって8秒も違い(標準偏差 約2.67秒)、この違いが対応なしの計算ではばらつきに入ってしまいます。差をとると、人ごとの違いは打ち消され、残るのは治具の効果のばらつき(1.165秒)だけになります。
対応のある t検定の計算ツール
前と後のデータを同じ順番で入れると、差の平均・t・p値・判定と、差の95%信頼区間を出します。初めは例題の8人の数字で、t=5.46 になります。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。
対応のある t検定を現場で使うときの判断とExcel
改善の効果を確かめるなら、データを取る前に「同じ対象の前と後」を測る計画にします。対応のあるデータは、少ない数で差を見つけられるからです。
筆者なら、改善の効果を確かめる計画を立てるときは、まず同じ作業者・同じ部品で前後を測れるかを考えます。理由は、人や部品ごとの違いが大きい現場ほど、対応のない比較ではその違いに効果が埋もれ、上の例のように「差があるとはいえない」で終わってしまうからです。
品質保証の現場でよく起きるのは、改善前は先月の部品、改善後は今月の部品というように、別々の物を測って比べる型です。これは対応のない比較になり、部品の違いと改善の効果が混ざります。
検定全体の考え方は仮説検定の記事で確かめられます。
t の境界値を自由度から引く t分布表
QC検定での対応のある t検定の出方
QC検定の手法の問題では、「同じ試料を2つの方法で測った」「同じ作業者の訓練前後」といった文から、対応のあるデータだと見抜いて、差の平均と差の標準偏差で t を計算させる形が見られます。
- 同じ対象を2回測った → 対応あり
- 差をとってから、1標本の t検定(基準値0)
- 自由度は ペアの数−1
級ごとの出題範囲は、日本規格協会の「品質管理検定レベル表」で確かめてください。確認しようとした時点では公式のページが保守中で開けなかったため、この記事では級を断定していません。
対応のある t検定のよくある質問
まとめ|前後の比較は差をとって1標本で
- 対応のある t検定=ペアごとの差 d の1標本 t検定(基準値0、自由度 ペア数−1)
- 例題:差の平均 2.25秒、s_d 1.165秒、t=5.46 > 2.365 → 短くなった(p 約0.09%)
- 同じ数字を対応なしで計算すると t=1.93、p 約7.4% で差があるとはいえない
- 改善の効果は、同じ対象の前後を測る計画にする

