午前10時の設計レビュー。設計部の若手と、年配の機構設計者が、こんな会話をしていました。
機構設計者:「ランドの形状は丸?四角?あと放熱パッドは別レイヤー?」
あなたは品質保証として議事録を取りつつ、内心こう思っていませんか。
「ランド?パッド?フットプリント?放熱パッド?……全部"部品をのせる場所"だと思ってたけど、それぞれ違うのか?同じなのか?基板4年目で『この3つの違いって何ですか』なんて聞けない」
- 「ランド」「パッド」「フットプリント」が混ざって使われ、いつも頭が混乱する
- 客先監査で「パッド形状の規定は?」と聞かれて答えに詰まった
- 「放熱パッド(サーマルパッド)」が普通のパッドと何が違うのかピンとこない
- データシートの「Recommended Land Pattern」を見ても何を言っているのか分からない
- 「ランド」「パッド」「フットプリント」の正確な違いと使い分け
- 3つの用語の包含関係(どれが一番大きい概念か)
- 「放熱パッド(サーマルパッド)」と普通のパッドの違い
- SMD・スルーホール・QFN・BGAでフットプリントがどう変わるか
- 客先監査・設計レビューで使い分けに困らない実務知識
わからなくて当然です。この3語は、現場の人ですら混同して使うことがある厄介な用語です。機械工学の頭で理解できる例えを使いながら、3つの違いをスッキリ整理します。
目次
結論:3つは「大きさが違う"入れ子の概念"」だった
時間がない方のために、3つの言葉の関係を最初に明示します。
フットプリント ⊃ ランド = パッド
・フットプリント=部品1個分の「足場一式」(複数のランド+外形枠+シルクなど)
・ランド=部品の足1本がのる「銅箔1枚」
・パッド=ランドとほぼ同義(米国系・実装現場の呼び方)
つまり「フットプリント」は大きな概念(部品まるごと)、「ランド/パッド」はその中の1要素(足1本分)です。製造業のあなたなら、次の例えで一気にスッキリします。
機械の据付に例えるなら、こうなります。
・フットプリント=機械1台を据え付けるための「据付ベース全体」
(アンカーボルト穴4本+位置決めピン+外形マーク+型番表示)
・ランド/パッド=そのうちの「アンカーボルト1本分の穴」
・据付ベース全体(フットプリント)の中に、ボルト穴(ランド)が複数個ある
これとまったく同じ構造が基板上にもある、というだけです。
あなたが現場で見ている「機械の据付図」と本質はそっくりです。「部品1台分の据付図」が"フットプリント"、「ボルト1本のための穴」が"ランド/パッド"──この対応をまず頭に入れてください。

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ランドとは──部品の足1本がのる「銅箔1枚」
ランド(Land)は、文字通り「陸地」の意味です。基板の表面で、部品の足が着地する銅箔の1区画を指します。
部品の電極1個(リード1本またはチップの片端)が物理的・電気的に接続される、銅箔の1区画。
ランドの役割は「3つ同時に」果たすこと
たかが「銅箔1枚」と侮ってはいけません。ランドは同時に3つの仕事をしています。
| 役割 | 具体的に何をしているか |
|---|---|
| ①機械的固定 | はんだで部品を物理的に基板に接着。振動・衝撃に耐える |
| ②電気的接続 | 部品電極から基板の配線パターンへ電気を通す |
| ③熱の伝達 | 部品で発生した熱を基板側へ逃がす"通り道"の入口 |
これは機械系で言えば、「ボルト穴」が単に固定だけでなく、位置決め・荷重伝達・場合によっては冷却水の通り道も兼ねているのと同じ発想です。1つの構造要素に複数の機能を持たせる──この設計思想は機械も基板も同じです。
ランドサイズが小さすぎる/大きすぎると何が起きるか
ランドが小さすぎ
- はんだ量が足りずに固定強度不足
- 振動でクラック・剥がれ
- 熱伝達経路が狭く部品が高温化
ランドが大きすぎ
- 隣のランドとブリッジ(短絡)リスク
- はんだが流れすぎて部品が浮く(チップ立ち)
- 基板の高密度化を阻害
だからランドサイズは"適正値"があるのです。設計者は部品メーカーが推奨する 「Recommended Land Pattern」(推奨ランドパターン)に従って設計します。

パッドとは──実務上はランドとほぼ同じ意味
パッド(Pad)は文字通り「当て布・あて板」のような意味で、これも「部品の足が着地する銅箔1区画」を指します。
部品電極が接続される銅箔区画の米国系・実装現場での呼び方。実務ではランドとほぼ同義。
ランド と パッド ── どちらを使うのが正解か?
結論:「どちらでも通じます」。ただし、業界内には微妙なニュアンスの差があります。
| 用語 | よく使われる場面 | 由来・ニュアンス |
|---|---|---|
| ランド | CADデータ/設計図/日本語仕様書 | JIS/IEC由来。設計の文書での標準表記 |
| パッド | 実装現場/部品メーカーのデータシート/英語 | 米国系・量産現場で定着。「Solder Pad」が起源 |
・JIS規格書・社内図面の正式表記 → 「ランド」
・部品データシート(特に英語)・実装現場の会話 → 「パッド」
・客先対応:相手が使った用語に合わせる(米国系企業はパッド、国内メーカーはランドが多い)
迷ったら「ランド(パッド)」と両方書くと丁寧です。
「パッド」が含まれる重要な派生語
「パッド」は単独より、組み合わせ語として現場でよく出てきます。覚えておくと、設計レビューで言葉が分かるようになります。
- サーマルパッド(放熱パッド):QFNやパワーICの底面にある大きな放熱用銅箔
- テストパッド:検査機のプローブが当たる小さな丸い銅箔(テストポイント)
- ボンディングパッド:チップ内部のワイヤボンド接続箇所(基板の話ではない)
- パッド開口:レジストの「抜き」のうち、パッドの上の部分

フットプリントとは──部品1個まるごとの「足場一式」
フットプリント(Footprint)は、文字通り「足跡」。部品が基板上に残す"接続のための痕跡"全体を指します。
部品1個を実装するために必要なすべての要素を統合した"足場一式"。CADでは1つのライブラリ部品として登録される。
フットプリントには、以下のすべてが含まれます。
複数のランド/パッド(部品の電極数だけ存在)
レジストの抜き形状(各ランドに対応した開口)
シルクの外形枠(部品の輪郭表示)
シルクの1pinマーク(向きを示す●や△)
シルクのリファレンス位置(R1, U3 などが表示される場所)
禁止領域(他の部品やビアを置いてはいけないエリア)
機械屋の言葉で言えば、フットプリントは「機械1台分の据付図面」です。ボルト穴位置(ランド)、養生エリア(レジスト抜き)、外形(シルク枠)、銘板位置(リファレンス)、メンテナンスクリアランス(禁止領域)──これらを1枚にまとめた"据付一式"がフットプリントです。
CADソフトでは、部品ライブラリに 「QFN-32」「SOT-23」 などの名前で1個ずつ登録され、回路設計時にその名前で呼び出して配置します。

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3つを並べて見る──QFN-32の例で完全理解
具体例で見るのが一番です。QFN-32(足が32本ある正方形のIC)のフットプリントを例に、3つの言葉の違いを実物で確認しましょう。
| 用語 | QFN-32における具体物 | 数量 |
|---|---|---|
| ランド/パッド(外周) | 外周にある32個の小さな長方形銅箔 | 32個 |
| サーマルパッド | 中央にある大きな正方形の銅箔 | 1個 |
| フットプリント | 上記33個+外形枠+1pinマーク+U3表示位置のすべてを統合した"QFN-32"という名前の登録部品 | 1セット |
「U7のフットプリントを新規作成」=QFN-32という"据付ベース図面"を1枚作ったこと
「パッドサイズを少し大きめに」=外周32個の銅箔区画を、データシート推奨より少し広く取ったこと
「ランドの形状は丸?四角?」=銅箔の角の処理を聞いている(QFN系は角丸長方形が一般的)
冒頭の若手と機構設計者の会話、これで完全に翻訳できます。

放熱パッド(サーマルパッド)の特殊性──普通のパッドと何が違うか
冒頭の機構設計者が気にしていた「放熱パッド」。これは普通のパッドと「やっていること」が大きく違うので、品質保証としては別物として扱う必要があります。
QFNやパワーICの底面中央にある、主に「熱を逃がす」ことを目的とした大きな銅箔。電気的に内部GNDに接続されていることが多い。
普通のパッド vs サーマルパッド
| 項目 | 普通のパッド | サーマルパッド |
|---|---|---|
| 主目的 | 電気接続+機械固定 | 放熱+電気接続+機械固定 |
| サイズ | 数100μm〜数mm程度 | 数mm〜数十mmと大きい |
| サーマルビアの有無 | 基本的になし | 多数のサーマルビアを打って下層へ熱を逃がす |
| 電気接続先 | 信号配線へ | 多くの場合内部GNDに接続 |
| レジストの抜き | パッドサイズに合わせて開口 | 分割開口することも(はんだ流れ防止) |
① サーマルビアの本数不足:放熱経路として機能せず、ICが熱暴走
② レジスト抜きが大きすぎ:はんだが流れすぎて部品が浮く(チップ立ち)
③ はんだペーストの塗布量が多すぎ:ボイド(空洞)発生で放熱効果激減
これらは品質保証部にとっても監査対象。「サーマルパッドあり部品の放熱設計レビューを実施しているか」は客先の確認ポイントです。

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SMD・スルーホール・QFN・BGAでフットプリントはどう変わるか
部品の実装方式によって、フットプリントの形は大きく変わります。代表的な4種類を見ておきましょう。
| 部品タイプ | ランド/パッドの形 | 特徴 |
|---|---|---|
| チップ抵抗・コンデンサ (1608/2012など) |
2個の長方形ランド(左右対称) | 最もシンプル。基板の主役の量を占める |
| SOIC・QFP (足が"ガル足") |
外周に並ぶ細長い長方形ランド | 足が外に飛び出ているので目視ではんだ確認可 |
| QFN (足が"底面") |
外周ランド+中央サーマルパッド | 小型・低背・放熱良好。X線検査が必要 |
| BGA (ボール接続) |
格子状に配置された円形ランド | 高密度。検査はX線必須。マイコンや高速IC |
| スルーホール部品 (DIP・コネクタ) |
穴付きの円形ランド(穴の中もメッキ) | 機械強度◎。挿入実装。コネクタや大型部品で活躍 |
パッドが「外周だけ」か「底面まで」か「格子状」か──これだけで検査方式が変わります。
・外周パッド(QFP)→ 目視・AOI でOK
・底面パッド(QFN・BGA)→ X線検査 必須
品質保証としては「この基板はX線検査ラインを通すか?」を判断するために、フットプリントの種類を理解しておく必要があります。

客先・上司から聞かれたとき、こう答えればOK
ランド・パッド・フットプリントは、客先監査で「設計品質」「実装品質」の両面から問われます。よく聞かれる5つに、模範回答を用意しました。
A. 「部品メーカー推奨のRecommended Land Patternに従い、社内DRCで照合しています。逸脱する場合は実装試験で確認します」
A. 「データシートの推奨ランドパターン → CADライブラリ登録 → DRCチェック → 試作で実装性確認のフローで管理しています」
※「データシート見ながらコピペ」と言うのはNG。プロセスとして説明する
A. 「サーマルビアの本数とパターン→熱抵抗計算で必要面積を逆算→実機で温度測定して検証しています」
※サーマルパッドは客先が深掘りしてくる定番ポイント
A. 「設計者作成 → 第三者レビュー → 試作実装で確認 → 品質保証部の承認 という4段階で管理しています」
※「設計者が自由に作っています」は監査NGワード
A. 「X線検査でボイド率・はんだ濡れを全数確認しています。サーマルパッドはボイド率○%以下を判定基準としています」
※具体的な数値を持っていなければ「現在策定中」と回答し、是正計画を示す
「パッドとランドって同じですよね?」とこちらから言うこと。客先が定義の確認のために聞いてきた場合、「実務上は同義ですが、当社の社内文書では"ランド"を正式表記としています」と答えるのが100点回答。"知ったかぶり"も"投げやり"もNG。

まとめ──3つの言葉は「入れ子の概念」だった
最後に今日の内容を一気におさらいします。
- 包含関係:フットプリント ⊃ ランド = パッド
- ランド=部品の足1本がのる銅箔1区画。3つの仕事(固定・電気・熱)を同時に
- パッド=ランドのほぼ同義語。米国系・実装現場・データシート英語で多用
- フットプリント=部品1個分の足場一式。ランド+レジスト抜き+シルク枠+禁止領域
- 機械の据付に例えるなら:据付ベース=フットプリント、ボルト穴1本=ランド/パッド
- サーマルパッド=放熱が主目的。サーマルビア・分割開口・GND接続が特徴
- QFN・BGAは底面パッドのためX線検査必須
- 客先監査ではプロセス(推奨ランド→DRC→試作確認→承認)として説明する
これで、冒頭の若手と機構設計者の会話──「U7のフットプリントを新規作成しました。パッドサイズはデータシート推奨より少し大きめにしてあります」「ランドの形状は丸?四角?放熱パッドは別レイヤー?」を、こう翻訳できるはずです。
「個々の銅箔区画の形状は角丸?直角?それと放熱用の中央銅箔は内部GND接続で別途処理されてる?」
ここまで翻訳できれば、もう「フットプリント関連の話」で固まることはありません。次は「SMDと挿入実装の違い」「パッケージ種類(QFP・QFN・BGA)の入門」へ進みましょう。

📚 次に読むべき記事
基板そのものの基礎を体系的に押さえたい方はこちら。シリーズの起点となる入門記事です。
サーマルパッドの実務設計をさらに深掘り。サーマルビアの本数計算、ボイド対策、レジスト分割開口の具体例まで。
フットプリントを基板上に並べる際の配置の鉄則。「フットプリント=据付ベース」を実際に並べる手順を学びます。