- データシートのピン配置図を見ても、どこからどう数えればいいかわからない
- ICの表面に「丸い窪み」「半円のへこみ」「●」があるけど、何の意味?
- 基板にICを実装したら向きが逆で、慌てて剥がした経験がある
- 「Pin1はどこ?」と先輩に聞かれて固まった
- QFPやBGAになると、ますますどう数えるのか自信が持てない
- ICのピン番号は「左上のピン1から反時計回り」というシンプルなルール
- ピン1マーキングの3パターン(●、半円、ノッチ)の見分け方
- パッケージ別(DIP・QFP・QFN・BGA)の数え方の違い
- ICを基板に実装するときの向き合わせの正解
- 明日から「Pin1はここです」と即答できるようになる
こんにちは、シラスです。
電子回路の超基本中の基本、それが「ICのピン番号の数え方」です。新人時代に誰もが一度は迷う、しかし誰も体系的に教えてくれない、地味だけど超重要な知識。
データシートのピン配置を間違えて読むと、回路図が間違う→基板が間違う→組み立てたら煙が出る、という連鎖事故になります。私も新人のころ、ピン1の位置を勘違いしてICを真逆に実装し、電源を入れた瞬間に「ボッ」と煙が上がった経験があります(あの臭いは一生忘れません)。
この記事では、ICのピン番号の数え方を「本のページをめくる動き」のたとえで完全図解します。読み終えたあと、どんなパッケージを見ても迷わずPin1を見つけられるようになっているはずです。
目次
基本ルール:左上のPin1から反時計回り
ICを「上から見て」、左上のピン1から反時計回りにピン2、3、4…と数える
これだけ覚えておけば、99%のICで通用します。「上から見る」というのは、ICが基板に乗った状態を上方向から見下ろした視点のことです。
ポイントは2つ:
①Pin1の位置
マーキング(●や半円)で
必ず示されている
②回る向き
反時計回り
(左下→右下→右上の順)
「本を開くようにめくる動き」と覚えましょう。本のページは、左上から始まって、左下に降りて、右下に渡って、右上に戻ります。日本語の縦書きの本と同じ流れですね。

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なぜ「反時計回り」なのか?歴史的な理由
時計回りでも良さそうなのに、なぜ世界共通で「反時計回り」と決まっているのでしょうか?答えは「ICを裏返したときに、時計回りで数えやすくするため」です。
📤 表から見たとき
Pin1から反時計回りに数える
📥 裏から見たとき
Pin1から時計回りに数える
古い時代のIC実装では、基板の裏側からピン番号を読み取る作業が頻繁にありました。表から反時計回り=裏から時計回りという関係になるので、裏返した状態でも自然に数えられるようになっているのです。
この「反時計回り」のルールは、DIP(穴に差し込むタイプ)の時代に確立されました。基板の裏側からハンダ付けする作業で、ピン番号を簡単に追えるように設計されたのです。現代のSMD(表面実装)では裏返すことはほぼないですが、慣習として「反時計回り」が継承されています。

Pin1マーキング3つのパターン
ICの表面には、必ず「ここがPin1ですよ」と示すマーキングが入っています。これがないと、設計者も製造現場も向きを判断できません。代表的な3パターンを覚えておきましょう。
パターン①:丸いくぼみ(インデックス)
最も一般的なのが、ICの左上に小さな丸いくぼみ(円形ディンプル)があるパターン。樹脂パッケージの表面に、爪の先ほどの小さな円形のへこみがあります。これがPin1のすぐ横に位置しています。
| 採用パッケージ | マーキングの様子 |
|---|---|
| DIP / SOIC | パッケージ左上の角に円形ディンプル |
| QFN / QFP | 表面の左上または中央近くにディンプル |
パターン②:半円のへこみ(ノッチ)
DIPパッケージで最もよく見るのが、パッケージの短辺に半円形のへこみがあるパターン。このノッチを上にしたとき、左側がPin1になります。
「ノッチを上に向けたとき、ノッチの左側がPin1」これだけ覚えれば、すべてのDIPパッケージで迷いません。
パターン③:印刷の●印(ドットマーク)
パッケージ表面に印刷で「●」や「○」が描かれているパターン。シルク印刷の文字(型番)と並んで、Pin1の角に小さなドットが付いています。最近のICではこのパターンが多いです。
パターン④:BGA特有のマーキング
BGA(底面ハンダボール)パッケージでは、底面側にも識別マークがあります。一般的にはパッケージの角を斜めにカットするか、ボール配置の1個だけを取り除くなどの方法でPin A1(=Pin1)を示します。
BGAでは数字ではなく「A1」「A2」…「B1」「B2」…のようにアルファベット+数字でピンを呼びます。Pin1の代わりにPin A1を見つけることが目的になります。
QFP・QFN・BGAパッケージ入門|ICの「足の付き方」で何が変わるか →

DIPパッケージの数え方
最も古典的で、教科書でもよく出てくるのがDIP(Dual Inline Package)です。「Dual=2列」+「Inline=直線」で、足が2列に並んだパッケージです。
ICを上から見たとき、ノッチ(半円のへこみ)を上に向ける。これでICの「正しい向き」が決まります。
ノッチの左側がPin1。そこから下方向にピン2、ピン3…と数えます。
下端まで来たら、右列に渡って下から上へ。最後のピンは右上になります。
例えば16ピンのDIPなら、左列が上から1〜8、右列が下から9〜16という配置になります。
| 位置 | ピン番号(16ピンの例) |
|---|---|
| 左列・上→下 | 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8 |
| 右列・下→上 | 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16 |
DIPでよくあるミスが「ノッチを下に向けて数える」こと。これだとピン番号が180度ずれて、回路が完全に動かなくなります。ノッチは必ず上に。これだけは絶対のルールです。

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QFPパッケージの数え方
QFP(4辺すべてに足があるパッケージ)の数え方も基本は同じ。Pin1マーキングから反時計回りに数えます。
パッケージ表面のディンプル(丸いくぼみ)または●印を見つける。
そのマーキングが左上の角に来るようにICの向きを合わせる。マーキング横の角の足がPin1。
Pin1から左辺を下方向に2, 3, 4…と数える。
左下まで来たら、下辺を右方向に進む。
右下→右上→左上の順に4辺を一周。最後のピンはPin1の真上の足になります。
例えば64ピンQFPなら、各辺16ピンずつ。Pin1〜16が左辺、17〜32が下辺、33〜48が右辺、49〜64が上辺です。
| 辺 | ピン番号(64ピンQFPの例) |
|---|---|
| 左辺(上→下) | 1〜16 |
| 下辺(左→右) | 17〜32 |
| 右辺(下→上) | 33〜48 |
| 上辺(右→左) | 49〜64 |

QFNパッケージの数え方
QFNは足が見えない代わりに、底面外周のパッドがピンに相当します。数え方はQFPと完全に同じ。Pin1マーキングから反時計回りです。
QFNは表面のマーキングが小さく、ぱっと見でわかりにくいことがあります。データシート上には必ず詳しいマーキング位置が記載されているので、確認を怠らないでください。
QFNでもう1つ重要なのが放熱パッド(中央の大きな金属パッド)。これはピン番号には含まれませんが、データシート上では「Exposed Pad」「Thermal Pad」「EP」などと表記されます。基板への接続も忘れずに。

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BGAパッケージの数え方(行と列の交差点)
BGAは底面全体に碁盤目状にハンダボールが並んでいるため、数字だけのピン番号では足りません。「アルファベット(行)+ 数字(列)」の組み合わせで各ボールを呼びます。
| 座標 | 意味 | 方向 |
|---|---|---|
| 行(アルファベット) | A, B, C, D… | 上から下に向かって増える |
| 列(数字) | 1, 2, 3, 4… | 左から右に向かって増える |
基準となるのは左上のA1。これがPin1相当で、ここから列番号と行番号を組み合わせてA1, A2, A3…B1, B2, B3…と呼びます。
行のアルファベットでは、数字と紛らわしい「I」「O」、書き間違いやすい「Q」「S」「X」「Z」は省略されることが多いです。AからHまで来たら次はJ、というルール。データシートの行記号は必ず確認してください。
BGAは底面が見えないため、A1の位置が「上から見たとき」「下から見たとき」で違います。データシートには通常「Top View(上から見た図)」と「Bottom View(底面から見た図)」の両方が載っているので、CADでフットプリントを作るときはどちらの図を見ているのか必ず確認しましょう。

ICの向きを基板に正しく合わせる方法
ピン番号を理解したら、次は基板にICを正しい向きで実装することが大切です。間違った向きで実装すると、電源を入れた瞬間にICが煙を出します。
基板側のシルク印刷を確認
基板のシルク印刷には、ICのフットプリント周辺に「●」「1」「▲」「半円のマーク」などが必ず印字されています。これがPin1の位置を示しています。
✅ 正しい合わせ方
- 基板シルクの●とICのPin1マーキングを同じ位置に合わせる
- ICを上から見た向きで合わせる
- 実装前に最終目視で確認
❌ よくあるミス
- 180度逆向きで実装
- シルクの●を見落とす
- 裏返しのままハンダ付け
- 類似ICの向きを見て勘違い
マウンタ(自動実装機)でICを実装する場合は、Pin1の向きが部品データに登録されています。手実装の場合のみ、人間の判断が頼り。試作段階では「基板シルクの●とICの●を必ず1秒見直す」だけで、向き間違いの95%は防げます。

よくある間違いとFAQ
Q1. データシートの「Top View」と「Bottom View」が混乱する…
データシートのピン配置図には、必ず「Top View(上から見た図)」と「Bottom View(底面から見た図)」のどちらかが書かれています。視点が逆になると、ピン番号も鏡像になるため要注意。
| 視点 | 用途 |
|---|---|
| Top View | 基板に実装した状態を上から見た図。回路図や配線確認時に使う |
| Bottom View | 底面側から見た図。CADでフットプリントを作る時の参考 |
Q2. SOICやTSSOPはDIPと同じ数え方?
基本的に同じです。SOIC(小型版DIP)やTSSOP(薄型版)も「ノッチを上に向けて、左下のPin1から反時計回り」のルールです。表面実装になっただけで、数え方の哲学は変わっていません。
Q3. データシートに「Pin1 indicator」と書かれているが…
これは「Pin1の位置を示すマーキング」のこと。英語のデータシートでは、Pin1マーキングをこう呼びます。「Pin1 indicator: dimple at top-left corner」のように書かれていれば、「左上の角にディンプルがありますよ」という意味です。
Q4. マーキングが2箇所ある場合は?
高ピン数のQFPやBGAでは、Pin1マーキングが「ディンプル+●印」のように2種類同時に付いていることがあります。これは製造工程で1つが消えても、もう1つで判別できるよう冗長化しているため。両方とも同じPin1の位置を示しています。
Q5. シルクと部品の向きを確認する一番確実な方法は?
私が新人時代から続けている確実な方法は「型番の文字の向き」を見ることです。データシートのトップビューで、ICの型番(例:「STM32F407」)が読める向きが、基板実装時の正しい向きの基準。シルク印刷の文字も読める向きに合わせれば、ほぼ間違いません。

まとめ:3つのルールを覚えれば迷わない
- 基本ルール:ICを上から見て、左上のPin1から反時計回りに数える
- Pin1マーキングは3パターン:①丸いくぼみ ②半円のノッチ ③印刷の●印
- BGAだけは特殊:「アルファベット+数字」(A1, A2…)で呼ぶ
- 反時計回りの理由:裏返したときに時計回りで数えやすくするため(DIP時代の名残)
- 実装時の確認:基板シルクの●とICのPin1マーキングを同じ位置に合わせる
- データシート読解:「Top View」と「Bottom View」を必ず区別する
ICのピン番号の数え方は、回路設計の入り口にして最重要な基礎知識です。一見地味ですが、ここを間違えると「設計ミスが製造後に発覚→ボード作り直し→数百万円の損失」という最悪の連鎖に発展します。
明日、データシートを開いたときに「ピン1はここだな」と即答できるようになっていれば、今日の30分の学習投資はもう元が取れています。先輩から「Pin1どこ?」と聞かれたら、迷わず指差せるエンジニアへ。一歩前進です。

📚 次に読むべき記事
パッケージの種類を体系的に学ぶ入門記事。ピン番号の数え方を覚えたら、次はパッケージ全体の世界へ。
ピン番号を理解した次は、CADでフットプリントを作る話に進みます。用語の整理から始められます。
ICの向き合わせに不可欠なシルク印刷の役割を完全解説。実装時の判断材料を学べます。
ピン番号ルールがDIP時代から続く理由を、実装方式の歴史から理解できます。
QFNを採用するなら必読。ピン番号と並んで重要な「中央の放熱パッド」の設計を学べます。
ピン番号の知識は回路図とアートワークをつなぐ最重要の橋渡し。基板設計全体の流れが見えてきます。