- 過去問を解いていたら「OCR」「GR」「DZ」など略称ばかりで頭が混乱
- 「過電流継電器」「地絡継電器」「距離継電器」と用語が出てくるが、何を保護してるのか曖昧
- 正誤問題で「比率差動継電器は変圧器の保護に使われる」みたいな選択肢が出ると、自信を持って○×が打てない
- 参考書を読んでも略称が一覧で整理されておらず、暗記しにくい
- 実務では聞いたことがあるけど、試験対策として体系的に整理できていない
- 主要な保護継電器7種類の略称・正式名・役割がスッキリ整理できる
- 「何の異常を検知するのか」と「何を保護するのか」が一発でわかる
- 過去問の正誤問題で頻出のパターンが見抜けるようになる
- 暗記の前に「なぜそう動くか」の物理的イメージが頭に入る
- 本番で略称が出ても落ち着いて選択肢を絞れるようになる
こんにちは、シラスです。
電験三種の電力科目で毎年のように出題される保護継電器(リレー)。OCR・GR・DZ・87…と略称が飛び交い、初学者からすると「もう勘弁してくれ」となるトピックです。
でも、保護継電器の正体は「電力系統の異常検知センサー」。スマートウォッチが心拍異常を検知して警告するのと同じです。何を見ているか、何を守るか、これさえ整理できれば暗記は半分以上終わったようなもの。
この記事では、電験三種で頻出の保護継電器7種類を「異常検知センサー」のたとえで完全図解します。読み終わるころには、過去問の選択肢を見て「あ、これGRの話だな」と即判断できるようになっているはずです。
目次
保護継電器とは?まず結論から
保護継電器 = 電力系統の異常を検知し、遮断器に「切れ」と命令する装置
電力系統では、落雷・地絡・短絡・過負荷などの異常がしょっちゅう発生します。これらを放置すると、機器が焼損・大規模停電・火災・感電事故など、深刻な被害につながります。
そこで活躍するのが保護継電器。電圧・電流・周波数などを常時監視し、異常を検知したら「遮断器(CB)に向かってトリップ信号を送る」のが仕事です。遮断器が回路を物理的に切る役、保護継電器は判断する頭脳役という関係です。
保護継電器
異常を判断する頭脳
「切れ!」と命令する
遮断器(CB)
回路を物理的に切る実行役
命令を受けて動作する
保護継電器は「異常検知センサー + 判断ロジック」。家のスマート火災報知器が「煙を検知して警告音を鳴らす」のと同じ役割を、電力系統で果たします。

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保護継電器に求められる4つの条件
正誤問題でよく出るのが「保護継電器に求められる特性」です。次の4条件をセットで覚えておきましょう。
| 条件 | 意味 |
|---|---|
| 選択性 | 事故が発生した区間だけを切り離し、健全な区間は給電を続ける |
| 速動性 | 事故を高速で検出・遮断し、被害を最小限に抑える |
| 確実性 | 事故時には必ず動作し、平常時には誤動作しない |
| 感度 | 微小な事故電流でも確実に検出できる |
特に「選択性」と「速動性」は背反することが多く、設計時には絶妙なバランスが求められます。試験では「速動性と選択性は両立が難しい」のような選択肢で出題されます。

電験三種で覚えるべき7種類の保護継電器
電験三種の電力科目で押さえておきたい保護継電器を7種類に絞り込みました。それぞれの略称・正式名・役割を一気に整理します。まずは全体像を表で確認しましょう。
| 略称 | 正式名 | 何を検出? | 主な保護対象 |
|---|---|---|---|
| OCR | 過電流継電器 | 過大な電流 | 配電線、変圧器 |
| GR | 地絡継電器 | 地絡電流 | 配電線、需要家 |
| DGR | 方向地絡継電器 | 地絡電流の向き | 配電系統 |
| DZ(21) | 距離継電器 | 事故点までの距離(インピーダンス) | 送電線 |
| 87 | 比率差動継電器 | 入出力電流の差 | 変圧器、発電機 |
| OVR | 過電圧継電器 | 過大な電圧 | 系統全般 |
| UVR | 不足電圧継電器 | 電圧低下 | 負荷機器 |
略称は英語の頭文字。Overの「O」=過、Underの「U」=不足、Currentの「C」=電流、Voltageの「V」=電圧、Relayの「R」=継電器。OCR=Over Current Relay=過電流継電器、UVR=Under Voltage Relay=不足電圧継電器、と分解して覚えましょう。

①OCR(過電流継電器):電流が大きすぎたら動作
OCR(Over Current Relay)は、定格を超える電流が流れたときに動作する最も基本的な継電器です。短絡事故・過負荷を検知します。
CT(変流器)で電流を測定 → 設定値(例:定格の150%)を超えたら動作 → 遮断器に信号を送る
OCRの2つの動作特性
| 特性 | 動作の特徴 |
|---|---|
| 瞬時要素 | 大きな短絡電流が流れたら即座に動作(数十ms以内) |
| 限時要素 | 過負荷など中程度の電流は時間を遅らせて動作(電流が大きいほど早く動作する反限時特性) |
OCRは「家のブレーカーが落ちる」のと近い動作。配電線の短絡や、変圧器の過負荷検知に使われます。電力会社の保護システムでは、最も基本的かつ広く使われる継電器です。
「OCRは限時要素と瞬時要素を組み合わせて使う」「反限時特性を持つ」のような選択肢が頻出。両方の要素があることを必ず覚えましょう。

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②GR・DGR:地面に電気が漏れたら動作
GR(Ground Relay/地絡継電器)は、電線が大地に接触する「地絡事故」を検知する継電器。配電線の電線が切れて地面に落ちた、絶縁が劣化して電流が漏れた、といったケースを検知します。
GRの動作原理
通常時、三相の電流は合計するとゼロになります(行きと帰りで打ち消される)。しかし地絡が起きると、電流が一部地面に流れて、合計がゼロでなくなる。この差をZCT(零相変流器)で検出するのがGRです。
ZCT(零相変流器)で三相の電流和を測定 → 通常はゼロ → 地絡で値が出現 → 設定値超えで動作
DGRはGRに方向判別を加えたもの
DGR(Directional Ground Relay/方向地絡継電器)は、GRに「方向判別」の機能を加えた継電器。「地絡が自分の管轄内で起きたのか、よそで起きたのか」を判別します。
これがないと、隣の系統で起きた地絡で自分が誤動作してしまう(=もらい事故)。配電系統の選択性を確保する上で不可欠です。
GR
地絡電流の大きさだけを検出。シンプル。
DGR
地絡電流の大きさ + 方向を検出。もらい事故防止。
「GRは電流の大きさを検出、DGRは電流の大きさと方向を検出」が頻出。「もらい事故防止」のキーワードもセットで覚えてください。

③DZ(距離継電器):事故点までの距離を測る
DZ(Distance Relay/距離継電器)は、その名の通り「事故が発生した場所までの距離」を計算して動作する継電器。デバイス番号は「21」です。送電線で広く使われます。
距離をどう測る?
DZが測るのは、実際の物理距離ではなく「電源から事故点までのインピーダンス(抵抗+リアクタンス)」。送電線のインピーダンスは「単位距離あたり○Ω/km」と決まっているので、インピーダンスがわかれば距離もわかる、という仕組みです。
電圧V ÷ 電流I = インピーダンスZ → ZがX[Ω]以下なら「事故点はY[km]以内」と判定 → 動作
DZの「ゾーン保護」
DZは、保護したい区間を複数のゾーンに分けて動作時間を変える設計になっています。
| ゾーン | 範囲 | 動作時間 |
|---|---|---|
| 第1ゾーン | 送電線の80〜90% | 瞬時動作 |
| 第2ゾーン | 送電線の100%以上 | 時限あり(数百ms) |
| 第3ゾーン | 隣接区間まで | バックアップ用 |
送電線は数十kmにわたる長距離。OCRやGRだけでは「どこで事故が起きたか」がわからず選択性が確保できません。DZは長距離送電線の保護に欠かせない継電器です。

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④87(比率差動継電器):入りと出の電流の差を見る
87(比率差動継電器)は、変圧器や発電機の保護に使われる継電器。デバイス番号「87」で呼ばれることが多いです。
動作原理:入出力の電流の差
変圧器が正常なら、1次側に入った電力は2次側からそのまま出てくるはず(巻数比で電流は変わるが、補正すれば一致する)。もし1次側と2次側で電流の差が大きければ、それは「変圧器の内部で何か起きている=内部事故」と判断できます。
1次側電流I₁と2次側電流I₂の差を計算 → 通常は補正後ほぼゼロ → 内部事故で差が出現 → 設定値超えで動作
なぜ「比率」差動なのか?
変圧器の励磁突入電流(電源投入時の一時的な大電流)や外部事故時の貫通電流でも、わずかな差が発生することがあります。これらで誤動作しないよう、「電流の大きさに比例して動作感度を変える」仕組みがあります。これが「比率」の由来。
「比率差動継電器は変圧器・発電機の内部事故を検出する」が定番フレーズ。「外部事故では動作しない」「励磁突入電流で誤動作しないよう比率特性を持つ」も覚えましょう。
「内部事故か外部事故か」の判別は、変圧器の保護で最重要。外部事故で誤動作してトリップしたら、健全な変圧器を不要に止めてしまうことになります。比率差動はこの判別を電流の差だけで実現する優れた仕組みです。

⑤OVR・UVR:電圧が高すぎor低すぎたら動作
OVR(Over Voltage Relay/過電圧継電器)とUVR(Under Voltage Relay/不足電圧継電器)は、その名の通り「電圧が異常な値」になったら動作する継電器。電流系のOCRに対し、こちらは電圧系です。
| 継電器 | 動作条件 | 用途例 |
|---|---|---|
| OVR | 電圧が定格を超えた | フェランチ効果による過電圧、雷サージ、機器絶縁保護 |
| UVR | 電圧が一定値以下に低下 | 瞬時電圧低下時の負荷保護、停電検出 |
OVRとUVRは「電圧の高/低」を見るだけのシンプル系。家庭用機器の電圧監視装置と同じ発想です。電力系統では、特に発電機の系統連系で「停電を検知して自家発を切り離す」用途で使われます。

保護対象別:どこに何の継電器を使うか?
正誤問題でよく問われるのが「○○の保護に使われる継電器はどれか」。保護対象別にまとめておくと暗記がラクになります。
| 保護対象 | 主な保護継電器 | 理由 |
|---|---|---|
| 送電線 | 距離継電器(DZ) 過電流継電器(OCR) |
長距離なので「どこで事故か」を判別できるDZが主役 |
| 変圧器 | 比率差動継電器(87) OCR、ガス検出器 |
内部事故の検出に比率差動が最適 |
| 発電機 | 比率差動継電器(87) OVR、UVR、不足周波数 |
高価で重要な設備のため多重保護 |
| 配電線 | OCR、GR、DGR | 短絡と地絡の両方を保護 |
| 需要家設備 | OCR、GR、UVR | 受電点での保護 |
この対応関係は実務でも頻出します。「変圧器=87」「送電線=DZ」「配電線=OCR+GR」だけでも覚えておけば、過去問の半分は対応できます。

主保護と後備保護(バックアップ保護)
保護継電器は1つだけでは不十分。「主保護」と「後備保護」の2段構えで運用するのが原則です。
主保護
事故区間を最速・最小範囲で切り離す。第一線の防御。例:DZの第1ゾーン、変圧器の87
後備保護
主保護が動作しなかったときの保険。動作が遅く、範囲は広め。例:DZの第3ゾーン、隣接OCR
「主保護が動作しないときに後備保護が動作する」「後備保護は動作時間を主保護より長くする」が頻出。時間差で連携するのが基本です。

過去問でよく出る「正誤問題」パターン3選
電験三種の保護継電器は、計算問題よりも正誤問題(穴埋めや○×)として出題されることが多いです。よく出るパターンを3つ紹介します。
パターン①:略称と役割の組み合わせ
「次の保護継電器のうち、変圧器の内部事故を検出するものはどれか」のような問題。87=変圧器・発電機の内部事故と即答できればOK。
パターン②:動作原理の正誤
「過電流継電器は瞬時要素のみを持つ」のような選択肢の正誤。これは誤り。OCRは瞬時要素と限時要素の両方を持ちます。
パターン③:保護対象の対応関係
「送電線の保護に最もよく使われる継電器はどれか」のような問題。送電線=距離継電器(DZ)がパターン化されています。
略称と保護対象を「セット」で覚えるのが得策。本記事の「保護対象別の整理表」を試験直前に見返すだけで、得点が安定します。

まとめ:略称と「何を守るか」をセットで覚える
- 保護継電器は電力系統の異常を検知し、遮断器に切れと命令する装置
- 必要な4条件:選択性・速動性・確実性・感度
- 主要7種類:OCR・GR・DGR・DZ・87・OVR・UVR
- 送電線=DZ、変圧器=87、配電線=OCR+GR の対応関係を最優先で覚える
- 主保護と後備保護の2段構えで系統を守る
- 正誤問題で頻出のため、略称と役割をセットで暗記する
保護継電器は、初学者が最初に挫折しやすい論点です。略称が多くて、しかも英語の頭文字が増えてくるとどんどん混乱します。でも、本記事で紹介した「○○=何を守る」の対応関係さえ頭に入れば、正誤問題で確実に点が取れるようになります。
本番の試験で「比率差動継電器の用途として最も適切なものは?」と問われたら、迷わず「変圧器の内部事故」と答えられるあなたは、もう保護継電器マスター。明日の過去問演習が楽しみになるはずです。
📚 次に読むべき記事
本記事の発展編。さらに詳しい動作原理と保護対象の対応関係を学びたい方へ。
保護継電器とセットで動く「遮断器」を完全理解。継電器が頭脳なら、遮断器は実行役です。
変電所全体での保護継電器の位置づけを学べます。系統全体での役割が見えてきます。
GR・DGRの動作前提となる中性点接地方式の知識。地絡保護の理解には必須です。
距離継電器(DZ)が見るインピーダンスの正体。送電線の電気的特性を体系的に学べます。
OVRが守る「過電圧」の代表原因。系統運用の理解が深まります。
OVRが守る「異常電圧」の代表的な発生原因と物理的な対策装置の体系。
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