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- 分散型電源の系統連系で、逆潮流するとなぜ電圧が上がるのかわからない
- 単独運転が「なぜ危ないのか」を説明できない
- 電圧上昇の対策で、進み力率と遅れ力率のどちらが正しいか迷う
- 逆潮流で電圧が上がるしくみ(計算つき)
- 単独運転の危険と、電圧上昇の対策
- 電験三種で実際に問われたポイント
屋根の太陽光発電が増えたことで、配電線には「電気が逆向きに流れる」という、昔はなかった問題が起きています。電験三種でも、最近くり返し出題されるテーマです。この記事では、電圧が上がるしくみを実際に数字で計算しながら、一つずつ整理します。
分散型電源の系統連系とは、太陽光発電や燃料電池など需要家の近くにある小さな発電設備を、電力会社の配電線につないで運転することです。発電が消費を上回ると、電気が需要家から配電線へ逆向きに流れ(逆潮流)、配電線の電圧が上がります。また、配電線が停電しても分散型電源だけで送電を続ける単独運転は、作業員の感電や機器の損傷につながるため、検出して分散型電源を切り離す保護装置が必要です。
分散型電源と系統連系とは?
分散型電源とは、大きな発電所ではなく、家や工場など電気を使う場所の近くに分かれて置かれた小さな発電設備のことです。系統連系とは、それを電力会社の電線網(系統)につないで、一緒に運転することです。
| 分散型電源 | つなぎ方の特徴 |
|---|---|
| 太陽光発電 | 直流をインバータで交流に変えてつなぐ |
| 燃料電池 | 直流をインバータで交流に変えてつなぐ |
| 風力発電 | 発電機をそのまま、またはインバータを通してつなぐ |
| 小水力発電 | 河川や用水路の流れ込み式が多い |
大きな浄水場(発電所)から各家庭へ水を送る水道網に、家庭の井戸(分散型電源)をつないで、余った水を水道管へ戻せるようにしたものです。便利な反面、水道管の水圧(電圧)が場所によって高くなりすぎる、といった新しい問題が起きます。
太陽電池の原理・I-V特性と、最大電力点追従(MPPT)
つまり系統連系は、「発電所から家へ」の一方通行だった配電線に、「家から配電線へ」の流れを加えることです。ここから、次の逆潮流の問題が生まれます。

逆潮流とは?電気が「家から電柱へ」流れる
逆潮流とは、分散型電源の発電量が家の中の消費を上回り、余った電気が需要家から配電線へ流れ出すことです。ふだんの「電柱から家へ」の流れ(順潮流)の逆なので、こう呼びます。
| 状態 | 電気の流れ | 例 |
|---|---|---|
| 順潮流 | 配電線 → 家 | 夜、発電0kW・消費2kW |
| 逆潮流 | 家 → 配電線 | 晴れた昼、発電6kW・消費2kW(4kWが流れ出す) |
太陽光発電や燃料電池は直流で発電するので、インバータ(直流を交流に変える装置)を含むパワーコンディショナを通して配電線につなぎます。インバータは、配電線の電圧と周波数に合わせて電気を送り出します。
直流を交流に変えるインバータの回路のしくみがわかります
インバータは電気を細かく切りかえて交流をつくるので、高調波(基本の周波数の整数倍のひずみ)を含む電流が出ることがあります。そのため、高調波電流を抑えるフィルタが必要になる場合があります。

逆潮流で電圧が上がる理由を計算で確かめる
電線には抵抗があるので、電流が流れると電圧が変わります。順潮流では、電流が電柱から家へ流れるので、家の電圧は電柱より下がります。逆潮流では電流の向きが逆になるので、家の電圧は電柱より上がります。
家の電圧 = 電柱の電圧 − I×R(順潮流)/+ I×R(逆潮流)
例題:柱上変圧器の出口104V、外線1本0.2Ω
100/200Vの単相3線式で、柱上変圧器の出口の電圧は外線と中性線の間で104V、変圧器から家までの外線1本の抵抗は0.2Ωとします。負荷と発電は上下に均等で、力率は1とします(中性線の電流は0Aなので、外線1本分だけ考えます)。
夜:発電0kW・消費4kW(順潮流)
外線の電流:4,000W ÷ 200V = 20A(電柱 → 家)
家の電圧:104 − 20 × 0.2 = 104 − 4 = 100V
晴れた昼:発電6kW・消費2kW(逆潮流)
流れ出す電力:6kW − 2kW = 4kW
外線の電流:4,000W ÷ 200V = 20A(家 → 電柱)
家の電圧:104 + 20 × 0.2 = 104 + 4 = 108V
標準電圧100Vの低圧の需要家では、電圧を101±6V(95〜107V)に保つことになっています。108Vは上限の107Vを超えてしまいました。同じ配電線に太陽光の家がいくつも並ぶと、末端ほど電圧が上がりやすくなります。
電圧降下の公式と、抵抗・リアクタンスの効き方を詳しく確認できます
「電圧降下」の式をそのまま使って、逆潮流でも電圧を引いてしまう間違いが多いです。電流の向きが逆なら、電圧の変化も逆になります。まず電流の矢印の向きを決めてから、足すか引くかを判断してください。

電圧上昇の対策:需要家側と配電線側
電圧上昇の対策は、分散型電源を持つ需要家の側でできることと、電力会社が配電線の側でできることに分けられます。
| どこで | 対策 | しくみ |
|---|---|---|
| 需要家側 | 出力抑制 | 電圧が上限に近づいたら、パワーコンディショナが発電を絞る |
| 需要家側 | 無効電力の制御(力率の調整) | 系統側から見て遅れ力率になるよう無効電力を調整し、電圧を下げる向きに働かせる |
| 配電線側 | SVR(ステップ式自動電圧調整器) | 配電線の途中で電圧を自動で上げ下げする |
| 配電線側 | 専用線・負荷分割・変圧器の増設 | 大容量の電源は専用の線でつなぐなど、系統そのものを強くする |
水道管の水圧が上がりすぎたときに、家で井戸のポンプを弱める(出力抑制)か、水道局が途中に減圧弁をつける(SVR)か、太い専用管を引く(専用線)か、という選択肢があるのと同じです。
「遅れ力率」で電圧が下がる理由
配電線のリアクタンス(交流の流れにくさ)に遅れの無効電力が流れると、電圧は下がる向きに変化します。系統側から見て需要家が遅れ力率に見えるように無効電力を調整すれば、逆潮流で上がった電圧を打ち消せます。進み力率にすると、反対に電圧をさらに上げてしまいます。

単独運転とは?停電中に電気を送り続ける危険
単独運転とは、事故や工事で配電線が電力会社の系統から切り離されたのに、分散型電源だけで、その区間の負荷に電気を送り続けてしまう状態です。
なぜ危ないのか
作業員の感電:停電しているはずの配電線に電気が来ているので、復旧作業の人が感電するおそれがあります。
電圧・周波数の乱れ:分散型電源だけでは電圧と周波数を保てず、つながった機器を傷めることがあります。
再送電のときのトラブル:系統が復旧して再びつなぐとき、タイミング(位相)がずれた電気どうしがぶつかり、機器を壊すおそれがあります。
水道管の工事のために元栓を閉めたのに、どこかの家の井戸ポンプが動き続けて、工事中の管に水を送りこんでいるような状態です。工事の人は「水は止まっている」と思っているので、とても危険です。
単独運転を見つけて切り離す
そこでパワーコンディショナには、系統の停電を検出して、分散型電源を自動で切り離す連系保護装置が組みこまれています。検出のしかたには、停電した瞬間の電圧の位相の急変などを見張る方式(受動的方式)と、自分からわずかな変化を加えて反応を確かめる方式(能動的方式)があります。

試験に出る分散型電源ごとの特徴
論説問題では、系統連系の話と一緒に、それぞれの分散型電源の特徴も問われます。過去問で正しい選択肢として出た内容をもとに整理します。
| 電源 | 押さえたい特徴 |
|---|---|
| 太陽光発電 | 直流をインバータで交流に変える。系統の停電時に発電を止める連系保護装置がある |
| 燃料電池 | 水素と酸素の反応(発熱反応)で直流をつくる。インバータで交流に変える |
| 小水力発電 | 河川や用水路の流れ込み式が多い |
| 洋上風力発電 | 陸上との接続に海底ケーブルの直流送電を使うことがある。直流なので定常的な充電電流が流れない |
燃料電池の反応は「発熱反応」です。反応で出る熱を給湯などに使えることも、燃料電池の長所のひとつです。「吸熱反応」と書かれていたら誤りだと判断できます。

電験三種の過去問で問われているポイント
分散型電源の系統連系は、論説問題と計算問題の両方で出題されています。
| 年度・問題 | 形式 | ポイント |
|---|---|---|
| 令和7年度上期 問7 | 論説 | 誤りは「電圧上昇を抑えるため、受電点の力率は系統側から見て進み力率とする」。正しくは遅れ力率 |
| 令和5年度下期 問5 | 論説 | 誤りは「燃料電池は水素と酸素の吸熱反応を利用」。正しくは発熱反応 |
| 令和5年度下期 問17 | 計算(B問題) | 太陽光発電がつながった単相3線式配電線の各部の電流と、負荷の端子電圧 |
ポイント1:論説は「正しい対策」がそのまま並ぶ
令和7年度上期では、電圧上昇、高調波フィルタ、専用線や負荷分割、SVRの設置が、すべて正しい選択肢として並びました。誤りは力率の向き(進み・遅れ)の1か所だけです。この記事の対策の表がそのまま使えます。
ポイント2:計算は「節点ごとの電流の出入り」で解く
令和5年度下期 問17は、負荷と太陽光発電がつながった単相3線式の線路で、各区間の電流を求める問題でした。分かれ道(節点)ごとに「入る電流=出る電流」で差を出していくと、太陽光の発電と負荷が打ち消し合って、電流が小さくなる区間や0Aになる区間が出てきます。電流が出そろえば、端子電圧は区間ごとの I×R を足し引きするだけです。
分散型電源の問題は、発電所・配電・単相3線式・力率など、電力科目のいろいろな知識をまとめて問う形になりやすいテーマです。逆潮流の向きと、遅れ力率で電圧が下がることの2つを押さえておくと、どの形で出ても対応できます。

よくある間違い・つまずきポイント
1. 逆潮流でも電圧が下がると考える
電流の向きが逆なので、家の電圧は電柱より上がります。例題では、順潮流100Vに対して逆潮流は108Vでした。
2. 電圧上昇の対策を「進み力率」と答える
電圧を下げたいので、系統側から見て遅れ力率にします。進み力率にすると、電圧はさらに上がります。
3. 単独運転は「停電しても電気が使えて便利」と考える
配電線に電気を送り続けると、作業員の感電や機器の損傷につながります。系統の停電を検出したら、分散型電源を切り離すのが決まりです。
4. 燃料電池を吸熱反応と覚える
水素と酸素が反応して水ができる反応は、発熱反応です。熱も利用できるのが燃料電池の強みです。
5. 電圧の上限を110Vなどと覚える
標準電圧100Vの低圧では、101±6V(95〜107V)に保つことになっています。200Vでは202±20Vです。

よくある質問
まとめ:電流の向きが逆になると、電圧の変化も逆になる
- 系統連系=分散型電源を配電線につないで運転すること
- 逆潮流=家から配電線へ電気が流れ出すこと。電圧が上がる(例:100V→108V)
- 低圧の電圧は101±6V(95〜107V)に保つ
- 対策:出力抑制・遅れ力率への無効電力制御・SVR・専用線や負荷分割
- 単独運転は感電・機器損傷の危険。連系保護装置で検出して切り離す
まずは例題の100Vと108Vを、電流の矢印を書きながら自分で計算してみてください。逆潮流の向きがつかめれば、論説問題の選択肢も迷わずに判断できるようになります。

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次に読むべき記事
ここまでで、分散型電源をつないだ配電線で何が起き、どう対策するのかがわかりました。次は、配電線の形や、無効電力で電圧を調整するしくみへ進みましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。