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火力発電の環境対策は、SOx を排煙脱硫装置、NOx を排煙脱硝装置、ばいじんを電気集じん器で取り除き、CO2 は発電の効率を上げて減らす、の4本立てです。機器が並ぶ順番は排ガスが通る機器の順番、電気集じん器のしくみはばいじん対策の節にまとめました。
火力発電所の煙突から出る排ガスは、そのまま出すと大気汚染の原因になります。そこで発電所には、煙突に行くまでの間に、汚れを取り除く装置がいくつも並んでいます。この記事では、何を、どの装置で、どんなしくみで取り除いているのかを、計算も使いながら整理します。
火力発電の排ガスに含まれる4つの物質
燃料を燃やすと、熱と一緒に、取り除かなければならない物質が出てきます。どれが何の原因になり、どの装置で減らすのかを、まず一覧で押さえます。
| 物質 | 出てくる理由 | 引き起こす問題 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 硫黄酸化物(SOx) | 燃料に含まれる硫黄が燃える | 酸性雨・ぜんそくなど | 排煙脱硫装置、硫黄の少ない燃料 |
| 窒素酸化物(NOx) | 空気中や燃料中の窒素が高温で酸素と結びつく | 酸性雨・光化学スモッグ | 燃焼の工夫、排煙脱硝装置 |
| ばいじん | 燃え残りや灰の細かい粒 | 大気の汚れ・健康被害 | 電気集じん器 |
| 二酸化炭素(CO2) | 燃料の炭素が燃える | 地球温暖化 | 発電効率の向上、LNGなど炭素の少ない燃料 |
汽力・ガスタービン・コンバインドサイクルなど、火力発電のしくみがわかります
つまり、SOxとNOxとばいじんは「出てきたものを取り除く」、CO2は「出る量そのものを減らす」という、違う方向の対策になります。

SOx対策:排煙脱硫装置(石灰石-石こう法)
日本の大きな火力発電所で多く使われているのが、湿式の石灰石-石こう法です。石灰石(炭酸カルシウム)を水に混ぜた液を排ガスに吹きかけ、二酸化硫黄と反応させて石こう(硫酸カルシウム)として取り出します。
例題:二酸化硫黄1tを処理する
分子量(分子1個の重さの目安)は、石灰石CaCO3が100、二酸化硫黄SO2が64、石こうCaSO4・2H2Oが172とします。反応式から、SO2が1個に対してCaCO3が1個使われ、石こうが1個できます。
できた石こうは、セメントや石こうボードの原料として再利用されます。汚れを取り除くだけでなく、資源として使えるのがこの方法の強みです。

NOx対策:燃焼の工夫と排煙脱硝装置
NOxは、燃焼温度が高く、酸素が多いほど多く出ます。そこで、まず燃やし方を工夫して出る量を減らし、それでも出た分を排煙脱硝装置で分解します。
| 対策 | しくみ |
|---|---|
| 低NOxバーナ | 炎の温度が局所的に高くなりすぎないように燃やす |
| 二段燃焼 | 空気を2回に分けて入れ、酸素が少ない状態で燃やし始める |
| 排ガス再循環 | 排ガスの一部を燃焼用空気に戻して、炎の温度と酸素濃度を下げる |
| 排煙脱硝装置(アンモニア接触還元法) | アンモニアを吹きこみ、触媒の上でNOxを窒素と水に分解する |

ばいじん対策:電気集じん器のしくみ
電気集じん器は、排ガスの中の細かい粒(ばいじん)に電気を帯びさせ、電気の力で電極に吸い寄せて取り除く装置です。
電気集じん器でも使われるコロナ放電が、どんな条件で起きるのかがわかります

排ガスが通る機器の順番と、その理由
排ガス処理の装置は、それぞれが得意な温度に合わせて並んでいます。代表的な並び方は次のとおりです。
| 順番 | 機器 | この位置にある理由 |
|---|---|---|
| ① | ボイラ(過熱器・節炭器) | 燃焼ガスの熱で蒸気と給水を温める |
| ② | 排煙脱硝装置 | 触媒がよく働く高い温度のうちに通す |
| ③ | 空気予熱器 | 残った熱で燃焼用の空気を温める |
| ④ | 電気集じん器 | ばいじんを取り除く |
| ⑤ | 排煙脱硫装置 | 水を使う湿式なので、温度が下がってから通す |
| ⑥ | 煙突 | きれいになった排ガスを出す |
発電所によっては、集じん器を脱硫装置の後ろにもう一段置くなど、組み合わせが異なることがあります。試験では、問題文の流れに沿って、温度の考え方で判断するのが確実です。

CO2対策:効率を上げて燃料を減らす
CO2は、燃料の炭素が燃えれば必ず出るので、排ガスから取り除くよりも「同じ電気をつくるのに使う燃料を減らす」ことが基本の対策です。発電効率が上がれば、1kWhあたりのCO2は減ります。
例題:効率40%を50%に上げると、CO2はどれだけ減る?
汽力発電の効率が40%前後なのに対し、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電は、より高い効率を出せます。さらに、同じ熱量で比べると炭素の少ないLNG(液化天然ガス)を使うと、CO2をいっそう減らせます。
ばい煙やPCB機器など、法規で決められた届出のルールを確認できます

電験三種の過去問で問われているポイント
火力発電の環境対策は、装置のしくみを問う空欄穴埋めと、CO2排出量の計算の両方で出題されています。
| 年度・問題 | 形式 | ポイント |
|---|---|---|
| 令和3年度 問4 | 空欄穴埋め | 電気集じん装置。集じん極は「平板電極」、放電極は「線電極」、「高電圧」で「コロナ」放電、ばいじんは「槌でたたいて」落とす |
| 令和7年度上期 問3 | 論説(誤りを選ぶ) | 燃焼ガスの通過順序。正しくは節炭器→空気予熱器→電気集じん装置 |
| 令和5年度上期 問15・令和6年度下期 問15・令和7年度下期 問15 | 計算(B問題) | 火力発電所の燃料消費量や熱効率と、二酸化炭素の排出量 |
ポイント1:電気集じん装置は「線と板」「コロナ」「槌」
令和3年度の空欄は、この記事の5つのステップをそのまま問うものでした。放電極と集じん極の形を入れ替えた選択肢が並ぶので、「線で放電、板で集める」を確実に覚えておきます。
ポイント2:順番の問題は温度で判断する
令和7年度上期のように、機器の順番を1か所だけ入れ替えた選択肢が出ます。空気予熱器は熱回収の機器なので集じん器より前、脱硫は湿式なので最後、と温度の理由で考えれば迷いません。
ポイント3:CO2の計算は電力科目のB問題の定番
問15は、燃料の消費量と発熱量から熱効率を求め、さらに燃料中の炭素からCO2の量を出す計算問題がくり返し出ています。炭素が燃えると、炭素12に対してCO2が44の重さでできる、という比を使います。

よくある間違い・つまずきポイント
1. 脱硫と脱硝を逆に覚える
「硫」は硫黄(SOx)、「硝」は窒素(NOx)です。脱硫は石灰石、脱硝はアンモニアを使います。
2. 放電極と集じん極の形を入れ替える
放電極が線、集じん極が平板です。線のまわりでコロナ放電が起きます。
3. 脱硫装置を高温の位置に置くと考える
湿式の脱硫装置は、温度が下がってから通すので、煙突の手前に置かれます。高温で通すのは脱硝装置です。
4. CO2も装置で取り除くのが基本だと考える
基本の対策は、効率を上げて燃料そのものを減らすことです。効率が40%から50%になれば、CO2は20%減ります。
5. NOxは燃料の窒素からしか出ないと考える
空気中の窒素も、高温の炎の中で酸素と結びついてNOxになります。だから炎の温度を下げる燃焼の工夫が効きます。

よくある質問
まとめ:取り除く3つと、減らす1つ
まずは「4つの物質と対策」の表と、「機器の順番」を、理由と一緒に書き出せるか試してみてください。しくみと理由がつながれば、空欄穴埋めも論説も迷わずに解けます。


