※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。
- 単相3線式の計算で、中性線に流れる電流の向きと大きさがわからない
- 中性線が切れると、なぜ電圧が上がる側と下がる側ができるのかピンとこない
- バランサの問題が出ると、手が止まってしまう
- 平衡・不平衡のときの電流・損失・電圧の計算(途中式つき)
- 中性線が切れたときに何Vかかるかの計算
- 電験三種で実際に問われたポイントと解き方
単相3線式の計算は、電験三種の電力でくり返し出題されるテーマです。中性線という1本の線がからむので、はじめは混乱して当然です。この記事では、ひとつの例題の数字を少しずつ変えながら、平衡、不平衡、断線、バランサまで順番に計算していきます。
単相3線式の計算は、2本の外線の電流の差が中性線に流れる、という1つの決まりで解けます。負荷が平衡なら中性線の電流は0Aで、損失と電圧降下が最小になります。不平衡だと中性線に電流が流れて損失が増え、中性線が切れると軽い負荷の側に100Vを大きく超える電圧がかかります。バランサ(巻数比1:1の単巻変圧器)を線路の末端につなぐと、外線の電流がそろい、この不平衡を打ち消せます。
単相3線式のしくみ:3本の線から100Vと200V
単相3線式は、変圧器の二次側の巻線の真ん中から中性線を引き出し、外線2本と中性線1本の計3本で送る方式です。外線と中性線の間が100V、外線どうしの間が200Vになります。中性線は大地とつないで(接地して)あり、0V近くに保たれています。
| つなぐ場所 | 電圧 | つなぐ機器の例 |
|---|---|---|
| 外線1 と 中性線 | 100V | 照明・コンセント |
| 外線2 と 中性線 | 100V | 照明・コンセント |
| 外線1 と 外線2 | 200V | エアコン・IH調理器 |
高さ200cmの階段の、ちょうど100cmのところに踊り場(中性線)がある、と考えてください。上の段から踊り場までも、踊り場から下の段までも100cm。上の段から下の段までは200cmです。踊り場をつくったおかげで、100cmと200cmの2種類の高さを使い分けられます。
100Vと200Vがどこで使い分けられているか、身近な例でわかります
つまり単相3線式は、200Vの電源を真ん中で分けて、100Vを2組つくっている方式です。計算でも、この「上の100V」と「下の100V」の2つの回路に分けて考えます。

平衡負荷なら、中性線の電流は0A
平衡負荷とは、上の100V側と下の100V側に、同じ大きさの負荷がつながっている状態です。このとき中性線の電流は0Aになります。
中性線の電流 = 外線1の電流 − 外線2の電流
なぜ差になるのか
上の負荷を通った電流は、中性線のところで「帰り道」に出ます。下の負荷へ向かう電流は、中性線から「行き道」として入ります。中性線の上では、この2つが逆向きに重なるので、差だけが残ります。
例題:25Aずつの平衡負荷
上下の100V側に、それぞれ25A(力率1)の負荷がつながっています。電線の抵抗は、外線も中性線も1本0.1Ωとします。
中性線の電流 = 25A − 25A = 0A
線路の損失は、電流が流れる外線2本だけで計算します。25² × 0.1 + 25² × 0.1 = 62.5 + 62.5 = 125W
負荷の電力は、100V × 25A × 2組 = 5,000W。これを200V × 25A と見ても同じ5,000Wです。
平衡なら、単相3線式は「200Vの単相2線式」と同じ電流で同じ電力を送れます。損失も外線2本分だけです。この125Wを、次の不平衡の例とくらべます。

不平衡負荷では、中性線に電流が流れて損失が増える
不平衡負荷とは、上下の負荷の大きさがそろっていない状態です。外線の電流の差が中性線に流れ、そのぶん損失が増えます。
例題:上30A・下20Aの不平衡負荷
合計の電流は先ほどと同じ50Aのまま、上を30A、下を20Aにします(力率1、電線は1本0.1Ω)。
中性線の電流 = 30A − 20A = 10A。多いほう(上の負荷)の帰り分が、中性線を通って電源へ戻ります。
3本それぞれの損失を出します。外線1:30² × 0.1 = 90W、外線2:20² × 0.1 = 40W、中性線:10² × 0.1 = 10W
合計します。90 + 40 + 10 = 140W。平衡のとき(125W)より15W増えました。
2本の車線に50台の車を通すとき、25台ずつに分ければどちらもすいすい流れます。30台と20台に片寄ると、混んだ車線の渋滞がひどくなり、全体の燃料のむだ(損失)も増えます。損失は電流の2乗で効くので、片寄りが大きいほど一気に増えます。
実際の屋内配線でも、上下の負荷をなるべくそろえるように回路を分けます。内線規程(屋内配線の民間規格)では、単相3線式の設備不平衡率を原則40%以下にするよう定めています。

不平衡のときの端子電圧を計算する
不平衡のときは、上下の負荷にかかる電圧(端子電圧)も変わります。電圧降下を「外線1本分+中性線1本分」で考えるのがコツです。中性線の電流の向きによって、中性線の電圧降下を引くか足すかが変わります。
例題:電源105V、上30A・下20A
電源側の電圧は、上下とも105Vとします。条件は先ほどと同じ(電線1本0.1Ω、力率1)です。
各線の電圧降下を出します。外線1:30A × 0.1Ω = 3V、外線2:20A × 0.1Ω = 2V、中性線:10A × 0.1Ω = 1V
上の負荷:中性線の10Aは、上の負荷の電流と同じ向き(電源へ戻る向き)に流れるので、中性線の降下も引きます。105 − 3 − 1 = 101V
下の負荷:中性線の10Aは、下の負荷の電流と逆向きなので、中性線の降下は足し戻します。105 − 2 + 1 = 104V
重い上の負荷は101V、軽い下の負荷は104Vになりました。中性線に電流が流れると、重い側の電圧が下がり、軽い側の電圧が上がります。
電圧降下と電力損失の基本の公式を、送電線で確認できます
中性線の降下を、上下どちらからも引いてしまう間違いが多いです。中性線の電流は1方向にしか流れないので、片方では引き、もう片方では足します。迷ったら、電流の矢印を回路図に書き込んでから計算してください。

中性線が切れると何が起きる?異常電圧の計算
中性線が切れる(中性線欠相)と、上下の100Vの負荷が直列につながり、200Vを2つの負荷で分け合う形になります。電圧は抵抗の大きさに比例して分かれるので、軽い負荷(抵抗が大きい)の側に高い電圧がかかります。
例題:上1kW・下500Wで中性線が切れた
上に100V・1kW、下に100V・500Wの機器がつながっています(どちらも抵抗負荷とし、電線の抵抗は無視します)。
機器の抵抗を出します(R = V² ÷ P)。上:100² ÷ 1,000 = 10Ω、下:100² ÷ 500 = 20Ω
中性線が切れると、2つが直列で200Vにつながります。電流 = 200V ÷(10 + 20)Ω = 約6.67A
上の機器の電圧 = 6.67A × 10Ω = 約66.7V
下の機器の電圧 = 6.67A × 20Ω = 約133.3V。100V用の機器に133Vがかかります。
重い(容量の大きい)側は電圧が下がって動かなくなり、軽い(容量の小さい)側は電圧が上がって壊れるおそれがあります。片側の負荷がほとんどないと、軽い側には200V近い電圧がかかります。
実際の対策
住宅の分電盤には、中性線が切れたことを検知して回路を切る「中性線欠相保護機能」つきのブレーカーが使われています。また、中性線だけが単独で切れないように、中性線にはヒューズを入れず、外線と同時に切れる開閉器を使います。
分電盤のブレーカーが、何を検知して切れるのかがわかります

バランサとは?不平衡を打ち消す変圧器の計算
バランサは、巻数比1:1の単巻変圧器(1つの巻線の途中から線を出した変圧器)です。線路の末端で、外線2本の間につなぎ、巻線の真ん中を中性線につなぎます。上下の電圧を等しく保とうとして、外線の電流をそろえる働きをします。
バランサの電流 =(外線1の負荷電流 − 外線2の負荷電流)÷ 2
例題:上30A・下20Aにバランサをつなぐ
バランサには、負荷の電流の差の半分が流れます。(30 − 20)÷ 2 = 5A
電源から見た外線の電流は、平均の値にそろいます。(30 + 20)÷ 2 = 25A ずつ。中性線(電源とバランサの間)は 25 − 25 = 0A
線路の損失 = 25² × 0.1 × 2本 = 125W。バランサなし(140W)より15W減りました。
端子電圧は、上下とも 105 − 25 × 0.1 = 102.5V。101Vと104Vの差がなくなりました。
バランサは、混んだ車線から空いた車線へ、出口の手前で車を振り分ける誘導員のようなものです。上の負荷が多く使う分の半分を、下の外線から回してくれるので、電源から来る2本の車線はちょうど半分ずつの混み具合になります。
バランサの電流は、差の10Aではなく、その半分の5Aです。バランサの上半分と下半分に同じ5Aが流れ、中性線との接続点で合わせて10Aになり、負荷側の中性線の10Aを打ち消します。バランサは線路の「末端(負荷側)」につなぎます。電源側につないでも、線路の不平衡は解消しません。

電験三種の過去問で問われているポイント
単相3線式は、電力科目の配電分野で、論説問題(正誤を選ぶ問題)と計算問題の両方で出題されています。実際に出た問題の問われ方を、パターン別に整理します。
| 年度・問題 | 形式 | 問われたこと |
|---|---|---|
| 令和3年度 電力 問12 | 論説(誤りを選ぶ) | 電圧降下・中性線の断線・不平衡時の損失・100V/200Vの供給・1線あたりの供給電力 |
| 令和5年度下期 電力 問13 | 計算(A問題) | 損失が単相2線式の1/5のとき、1線あたりの抵抗は何倍か |
| 平成28年度 電力 問17 | 計算(B問題) | 30Aと20Aの不平衡負荷にバランサをつないだときの、バランサの電流と線路損失の変化 |
| 平成22年度 理論 問7 | 計算(理論科目) | 単相3線式回路に平衡負荷をつないだときの消費電力 |
パターン1:論説問題は「特徴5つ」で判断する
令和3年度 問12では、次の特徴の正誤が問われました。正しい内容をそのまま覚えておけば、言い回しが変わっても見抜けます。
- 電圧降下は、単相2線式より小さい(正しい)
- 不平衡のまま中性線が切れると、容量の大きい側の電圧が下がる(正しい。小さい側は上がる)
- 不平衡だと、平衡のときより損失が増える(正しい)
- 100Vと200Vの両方の負荷に送れる(正しい)
- 1線あたりに送れる電力は、単相2線式より大きい(「小さい」とした選択肢が誤り。1線あたり 2/3VIcosθ で、単相2線式の 1/2VIcosθ より大きい)
パターン2:単相2線式との比較は「電流が半分」から
令和5年度下期 問13は、同じ100Vの負荷を単相2線式と単相3線式(平衡)で送ったとき、損失が1/5になる抵抗を求める問題でした。解き方の流れは次のとおりです。
単相3線式は200Vで送るので、電流は単相2線式の半分(I ÷ 2)
損失はどちらも外線2本分(平衡なので中性線は0)。単相2線式:2I²R、単相3線式:2 ×(I ÷ 2)² × R' = I²R' ÷ 2
I²R' ÷ 2 = 2I²R × 1/5 とおくと、R' = 4R × 1/5 = 0.8R。答えは0.8倍です。
パターン3:バランサは「差の半分」と「損失の差」
平成28年度 問17は、この記事の例題と同じ30Aと20Aの不平衡負荷にバランサをつなぐB問題でした。(a)でバランサの電流、(b)で損失の変化量が問われています。バランサの電流は(30 − 20)÷ 2 = 5A。損失の変化は、バランサの前後で3本の線の損失をそれぞれ計算して差をとります(問題の線路抵抗の値で計算すると20W)。中性線の抵抗が外線と違う値で与えられることがあるので、1本ずつ計算するのが確実です。
計算問題は、どれも「回路図に電流の矢印と値を書き込む」ことから始まります。中性線の電流(差)、バランサの電流(差の半分)、外線の電流(バランサ後は平均)の3つが書ければ、損失も電圧もあとは I²R と IR で出せます。

よくある間違い・つまずきポイント
単相3線式の計算で点を落とすのは、ほとんどが次の5つです。解き終わったら、この順に見直してください。
1. 中性線の電流を「和」にしてしまう
中性線には、上下の電流が逆向きに流れるので「差」が残ります。30Aと20Aなら50Aではなく10Aです。
2. 平衡なのに中性線の損失を数える
平衡なら中性線は0Aなので、損失は外線2本分だけです。3本分で計算すると、答えが1.5倍になります。
3. 端子電圧で、中性線の降下を両側から引く
中性線の降下は、重い側では引き、軽い側では足します。両側から引くと、軽い側の電圧が実際より低く出ます。
4. 中性線が切れたとき、重い側の電圧が上がると考える
電圧が上がるのは、抵抗が大きい「軽い(容量の小さい)」側です。容量の大きい機器ほど抵抗が小さいので、電圧が下がります。
5. バランサの電流を「差」そのものにする
バランサの電流は差の半分です。30Aと20Aなら10Aではなく5Aです。

よくある質問
まとめ:電流の「差」と「差の半分」で解ける
- 中性線の電流 = 外線の負荷電流の差(平衡なら0A)
- 不平衡だと損失が増える(例:平衡125W → 30A/20Aで140W)
- 端子電圧:中性線の降下は、重い側で引き、軽い側で足す(例:101V/104V)
- 中性線が切れると直列になり、軽い側に高い電圧(例:133.3V)
- バランサの電流 = 差の半分。外線は平均にそろい、損失と電圧の差が減る
まずは30Aと20Aの例題を、回路図に矢印を書き込みながら自分の手で解いてみてください。電流の値さえ正しく書ければ、論説問題も計算問題も同じ考え方で解けるようになります。

「単相3線式の計算」を試験の得点につなげるなら、電力科目の教科書で前後の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「電力」の教科書と問題集が1冊になった本です。
電験三種の試験でどう問われるかは、過去問で確かめるのがいちばんの近道です。電験三種の過去10年分の試験問題をまとめた過去問題集です(2026年度版)。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
「どこから手をつければいいかわからない」「計算問題で手が止まる」と感じたら、講義と問題演習がセットになった通信講座を使う方法もあります。アガルートアカデミーには電験三種の講座があります。料金や内容は公式サイトで確かめてください。
次に読むべき記事
ここまでで、単相3線式の電流・損失・電圧を、平衡から断線、バランサまで計算できるようになりました。次は、配電線の形や、損失を減らすもう1つの方法である力率の改善へ進みましょう。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。