試験と申込

電気主任技術者とは?1種・2種・3種の違いと選任・仕事を図解

電気主任技術者とは 1種・2種・3種の違い キュービクルと点検のヘルメット

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「電験三種」と「電気主任技術者」は、同じものですか?

答え

電気主任技術者とは、ビル・工場・病院・発電所などの電気設備(事業用電気工作物)で、工事・維持・運用の保安を監督する人です。設備を持つ会社は、電気主任技術者を置くこと(選任)が電気事業法で決まっています。免状は第一種・第二種・第三種の3つで、監督できる電圧が違います。第三種(いわゆる電験三種)は5万V未満(出力5千kW以上の発電所などを除く)。電験三種は、この第三種の免状をとるための試験の呼び名です。

この記事を書いたのは、11/9から電験三種の下期の申込が始まるからです。受けると決める前に、取ったら何ができる資格なのかを1枚でつかんでおくと、勉強の途中で迷いにくくなります。

答えを先に短く言うと、電気主任技術者が「役割と免状の名前」、電験三種が「その第三種の免状をとる試験の呼び名」です。この記事では、役割・1種〜3種の違い・選任の仕組み・電気工事士との違い・なり方の順に、条文と数字で整理します。

電気主任技術者とは 家の一般用電気工作物とビル・工場の事業用電気工作物の違い

電気主任技術者は何をする人?

電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事・維持・運用について「保安の監督」をする人です。点検や工事の計画を立て、危ない作業を止め、現場の人に保安の指示を出します。現場の人は、その指示に従う義務があります(電気事業法 第43条)。

電気事業法の第43条は、選任の義務を次のように書いています。

電気事業法 第43条 第1項(原文)

「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。」

同じ条の第4項は主任技術者に「保安の監督の職務を誠実に行わなければならない」と求め、第5項は工事・維持・運用に携わる人に「主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない」と求めています。監督する側と、指示に従う側の両方に義務がある形です。

では「事業用電気工作物」とは何か。家の電気と比べます。家やお店の多くは、電力会社から100Vや200Vの低い電圧で電気を受けます。これは一般用電気工作物で、電気主任技術者は要りません(一般用の電圧の上限は600V。施行規則 第48条)。一方、ビルや工場の多くは6,600Vの高い電圧で電気を受け、敷地のキュービクル(高圧受電設備)で使える電圧に下げます。こちらは事業用電気工作物で、電気主任技術者の監督が要ります。

家・小さなお店ビル・工場・病院など
受ける電圧の例100V・200V(低圧)6,600V(高圧)など
区分一般用電気工作物事業用電気工作物(自家用)
電気主任技術者要らない選任が要る(外部委託もできる。後の節)
具体的な仕事の例—月次点検・年次点検・停電作業の計画・保安規程に沿った記録

区分は電気事業法と施行規則 第48条。仕事の例は、保安規程で決める点検・記録の一般的なもの。

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電気主任技術者の1種・2種・3種の違い

電気主任技術者の1種・2種・3種の違いは、監督できる電圧の範囲です。第三種は5万V未満(出力5千kW以上の発電所・蓄電所を除く)、第二種は17万V未満、第一種はすべての事業用電気工作物を監督できます(電気事業法施行規則 第56条)。

免状監督できる範囲試験直近の合格率
第三種(電験三種)電圧5万V未満(出力5千kW以上の発電所・蓄電所を除く)理論・電力・機械・法規の4科目。CBTか筆記。年2回12.8%(令和8年度上期)
第二種(電験二種)電圧17万V未満一次(4科目)と二次(2科目)一次35.0%・二次16.5%(令和7年度)
第一種(電験一種)すべての事業用電気工作物一次(4科目)と二次(2科目)一次32.0%・二次31.7%(令和7年度)

範囲は電気事業法施行規則 第56条(ダム水路・ボイラー・タービンの主任技術者が見る部分を除く)。合格率は試験センターの試験結果と推移から計算。

電圧の数字だけでは実感がわきません。受ける電圧の例で並べます。ビル・工場・学校・病院の多くが受ける6,600Vは、第三種で監督できます。大きな工場が受ける22,000Vや33,000Vも、5万V未満なので第三種の範囲に入る。66,000Vや154,000Vで受ける大きな工場や変電所になると第二種、275,000V以上の送電網は第一種の世界。

受ける電圧の例第三種第二種第一種
6,600V(高圧。ビル・工場の多く)○○○
22,000V・33,000V(特別高圧)○○○
66,000V・154,000V(特別高圧)×○○
275,000V以上(基幹の送電)××○

○×は施行規則 第56条の電圧の線(5万V・17万V)だけで判定。発電所・蓄電所は出力の条件(第三種は5千kW未満)もあります。

試験の性格も違います。第三種は受験資格がなく、マークシートかCBTの五肢択一。第二種・第一種は一次試験のあとに記述式の二次試験があり、計算の過程まで書かせます。多くの人が第三種から入るのはこのためで、第三種の合格者はここ数年、年に6,000〜9,000人台です。

電気主任技術者の1種・2種・3種の違い 第三種5万V未満・第二種17万V未満・第一種すべての電圧の範囲

電気主任技術者の選任と外部委託

事業用電気工作物を持つ会社は、事業場ごとに電気主任技術者を選任し、国に届け出ます。ただし7,000V以下で受電する需要設備などは、電気保安法人や個人の電気管理技術者に保安の業務を委託し、承認を受ければ、自社で選任しなくてもよくなります(外部委託。施行規則 第52条第2項)。

形どんなとき根拠
自社で選任社員の中から免状を持つ人を選び、届け出る電気事業法 第43条 第1項・第3項
外部委託7,000V以下で受電する需要設備、出力5千kW未満で7,000V以下で連系する太陽電池発電所など。委託契約を結び、承認を受ける施行規則 第52条第2項
兼任原則は1人1事業場。保安上支障がないと承認を受ければ、2つ以上を兼ねられる施行規則 第52条第4項
許可選任自家用電気工作物で、許可を受けて免状のない人を選任する電気事業法 第43条 第2項

6,600Vで受電するビルや工場の多くは、外部委託の対象です。経済産業省の資料によると、自家用電気工作物(令和6年度で約92.5万件)の約9割が外部委託でした(グラフからの読み取り)。外部委託の点検を担うのが、電気保安協会などの法人と、独立した個人の電気管理技術者です。

筆者は電験三種を持っていますが、この節の選任と外部委託の話は、法令と経済産業省の資料から書いています。現場で選任された体験として書けることはありません。許可選任・兼任の細かい条件は、法規の記事で条文ごとにまとめています。

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電気主任技術者と電気工事士の違い

電気工事士は、電気の工事を自分の手で行うための資格です。電気主任技術者は、工事を含む設備全体の保安を監督する人で、工事そのものをする資格ではありません。現場では、電気主任技術者が計画と安全を見て、電気工事士が手を動かす、という分担になります。

電気主任技術者電気工事士
一言でいうと保安を監督する人工事をする人
法律電気事業法電気工事士法
主な場所ビル・工場・発電所などの事業用電気工作物家・お店・ビルの低圧・高圧の配線など
試験第三種は4科目(CBTか筆記)学科と技能(実技)
免状だけで工事ができるかできない(工事は電気工事士の資格が要る)できる(範囲は種類による)

よくある勘違いは1つ。「電験三種を持っていれば電気工事もできる」です。電気主任技術者の免状は監督のための免状で、配線をつなぐ作業の資格ではありません。現場で両方の仕事をする人は、両方の資格を持っています。

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電気主任技術者になるには?試験と認定の2つの道

電気主任技術者の免状をとる道は、①電気主任技術者試験(電験)に合格する、②学校で決められた科目を修めて卒業し、決められた年数の実務を積んで認定を受ける、の2つです。第三種の試験には受験資格がなく、誰でも受けられます。

道中身向いている人
試験(電験)第三種は理論・電力・機械・法規の4科目。年2回(上期・下期)。科目合格は連続5回まで免除学歴を問わず、勉強で取りたい人
認定大学(電気工学の学科)で所定の科目を修めて卒業し、実務1年以上(第三種)。高校の場合は3年以上など電気の学科を卒業し、電気の実務についている人

認定の年数は、主任技術者の資格等に関する省令 第1条の表。実務は電圧500V以上の電気工作物の工事・維持・運用。申請先は産業保安監督部。

下期の試験の申込は11/9〜11/26。CBTで受ける人は、12/7〜1/7に会場を予約し、2/4〜2/28の空いている日に受けます。筆記で受ける人は3/21です。CBTの初日まで、申込の初日から数えて87日あります。

筆者なら、迷っている人には第三種から受けることを勧めます。受験資格がなく、6,600Vで受電するビル・工場の設備なら、第三種の範囲で監督できるからです。電験三種は令和10年度からCBT方式へ完全に移る予定と発表されています(試験センターの10/30付のお知らせ)。

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数字で見る電気主任技術者の今

電気主任技術者は、担い手の高齢化と不足が国の資料ではっきり示されている仕事です。対策をしなければ、令和12年度に第三種(外部委託)で約800人、第二種で約1,000人が不足するという経済産業省の推計があります。

数字中身出典
約9割自家用電気工作物(約92.5万件)のうち外部委託の割合(令和6年度)経済産業省 電力安全小委員会 第36回 資料1-1
約800人対策なしの場合、令和12年度に不足する第三種(外部委託)の人数電気保安制度WG 第13回 資料1
64.9歳日本電気技術者協会の正会員の平均年齢(50歳以上が88%)電力安全小委員会 第36回 資料1-3
約620万円「発電員,変電員」の所定内給与×12+賞与(残業代を含まない)令和7年 賃金構造基本統計調査

給与は電気主任技術者だけの統計ではなく、職種の近い「発電員,変電員」の値。所定内給与 39.06万円は一般労働者の平均 34.06万円より約15%高い。

注意したいのは、「資格を持つ人が全体で足りない」のではない点です。資格を持つ人は多い。足りなくなるのは、外部委託の点検を担う保安協会や個人の電気管理技術者の現場です。データセンターの増加もよく話題になりますが、大きな施設は特別高圧で受電することが多く、5万V以上なら第三種では監督できません。数字は、範囲と前提ごと読む必要があります。

数字で見る電気主任技術者 外部委託約9割・不足約800人・平均64.9歳・約620万円

電気主任技術者のよくある誤解4つ

電気主任技術者のよくある誤解は、①免状をとれば自動で主任技術者になる、②電験三種があればどの設備でも監督できる、③電気工事もできる、④試験に受からないとなれない、の4つです。

誤解正しくは
免状をとれば、自動で電気主任技術者になる免状は「選任される資格」。会社が選任して届け出て、はじめてその事業場の電気主任技術者になる
電験三種があれば、どの設備でも監督できる第三種は5万V未満(出力5千kW以上の発電所・蓄電所を除く)。66,000Vで受電する工場は第二種以上
電気主任技術者は電気工事もできる工事をするには電気工事士の資格が要る。主任技術者は監督する立場
試験に受からないとなれない学歴と実務経験による認定の道もある。第三種なら、電気の学科の大学卒+実務1年以上など

電験三種の法規の試験でも、第43条はそのまま出ています。令和5年度上期の法規 問1は、第43条の「選任しなければならない」「誠実に行わなければならない」「指示に従わなければならない」の3つの文の正誤を問う問題でした。令和4年度上期の法規 問1も、保安体系の図の中で「主任技術者を選任し、遅滞なく届け出る」が第43条の義務として出ています。この記事の内容は、そのまま法規の得点にもつながる。

電気主任技術者のよくある誤解4つと正しい理解

まとめ:電気主任技術者は「法律で置く、保安の監督役」

まとめ
  • 電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事・維持・運用の保安を監督する人。選任は電気事業法 第43条で決まっている
  • 1種・2種・3種の違いは監督できる電圧。第三種は5万V未満、第二種は17万V未満、第一種はすべて
  • 6,600Vで受電するビル・工場の多くは第三種の範囲。7,000V以下の受電なら外部委託もできる
  • 電気工事士は工事をする人、電気主任技術者は監督する人
  • なる道は試験(電験)と認定の2つ。第三種の試験は受験資格なし・年2回

電験三種の下期の申込は11/26(木)17時まで。何の資格かがつかめたら、次は申込の手順と、試験の中身を確かめてください。

参考にした資料

(2026年10月に確認)

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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