法規科目の解説

絶縁耐力試験とは?試験電圧1.5倍・1.25倍・10分間と試験装置の容量を過去問で図解|電技解釈第15条・第16条|計算ツール付き

絶縁耐力試験を表すアイキャッチ。試験用変圧器から高圧ケーブルに電圧をかけ、ストップウォッチで時間を測っている

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 1.5倍・1.25倍・2倍のどれを掛けるのか混ざる
  • 最大使用電圧の1.15/1.1がなぜ出てくるのかわからない
  • 試験用変圧器の容量やリアクトルの計算で手が止まる
この記事でわかること
  • 絶縁耐力試験と絶縁抵抗測定のちがい
  • 試験電圧の表(第15条・第16条)
  • 充電電流・試験用変圧器の容量・補償リアクトルの計算
  • 過去問の解き方と計算ツール
結論|まず30秒でわかる答え

絶縁耐力試験とは、高圧・特別高圧の電路や機器に、ふだんより高い試験電圧を連続して10分間加えて、絶縁が耐えるかを確かめる試験です。試験電圧は最大使用電圧(公称電圧×1.15/1.1)をもとに、7,000V以下なら1.5倍、7,000Vを超え60,000V以下なら多くは1.25倍です。ケーブルの交流の電路は、その2倍の直流電圧で試験してもかまいません(電技解釈第15条)。

絶縁耐力試験を表すアイキャッチ。試験用変圧器から高圧ケーブルに電圧をかけ、ストップウォッチで時間を測っている

絶縁耐力試験とは?絶縁抵抗測定とのちがい

新しく作った高圧の設備は、使い始める前に「本当に絶縁が持つか」を確かめます。ふだんの電圧より高い電圧を10分間かけ続けて、壊れなければ合格です。これが絶縁耐力試験です。

絶縁抵抗測定絶縁耐力試験
確かめること電気がどれだけ漏れにくいか(抵抗値)高い電圧に耐えられるか(壊れないか)
主な対象低圧の電路高圧・特別高圧の電路と機器
使う道具絶縁抵抗計(メガー)試験用変圧器・補償リアクトルなど
決まり省令第58条(0.1/0.2/0.4MΩ)電技解釈第15条・第16条
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試験電圧のもとになる「最大使用電圧」

試験電圧は、公称電圧ではなく最大使用電圧に倍率を掛けて求めます。公称電圧が1,000Vを超え500,000V未満の電路では、最大使用電圧 = 公称電圧 × 1.15/1.1 です(電技解釈第1条)。

公式
6,600 × 1.15 ÷ 1.1 = 6,900 V

3,300Vなら3,450V、22,000Vなら23,000Vです。

絶縁抵抗測定と絶縁耐力試験のちがいの図。絶縁抵抗測定は漏れにくさを測り主に低圧、絶縁耐力試験は高い電圧に10分間耐えるかを確かめ高圧と特別高圧。最大使用電圧は公称電圧×1.15÷1.1で6,600Vなら6,900V

試験電圧の決まり(第15条・15-1表)

試験電圧を、電路と大地との間(多心ケーブルは心線どうしと、心線と大地との間)に連続して10分間加えます。

最大使用電圧電路の種類試験電圧
7,000V以下交流の電路1.5倍の交流電圧
7,000V以下直流の電路1.5倍の直流電圧 又は 1倍の交流電圧
7,000V超 60,000V以下15,000V以下の中性点接地式(中性線に多重接地)0.92倍
7,000V超 60,000V以下上記以外1.25倍(10,500V未満なら10,500V)
60,000V超中性点非接地式1.25倍
60,000V超中性点接地式1.1倍(75,000V未満なら75,000V)
60,000V超中性点直接接地式0.72倍(170,000V超の発変電所などは0.64倍)

ケーブルなら直流の2倍でよい

電線にケーブルを使う交流の電路は、表の試験電圧の2倍の直流電圧を10分間加えて試験してもかまいません(第15条第二号)。ケーブルは静電容量が大きく、交流では大きな充電電流が流れて大きな試験装置がいるからです。

公式
6,600Vのケーブル:交流 10,350 V、直流なら 20,700 V(どちらも10分間)
絶縁耐力試験の試験電圧の図。最大使用電圧7,000V以下は1.5倍、7,000V超60,000V以下は1.25倍で最低10,500V、ケーブルの交流電路は2倍の直流でもよい。6,600Vなら交流10,350V、ケーブルの直流なら20,700Vを10分間

変圧器・回転機など機器の試験電圧(第16条)

機器試験電圧加え方
変圧器(7,000V以下)1.5倍(500V未満なら500V)試験する巻線と、他の巻線・鉄心・外箱との間に10分間
変圧器(7,000V超60,000V以下)1.25倍(最低10,500V)。多重接地の15,000V以下は0.92倍同上
回転機(7,000V以下)1.5倍(最低500V)巻線と大地との間に10分間。交流の回転機は1.6倍の直流でもよい
回転機(7,000V超)1.25倍(最低10,500V)同上
燃料電池・太陽電池モジュール1.5倍の直流 又は 1倍の交流(最低500V)充電部分と大地との間に10分間

例:最大使用電圧23kVの受電用変圧器

STEP 1

23,000Vは「7,000V超60,000V以下」なので1.25倍

STEP 2

1.25 × 23,000 = 28,750 V

STEP 3

連続して10分間加える(令和8年度上期 問4)

機器の試験電圧の図。変圧器は試験する巻線と他の巻線・鉄心・外箱の間、回転機は巻線と大地の間で1.6倍の直流でもよい、太陽電池モジュールは1.5倍の直流又は1倍の交流。最大使用電圧23kVの変圧器は1.25倍の28,750Vを10分間

試験用変圧器の容量と補償リアクトルの計算

ケーブルは長いコンデンサのようなものです。交流の試験電圧をかけると、進み電流(充電電流)が流れます。試験用変圧器は、この電流を流せる容量が必要です。

公式
充電電流 I = 2πf × 3C × V (3線一括、Cは1線の対地静電容量)
公式
試験用変圧器の容量 S = V × I

3線をまとめて大地との間に電圧をかける(3線一括)ので、静電容量は1線分の3倍です。問題文が「3線一括の静電容量」で与えていれば、3倍しません。

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補償リアクトルで変圧器を小さくする

ケーブルと並列にリアクトルをつなぐと、リアクトルの遅れ電流がケーブルの進み電流を打ち消します。試験用変圧器が流す電流は、その差だけで済みます。

公式
X_L = 定格電圧 ÷ 定格電流、I_L = V ÷ X_L、変圧器の電流 = I − I_L

例題:6,600VのCVTケーブル200m

1線の対地静電容量0.40μF/km、周波数50Hz。補償リアクトルは12,000Vで300mA流れるもの1台。

STEP 1

試験電圧:6,900 × 1.5 = 10,350 V

STEP 2

1線の静電容量:0.40 × 0.2 = 0.08 μF、3線一括で 0.24 μF

STEP 3

充電電流:2π × 50 × 0.24×10⁻⁶ × 10,350 ≒ 0.780 A

STEP 4

リアクトルなし:S = 10,350 × 0.780 ≒ 8.08 kV·A

STEP 5

リアクトル:X_L = 12,000 ÷ 0.3 = 40,000 Ω、I_L = 10,350 ÷ 40,000 ≒ 0.259 A

STEP 6

リアクトルあり:(0.780 − 0.259) × 10,350 ≒ 5.40 kV·A

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試験用変圧器の容量の計算の図。ケーブルに流れる進み電流はI=2πf×3C×V、容量はS=V×I。補償リアクトルを並列につなぐと遅れ電流I_Lが打ち消し、容量はV×(I−I_L)になる

電験三種の過去問で確かめる

絶縁耐力試験は、法規でほぼ毎年のように出ています(平成22年度 問8、平成24年度 問11、平成28年度 問12、令和3年度 問12、令和6年度下期 問13、令和7年度下期 問12、令和8年度上期 問4)。

年度問われたこと答えの出し方
平成22年度 問8公称22,000Vのケーブルの試験23,000 × 1.25 = 28,750V、直流は2倍の57,500V・10分
令和3年度 問126,600V CVT 220m(0.45μF/km)直流20,700V・10分。I ≒ 0.966A、S ≒ 10kV·A
令和6年度下期 問133線一括0.2μFX_C ≒ 15,920Ω、I ≒ 0.65A、S ≒ 6.73 → 7kV·A
平成28年度 問12CVT 87m+補償リアクトル4.0kV·A。リアクトル並列で ≒1.35 → 2kV·A
令和7年度下期 問12単心CV 800m、変圧器5kV·AI ≒ 1.17A、補償 0.688A ÷ 0.27A ≒ 2.55 → 3台
平成24年度 問11CVT 150m+リアクトルI ≒ 322mA、変圧器 ≒ 83mA、≒0.86 → 1.0kV·A

令和7年度下期 問12:リアクトルの台数

STEP 1

C = 0.45 × 0.8 = 0.36 μF、X_C = 1 ÷ (2π × 50 × 0.36×10⁻⁶) ≒ 8,842 Ω

STEP 2

I = 10,350 ÷ 8,842 ≒ 1.17 A

STEP 3

5kV·Aの試験用変圧器が流せる電流:5,000 ÷ 10,350 ≒ 0.483 A

STEP 4

リアクトルで打ち消す電流:1.17 − 0.483 ≒ 0.688 A

STEP 5

0.688 ÷ 0.27 ≒ 2.55 → 切り上げて3台

絶縁耐力試験の計算ツール

公称電圧と電路の区分を選ぶと、試験電圧を出します。ケーブルの静電容量とこう長、補償リアクトルを入れると、充電電流と試験用変圧器の容量も出します(60,000V以下の電路が対象)。

入れた数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。初期値は令和3年度 問12の数値です。試験用変圧器の容量は、計算値以上の選択肢を選びます。

絶縁耐力試験のよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
公称電圧6,600Vに1.5倍する最大使用電圧6,900Vに1.5倍して10,350V
試験時間は1分間連続して10分間
直流ならどの電路でも2倍直流2倍で試験できるのはケーブルを使う交流の電路
22kVも1.5倍7,000Vを超え60,000V以下は多くが1.25倍
1線の静電容量のまま計算3線一括なら3倍する
リアクトルの電流を足す進みと遅れで打ち消すので引き算
絶縁耐力試験のよくある間違いの図。6,600Vではなく最大使用電圧6,900Vに1.5倍、試験は連続して10分間、22kVは1.25倍、補償リアクトルの電流は差し引く

よくある質問

Q. 6,600Vの絶縁耐力試験の試験電圧は?

A. 最大使用電圧6,900Vの1.5倍の10,350Vです。ケーブルなら2倍の直流20,700Vでもかまいません。

Q. 絶縁耐力試験の時間は?

A. 電技解釈第15条・第16条で、試験電圧を連続して10分間加えることになっています。

Q. 最大使用電圧の求め方は?

A. 公称電圧が1,000Vを超え500,000V未満なら、公称電圧×1.15÷1.1です。6,600Vなら6,900Vです。

Q. 22kVの試験電圧は何倍?

A. 最大使用電圧23,000Vは7,000V超60,000V以下なので1.25倍の28,750Vです。

Q. 補償リアクトルは何のため?

A. ケーブルの進み電流を遅れ電流で打ち消して、試験用変圧器の容量を小さくするためです。

まとめ
  • 絶縁耐力試験は試験電圧を連続して10分間
  • 最大使用電圧=公称電圧×1.15/1.1(6,600V→6,900V)
  • 7,000V以下は1.5倍、7,000V超60,000V以下は多くが1.25倍
  • ケーブルの交流電路は2倍の直流でもよい
  • 容量 S=V×I(I=2πf×3C×V)、リアクトル分は引く
絶縁耐力試験のまとめの図。最大使用電圧は公称電圧×1.15/1.1、7,000V以下は1.5倍、ケーブルは2倍の直流でもよい、連続して10分間
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