- P=VIcosθ、Q=VIsinθ、S=VI…公式が多すぎて覚えられない
- 「電力三角形」と「インピーダンス三角形」の関係がわからない
- 力率改善の計算問題で、進相コンデンサの容量が求められない
- 有効電力・無効電力・皮相電力の「計算」になると手が止まる
- 電力三角形の「なぜそうなるか」を直角三角形で完全理解
- P・Q・Sを求める全公式を「1つの三角形」で覚えるコツ
- インピーダンス三角形との対応関係で「丸暗記不要」になる
- 力率改善の計算を例題つきで解けるようになる
電験三種の交流回路で、避けて通れないのが交流電力の計算です。
有効電力P、無効電力Q、皮相電力S。さらに力率cosθ、sinθ、tanθ…。公式が多すぎて「もう無理」と感じていませんか?
でも、安心してください。実はたった1つの直角三角形(電力三角形)を描けるようになれば、すべての公式は「見ればわかる状態」になります。丸暗記は一切不要です。
この記事では、力率(cosθ)の記事と有効電力・無効電力・皮相電力の記事で学んだ知識を前提に、「計算で使いこなす」ことにフォーカスします。手を動かしながら一緒にマスターしていきましょう。
目次
📐 交流電力の全公式を「電力三角形」1つに集約する
電力三角形とは?|P・Q・Sが作る直角三角形
交流電力の計算で最も大切な図が「電力三角形」です。有効電力P(底辺)、無効電力Q(高さ)、皮相電力S(斜辺)が直角三角形を作ります。
| 底辺 → | 有効電力 P [W](実際に仕事をする電力) |
| 高さ ↑ | 無効電力 Q [var](行ったり来たりする電力) |
| 斜辺 ↗ | 皮相電力 S [VA](送られる電力の総量) |
| 角度 θ | 位相角(電圧と電流のズレの大きさ) |
この三角形から、三角関数の定義をそのまま当てはめるだけで、すべての公式が導けます。
cosθ = P / S → P = S cosθ = VI cosθ
sinθ = Q / S → Q = S sinθ = VI sinθ
tanθ = Q / P → Q = P tanθ
S² = P² + Q²(三平方の定理)
直角三角形を描いて「底辺÷斜辺 = cosθ」「高さ÷斜辺 = sinθ」と読み取るだけ。三角関数の定義そのものなので、忘れようがないのです。試験本番では、まず電力三角形をメモ用紙に描くことから始めましょう。
インピーダンス三角形との「完全対応」が最強の武器
インピーダンスの計算の記事で登場した「インピーダンス三角形(R, X, Z)」を覚えていますか? 実は、電力三角形はインピーダンス三角形とまったく同じ構造をしています。
| 三角形の辺 | インピーダンス三角形 | 電力三角形 | 変換の関係 |
|---|---|---|---|
| 底辺 | R [Ω] | P [W] | P = I²R |
| 高さ | X [Ω] | Q [var] | Q = I²X |
| 斜辺 | Z [Ω] | S [VA] | S = I²Z |
| 角度 θ | cosθ = R/Z | cosθ = P/S | どちらも同じθ |
つまり、インピーダンス三角形の各辺にI²を掛けると、電力三角形に変身するのです。逆に言えば、回路のR・X・Zがわかれば、I²を掛けるだけでP・Q・Sも即座に求まります。

🔢 交流電力の公式を「全パターン」整理する
V・I・θがわかるとき(基本パターン)
電圧V、電流I、位相角θ(または力率cosθ)が与えられたときの公式です。最も基本的で、最も出題頻度が高いパターンです。
皮相電力:S = VI [VA]
有効電力:P = VI cosθ [W]
無効電力:Q = VI sinθ [var]
R・X・Z・Iがわかるとき(回路定数パターン)
回路のインピーダンス要素(R, X, Z)と電流Iが与えられるパターンです。P = I²R は超頻出なので必ず覚えてください。
皮相電力:S = I²Z = V²/Z [VA]
有効電力:P = I²R = V²R/Z² [W]
無効電力:Q = I²X = V²X/Z² [var]
P = VI cosθ に、V = IZ と cosθ = R/Z を代入すると…
P = (IZ) × I × (R/Z) = I² × Z × R/Z = I²R
この導出を理解しておけば、公式を忘れても自力で導けます。「Z が約分で消える」のがミソです。
力率改善で使う公式(tanθパターン)
力率改善の問題では、tanθ = Q/Pを使う場面が多く出てきます。改善前と改善後のtanθの差から、必要なコンデンサ容量を求めます。
QC = P (tanθ₁ − tanθ₂) [var]
θ₁:改善前の位相角、θ₂:改善後の位相角
P:有効電力(改善前後で変わらない)
進相コンデンサはあくまで「無効電力Qを打ち消す」ための装置です。実際に仕事をする有効電力Pは、コンデンサを追加しても変化しません。だから「改善前のP」と「改善後のP」は同じ値を使えるのです。

✏️ 計算例①|電圧・電流・力率からP・Q・Sを求める
例題:V=200V、I=10A、cosθ=0.8(遅れ)の負荷
単相交流回路で、電圧 V = 200V、電流 I = 10A、力率 cosθ = 0.8(遅れ)の負荷があります。
有効電力P、無効電力Q、皮相電力Sをそれぞれ求めなさい。
S = VI = 200 × 10 = 2000 VA = 2 kVA
cosもsinも付かない一番シンプルな計算です。
P = VI cosθ = 200 × 10 × 0.8 = 1600 W = 1.6 kW
実際に仕事をする電力です。電気代に直結します。
cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6
sin²θ + cos²θ = 1 より sinθ = √(1 − 0.64) = √0.36 = 0.6
Q = VI sinθ = 200 × 10 × 0.6 = 1200 var = 1.2 kvar
電源と負荷を行ったり来たりするだけの電力です。
S² = P² + Q²
2000² = 1600² + 1200²
4,000,000 = 2,560,000 + 1,440,000 = 4,000,000 ✅
cosθ = 0.8(力率80%)のとき、P:Q:S = 1600:1200:2000 = 4:3:5。おなじみのピタゴラス数です。電験三種では「cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6」のセットが最も頻出するので、丸暗記しておきましょう。

✏️ 計算例②|回路定数(R, X, Z)からP・Q・Sを求める
例題:R=30Ω、XL=40ΩのR-L直列回路にV=100Vを印加
R = 30Ω、XL = 40Ω が直列に接続された回路に、V = 100V の交流電圧を加えた。
(1) インピーダンスZ、(2) 電流I、(3) 力率cosθ、(4) P・Q・S を求めなさい。
Z = √(R² + XL²) = √(30² + 40²) = √(900 + 1600) = √2500 = 50Ω
※ 3:4:5 のピタゴラス数パターンです!
I = V / Z = 100 / 50 = 2A
cosθ = R / Z = 30 / 50 = 0.6(遅れ)
P = I²R = 2² × 30 = 120 W
Q = I²X = 2² × 40 = 160 var
S = I²Z = 2² × 50 = 200 VA
① S² = P² + Q² → 200² = 120² + 160² → 40000 = 14400 + 25600 = 40000 ✅
② P = VIcosθ = 100 × 2 × 0.6 = 120 W ✅(STEP4と一致)
P = VIcosθ でも P = I²R でも同じ答えが出ます。片方の公式で解いて、もう片方で検算すれば、計算ミスを即座に発見できます。電験三種はマークシート方式なので、計算ミス1つが致命傷になります。必ずダブルチェックの習慣をつけましょう。

✏️ 計算例③|力率改善に必要なコンデンサ容量を求める
例題:cosθを0.6から0.9に改善するために必要なQCは?
有効電力 P = 150 kW、力率 cosθ₁ = 0.6(遅れ)の工場がある。
力率を cosθ₂ = 0.9(遅れ)に改善するには、何 kvar の進相コンデンサが必要か。
cosθ₁ = 0.6 → sinθ₁ = 0.8(3:4:5 の比率)
tanθ₁ = sinθ₁ / cosθ₁ = 0.8 / 0.6 = 4/3 ≈ 1.333
cosθ₂ = 0.9 → sinθ₂ = √(1 − 0.81) = √0.19 ≈ 0.436
tanθ₂ = 0.436 / 0.9 ≈ 0.484
QC = P (tanθ₁ − tanθ₂)
= 150 × (1.333 − 0.484)
= 150 × 0.849
≈ 127.4 kvar
電力三角形の変化を図で確認する
改善前(cosθ=0.6)
P = 150 kW
Q = P × tanθ₁ = 150 × 1.333 ≈ 200 kvar
S = P / cosθ₁ = 150 / 0.6 = 250 kVA
三角形が「縦長」= 無駄が多い
改善後(cosθ=0.9)
P = 150 kW(変わらない)
Q = 200 − 127.4 ≈ 72.6 kvar
S = 150 / 0.9 ≈ 166.7 kVA
三角形が「横長」= 無駄が少ない
改善前 S = 250 kVA → 改善後 S ≈ 167 kVA。約33%も減少しました。これは「電線を流れる電流が33%減った」ことを意味します。電線の損失(I²R)は電流の2乗に比例するので、損失は 約55%減少 する計算です。力率改善の効果がいかに大きいかがわかりますね。

📝 まとめ|交流電力の計算を得点源にする3つのステップ
この記事の要点を総整理
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 電力三角形 | P(底辺)、Q(高さ)、S(斜辺)の直角三角形。全公式はここから導出できる |
| 基本公式 | P = VIcosθ、Q = VIsinθ、S = VI、S² = P² + Q² |
| 回路定数型 | P = I²R、Q = I²X、S = I²Z(インピーダンス三角形×I²) |
| 力率改善 | QC = P(tanθ₁ − tanθ₂)。Pは改善前後で不変 |
| 暗記必須 | cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6(比率 4:3:5) |
| 検算の習慣 | VIcosθ と I²R の2つの解法でダブルチェック |
メモ用紙に描く
公式を読み取る
ダブルチェック
交流電力の計算は、一見すると公式が多くて圧倒されます。でも、「電力三角形を1つ描けば全部わかる」という事実を知ったあなたは、もう大丈夫。この記事の3つの計算例を3回ずつ解き直せば、電力計算は確実に得点源になります。次は三相交流の電力計算に挑戦してみましょう。あなたの合格を応援しています。

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