回路設計

漏れ電流(リーク電流)とは?原因・種類と許容値1mAの根拠、測り方を図解

漏れ電流とは何か。漏れる原因と種類

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こんな悩みはありませんか?
  • 「漏れ電流」ってよく聞くけど、そもそも何が漏れているの?
  • 絶縁しているはずなのに、なぜ電流が漏れるの?
  • Io、Ior、Iocの違いがよくわからない…
  • 漏れ電流が危険だとは聞くけど、具体的にどんなリスクがあるの?
○ この記事でわかること
  • 漏れ電流の「正体」を水道管のたとえで直感理解
  • 漏れ電流が発生する3つの原因
  • 抵抗分漏れ電流(Ior)と静電容量分漏れ電流(Ioc)の違い
  • 許容値1mAの法的根拠と、感電・火災のリスク
  • パワエレ設計・基板設計で「漏れ」を防ぐ実務的な対策

「漏れ電流」という言葉、電験三種の勉強中や実務で一度は聞いたことがありますよね。

でも、こう思いませんでしたか?

「絶縁しているのに、なぜ電流が漏れるの?」

実はこの疑問、超重要です。漏れ電流は「絶縁が壊れたから漏れる」だけではありません。絶縁が正常でも、構造的に漏れてしまう電流が存在するんです。

この記事では、漏れ電流の「なぜ漏れるのか?」という根本的な疑問を、水道管のたとえを使って中学生でもわかるレベルで解説します。電験三種の学習者から、パワエレ基板設計の実務者まで、幅広く役立つ内容になっています。

絶縁と漏れ電流の記事(全3本)
  1. 絶縁の種類
  2. 沿面距離と空間距離
  3. 漏れ電流(この記事)
結論|まず30秒でわかる答え

漏れ電流とは、本来の回路ではなく、絶縁物や対地静電容量を通って大地へ漏れる電流です。絶縁の劣化で流れる抵抗分(Ior)は感電や火災に直結する危険な成分で、絶縁が正常でも構造上流れる静電容量分(Ioc)は、主に漏電遮断器の誤動作の原因になります。

許容値の目安は、低圧の電路で絶縁抵抗を測れないとき、使用電圧をかけた状態の漏えい電流が1mA以下です(電気設備の技術基準の解釈 第14条)。漏れ電流は「漏洩(ろうえい)電流」「リーク電流」とも呼び、どれも同じ意味です。

漏れ電流とは?|「見えない水漏れ」で直感理解する

漏れ電流の定義

漏れ電流(leakage current)とは、本来流れるべき回路の外に、意図せず流れてしまう微小な電流のことです。「漏洩電流(ろうえいでんりゅう)」「リーク電流」とも呼ばれます。

漏れ電流の定義
漏れ電流 = 本来の回路(電線)以外の経路に漏れ出た電流
※漏電遮断器(ELB)が検出する「漏電」は、漏れ電流がある一定値を超えた状態を指します。

水道管で理解する「なぜ漏れるのか?」

いきなり電気の話をすると難しいので、水道管に置き換えて考えてみましょう。

家の水道管は、蛇口をひねると水が出ますよね。水は「水道管」という決められたルートだけを通ります。

でも、もしこんな状態だったらどうでしょう?

○

正常な水道管

水は管の中だけを通る。パイプにヒビなし。外に水は漏れない。

水漏れしている水道管

パイプにヒビが入っている → 水が本来のルート以外にジワジワ漏れる。これが「漏れ電流」と同じ状態。

電気回路でも全く同じです。電線(=水道管)の中だけを流れるはずの電流が、絶縁体(=パイプの壁)のどこかを通って外に漏れてしまう。これが漏れ電流の正体です。

ポイント
漏れ電流 = 「電気の水漏れ」。本来流れるべきルート(電線→負荷→電線)以外の場所に、電気がジワジワと漏れている状態です。

漏れ電流と漏電の違い

「漏れ電流」と「漏電」は混同されがちですが、厳密には少し違います。

項目 漏れ電流 漏電
意味 回路外に流れる微小な電流そのもの 絶縁不良などが原因で、意図しない経路に電流が流れる「現象」
常に存在? はい(正常な機器でも微小な漏れ電流は存在する) いいえ(異常状態で発生する)
危険度 通常は微小で問題なし(許容値以内) 感電・火災の直接原因になりうる
水道管で例えると パイプの継ぎ目からの微量なにじみ(正常範囲) パイプが割れて水が噴き出す(事故状態)

つまり、漏れ電流は「程度問題」です。微量な漏れは正常な機器でも存在しますが、それが許容値を超えると「漏電」という危険な状態になります。

漏れ電流を水道管の水漏れにたとえた図。正常な回路と、電流の一部が大地へ漏れる漏電回路
漏れ電流を水道管の水漏れにたとえると
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電源回路の設計を、要求仕様から短時間でまとめる実務の考え方まで知りたい人に向いています。要求仕様どおりの電源を短時間で設計するための、電源回路設計の本です(CQ出版、馬場清太郎 著)。

機器の漏れ電流とは別に、家の配線で起きる「漏電」もあります。漏電の仕組みと対策は次の記事で図解しています。

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なぜ電気は漏れるのか?|漏れ電流が発生する3つの原因

「絶縁しているのに、なぜ漏れるの?」という疑問に答えましょう。漏れ電流が発生する原因は、大きく分けて3つあります。

原因①
絶縁体の劣化
(パイプにヒビ)
原因②
構造的な静電容量
(パイプの壁を透過)
原因③
外部環境
(湿気・汚損・結露)

原因①:絶縁体の劣化(最も危険!)

水道管で例えると、「パイプが経年劣化でヒビ割れした状態」です。

電線やケーブル、機器内部には「絶縁体」と呼ばれる電気を通さない素材(ゴム、プラスチック、エポキシ樹脂など)が使われています。しかし、これらの絶縁体は永遠ではありません。以下のような要因で少しずつ劣化していきます。

劣化要因 具体例 水道管で例えると
熱による劣化 大電流による発熱、高温環境での使用 高温でパイプが膨張してヒビが入る
湿気による劣化 屋外設備、工場内の結露 水中に長期間放置してパイプが腐食する
紫外線による劣化 屋外に露出した配線 直射日光でパイプが硬くなり割れる
機械的な損傷 振動、衝撃、ねずみによるかじり 外からの衝撃でパイプが凹む・破損
電気的な劣化 過電圧、部分放電(トリーイング現象) 水圧が高すぎてパイプが内側から破裂
これが最も危険な理由
絶縁劣化による漏れ電流は、時間とともに増大します。最初はわずかな漏れでも、放置すると絶縁が完全に破壊され、感電事故や火災に直結します。「抵抗分漏れ電流(Ior)」と呼ばれるこのタイプは、後ほど詳しく解説します。

原因②:構造的な静電容量(絶縁が正常でも漏れる!)

ここが多くの人が驚くポイントです。絶縁が完全に正常でも、漏れ電流は発生するのです。

水道管で例えると、「パイプにヒビは一切ないけど、壁の素材がほんの少しだけ水を通してしまう」ようなイメージです。

電気回路では、電線と大地(アース)の間に絶縁体が存在しますよね。この絶縁体は「電気を通さない壁」なのですが、実はコンデンサと同じ構造になっています。

電線と大地の関係 = コンデンサの構造

電線(導体)
|
絶縁体(誘電体)
|
大地(導体)

↑ これは「導体 ─ 誘電体 ─ 導体」というコンデンサそのものの構造です

コンデンサは直流は通しませんが、交流は通す性質がありますよね。つまり、AC100Vのような交流電源が接続された電線と大地の間には、構造的に「見えないコンデンサ」が存在し、そこを通って微小な交流電流が流れてしまうのです。

これが「静電容量分漏れ電流(Ioc)」と呼ばれるもので、「対地静電容量」を通して常に流れ続けています。特にケーブルが長いほど、インバータなどの高周波機器を使うほど、この静電容量は大きくなり、漏れ電流も増大します。

原因③:外部環境(湿気・汚損・結露)

水道管で例えると、「パイプの表面に水滴がたまって、外側を伝って水が流れてしまう」状態です。

絶縁体の表面に湿気、ホコリ、油分、塩分などが付着すると、表面の絶縁抵抗が低下します。本来は電気を通さない表面に「電気が通りやすい膜」ができてしまい、そこを通って漏れ電流が流れます。

特に以下の環境では要注意です。

漏れ電流が増大しやすい環境
・工場内(油分、金属粉塵、高湿度)
・屋外設備(雨、結露、塩害)
・基板上(フラックス残渣、結露)
・夏場のエアコン稼働時(結露が発生しやすい)

これは基板設計でも同様で、パターン間にフラックスの残渣や汚れが付着すると、そこがリーク電流の経路になります。沿面距離(パターン間の表面距離)を確保する理由の一つがこれです。

漏れ電流の3つの原因の図。熱や紫外線による絶縁劣化、ケーブルの構造的な静電容量、湿気やほこりなどの外部環境
漏れ電流の3つの原因:絶縁劣化・静電容量・外部環境

漏れ電流の2つの種類|Ior(抵抗分)とIoc(静電容量分)の違い

漏れ電流には大きく分けて2つの成分があります。この違いを理解することが、漏れ電流を正しく評価するうえで極めて重要です。

漏れ電流の全体像:Io = Ior + Ioc(ベクトル和)

漏れ電流の全体(Io)は、以下の2つの成分のベクトル和で構成されています。

漏れ電流の構成
Io(合計漏れ電流)= Ior(抵抗分)⊕ Ioc(静電容量分)
※ ⊕はベクトル和を表します。IorとIocは位相が90°ずれているため、単純な足し算ではなく Io = √(Ior² + Ioc²) の関係です。

Ior(抵抗分漏れ電流)

正体:絶縁抵抗の低下により、絶縁体の「抵抗成分」を通って流れる電流

原因:絶縁劣化、ヒビ、水分浸入

危険度:(感電・火災の直接原因)

特徴:電圧と同位相で流れる。劣化が進むほど増大する。

水道管で例えると:パイプのヒビから水がジワジワ漏れる

Ioc(静電容量分漏れ電流)

正体:対地静電容量(見えないコンデンサ)を通して流れる電流

原因:ケーブルの長さ、インバータ等の高周波成分

危険度:(絶縁劣化のしるしではない。大きいと誤動作の原因)

特徴:電圧より90°進んだ位相で流れる。絶縁が正常でも存在する。

水道管で例えると:パイプの壁を少しだけ水が浸透してしまう(構造的な問題)

なぜIorとIocを分けて考える必要があるのか?

ここが実務で超重要なポイントです。

従来の漏電検出器は「Io(合計)」しか測定できませんでした。しかし、Ioが大きいからといって必ずしも危険とは限りません。Iocが大きいだけかもしれないからです。

例えば、インバータを多数使用する工場では、対地静電容量の影響でIocが大きくなります。すると、絶縁は正常なのにIoが大きくなり、漏電遮断器が不要に動作(誤トリップ)してしまうことがあります。

実務のポイント
本当に危険なのはIor(抵抗分漏れ電流)だけです。Iorは絶縁劣化に直結するため、感電や火災の原因になります。一方、Iocは構造的に存在するもので、絶縁の劣化を示すものではなく、火災の原因にもなりにくい電流です(ただし大きいと、触れたときの接触電流や漏電遮断器の不要な動作の原因になります)。だからこそ、IorとIocを「分離して測定」できるIor方式のクランプメータが重要なのです。

IorとIocの位相関係(ベクトル図)

IorとIocは位相が90°ずれています。これはオームの法則(抵抗は電圧と同位相)とコンデンサの性質(電流が電圧より90°進む)を思い出せば理解できます。

漏れ電流のベクトル図

Ior(抵抗分)→
↑ Ioc
(容量分)
Io(合計)
90°

Io = √(Ior² + Ioc²) …IorとIocは直角に合成される

この直角三角形の関係から、Ioだけを測定しても「IorとIocのどちらが大きいのか?」はわかりません。だからこそ、Iorだけを分離して測定する技術が必要になるのです。

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漏れ電流の抵抗分Iorと静電容量分Iocの図。Io=√(Ior²+Ioc²)で、危険なのは絶縁劣化によるIor
漏れ電流の抵抗分Iorと静電容量分Ioc

漏れ電流の経路による分類|どこを通って漏れるのか?

漏れ電流は「成分」だけでなく、「どこを通って漏れるか」でも分類されます。製品安全規格(IEC規格)では、以下の3つに大別されています。

経路による3つの分類

種類 流れる経路 イメージ リスク
①接地漏れ電流 電源部 → 絶縁体 → 保護接地線(アース線) → 大地 「正規の排水路」に水が漏れる アースが正常なら人体には影響なし
②接触電流
(タッチカレント)
電源部 → 絶縁体 → 機器の外装(筐体)→ 人体 → 大地 水漏れが外壁を伝って通行人にかかる 感電の直接原因!
③患者漏れ電流 装着部 → 患者の体 → 大地 医療機器が体に触れた状態での漏れ 心臓に直結する場合は微量でも致命的

接地漏れ電流と接触電流の違いを「家」で理解する

もう少しわかりやすく、「家」に例えてみましょう。

接地漏れ電流

家の水道管から水漏れが発生 → しかし、排水溝(=アース線)にちゃんと流れている → 住人は濡れない = 安全

アース(接地)が正常に機能している限り、人体への感電リスクは低い

接触電流(タッチカレント)

家の水道管から水漏れが発生 → 排水溝がない(アースが断線)→ 水が壁を伝って住人にかかる = 感電!

人が機器の外装に触れたときに、体を通って大地に流れる電流。これが感電事故。

アース(保護接地)が最後の砦
この図からわかるように、アース線が正常に機能していれば、漏れ電流は大地に逃げるため人体に流れません。しかし、アース線が断線したり、接触不良を起こしたりすると、漏れ電流は「人体」を通るルートに切り替わります。これが感電事故のメカニズムです。
漏れ電流を通り道で分けた図。アース線を通る接地漏れ電流、筐体から人の体を通る接触電流、医療機器の装着部から患者を通る患者漏れ電流
電気製品の漏れ電流:接地漏れ電流・接触電流・患者漏れ電流

漏れ電流の許容値と法的基準|なぜ「1mA以下」なのか?

電気設備の技術基準の解釈 第14条

漏れ電流の許容値は、経済産業省の「電気設備の技術基準の解釈」第14条(低圧電路の絶縁性能)に書かれています。省令(電気設備に関する技術基準を定める省令)第58条が決める絶縁抵抗の値を、測定が難しいときに漏えい電流で確かめる方法です。

基準(電技解釈 第14条の要旨)
使用電圧が低圧の電路で、絶縁抵抗測定が困難な場合 → 漏えい電流は1mA以下に保つこと
※ 低圧 = 交流600V以下、直流750V以下

なぜ「1mA」なのか?その根拠を追う

1mAという数字はどこから来ているのでしょうか?実は、これは絶縁抵抗の最低基準値(0.1MΩ)と対応しています。

単相100Vの電路で、最低限必要な絶縁抵抗は0.1MΩです。この条件で漏れ電流を計算すると…

計算してみよう

使用電圧 V = 100V

絶縁抵抗 R = 0.1MΩ = 100,000Ω

漏れ電流 I = V / R = 100 / 100,000 = 0.001A = 1mA

つまり、「絶縁抵抗が最低基準の0.1MΩのとき、流れる漏れ電流が1mA」という関係なのです。このように1mAは、省令第58条の絶縁抵抗の基準(対地電圧150V以下の電路で0.1MΩ)とつり合う値です。

注意|電気製品そのものの上限は別に決まっている

1mAは、建物の電路(配線)の絶縁性能の基準です。電気製品そのものから人に流れうる漏れ電流(接触電流)の上限は、電気用品の技術基準やIEC 62368-1などの製品規格で、機器の種類ごとに決まっています。製品の設計では、その規格の値で確かめます。

漏れ電流が増大するとどうなる?

漏れ電流が許容値を超えると、以下のような深刻なリスクが発生します。

リスク メカニズム 人体への電流と影響
感電 漏れ電流が人体を通って大地に流れる 1mA:ピリッとする / 10mA:筋肉硬直 / 数十mA:心室細動など命に関わる危険(資料で幅がある)
火災 漏れ電流が集中する箇所でジュール熱が発生 発熱→絶縁体が炭化→さらに漏れ電流が増大→発火(トラッキング現象)
機器の誤動作 漏れ電流がノイズとなって制御信号を乱す インバータ機器の誤トリップ、センサの誤検知
電力の無駄遣い 漏れ電流分のエネルギーが無駄に消費される 大規模施設では電気代の増加につながる
漏電遮断器(ELB)の動作値
一般家庭の漏電遮断器は、定格感度電流30mA(0.1秒以内に切る高速形)のものが多く使われます。人体に流れる電流と時間による影響の研究(IEC 60479 など)をもとに、命に関わる前に切れるよう選ばれた値です。つまり、漏電遮断器は「最後の命綱」であり、そもそも漏れ電流を1mA以下に保つことが大前提です。
100Vを絶縁抵抗0.1MΩで割ると1mAになることと、電気設備の技術基準の解釈第14条の漏えい電流1mA以下の決まり、1mA・15mA・30mAの目安
漏えい電流1mAの意味と決めている条文
おすすめの道具

運用段階の対策にある定期的な絶縁抵抗測定には、絶縁抵抗計(メガー)を使います。日置電機(HIOKI)のデジタル絶縁抵抗計 IR4052-50です。DC50V〜1000Vの5つの定格測定電圧で測れるJIS認証品で、合否をすぐ示すコンパレータ機能と、200mAの導通チェック機能を備えています。

漏電を検知して回路を切る漏電遮断器と、過電流で切る配線用遮断器の違いは次の記事で。

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漏れ電流を防ぐには?|設計段階と運用段階の対策

漏れ電流のメカニズムがわかったところで、「じゃあどうすれば防げるの?」という実務的な対策を見ていきましょう。

設計段階の対策(設計者向け)

対策1

絶縁距離(沿面距離・空間距離)の確保
パターン間、端子間の距離を規格に基づいて十分に確保します。距離が短いほど、湿気や汚損による表面リーク電流が発生しやすくなります。

対策2

絶縁方式の選定(基礎絶縁・強化絶縁)
1次側と2次側の間に適切な絶縁バリアを設けます。人が触れる可能性がある部分には強化絶縁または二重絶縁を使用します。

対策3

Yコンデンサ(安全コンデンサ)の選定
EMCフィルタに使用するYコンデンサの容量が大きすぎると、対地への漏れ電流(Ioc)が増大します。安全規格で許容される漏れ電流値を考慮して容量を選定します。

対策4

基板のスリット加工・コンフォーマルコーティング
1次側-2次側間にスリット(溝)を入れて沿面距離を稼いだり、基板表面にコンフォーマルコーティング(防湿コーティング)を施して汚損による漏れを防ぎます。

対策5

保護接地(アース)の確実な接続
クラスⅠ機器では、漏れ電流を安全に大地に逃がすための保護接地が必須です。接地抵抗が高いと保護機能が失われます。

運用段階の対策(保守・点検者向け)

対策1

定期的な絶縁抵抗測定
メガー(絶縁抵抗計)を使って定期的に絶縁抵抗を測定します。基準値を下回る前に対処することで、漏電事故を未然に防げます。

対策2

Ior方式クランプメータでの漏れ電流測定
活線状態(電源ON)で漏れ電流を測定する場合は、IorとIocを分離できるIor方式のクランプメータが有効です。「本当に危険な漏れ」だけを検出できます。

対策3

清掃・環境管理
分電盤や配電盤内のホコリ、油分、結露を定期的に除去します。特に梅雨時期や夏場は結露が発生しやすく、漏れ電流が増大するリスクがあります。

対策4

劣化した機器・配線の交換
絶縁抵抗が基準値以下に低下した機器や配線は速やかに交換します。「まだ使えるから」と放置すると、感電や火災の原因になります。

まとめ:設計と運用の両輪で守る
漏れ電流の対策は「設計段階で発生源を減らす」「運用段階で監視・検出する」の両輪で行います。どちらか一方だけでは不十分です。

クランプメーターで漏れ電流を測る手順

電源を入れたまま漏れ電流を測るときは、漏れ電流用のクランプメーター(リーククランプ)を使います。ふつうの電流用より小さいmAの電流まで測れるものです。

STEP 1

測る回路の電線を全部まとめて挟みます。単相2線式なら2本、単相3線式なら中性線を含めた3本、三相3線式なら3本です。行きと帰りの電流が打ち消し合い、差の分=漏れ電流(Io)だけが表示されます。

STEP 2

または、機器や分電盤の接地線(アース線)を1本だけ挟みます。大地へ流れている漏れ電流を測れます。

STEP 3

値が大きいときは、分岐回路ごとに測って場所を絞り、電源を切ってから絶縁抵抗計(メガー)で絶縁抵抗を測ります。

測り方わかること向いている場面
Io方式(ふつうのリーククランプ)漏れ電流の合計(Ior+Iocの合成)まず大きさを知る
Ior方式電圧の位相を基準に、抵抗分 Ior を取り出すインバータなどで Ioc が大きい回路
Igr方式接地線に低い周波数の信号を重ねて、抵抗分を見る受変電設備の常時の絶縁監視

方式の名前と細かな原理はメーカーで違うことがあります。測定器の取扱説明書で確かめてください。

漏れ電流の対策を設計段階と運用段階で分けた図。沿面距離・二重絶縁・Yコンデンサ・アースと、絶縁抵抗計・クランプメーター・清掃・ケーブル交換
漏れ電流の対策:設計段階と運用段階
この記事の理解を深める本と道具
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まとめ|漏れ電流の全体像を一枚の表で整理

この記事で学んだ漏れ電流の知識を、最後に一枚の表に整理しましょう。

分類軸 種類 原因 危険度
成分別 Ior(抵抗分) 絶縁劣化・損傷 (感電・火災)
Ioc(静電容量分) 対地静電容量・高周波 (主に誤動作)
経路別 接地漏れ電流 アース線経由で大地へ 低(アース正常なら安全)
接触電流 人体経由で大地へ 高(感電!)
患者漏れ電流 患者の体経由で大地へ 極高(心臓に影響)
原因別 絶縁劣化 熱・湿気・紫外線・機械的損傷
構造的静電容量 ケーブル長・高周波機器
外部環境 湿気・ホコリ・結露・塩害
この記事の最重要ポイント
① 漏れ電流は「絶縁が壊れたから漏れる」だけではない。絶縁が正常でも構造的に漏れる成分(Ioc)がある。
② 本当に危険なのはIor(抵抗分漏れ電流)。感電と火災に直結する。
③ 許容値は1mA以下(電気設備技術基準)。これは絶縁抵抗0.1MΩに相当する。
④ 対策は「設計で防ぐ」+「運用で監視する」の両輪。

漏れ電流は目に見えませんが、電気設計・電気保安の世界では常に意識すべき「見えない敵」です。この記事がその理解の助けになれば幸いです。

次に読むべき記事

この記事の内容がわかったら、絶縁と安全設計の次のテーマに進みましょう。続けて読むと、現場でそのまま使える知識になります。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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