現場の品質管理

PPAPとは?生産部品承認の18項目と提出レベル|チェックリスト付き

PPAPとは何かを表すアイキャッチ。部品メーカーが書類と部品を自動車メーカーに出し、承認をもらう

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • PPAPとは何かを知らないまま「書類を一式そろえて」と言われ、18項目のどこから手をつければいいかわからない
  • 「レベル3で提出」と言われたが、何を出せばいいのかわからない
  • 新製品のときだけでなく、設計変更のときも必要なのか知りたい
この記事でわかること
  • PPAPとは何か、APQPやIATF16949との関係
  • 18の要素を4つのまとまりで整理した一覧
  • 5つの提出レベルと、提出が必要になるとき
  • Ppk・ゲージR&Rなどの合格基準と、PSWの書き方
  • チェックできる18項目のチェックリスト
結論|まず30秒でわかる答え

PPAPとは(Production Part Approval Process:生産部品承認プロセス)、自動車部品のサプライヤーが量産を始める前に、「図面どおりの部品を、安定した工程で作り続けられる」ことの証拠をそろえて顧客に提出し、承認を得る手続きです。米国の自動車業界団体AIAGがマニュアルを定めていて、提出物は図面・FMEA・コントロールプラン・測定システム解析・工程能力の調査など18の要素からなり、表紙にあたる部品提出保証書(PSW)に責任者が署名します。

メールの「PPAP」とは別のものです。メールでパスワード付きのZIPファイルを送り、パスワードを別のメールで送る方法も「PPAP」と呼ばれますが、この記事で説明するのは自動車部品の品質の手続きです。

PPAPとは何かを表すアイキャッチ。部品メーカーが書類と部品を自動車メーカーに出し、承認をもらう
部品メーカーが書類と部品を出して承認をもらうPPAP

PPAPとは?「量産の搭乗ゲート」でイメージする

PPAPは、量産という飛行機に乗る前の「搭乗ゲート」です。品質の証拠という荷物を一式チェックしてもらい、合格して初めて量産に進めます。

正式名称Production Part Approval Process(生産部品承認プロセス)
定めた団体AIAG(米国の自動車産業の業界団体)。マニュアルは第4版(2006年)
だれが・だれに部品のサプライヤーが、顧客(自動車メーカーや1次サプライヤー)に
位置づけIATF16949で使う5つのコアツール(APQP・FMEA・MSA・SPC・PPAP)の1つ

コアツールの関係は、APQP(製品品質先行計画)が開発全体の計画で、PPAPはその終わりの「量産してよいか」の確認にあたります。FMEAでリスクを洗い出し、MSAで測定器を確かめ、SPCで工程のばらつきを見た結果を、PPAPで一式まとめて提出するイメージです。

PPAPの流れ

STEP 1

量産と同じ設備・条件で量産試作を行い、18要素の書類をそろえる。

STEP 2

指定された提出レベルに合わせて、PSW・サンプル・書類を顧客に出す。

STEP 3

顧客が審査し、「承認」「暫定承認」「却下」のどれかを判定する。

STEP 4

承認されたら量産出荷を始める。暫定承認なら、期限内に指摘を直して出し直す。

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PPAPの流れの図。18要素の書類をそろえ、PSWとサンプルを提出し、顧客が審査して承認されたら量産を始める
PPAPの流れ:18要素をそろえ、PSWとサンプルを提出

PPAPの18要素を4つのまとまりで整理する

18の要素は、「何を作るか(設計)」「どう作るか(工程)」「ちゃんと作れたか(結果)」「現物と宣言(サンプルと承認)」の4つに分けると覚えやすくなります。

まとまりNo.要素何を用意する?
設計1設計記録最新版の図面・仕様書。特殊特性の記号も含める
2承認済みの設計変更文書図面にまだ反映されていない変更の承認記録
3顧客の技術承認顧客の技術部門が求める場合の承認記録
4設計FMEA設計に責任を持つ場合の、故障のリスク分析
工程5工程フロー図受け入れから出荷までの全工程の流れ
6工程FMEA工程ごとに起こりうる不良のリスク分析
7コントロールプラン何を・どの方法で・どの頻度で管理するか
8測定システム解析(MSA)ゲージR&Rなど、測定器のばらつきの評価
結果9寸法測定結果図面の全寸法を測った結果(番号をふった図面と対応)
10材料・性能試験結果材料の分析、強度・耐久などの試験結果
11初期工程調査特殊特性の工程能力(Ppk)と管理図
12認定試験所の文書試験した試験所の能力の証明(外部ならISO/IEC 17025など)
13外観承認報告書(AAR)色・つやなど外観が大事な部品の承認
サンプルと承認14量産サンプル量産と同じ条件で作った部品
15マスターサンプル承認された基準品。サプライヤーが保管する
16検査補助具部品専用の検査治具・ゲージとその校正記録
17顧客固有の要求事項顧客が独自に求めるもの(材料データの登録など)
18部品提出保証書(PSW)全体の表紙。責任者が適合を宣言して署名する
POINT|審査でまず見られる3点セット

工程フロー図・工程FMEA・コントロールプランは、工程の番号と名前がそろっていて、FMEAで見つけたリスクの対策がコントロールプランに入っていることが求められます。この3つの食い違いは、審査で真っ先に指摘されます。

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PPAPの18要素を4つに整理した図。設計は1〜4、工程は5〜8、結果は9〜13、サンプルと承認は14〜18
PPAPの18要素は設計・工程・結果・承認の4つに分ける

5つの提出レベル|指定がなければレベル3

提出レベルは、顧客に「実際に出すもの」の範囲を決めるもので、顧客が指定します。指定がなければレベル3です。

レベル顧客に出すものよく使われる場面
1PSWだけ(外観が大事な部品はAARも)リスクの低い部品・材料
2PSW+サンプル+一部のデータ小さな変更など
3(標準)PSW+サンプル+すべてのデータ新しい部品の量産前など
4PSW+顧客が決めたもの顧客が提出物をしぼるとき
5PSW+サンプル+すべてのデータを、サプライヤーの工場で確認重要な部品で、顧客が現地を見るとき
注意|「出さない」は「作らない」ではない

レベル1や2でも、18要素の記録は社内でそろえておく必要があります。出すかどうかが変わるだけで、求められたらすぐ出せる状態にしておきます。記録は、その部品が使われている期間に1年を足した期間、保管します。

PPAPの5つの提出レベルの図。レベル1はPSWだけ、レベル2はサンプルと一部のデータ、レベル3はすべてのデータで標準、レベル4は顧客が決めたもの、レベル5は工場で確認
PPAPの提出レベル1〜5:標準はレベル3

PPAPの提出が必要になるとき

PPAPは新しい部品の量産前だけでなく、設計・材料・工程・場所・仕入先が変わったときにも必要です。

きっかけ具体的な例
新しい部品新しい部品番号の量産を始める
前回の提出の不備を直した却下・暫定承認のあとの出し直し
設計の変更図面・仕様・材料の変更
型・設備の移管、交換、追加金型の更新、型の追加、設備の入れ替え
工程の変更加工方法や工程の順番を変える
生産場所の変更・追加工場の移転、別のラインや工場での生産
仕入先・材料の調達先の変更購入部品や材料の仕入先を変える
長い休止のあとの再開量産用の型・設備を12か月以上使っていなかった

変更が小さく見えても、提出が要るかどうかは顧客の要求事項で決まります。迷ったら変更の前に顧客の品質担当者に相談します。社内の変更の管理は、4M変更(人・機械・材料・方法)の仕組みで回します。

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PPAPの提出が必要になるときの図。新しい部品、設計の変更、型や設備の変更、生産場所の変更、仕入先の変更、12か月以上の休止のあと
PPAPの提出が必要になる6つの場面

数字で決まる合格基準|Ppk・ゲージR&R・個数

PPAPの中で数字の基準があるのは、初期工程調査(Ppk)と測定システム解析(ゲージR&R)です。顧客が別の基準を決めている場合は、そちらに従います。

項目基準(AIAGのマニュアル)
初期工程調査の指数(Ppk)1.67を超える:合格/1.33以上1.67以下:顧客と相談/1.33未満:不合格(対策が必要)
初期工程調査のデータ数25組(サブグループ)以上、合計100個以上
量産試作の個数量産と同じ条件で1〜8時間、連続300個以上が基本
ゲージR&R(%GRR)10%未満:合格/10〜30%:用途などで条件付き/30%超:不合格
記録の保管期間その部品が使われている期間+1年

初期工程調査でCpkではなくPpkを使うのは、量産の立ち上がりでは工程がまだ安定しきっていないことがあり、短期のばらつき(Cpk)ではなく全体のばらつき(Ppk)で見るためです。

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PPAPの合格基準の図。初期工程調査のPpkは1.67を超えれば合格、1.33〜1.67は顧客と相談、1.33未満は不合格。ゲージR&Rは10%未満で合格、10〜30%は条件付き、30%超は不合格
PPAPの合格基準:Ppk1.67超、ゲージR&R10%未満

PSW(部品提出保証書)の書き方

PSWは、どの提出レベルでも必ず出す、PPAP全体の表紙兼宣言書です。

欄書くことと注意点
部品名・部品番号顧客の図面とまったく同じに書く
図面の改訂番号と日付最新版か確かめる。古い版で出すと却下の原因になる
提出の理由新しい部品・設計変更・工程変更など、あてはまるものを選ぶ
提出レベル顧客が指定したレベル
提出の結果寸法・材料・外観・統計データがすべて要求を満たしたか
宣言と署名量産と同じ工程で作ったサンプルで、要求をすべて満たすと責任者が宣言し署名する
顧客の判定欄顧客が記入する。サプライヤーは空けておく
注意|中身を確かめずに署名しない

PSWの署名は、会社として「要求をすべて満たしている」と約束するものです。基準を満たしていない項目があるなら、満たしたと書かずに、顧客に知らせて扱いを相談します。

PSWの図。PSWはPPAPの表紙で、部品番号と図面の版、提出の理由とレベルを書き、責任者が中身を確かめて署名する
PSWはPPAPの表紙で、責任者が署名する

PPAPの18項目チェックリスト(レベル3向け)

終わった項目、または顧客と合意して「該当なし」にした項目にチェックを入れると、進み具合が出ます。チェックは画面の中だけで、どこにも送信されません(ページを閉じると消えます)。

0 / 18 項目

実務では、この表をExcelに写して「担当」「期限」「完了日」「該当なしの理由」の列を足し、案件ごとの進み具合の管理に使うと便利です。

PPAPでよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
PPAPは新製品のときだけ設計・工程・場所・仕入先の変更や、長い休止のあとも必要
レベル1なら書類は作らなくてよい出さないだけで、18要素の記録は社内でそろえておく
試作ラインのサンプルで出す量産と同じ設備・型・人・条件で作ったサンプルで出す
初期工程調査はCpk 1.33でよいマニュアルの基準はPpkで1.67を超えること。1.33〜1.67は顧客と相談
FMEAとコントロールプランを別々に作る工程フロー図・FMEA・コントロールプランは番号と中身をそろえる
PPAPのよくある間違いの図。新製品だけでなく変更のときも必要、レベル1でも記録は社内にそろえる、量産と同じ条件で作る、初期工程調査はPpkで1.67超
PPAPで起きやすい4つの間違い

よくある質問

Q. PPAPとは簡単にいうと?

A. 自動車部品を量産する前に、品質の証拠をそろえて顧客に出し、「量産してよい」と承認をもらう手続きです。

Q. PPAPとAPQPの違いは?

A. APQPは開発から量産までの品質の計画全体で、PPAPはその終わりに行う「量産してよいか」の承認の手続きです。

Q. 18項目すべてが必要ですか?

A. あてはまらない項目は、顧客と合意したうえで「該当なし」にできます。たとえば設計責任がなければ設計FMEAは不要です。

Q. 暫定承認とは?

A. 期限や数量を限って出荷を認める判定です。期限内に指摘を直して出し直し、正式な承認をもらう必要があります。

Q. 初期工程調査のサンプル数は?

A. マニュアルでは25組以上・合計100個以上が目安です。量産試作は連続300個以上が基本で、顧客の指定が優先です。

Q. メールのPPAPとは関係ありますか?

A. 関係ありません。メールのPPAPはパスワード付きZIPを送る方法の通称で、品質のPPAPとは別のものです。

まとめ
  • PPAPは、量産の前に品質の証拠を出して顧客の承認を得る「搭乗ゲート」
  • 18要素は「設計・工程・結果・サンプルと承認」の4つで整理する
  • 提出レベルは1〜5。指定がなければレベル3
  • 変更や長い休止のあとにも提出が必要
  • 初期工程調査はPpkが1.67を超えれば合格。ゲージR&Rは10%未満が目安
  • PSWは全体の表紙で、責任者が中身を確かめて署名する
PPAPのまとめの図。量産前の承認、18要素は4つで整理、標準はレベル3、変更のときも提出
PPAPの要点:標準はレベル3、変更のときも提出
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

PPAPの提出書類はFMEAやコントロールプラン、MSAの結果とつながっているので、コアツールをまとめて学びたいときに向いています。IATF 16949のコアツール(APQP・コントロールプラン・PPAP・FMEA・SPC・MSA)を、図解で解説した本です。第4版は、APQP参照マニュアル第3版とコントロールプラン参照マニュアル第1版に対応しています(日科技連出版社、岩波好夫 著)。

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電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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