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- 制御角αが90°のとき、出力電圧は0?それとも半分?
- (1+cosα)とcosα、どちらの式を使えばいいかわからない
- 還流ダイオードや転流の意味があいまい
- サイリスタで位相制御する仕組み
- 負荷の種類で変わる出力電圧の式
- 還流ダイオード・転流・逆変換
- 回路とαを選ぶだけの計算ツール
サイリスタ整流回路は、ゲート信号を送るタイミング(制御角α)を遅らせて、直流の出力電圧を調整する回路です。αを大きくするほど出力電圧は下がります。単相全波の場合、抵抗負荷では Vd=0.9V×(1+cosα)÷2、電流が途切れない誘導性負荷では Vd=0.9V×cosα で、負荷の種類で式が変わるのがいちばんの注意点です。

位相制御とは?ゲートを送るタイミングで電圧を変える
サイリスタは、順方向の電圧がかかっているときにゲート信号を受けると、オンになります。一度オンになると、電流が0になるまでオンのままです。ダイオードは電圧がかかればすぐオンになるので、出力電圧は変えられません。サイリスタはオンにする時刻を遅らせることで、交流のうち使う部分を減らし、平均の出力電圧を下げられます。
| ダイオード整流 | サイリスタ整流 | |
|---|---|---|
| オンになる時刻 | 順方向の電圧がかかった瞬間 | ゲート信号を受けた瞬間 |
| 出力電圧 | 決まった値 | αで連続して変えられる |
| 使われる場所 | 電源回路 | 直流電動機の速度制御・電気炉・直流送電 |
制御角α(点弧角)は、ダイオードならオンになっていた時刻(自然点弧点)から、ゲート信号を送るまでの遅れの角度です。α=0°ならダイオード整流と同じで、αを大きくするほど出力電圧は下がります。
サイリスタの次に使われる素子IGBT

出力電圧の式は「負荷の種類」で変わる
同じ回路・同じαでも、負荷が抵抗かコイルかで出力電圧はちがいます。電源電圧が負になったとき、抵抗負荷では電流が0になってサイリスタはオフします。コイルの大きい誘導性負荷では、コイルが電流を流しつづけるので、サイリスタはオンのままで、出力に負の電圧も出てきます。
| 負荷 | 電源電圧が負になると | 単相全波の式 |
|---|---|---|
| 抵抗負荷(還流ダイオードありも同じ) | 電流が0になりオフ。出力は0V | Vd=0.9V×(1+cosα)÷2 |
| 誘導性負荷(電流が途切れない) | オンのまま。負の電圧も出る | Vd=0.9V×cosα |
| α | 抵抗負荷 | 誘導性負荷 |
|---|---|---|
| 0° | 0.9V(最大) | 0.9V(最大) |
| 60° | 0.675V(最大の75%) | 0.45V(50%) |
| 90° | 0.45V(50%) | 0 |
| 120° | 0.225V | −0.45V(逆変換) |
「α=90°で出力0」「α>90°で負になる(逆変換)」は、誘導性負荷の話です。問題文の「抵抗負荷」「インダクタンスが十分大きい」などの言葉で、どちらの式を使うか決めます。

単相・三相の出力電圧の式一覧
| 回路 | α=0°の値 | 誘導性負荷(電流連続) | 抵抗負荷 |
|---|---|---|---|
| 単相半波 | 0.45V | ― | 0.45V×(1+cosα)÷2 |
| 単相全波 | 0.9V | 0.9V×cosα | 0.9V×(1+cosα)÷2 |
| 三相半波(E:相電圧) | 1.17E | 1.17E×cosα | α≦30°:1.17E×cosα α>30°:0.675E×(1+cos(α+30°)) |
| 三相全波(V:線間電圧) | 1.35V | 1.35V×cosα | α≦60°:1.35V×cosα α>60°:1.35V×(1+cos(α+60°)) |
三相では、α=0°の基準(自然点弧点)が相電圧のゼロではなく、相どうしが入れかわる点(30°の位置)にあるので、式が cosα の形になります。抵抗負荷でも、αが小さいあいだは電流が途切れないので誘導性負荷と同じ式で、αが大きくなって電流が途切れると、(1+cos)の形に変わります。
例題で計算する
例題①:単相全波・V=100V・α=60°
| 負荷 | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 抵抗負荷 | 0.9×100×(1+0.5)÷2 | 67.5V |
| 誘導性負荷 | 0.9×100×0.5 | 45V |
例題②:三相全波・線間電圧200V
| α | 計算 | 答え |
|---|---|---|
| 30°(どちらの負荷も) | 1.35×200×cos30° | 約234V |
| 90°(誘導性負荷) | 1.35×200×cos90° | 0V |
| 90°(抵抗負荷) | 1.35×200×(1+cos150°) | 約36V |

還流ダイオードと転流
還流ダイオード:出力電圧が負にならないようにする
誘導性負荷の両端に、逆向きにダイオードをつなぎます(還流ダイオード)。電源電圧が負になると、負荷の電流はサイリスタではなく還流ダイオードを通って流れつづけ、サイリスタはオフします。
| 還流ダイオードなし(誘導性負荷) | 還流ダイオードあり | |
|---|---|---|
| 出力電圧の負の部分 | 出る | 出ない(0Vになる) |
| 平均出力電圧 | 0.9V×cosα | 0.9V×(1+cosα)÷2(抵抗負荷と同じ) |
| 逆変換(α>90°で電力を電源に戻す) | できる | できない |
転流:電流が次の素子に乗りかえること
| 方式 | 転流のさせ方 | 例 |
|---|---|---|
| 他励式(自然転流・電源転流) | 交流電源の電圧の向きが変わることを利用して、次の素子に電流を移す | サイリスタ整流回路 |
| 自励式(強制転流) | 自分で電流を切れる素子(IGBTなど)や転流回路で、電流を止めて移す | 電圧形インバータ |
実際には電源側のインダクタンスのため、転流は一瞬では終わらず、2つの素子が同時にオンになる期間(重なり角u)ができます。重なり角があると、出力電圧はその分だけ少し下がります。

位相制御の出力電圧の計算ツール
回路・負荷・電圧・制御角αを選んでください。三相全波は線間電圧、三相半波は相電圧を入れます。
入力すると、その場で計算し直します。入力した数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。重なり角とサイリスタの電圧降下は考えていません。
位相制御のよくある間違い
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| (1+cosα)の式で α=90°なら0V | 抵抗負荷なら最大の半分。0Vになるのは誘導性負荷(cosα) |
| どんな負荷でも α>90°で逆変換できる | 逆変換は、電流が途切れない誘導性負荷で、還流ダイオードがないときだけ |
| 自然転流は自励式 | 交流電源で転流するのが他励式(自然転流)。自励式は強制転流 |
| 三相半波も線間電圧で 1.17V | 三相半波は相電圧E、三相全波は線間電圧Vを使う |
| αを大きくすると出力電圧が上がる | αは遅れの角度。大きいほど出力電圧は下がる |

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よくある質問
- 位相制御=ゲートのタイミングαで出力電圧を変える
- αが大きいほど出力電圧は下がる
- 抵抗負荷は(1+cosα)÷2、誘導性負荷はcosα
- 逆変換は誘導性負荷・還流ダイオードなしでα>90°
- 他励式=自然転流、自励式=強制転流

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制御角αは、交流の波の「位相」で測った角度です。位相と位相差の考え方は次の記事で確かめられます。
メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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