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技能試験の問題用紙に載っているのは、器具と器具を1本の線で結んだ図だけ。ところが机の上で作る作品では、ケーブルの中に白と黒の電線が並び、どれとどれをつなぐかを自分で決めなければいけません。
その「どれとどれをつなぐか」を、作る前に紙の上で決める図が複線図です。複線図の書き方さえ身につければ、どの候補問題でも同じ手順で線の行き先が決まります。この記事では、電気技術者試験センターが公表している色の決まりとリングスリーブの表を使い、複線図の書き方を動く図で1本ずつ描いて見せます。

複線図とは:単線図を、本物の電線の本数で描き直した図
複線図とは、1本の線で器具どうしの関係だけを描いた単線図を、実際の電線の本数・色・つなぐ点まで描き直した図です。技能試験では、作り始める前に複線図を描いておくと、つなぎまちがい(誤接続)を防げます。
電車の路線図にたとえます。路線図は駅と駅を1本の線で結ぶだけですが、実際の線路は上りと下りの2本が並んでいます。単線図が路線図、複線図が線路を2本ずつ描いた図、という関係です。
| 単線図 | 複線図 | |
|---|---|---|
| 線の本数 | 器具と器具の間を1本で描く | 実際の電線の本数(2本・3本)で描く |
| 色 | 描かない | 白・黒など、電線の色を描く |
| つなぐ点 | 描かない | どこでつなぐかを点で描く |
| どこにあるか | 技能試験の問題用紙 | 自分で描く(下書き用紙など) |
複線図は、提出する作品ではありません。自分のための設計図です。技能試験は作品の欠陥の有無で合否が決まり、試験センターが公表する欠陥の判断基準には「誤接続、誤結線のもの」が入っています。複線図は、この欠陥を作る前に防ぐための道具。

描く前に覚える約束3つ:白・黒・スイッチの位置
複線図を描く前に覚える約束は3つです。白い電線は接地側(電源から器具へ直接)、黒い電線は非接地側(電源からスイッチとコンセントへ)、スイッチは黒い線の側に入れる。この3つで、線の行き先がほぼ決まります。
| 約束 | 中身 | なぜ |
|---|---|---|
| 白は接地側 | 電源の白は、ランプの受金ねじ部・コンセントの W 側へ直接つなぐ | 地面とほぼ同じ電位の側。触れやすい部分をこちらにつなぐ |
| 黒は非接地側 | 電源の黒は、スイッチとコンセントへつなぐ | 100V の電圧がかかっている側 |
| スイッチは黒に入れる | スイッチは、黒い線とランプの間に入れる | 切ったとき、ランプに100V が来ないようにする |
色の決まりは、技能試験の問題ごとに「施工条件」として書かれる。電気技術者試験センター「技能試験の概要と注意すべきポイント」の施工条件の例から。
「接地側」は、地面(アース)とほぼ同じ電位の側のこと。たとえるなら、川の水面と同じ高さの岸です。そこに立っても水は流れてきません。「非接地側」は、地面との間に100V の差がある側。水面より高い所にある水槽のようなもので、触れると電気が体を通って地面へ流れようとします。
受金ねじ部は、ランプレセプタクル(電球をねじ込む受け口)の、ねじの形をした金属の部分です。電球を回して入れるとき、指が近づくのはこの部分。だから地面と同じ電位の白をつなぎます。
コンセントの長い穴(W 側)が白につながる理由。ホットとコールドの違い

複線図の書き方:5つの手順
複線図は、①器具を並べる ②白を描く ③黒を描く ④スイッチからランプへ戻る線を描く ⑤つなぐ点と刻印を書く、の順で描きます。白・黒・戻る線と、種類ごとに1回ずつ全部を描き切るのがこつです。
この5つの手順は、試験センターが決めた書き方ではありません。公表されている色の決まりから、線の種類(白 → 黒 → 戻る線)で区切り、前に並べる手順と仕上げの手順を足してまとめた案です。種類ごとに1回で描き切ると、描き忘れた線に気づきやすいと考えました。
動く図の最後の状態を数えると、白が3本、黒が3本、戻る線が1本。つなぐ点は3つです。白と黒は、電源・器具2つの3方向へ分かれるので、つなぐ点に3本ずつ集まります。

描いた複線図から、ケーブルの本数を数える
複線図を描いたら、ジョイントボックスから各器具までの区間ごとに、通る電線の本数を数えます。2本ならケーブルは2心(VVF1.6-2C)、3本なら3心(VVF1.6-3C)。例題はどの区間も2本でした。
| 区間 | 通る電線 | 本数 | 使うケーブル |
|---|---|---|---|
| 電源 → ジョイントボックス | 白・黒 | 2本 | 2心 |
| ジョイントボックス → スイッチ | 黒・戻る線 | 2本 | 2心 |
| ジョイントボックス → ランプ | 白・戻る線 | 2本 | 2心 |
| ジョイントボックス → コンセント | 白・黒 | 2本 | 2心 |
「2心」は、1本のケーブルの中に電線が2本入っているという意味です。きしめんのように平たい灰色のケーブル(VVF)の中に、白と黒の電線が並んでいます。スイッチが2つになったり、確認用のランプ(パイロットランプ)が付いたりすると、3本通る区間が出てきます。その区間で使うのは3心のケーブル。
VVF ケーブルの構造と、CV・VCT との違い

つなぐ点とリングスリーブの刻印:本数と太さで決まる
ジョイントボックスの中で電線どうしをつなぐリングスリーブは、つなぐ電線の太さと本数で、大きさ(小・中・大)と刻印(○・小・中・大)が決まります。1.6mm を2本なら刻印は○、1.6mm を3〜4本なら小です。
リングスリーブは、電線の束にかぶせて工具で押しつぶし、電線どうしを固定する小さな金属の筒です。髪を束ねるヘアゴムにたとえると、束ねる量が多いほど大きなゴムが要るのと同じで、電線が多い・太いほど大きなスリーブを使います。
| つなぐ電線 | スリーブの大きさ | 刻印 |
|---|---|---|
| 1.6mm を2本 | 小 | ○ |
| 1.6mm を3〜4本 | 小 | 小 |
| 2.0mm を2本 | 小 | 小 |
| 2.0mm 1本と1.6mm 1〜2本 | 小 | 小 |
| 1.6mm を5〜6本 | 中 | 中 |
電気技術者試験センター「技能試験の概要と注意すべきポイント」の「リングスリーブ(E 形)と電線の組合せ(JIS C 2806 準拠)」から抜き出した。
例題では、白のつなぐ点に1.6mm が3本(電源・ランプ・コンセント)、黒のつなぐ点にも3本(電源・スイッチ・コンセント)集まるので、どちらも刻印は「小」。戻る線のつなぐ点は2本(スイッチ側とランプ側)なので「○」です。

複線図でよくある間違い4つ
複線図でよく起きる間違いは、スイッチに白をつなぐ、ランプの受金ねじ部に黒をつなぐ、点のない交差をつながりと読む、つなぐ点の本数を数えずに刻印を決める、の4つです。どれも作品の欠陥につながります。
| 間違い | どうなるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| スイッチに白をつなぐ | 切ってもランプに100V が来る(色の誤り) | 白はスイッチへ行かない、と手順②で決める |
| 受金ねじ部に黒をつなぐ | 電球の金具が100V になる(極性の誤り) | 白はランプの受金ねじ部へ、を先に描く |
| 点のない交差をつながりと読む | つなぐ相手をまちがえる(誤接続) | つなぐ所には必ず点を打つ |
| 本数を数えずに刻印を決める | スリーブの大きさ・刻印の誤り | 点ごとに本数を書き込む(手順⑤) |
上の2つは、欠陥の判断基準の「電線の色別、配線器具の極性が施工条件に相違したもの」に当たり、3つ目は「誤接続、誤結線のもの」に当たります。複線図を描いたら、白がスイッチに行っていないか、受金ねじ部と W 側が白か、の2点を最後に指でなぞって確かめると防げます。

候補問題13問で、複線図を練習する順番
技能試験は、事前に公表される13問の候補問題から1問が出ます。令和8年度の分は、上期の技能試験の半年ほど前に公表されました。まず全13問の複線図を紙の上で描けるようにしてから、材料を使った練習に進むと、つなぎまちがいの練習を後回しにせずに済みます。
| 順 | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 1 | この記事の例題(スイッチ1つ・ランプ1つ・コンセント1つ)を、見ずに描く | 白 → 黒 → 戻る線の順を体に入れる |
| 2 | スイッチが2つ(イ・ロ)ある候補問題を描く | 戻る線を相手の記号で合わせる |
| 3 | 3路スイッチ・パイロットランプ・200V がある候補問題を描く | 3本通る区間と、赤い線が出てくる問題に慣れる |
| 4 | 13問すべてを、時間を計って描く | 本番の40分のうち、描く時間を見積もる |
この順番は、候補問題13問の配線図を読んで、器具の種類が少ないものから多いものへ並べた案です。筆者は技能試験を受けていないので、本番の40分のうち複線図に何分かけるか、の目安は書けません。3路スイッチやパイロットランプは、この連載の後の回で、動く図を使って1つずつ取り上げます。

