機械科目の解説

ステッピングモーターとは?ステップ角と回転速度の計算、PM形・VR形・HB形の違い

ステッピングモーターを表すアイキャッチ。パルスの列がモータに入り、軸が目盛り1つ分ずつ回る

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

ステッピングモーター(ステッピングモータ、パルスモータ)は、パルスを1つ送るごとにステップ角だけ回るモータで、回転速度はパルスの周波数に比例します。計算はステップ角・パルス数・回転速度の節、PM形・VR形・HB形の違いは3つの形の節へ。

結論|まず30秒でわかる答え

ステッピングモーター(ステッピングモータ、パルスモータ)は、駆動回路にパルスを1つ送るごとに、決まった角度(ステップ角)だけ回るモータです。回転角はパルスの数に比例し、回転速度はパルスの周波数に比例します。そのため、回転角のセンサがなくても位置を決められます。回転子の構造で永久磁石形(PM形)・可変リラクタンス形(VR形)・ハイブリッド形(HB形)に分かれ、永久磁石をもつ形は、電気を流していなくても位置を保つ力があります。

ステッピングモーターを表すアイキャッチ。パルスの列がモータに入り、軸が目盛り1つ分ずつ回る

ステッピングモーターとは?パルスで「カチッ、カチッ」と回るモータ

普通のモータは、電気を流すと連続してなめらかに回ります。ステッピングモーターは違います。固定子の巻線に流す電流を、パルス(短い電気の合図)に合わせて順番に切り替えると、回転子がそのたびに一定の角度ずつ引き寄せられ、階段(ステップ)のように回ります。

たとえると

時計の秒針と同じです。1秒ごとの合図で、秒針は6°ずつ「カチッ」と進みます。合図を60回送れば1周、合図を止めれば秒針も止まります。ステッピングモーターは、この「合図の数だけ進む」動きを電気でつくっています。

項目ステッピングモーター普通のモータ(誘導電動機など)
回り方パルスごとに決まった角度ずつ電気を流すと連続して回る
位置の決め方パルスの数を数えるだけでよいセンサで回転角を測って制御する
止めるときパルスを止めれば止まるブレーキや制御が要る
苦手なこと大きな負荷や急な加速で、パルスに追いつけなくなる(脱調)-
POINT

つまり、ステッピングモーターは「送ったパルスの数=回った角度」になるので、プリンタやスキャナ、検査装置や製造装置など、決まった位置まで正確に動かしたい機械に使われます。

ステッピングモーターのしくみの図。時計の秒針は1秒ごとに6°進む。パルスの数で回転角が、パルスの周波数で回転速度が決まる

ステップ角・パルス数・回転速度の計算

ステッピングモーターの計算は、次の3つの式だけです。

求めるもの式
回転角[°]ステップ角×パルス数
1回転のステップ数360°÷ステップ角
回転速度[min⁻¹]ステップ角×パルスの周波数[pulse/s]×60÷360

例題:ステップ角1.8°のモータ

STEP 1

1回転のステップ数:360÷1.8=200ステップ

STEP 2

2,000パルス送ったときの回転角:1.8×2,000=3,600°=10回転

STEP 3

1秒に1,000パルス(1,000pulse/s)送ったとき:1秒に 1.8×1,000=1,800°=5回転。1分では5×60=300min⁻¹

覚え方

「数は角度、速さは速度」。パルスの数で回転角が決まり、パルスの速さ(周波数)で回転速度が決まります。

注意|ここで間違えやすい

パルスの「幅」(1つのパルスが続く時間)は、回転角にも回転速度にも直接は関係しません。平成30年度・令和7年度下期の問7では、空欄の選択肢に「周波数」と並んで「幅」が入っています。

ステッピングモーターの計算の図。ステップ角1.8°なら1回転200ステップ、2,000パルスで3,600°=10回転、1,000pulse/sで300min⁻¹

PM形・VR形・HB形の違い

ステッピングモーターは、回転子(回る部分)の構造で3つに分かれます。試験では「電気を流していないときに位置を保つかどうか」がよく問われます。

形回転子のつくり無通電で位置を保つ力特徴
永久磁石形(PM形)永久磁石。N極とS極が交互に並ぶある磁石があるぶんトルクが出やすい
可変リラクタンス形(VR形)歯車の形をした軟らかい鉄(軟磁性体)ない巻線の磁力で歯が引き寄せられて回る。もっとも古くからある形
ハイブリッド形(HB形)円筒形の永久磁石の両端を、歯車の形の鉄心ではさむあるPM形より細かいステップと大きなトルク
たとえると

VR形は、磁石に鉄くぎが吸い寄せられるのと同じで、電気(磁力)を切ると引き寄せる力もなくなります。PM形とHB形は回転子そのものが磁石なので、電気を切っても固定子の鉄と引き合い、少しの力では回りません。

ステップ角は形と構造で決まり、よく使われる例として1.8°(1回転200ステップ)や0.72°(1回転500ステップ)があります。具体的な値はメーカーの仕様で確かめてください。

ステッピングモーターの3つの形の図。永久磁石形は無通電でも位置を保つ、可変リラクタンス形は歯車形の鉄の回転子で無通電では保たない、ハイブリッド形は円筒形の磁石を歯車形の鉄心ではさみ無通電でも位置を保つ

脱調とは?ステッピングモーターの弱点

ステッピングモーターは、始動のトルクが大きく、ふつうは入力パルスと同期して始動できます。ただし、負荷が大きすぎたり、パルスの周波数を急に上げたりすると、回転子がパルスについていけなくなり、ステップを飛ばしたり止まったりします。これを脱調といいます。

脱調すると、「送ったパルスの数=回った角度」がくずれ、センサを使っていない装置では位置がずれたことに気づけません。そのため、実際の装置では、余裕のあるトルクのモータを選び、パルスの周波数を少しずつ上げ下げして加速・減速します。

ステッピングモーターブラシレスDCモータなど(センサで位置を測る)
位置の決め方パルスの数(オープンループ)センサの信号で確かめながら(フィードバック)
得意なことセンサなしで、安く手軽に位置決め速く回す、負荷が変わっても位置を保つ
注意すること脱調すると位置がずれるセンサと制御が必要
直流機の構造と原理|電機子・界磁・整流子の役割を完全図解
あわせて読みたい
直流機の構造と原理|電機子・界磁・整流子の役割を完全図解

整流子とブラシを、位置センサとインバータに置き換えたBLDCモータ

脱調の図。ふつうはパルスに同期して回るが、負荷が大きすぎたりパルスの周波数を急に上げたりすると回転子がついていけず脱調する

電験三種の過去問で確かめる

ステッピングモーターは、機械の「四機総合」「電動機応用」の範囲で、空欄穴埋めと正誤の問題が出ています。計算問題はなく、しくみと3つの形を押さえれば答えられます。

年度・問題形式ポイント
平成30年度 問7・令和7年度下期 問7(再出題)空欄穴埋めパルス数に比例する回転角度、パルスの周波数に比例する回転速度、1パルスの角度はステップ角、永久磁石形は無通電でも位置を保持する力
令和4年度上期 問6誤りを選ぶ誤りは「可変リラクタンス形は無通電でも回転子位置を保持する」。VR形は永久磁石がないので保持しない
注意|ここで間違えやすい

空欄の選択肢には「回転速度」と「回転角度」、「周波数」と「幅」、「ステップ角」と「移動角」、「保持する力」と「追従する力」が対で並びます。どちらも、それらしく見える語です。「数は角度、速さは速度」と、PM形の「保持」を覚えておきましょう。

自動制御とは?フィードバック・フィードフォワード・シーケンス制御の違いを図解
あわせて読みたい
自動制御とは?フィードバック・フィードフォワード・シーケンス制御の違いを図解

フィードバック制御とシーケンス制御など、制御のしかたの違いを整理できます

ステッピングモーターの計算ツール

ステップ角とパルス数、パルスの周波数を入れると、回転角・回転数・回転速度を求めます。

入れた数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。

脱調しない理想の動きとして計算しています。実際に回せる速度とトルクは、メーカーの回転速度-トルク特性で確かめてください。

ステッピングモーターでよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
回転速度はパルスの数で決まる回転角がパルスの数で、回転速度はパルスの周波数で決まる
回転速度はパルスの幅に比例するパルスの幅ではなく、周波数(1秒あたりのパルスの数)に比例する
どの形も無通電で位置を保つ保つのは永久磁石をもつPM形とHB形。VR形は保たない
位置センサがないと位置決めできないパルスの数で角度が決まるので、センサなしで位置決めできる(オープンループ)
脱調しても位置はずれない脱調するとステップを飛ばすので、パルスの数と実際の角度がずれる
ステッピングモーターのよくある間違いの図。回転速度はパルスの数ではなく周波数で決まり、パルスの幅は関係しない。VR形は無通電で位置を保たない。脱調すると位置がずれる

よくある質問

Q. ステッピングモーターとは何ですか?

A. パルスを1つ送るごとに決まった角度だけ回るモータです。回転角はパルス数、回転速度はパルスの周波数に比例します。

Q. ステップ角とは何ですか?

A. 1パルスあたりに回る角度です。たとえばステップ角1.8°なら、200パルスで1回転します。

Q. ステッピングモーターの回転速度の求め方は?

A. ステップ角×パルスの周波数で1秒あたりの回転角を出し、60を掛けて360で割るとmin⁻¹になります。

Q. 脱調とは何ですか?

A. 負荷が大きすぎたり急に加速したりして、回転子が入力パルスについていけず、ステップを飛ばしたり止まったりすることです。

Q. 電気を流していなくても位置を保つのはどの形?

A. 永久磁石をもつ永久磁石形(PM形)とハイブリッド形(HB形)です。可変リラクタンス形(VR形)は保ちません。

この記事の要点
  • ステッピングモーターは、パルス1つごとにステップ角だけ回る
  • 回転角はパルスの数、回転速度はパルスの周波数に比例
  • 回転速度[min⁻¹]=ステップ角×周波数×60÷360
  • 無通電で位置を保つのはPM形・HB形、VR形は保たない
  • 大きな負荷や急な加速で脱調すると、位置がずれる
ステッピングモーターのまとめの図。パルス1つでステップ角だけ回る、回転角はパルス数で回転速度は周波数で決まる、PM形とHB形は無通電で位置を保つ、過大な負荷で脱調する
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

「ステッピングモーター」を試験の得点につなげるなら、機械科目の教科書で前後の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「機械」の教科書と問題集です。フルカラーの教科書に重要な過去問が付いています。

おすすめの本

電験三種の試験でどう問われるかは、過去問で確かめるのがいちばんの近道です。電験三種の過去10年分の試験問題をまとめた過去問題集です(2026年度版)。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
4機の比較表|直流機・誘導機・同期機・変圧器の構造と特性を一目で整理
違いがわかる
4機の比較表|直流機・誘導機・同期機・変圧器の構造と特性を一目で整理

直流機・誘導機・同期機・変圧器の違いを1枚の表で比べられます

違いを確かめる →
半導体素子の比較表|ダイオード・サイリスタ・GTO・BJT・MOSFET・IGBTの違い
違いがわかる
半導体素子の比較表|ダイオード・サイリスタ・GTO・BJT・MOSFET・IGBTの違い

ダイオード・サイリスタ・MOSFET・IGBTの違いを比べられます

違いを確かめる →
直流と交流の違いとは?なぜ家のコンセントは交流なのか
違いがわかる
直流と交流の違いとは?なぜ家のコンセントは交流なのか

直流と交流の違いと、家のコンセントが交流の理由がわかります

違いを確かめる →
RL回路とRC回路の違いを完全比較|「コイルは電流維持、コンデンサは電圧維持」で全て解決
違いがわかる
RL回路とRC回路の違いを完全比較|「コイルは電流維持、コンデンサは電圧維持」で全て解決

RL回路とRC回路の違いを、電流と電圧の保ち方で比べられます

違いを確かめる →
計算力アップ・資格対策

-機械科目の解説
-,