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- 校正とは何か、調整や点検と何が違うのか、はっきり説明できない
- 客先監査で「トレーサビリティは?」「校正周期の根拠は?」と聞かれて答えに詰まった
- 校正証明書が届いても、どこを見ればいいのかわからない
- 校正の意味と、調整・点検との違い
- トレーサビリティとJCSSのしくみ
- 校正周期の決め方と、校正証明書の見方
- 客先監査で聞かれる質問と答え方
校正とは、測定器が示す値と、より正確な標準器が示す値を比べて、どれだけずれているか(補正値)を確かめて記録する作業です。ずれを直す「調整」とは別の作業で、校正だけでは測定器の表示は変わりません。標準器をさらに上位の標準へとたどり、国家標準までつながっていることを「トレーサビリティ」といい、日本ではJCSSの校正証明書がその証拠になります。
※この記事は、測定器(計測器)の校正(キャリブレーション)について説明しています。文章の誤字を直す「校正」とは別の意味です。

校正とは?標準と比べて「ずれ」を確かめて記録すること
校正は、測定器のずれを「確かめて記録する」作業で、直す作業ではありません。JIS Z 8103では、校正を次のように定めています。
言いかえると、「手元の測定器が、もっと正確な基準(標準器)と比べて、どれだけずれているかをはっきりさせること」です。結果は、校正証明書(校正成績書)に、測った点ごとのずれ(補正値)とその確からしさ(不確かさ)として書かれます。
家の時計を、時報に合わせて確かめる場面です。時報と比べて「3秒進んでいる」とわかるのが校正、針を回して3秒戻すのが調整です。時報が正しいのは、さらに上の、国が管理する時刻の基準につながっているからです。このつながりがトレーサビリティです。
| 用語 | 何をするか | 結果 |
|---|---|---|
| 校正 | 標準器と比べて、ずれを確かめて記録する | 校正証明書(補正値・不確かさ)。表示は変わらない |
| 調整 | ずれが小さくなるように、測定器の中の設定を直す | 表示が変わる。調整のあとはもう一度校正する |
| 点検(日常点検) | 使う前に、決まった基準(チェック用の電圧源やゲージなど)で大きな異常がないか見る | 使ってよいかの判断。トレーサビリティの証明にはならない |
| 修理 | 壊れた部品を直す・取り替える | 動くようになる。修理のあとはもう一度校正する |
「校正に出したから、今はぴったり正しい」は誤りです。調整まで頼んでいなければ、測定器の表示は校正前と同じです。校正証明書の補正値を見て、ずれが許容範囲に入っているか、補正して使うかを判断します。

なぜ校正が必要なのか|測定器は少しずつずれるから
校正が必要なのは、測定器は使わなくても少しずつずれ、そのずれは外から見えないからです。そして品質保証では、「正しく測った」ことを記録で示す必要があります。
- 年月によるずれ:中の基準になる部品(基準電圧の回路や水晶など)の性質が、時間とともに少しずつ変わる。
- 使い方と環境によるずれ:落とした、入れてはいけない大きさの電圧を入れた、暑い・湿った場所に置いた、などで少しずつ狂う。見た目では気づけない。
- 証拠が求められる:ISO 9001やIATF 16949では、製品の合否に使う測定器を、決まった間隔で校正し、国家標準などにつながることを示すよう求めている。
もし校正していない測定器で「合格」と判定して出荷し、あとで測定器がずれていたとわかれば、その測定器で測ったすべての製品が本当に合格だったのか、さかのぼって調べ直すことになります。校正は、この「さかのぼり」の手間とリスクを防ぐための仕組みです。
測定の誤差には種類がある。系統誤差と偶然誤差の違い

校正の流れと、補正値の使い方|テスターの例
校正では、正しい値がわかっている標準を測定器で測り、表示との差を補正値として記録します。電圧を測るテスター(デジタルマルチメータ)の例で見てみます。
標準器(電圧の標準)から、正しい値がわかっている10.000Vを出す。
校正するテスターで測ると、表示は10.003V。
補正値 = 標準の値 − 表示 = 10.000 − 10.003 = −0.003V。表示に−0.003Vを足すと正しい値になる。
測定器の許容差(たとえば±0.010V)と比べる。−0.003Vなら範囲内なので、そのまま使ってよいと判断できる。
実際の校正では、測る範囲(レンジ)ごとに、いくつかの点でこの比較を行います。校正証明書には、点ごとの補正値と、その値がどのくらい確かかを表す「不確かさ」が書かれます。補正値の正負の向きは、証明書の定義(「標準−表示」か「表示−標準」か)を必ず確かめてください。
補正値と誤差率、どう読む?100%正確な測定がない理由

トレーサビリティとは?国家標準までつながる校正のリレー
トレーサビリティとは、手元の測定器の校正が、切れ目のない比較のつながりで国家標準や国際標準までたどれることです。「校正した」だけでは足りず、「その標準器は何で校正したのか」を上へたどれる必要があります。
| 段 | 例 |
|---|---|
| 国際標準 | SI単位(国際単位系)。各国の標準を国際比較で確かめ合う |
| 国家標準 | 日本では産業技術総合研究所(産総研・NMIJ)などが持つ標準 |
| JCSS登録事業者 | 国家標準につながった標準器で、依頼された測定器を校正する校正会社・メーカーの校正部門 |
| 社内の標準器 | 外部で校正した、社内でいちばん正確な測定器 |
| 現場の測定器 | テスター・オシロスコープ・ノギスなど、毎日使う測定器 |
このつながりは、どこか1段でも校正の記録がない測定器をはさむと切れてしまいます。たとえば、社内の標準器の校正証明書が期限切れなら、その標準器で校正した現場の測定器すべてのトレーサビリティが説明できなくなります。上の段の測定器ほど、厳しく管理します。
つまり、トレーサビリティは「校正のリレー」です。リレーのバトン(校正証明書)が途中で落ちていないことを、記録で示せることが大事です。

JCSSとは?日本の校正事業者の登録制度
JCSSは、計量法にもとづく校正事業者の登録制度で、JCSSの校正証明書はトレーサビリティの公的な証拠になります。製品評価技術基盤機構(NITE)の認定センター(IAJapan)が運営しています。
- 登録された事業者は、校正の能力についての国際規格 ISO/IEC 17025 に合っていることを審査で確かめられている。
- JCSSのマークが入った校正証明書には、国家標準につながっていることと、不確かさが書かれる。
- IAJapanは国際的な認定機関の相互承認(ILAC・APACのMRA)に参加しているので、海外の取引でも認められやすい。
一方、メーカーが自社で発行する校正証明書(メーカー校正)もあります。費用や納期の面で使いやすいですが、トレーサビリティの説明は証明書の中身(使った標準器と、その校正の記録)で個別に確かめる必要があります。客先がJCSSを指定している場合は、JCSSの校正を選びます。

校正周期の決め方と、校正証明書の見方
校正周期は法律で一律に決まっているわけではなく、会社が根拠をもって決め、その根拠を記録しておきます。メーカーが推奨する周期(1年としていることが多い)を出発点に、次の点で調整します。
| 見る点 | 考え方 |
|---|---|
| メーカーの推奨 | 仕様書の確度(精度の保証)が何年について保証されているかを見る |
| これまでの校正結果 | 毎回の補正値の変化が小さく安定していれば延ばす、許容差に近づいていれば縮める |
| 使う頻度と環境 | 毎日持ち運ぶもの、暑い・ほこりの多い場所で使うものは短めにする |
| 測る対象の重要さ | 出荷の合否や客先へ出すデータに使うものは短めにする |
| 客先や規格の要求 | 客先の指定があれば、それに従う |
校正証明書で確かめる項目
- 校正した事業者の名前と、登録・認定の番号
- 測定器の型式と製造番号(手元の測定器と一致するか)
- 校正した日(次の期限の起点)と、そのときの温度・湿度
- 使った標準器と、そのトレーサビリティ
- 校正した点ごとの値・補正値と、不確かさ
- 合否の判定(判定を頼んだ場合)
証明書の製造番号が手元の測定器と違う、不確かさが書かれていない、期限が切れた証明書のまま使っている、の3つはよく指摘されます。証明書を受け取ったら、その場で照合しておきましょう。

社内校正と、校正ラベル・管理台帳
すべてを外部に出さず、外部で校正した社内の標準器を使って現場の測定器を校正する「社内校正」も、条件をそろえれば認められます。費用と、測定器が使えない期間を減らせます。
| 社内校正の条件 | 内容 |
|---|---|
| 上位の標準器 | 外部(JCSSなど)で校正され、期限内であること |
| 精度の差 | 標準器が、校正する測定器より十分に正確であること(目安は4倍以上) |
| 手順書と記録 | 誰がやっても同じ結果になる手順と、温度・湿度などの記録 |
| 人の力量 | 校正する人が教育を受け、その記録があること |
精度の差は、TUR(Test Uncertainty Ratio)という比で確かめます。たとえば、校正するテスターの許容差が±0.1%、標準器の不確かさが±0.025%なら、TUR = 0.1 ÷ 0.025 = 4 で、目安の4:1を満たします。
どの測定器がいつまで使えるかは、測定器に貼る校正ラベル(管理番号・校正日・次の期限)と、管理台帳(型式・製造番号・置き場所・校正の履歴・証明書番号)で、だれでもすぐにわかるようにします。期限が切れた測定器は、使えないことがはっきりわかるように分けて置きます。
校正の次は「測定の仕組み全体」の評価。ゲージR&Rの手順

客先監査で聞かれる5つの質問と答え方
監査では、記録を見せながら、具体的な番号や日付で答えられることが大切です。よく聞かれる質問と、用意しておく記録をまとめました。
| 聞かれること | 答え方と、見せる記録 |
|---|---|
| この測定器の校正の履歴は? | 管理台帳と校正証明書を見せ、管理番号・前回の校正日・次の期限・証明書番号を答える |
| トレーサビリティはどこまでたどれる? | 「JCSS登録事業者の校正を通じて、国家標準につながっています」と答え、証明書の該当箇所を見せる |
| 校正周期の根拠は? | メーカーの推奨と、これまでの校正結果の変化から決めたことを、根拠を書いた文書で示す |
| 期限切れや、ずれが大きい測定器が見つかったら? | すぐに使用を止め、その測定器で測ったデータをさかのぼって確かめる手順を見せる |
| 社内校正の力量はどう保証している? | 手順書・校正する人の教育記録・標準器の証明書・TURの確認記録をセットで見せる |

よくある質問
- 校正は、標準器と比べてずれ(補正値)を確かめて記録すること。直す「調整」とは別
- 測定器は少しずつずれ、見た目ではわからないので、決まった間隔で校正する
- トレーサビリティは、国家標準までつながる校正のリレー。1段でも記録が切れるとつながらない
- JCSSの校正証明書は、トレーサビリティの公的な証拠になる
- 校正周期は会社が根拠をもって決め、監査では記録を見せて具体的に答える

回路・熱・測定の設計経験は、メーカーをはじめ多くの企業で求められています。今の職場で経験を積むのも、より広く経験を活かせる職場を探すのも、ひとつの道です。エンジニア向けの転職支援サービスでは、経験を棚卸ししながら求人を探せます。
現場で校正の対象になる身近な測定器の代表が、テスターやノギスです。ミツトヨのデジタルノギス(ABSデジマチックキャリパ)CD-15AXです。測定範囲は0〜150mm、最小表示量は0.01mmで、電源を入れるたびのゼロ合わせが要りません。
回路の電圧や導通を自分の手で確かめるなら、手元にテスターが1台あると便利です。三和電気計器のデジタルマルチメータ(テスター)CD772です。電圧や抵抗などを測れます。
「校正」を、工場の設備保全や生産技術の仕事で使う知識につなげたい人に向いています。設備保全や生産技術で働く電気エンジニアが、1年目に押さえたい基本をカラーの図解でまとめた本です(技術評論社)。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
校正のしくみがわかったら、次は測定器そのものの使い分けと、正しく測るための原則へ。校正した測定器を、正しい使い方で活かせるようになります。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。