熱設計

熱抵抗の単位「℃/W」の意味|1W発熱すると何℃上がるか完全図解

😣 こんな経験はありませんか?
  • 「Rth = 5 ℃/W」と書かれていても、それが熱いのか冷たいのかピンとこない
  • ヒートシンクのカタログに「熱抵抗1.5 ℃/W」と書かれていても良し悪しがわからない
  • 単位の「℃/W」の意味を聞かれて、答えに詰まったことがある
  • そもそも「割り算の単位」が直感で理解できない
✅ この記事でわかること
  • 「℃/W」という単位の正しい読み方と意味
  • 具体的な数値で「熱い熱抵抗」と「冷たい熱抵抗」の感覚をつかむ
  • ヒートシンクのカタログを見て「これは冷えそうか」を判断できるようになる

前回の記事で、熱抵抗が「電気のオームの法則とまったく同じ」だと解説しました。式は理解できても、実際に「Rth = 5 ℃/W」と書かれた数値を見て「で、それって熱いの?冷たいの?」と感覚がつかめない方は多いはずです。

この記事では、熱抵抗の単位「℃/W」を具体的な数値と日常的な感覚に結びつけて解説します。読み終わる頃には、データシートやカタログの熱抵抗を見ただけで「これは冷えそう」「これは厳しいな」と即判断できるようになります。

「℃/W」の正しい読み方|単位を分解して理解する

「℃/W」という単位は、声に出して読むと「ど、わっと」または「セルシウス度パーワット」です。でも読み方を覚えるより大事なのは、意味の理解です。

単位の意味を一行で言うと

🔑 これだけ覚えればOK

「1W流すと、何℃の温度差が生まれるか」

つまり「℃/W」は、1Wあたりの温度上昇を表しているのです。

「割り算の単位」が直感で理解できない人へ

「割り算の単位」を直感で理解するには、身近な単位を思い出すのがおすすめです。

単位 読み方 意味
km/h 時速 1時間あたり何km進むか
円/個 単価 1個あたり何円か
L/100km 燃費 100kmあたり何リットル消費するか
℃/W 熱抵抗 1Wあたり何℃温度が上がるか
💡 ポイント
「km/h」が車の速さを表すように、「℃/W」は熱の流れにくさを表しています。数字が大きいほど熱が流れにくい=1W流しただけでドカンと温度が上がる、という意味です。

具体例で感覚をつかむ|「Rth = 5 ℃/W」とはどういう状態か

ここからは具体的な数値で感覚をつかんでいきましょう。熱抵抗の数値ごとに、どれくらい温度が上がるかを見ていきます。

発熱量1Wでの温度上昇

🌿

Rth = 1 ℃/W

1W流して1℃上昇

非常に良い

大型ヒートシンクや銅板の塊レベル

🟡

Rth = 5 ℃/W

1W流して5℃上昇

普通レベル

中型ヒートシンク(強制空冷)の代表値

🟠

Rth = 20 ℃/W

1W流して20℃上昇

厳しい

小型ヒートシンク(自然対流)の代表値

🔴

Rth = 60 ℃/W

1W流して60℃上昇

危険水準

ヒートシンクなしのMOSFET単体

発熱量を変えるとどうなる?

熱抵抗が同じでも、発熱量が増えれば温度上昇は比例して増えます。「Rth = 5 ℃/W」のヒートシンクで、発熱量を変えてみましょう。

発熱量 P 温度上昇 ΔT 外気40℃のとき
1 W 5 ℃ 45℃ ✅余裕
5 W 25 ℃ 65℃ ✅余裕
10 W 50 ℃ 90℃ ⚠️注意
20 W 100 ℃ 140℃ ❌危険
🔧 現場の声
「同じヒートシンクで発熱量だけ2倍になったら、温度上昇も2倍」──これは熱設計の鉄則です。回路設計者から「この素子に変更したい、発熱が1.5倍になるけど」と言われたら、即座に温度上昇も1.5倍になると判断できる感覚を持ってください。

身近な物の「℃/W」を比較してみる

熱抵抗の数値感覚をさらに固めるため、身近な部品やシステムの熱抵抗を一覧にしました。

対象物 熱抵抗の目安 特徴
大型液冷ジャケット 0.05〜0.2 ℃/W EV・新幹線・大電力産業機器
大型強制空冷ヒートシンク 0.5〜2 ℃/W サーバー・産業電源
中型ヒートシンク(強制空冷) 2〜10 ℃/W PC・家電のパワー部
小型ヒートシンク(自然対流) 15〜30 ℃/W 小型電源・LED電球
MOSFET(TO-220、ヒートシンクなし) 62 ℃/W 基板実装のみ、放熱頼みなし
表面実装MOSFET(SO-8) 50〜100 ℃/W 放熱は基板の銅箔頼み
パワーモジュール(Rth(j-c)) 0.1〜0.5 ℃/W 大電力IGBT・SiCモジュール

「Rth(j-a)」と「Rth(j-c)」のスケール感

データシートでよく見る2種類の熱抵抗。桁違いの差があるので注意してください。

Rth(j-a):ジャンクション〜外気

代表値:50〜100 ℃/W

  • ヒートシンクなしの状態
  • 1W流すだけで50℃以上上昇
  • そのまま使うと即座に温度オーバー

Rth(j-c):ジャンクション〜ケース

代表値:0.5〜3 ℃/W

  • 素子内部の固定値
  • ヒートシンクで残りを補う前提
  • 実務ではこちらを起点に設計
⚠️ Rth(j-a)を信用しすぎない
「Rth(j-a) = 62 ℃/W」のMOSFETを1W使うだけで、ジャンクションは外気+62℃。外気40℃なら、それだけで102℃です。ヒートシンクをつけることが熱設計の前提と理解してください。

ヒートシンクのカタログを「℃/W」で読み解く

ヒートシンクのカタログには、必ず「熱抵抗」が書かれています。これを読めるようになると、選定が一気に楽になります。

カタログによくある表記の例

例:ヒートシンク型番 ABC-123

サイズ 100 × 80 × 30 mm
熱抵抗(自然対流) 3.5 ℃/W
熱抵抗(風速2m/s) 1.2 ℃/W
材質 アルミ A6063

これを見てわかること

わかること1

自然対流で1W流すと3.5℃上昇。10W流したら35℃上昇する

わかること2

ファンで風速2m/sを当てると1.2℃/Wに激減。同じヒートシンクでも能力が約3倍に

わかること3

10Wの素子なら、自然対流で35℃上昇、強制空冷で12℃上昇──選定の目安が立つ

ヒートシンク選定の早見表

発熱量と許容温度上昇から、必要な熱抵抗を逆算するのが選定の基本です。

📐 必要な熱抵抗の計算式
Rth(必要) = 許容ΔT / P
たとえば「外気40℃で、ジャンクション温度100℃に抑えたい、発熱は10W」なら、
許容ΔT = 100 - 40 = 60℃
Rth(必要) = 60 / 10 = 6 ℃/W以下のヒートシンクが必要

クイズで腹落ちさせる|「℃/W」感覚チェック

ここまでの内容を、クイズ形式で確認してみましょう。電卓なしで「だいたい何℃?」と即答できれば合格です。

Q1:5Wの発熱、Rth = 4 ℃/W、外気30℃

この条件で、ジャンクション温度は何℃?

▼ 答えを見る

ΔT = 5 × 4 = 20℃
Tj = 30 + 20 = 50℃

許容温度125℃に対して大幅な余裕。OK判定。

Q2:20Wの発熱、Rth = 5 ℃/W、外気40℃

この条件で、ジャンクション温度は何℃?許容125℃を超える?

▼ 答えを見る

ΔT = 20 × 5 = 100℃
Tj = 40 + 100 = 140℃

許容オーバー。ヒートシンクをより低熱抵抗のものに変更するか、強制空冷化が必要。

Q3:許容温度上昇60℃、発熱量15W

必要な熱抵抗は何℃/W以下?

▼ 答えを見る

Rth(必要) = 60 / 15 = 4 ℃/W以下

中型〜大型のヒートシンク(強制空冷推奨)が必要レベル。

🔧 現場の声
この3問が即答できれば、設計レビューで困りません。「温度上昇 = 発熱 × 熱抵抗」──この一行を頭に焼き付けてください。電卓1つあれば全ての熱設計の判断ができるようになります。

「℃/W」と「K/W」は同じもの|単位の落とし穴

海外メーカーのデータシートでは、熱抵抗の単位が「K/W」(ケルビン毎ワット)と書かれていることがあります。「℃/W」と違うものに見えますが、実は完全に同じ値です。

なぜ同じなのか?

℃(セルシウス度)とK(ケルビン)は、絶対値の起点が違うだけで、目盛りの間隔は同じです。

温度 ℃表記 K表記
水の凍る温度 0℃ 273.15 K
水の沸騰温度 100℃ 373.15 K
差(温度差) 100℃ 100 K
💡 ポイント
熱抵抗は「温度差」を扱うので、絶対値は関係ありません。「3 ℃/W」も「3 K/W」も同じ意味・同じ値です。海外のデータシートで「K/W」を見ても、そのまま「℃/W」として読めばOKです。

注意:「mΩ」と「mΩ・cm²」のように、単位が違うものもある

熱関連には他にも単位があり、混同するとアウトです。代表例を整理しておきます。

単位 名前 意味
℃/W (K/W) 熱抵抗 部品全体の熱の流れにくさ
W/m·K 熱伝導率 材料そのものの熱の伝わりやすさ
W/m²·K 熱伝達率 表面から流体へ熱が逃げやすさ
℃·cm²/W 熱抵抗(面積依存) TIM・放熱シートの単位
⚠️ TIMの単位は要注意
放熱シートの熱抵抗は「℃·cm²/W」で書かれていることが多いです。これは面積1cm²あたりの値なので、実際の接触面積で割る必要があります。例:「1 ℃·cm²/W」のシートを5cm²で使うなら、実際の熱抵抗は0.2 ℃/Wです。

まとめ|「℃/W」を制する者が熱設計を制す

📌 この記事の要点
  • 「℃/W」の意味 1Wの発熱で何℃の温度差が生まれるかを表す
  • 数値が小さいほど良い 熱が流れやすく、温度上昇が小さい
  • 感覚値の目安 1℃/W=優秀、5℃/W=普通、20℃/W=厳しい、60℃/W=危険
  • 計算は3つの式だけ ΔT = P × Rth、Tj = Ta + ΔT、Rth(必要) = 許容ΔT / P
  • K/Wは℃/Wと同じ値 海外データシートでも安心して読める
  • TIMは面積依存単位に注意 ℃·cm²/Wは実面積で割って使う

熱抵抗の単位「℃/W」が「1Wあたりの温度上昇」だと腹落ちすれば、熱設計のカタログやデータシートを見るのが楽しくなります。「これは冷えそう」「これは厳しい」という直感が育つと、設計レビューで即座に判断できるようになります。

次のステップでは、この熱抵抗の概念を使って「ジャンクション温度」を計算する実務的な手順を深掘りしていきます。

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