基板設計

放熱パッドの設計|QFNやパワーパッケージの実装ガイド

😣 こんな経験はありませんか?
  • QFNパッケージの裏に「Exposed Pad」と書かれているが、どう設計すればいいかわからない
  • 放熱パッドのソルダーペーストを「ベタ塗り」にしたら、X線検査でボイド(気泡)だらけだった
  • 製造から「ボイド率が30%超えてるので作り直し」と言われた
  • データシートの「Recommended Footprint」を見ても、塗布パターンの意図がわからない
✅ この記事でわかること
  • 放熱パッド(Exposed Pad)の役割と設計の原則
  • パターン形状・サーマルビア配置の具体的な決め方
  • ソルダーペーストの分割塗布でボイドを減らす方法
  • ボイド率の業界基準と、製造との合意の取り方

前回の記事で サーマルリリーフとベタ接続の使い分け を扱いました。「パワーICの放熱パッドはベタ接続」というルールを学びましたが、実は 「ベタ接続するだけ」では不十分 なのが放熱パッドの世界です。

QFN・DFN・パワーパッケージの裏にある「Exposed Pad(露出パッド)」は、ICの中で発生した熱を基板に流すための命綱。ここの設計を間違えると、ICが熱保護で停止したり、最悪は焼損します。

この記事では、放熱パッドのパターン設計、ソルダーペーストの塗布パターン、ボイド対策まで、現場で本当に効くノウハウを「たい焼きの型」のたとえで完全図解していきます。

放熱パッド(Exposed Pad)って何?=ICの「お腹」

放熱パッドとは、QFNやDFN、TO-PAKなどのパッケージの裏側に露出した金属面のことです。データシートでは「Exposed Pad」「Thermal Pad」「Die Pad」「Heat Slug」などと呼ばれます。

🔌

通常のピン

役割:電気信号の入出力

例えると:ICの「指」

本数:16〜100本

🔥

放熱パッド

役割:熱を基板に流す

例えると:ICの「お腹」

本数:1個(中央に大きく1枚)

なぜ「お腹」と呼ぶのか?

ICの中ではシリコンチップ(ダイ)が熱を発生します。その熱を逃がす経路は主に2つ。「ピンを伝って外へ」「お腹(=放熱パッド)を伝って下へ」です。

パワーICでは、後者の お腹側からの放熱が圧倒的に効く。なぜならピンは細くて熱抵抗が高いのに対し、放熱パッドはダイのほぼ真下にあり、面積も広いから。
つまり放熱パッドは 「ICの命綱」 なのです。

⚠️ 注意
放熱パッドは「電気的にGND」になっていることが多いですが、必ずしもGNDとは限りません。フローティング(電気的に未接続)や、内部VDDに繋がっている場合もあります。データシートで必ず確認してください。

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パターン設計の基本=「データシート推奨フットプリント」が9割正解

放熱パッドのパターン(フットプリント)は、データシートの「Recommended Footprint」に従うのが鉄則です。メーカーが熱解析済みの設計値だからです。

ただし、データシートの図を見るだけでは「なぜこの形なのか」がわからないと応用が効きません。基本ルールを押さえましょう。

原則1

パッドサイズはICの放熱パッドと同サイズ or 少し大きく
例:QFN5×5mm(放熱パッド3.1×3.1mm)→ 基板側パッドも3.1×3.1mm程度。大きすぎると周辺ピンとブリッジしやすくなる。

原則2

サーマルビアを内側に均等配置
前回記事で解説した通り、φ0.3mm・ピッチ1.0〜1.2mmで碁盤目状に。最低9本(3×3)、パワーICなら25本(5×5)以上。

原則3

サーマルリリーフはOFF(ベタ直結)
放熱パッドはベタGNDに直接接続。リブ越しの接続では放熱性能が大幅に下がる。

原則4

ソルダーマスクは開ける(パッド全体を露出)
放熱パッド全体にはんだが乗るよう、ソルダーマスク(緑のレジスト)はパッド全面を開口する。

🔧 現場の声
データシートと違う設計をすると、客先の品質審査で必ず指摘されます。「メーカー推奨と違う理由を説明してください」と。よほどの理由がない限り、データシートに従いましょう。

ソルダーペーストの塗布=「ベタ塗り」は実は失敗

放熱パッドの設計で最も誤解されているのが、この ソルダーペーストの塗布パターン です。

「広いパッドだから、ペーストもベタっと全面に塗ればいい」――これが 典型的な失敗パターン です。

ベタ塗り(100%)

結果:ボイド大量発生

理由:ガスが逃げ場を失う

ボイド率:30〜50%

分割塗布(50〜70%)

結果:ボイドが減る

理由:ガスが隙間から抜ける

ボイド率:10〜20%

なぜベタ塗りだとボイドができるのか?

ソルダーペースト(はんだクリーム)には、フラックスという成分が含まれています。リフロー炉ではんだが溶ける際、フラックスは 蒸発してガス になります。

広い面積にベタ塗りすると、このガスが 「はんだの真ん中に閉じ込められて」、逃げ場を失います。結果、はんだ層の中にガスの泡=ボイドができてしまうのです。

「たい焼きを焼くとき、生地が厚すぎると中に空気が残る」のと同じ理屈です。

💡 ポイント
ペーストを 分割(市松模様・グリッド・スリット) で塗布すると、隙間からガスが抜けやすくなり、ボイドが激減します。データシートの「Stencil Aperture」がこのパターンです。

推奨される分割塗布パターン3選

業界で標準的に使われる分割塗布パターンは、主に3つです。

パターン1

市松模様(チェッカーボード)
正方形のペースト塗布領域を市松状に配置。塗布率50〜60%。最もポピュラーで、多くのICデータシートで推奨されている。

パターン2

グリッド(碁盤目)
サーマルビアの配置に合わせて、ビアの間にペーストを塗布。塗布率60〜70%。ビア配置と相性が良い。

パターン3

スリット(縞模様)
細い線状にペーストを塗布。塗布率50〜70%。シンプルで製造しやすいが、ガスの抜けは市松よりやや劣る。

塗布パターン 塗布率 ボイド率の目安 推奨度
ベタ塗り 100% 30〜50%
市松模様 50〜60% 10〜20%
グリッド 60〜70% 10〜20%
スリット 50〜70% 15〜25%
⚠️ 注意
塗布パターンは 「メタルマスク(ステンシル)」の開口設計 で決まります。設計者は「どのパターンにするか」を決めて、製造部門にメタルマスクを発注します。CADデータの「ペーストレイヤー」を正しく作る必要があります。

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ボイド率の業界基準=「IPC-7093」を知っておく

「ボイド率10%以下にしろ」と言われても、何を根拠に?と疑問に思いますよね。実はこれ、IPC-7093 という業界規格で決められています。

クラス 用途 ボイド率の目安
Class 1 民生品(おもちゃ・家電) 30%以下
Class 2 産業機器・通信機器 25%以下
Class 3 医療・航空宇宙・車載 20%以下(より厳しい)

車載用であれば Class 3 が標準です。「ボイド率20%以下」を目指して設計・製造することになります。

ボイドが多いとどうなる?

ボイドは「はんだ層の中の空洞」です。空気は熱をほとんど通さないため、ボイドが多いと 熱抵抗が悪化 します。

🔥 熱抵抗が悪化:ICが冷えにくくなる

電気抵抗が増加:大電流で発熱増・電圧降下

💥 機械的強度が低下:振動でクラックが入りやすい

長期信頼性が低下:温度サイクルで疲労破壊が早まる

🔧 現場の声
量産品では X線検査でボイド率を測定 し、規格を超えたら不良として弾きます。設計時にボイドが多くなるパターンにしてしまうと、量産歩留まりが下がる=コストアップに直結します。

サーマルビアとペーストの「相性問題」

放熱パッドの設計でもう一つ重要なのが、サーマルビアとペースト塗布の関係です。前回の記事で「ビア径φ0.3mm」を推奨しましたが、それでもまだ問題が起きるケースがあります。

問題①:ビアの真上にペーストを塗ると吸い込まれる

ビアの真上にペーストを塗ると、リフロー時に 溶けたはんだがビアの中に吸い込まれて、放熱パッドのはんだ量が足りなくなります。

対策は2つ:

ペースト塗布は「ビアを避けて」配置(市松・グリッド設計)

ビアを「埋める(filled via / capped via)」仕様で発注

問題②:ビア埋めvia-in-padの選択

高密度実装が必要なときに使う 「Via-in-Pad(ビアインパッド)」 という手法があります。これは 放熱パッドの中にビアを開けて、その穴を樹脂で埋め、上に銅メッキでフタをする 仕様です。

通常のビア

穴がそのまま開いている

ペーストが吸われる

コスト:◎

Via-in-Pad(埋めビア)

樹脂で埋めて銅メッキフタ

ペーストの吸い込みなし

コスト:高い

Via-in-Pad はコストが上がりますが、「高密度・高放熱・低ボイド」を全部叶えるため、ハイエンドの車載・産業機器では標準仕様になりつつあります。

⚠️ 注意
Via-in-Pad は基板メーカーによって 対応可否や追加コストが大きく異なります。設計初期に必ず基板メーカーに見積もりを取りましょう。コスト感覚なしで指定すると、量産時に痛い思いをします。

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放熱パッド設計の手順=5ステップで完成

ここまでの話を、設計手順としてまとめます。

STEP 1

データシートの「Recommended Footprint」を確認
パッドサイズ、ビア配置、ペースト塗布パターンを確認。

STEP 2

パターン設計(CADで反映)
放熱パッドをベタGND直結、サーマルリリーフOFF、ビアを9〜49本配置。

STEP 3

ペースト塗布パターン設計
市松模様・グリッドで塗布率50〜70%に設定。CADの「ペーストレイヤー」を作成。

STEP 4

ビア仕様の決定
通常ビア or Via-in-Pad(埋めビア)を選択。コストと性能のバランスで判断。

STEP 5

試作後の評価
X線検査でボイド率測定、サーモグラフィでIC温度測定。規格内(IPC-7093)か確認。

迷ったら
「データシート推奨+市松塗布50%+ビア9本以上」

まとめ=放熱パッドはICの「命綱」

今日のまとめです。

✅ 放熱パッドは ICの「お腹」=熱の命綱

✅ パターンは 「データシート推奨」が9割正解

✅ ペーストは 市松模様で50〜70%塗布(ベタ塗りNG)

✅ ボイド率は IPC-7093 Class 2/3で20〜25%以下

✅ 高密度なら Via-in-Pad を検討(コストとのバランス)

放熱パッドの設計は、CADを触る前に データシートを熟読する習慣 が肝心です。「Recommended Footprint」「Stencil Aperture」「Solder Paste Coverage」の3つは必ず確認してください。

そして試作後は、必ず X線検査とサーモグラフィ で実機評価を。机上の設計だけでは絶対に見えない「ボイドの世界」が、X線写真で初めて見えてきます。

次回は、放熱パッドと並んで重要な「ヒートシンクの取り付け設計」について解説していきます。お楽しみに。

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