電力科目の解説

絶縁材料とは?気体・液体・固体の違いとSF6・絶縁油の特徴

絶縁材料とは何か。気体・液体・固体の違いとSF6・絶縁油の特徴

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お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 絶縁材料の種類が多すぎて、SF6・絶縁油・架橋ポリエチレンの特徴が混ざる
  • 電験三種の問14の論説問題で、いつも2択までしか絞れない
  • 「誘電正接が小さいほうがよい」と言われても理由がわからない
この記事でわかること
  • 気体・液体・固体の絶縁材料の特徴と使い道
  • 誘電損の計算と、誘電正接が小さいほどよい理由
  • 過去問で実際に使われたひっかけのパターン

絶縁材料は、電験三種の電力科目で毎回のように出題される「電気材料」の柱のひとつです。名前を覚えるだけでは、言い回しを変えた選択肢に対応できません。この記事では、それぞれの材料が「なぜその性質なのか」までつなげて整理します。

結論|まず30秒でわかる答え

絶縁材料は、電気を通さずに導体どうしや導体と大地を隔てる材料で、気体(空気・SF6ガス)、液体(絶縁油)、固体(磁器・架橋ポリエチレン・エポキシ樹脂など)の3つに分けられます。どれにも、抵抗率と絶縁破壊の強さが大きく、誘電率と誘電正接が小さく、熱や薬品に強いことが求められます。SF6ガスは無色・無臭・無毒で、空気より絶縁と消弧の能力が高い一方、地球温暖化への影響が大きいガスです。

絶縁材料に求められる5つの性質

絶縁材料のよしあしは、5つの性質で決まります。論説問題の選択肢は、ほぼこの5つの「大きい・小さい」を入れ替えてつくられています。

性質望ましい向き理由
抵抗率(電気の通しにくさ)大きい漏れ電流を小さくする
絶縁破壊の強さ大きい薄い絶縁で高い電圧に耐えられる
誘電率小さい静電容量と充電電流を小さくする
誘電正接(tanδ)小さい絶縁材料の中で熱になる損失(誘電損)を小さくする
耐熱性・化学的安定性高い長い年月、劣化しにくい
たとえると

絶縁材料は、水道管の「管の壁」のようなものです。壁にしみ出しがないこと(抵抗率が大きい)、水圧で破れないこと(絶縁破壊に強い)、壁そのものが水を吸って重くならないこと(誘電率・誘電正接が小さい)、何十年も腐らないこと(耐熱・安定)がそろって、よい管になります。

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つまり、「通さない・破れない・ためない・熱くならない・長持ち」の5つです。誘電率と誘電正接だけが「小さいほうがよい」ことを、まず押さえてください。

気体絶縁材料:空気とSF6ガス

気体の絶縁材料は、抵抗率が非常に大きく、誘電率と誘電正接が小さいのが特徴です。一方、同じ厚みなら絶縁破壊の強さは液体や固体より小さいので、圧力を上げて強くして使います。架空送電線のまわりの空気も、立派な絶縁材料です。

SF6ガス(六ふっ化硫黄)の特徴

項目特徴
見た目・におい無色・無臭・無毒
燃えやすさ・安定性不燃性で、化学的に安定
重さ空気より重い(比重は空気の約5倍)
絶縁の強さ同じ圧力の空気の2〜3倍程度。圧力を上げるとさらに強くなる
アークを消す力(消弧能力)空気よりはるかに高い
環境への影響オゾン層への影響はほぼないが、温暖化への影響が非常に大きい
使われる機器ガス遮断器(GCB)、ガス絶縁開閉装置(GIS)、ガス絶縁変圧器

SF6ガスで機器を満たすと、空気で絶縁するより機器どうしの間隔を短くできるので、変電所を小さくできます。都市部の地下変電所などで使われるのはこのためです。

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注意|ここで間違えやすい

SF6ガスの中でも、遮断器を開けばアークは発生します。SF6はアークを「発生させない」のではなく、発生したアークを「すばやく消す」力が強いガスです。また、においはありません。どちらも過去問のひっかけに使われました。

液体絶縁材料:絶縁油は「絶縁」と「冷却」の二刀流

絶縁油は、変圧器やOFケーブル(油で満たした電力ケーブル)に使われる液体の絶縁材料です。絶縁破壊の強さは同じ圧力の空気より高く、さらに機器の中をめぐって熱を運ぶ冷却の役割もはたします。

種類特徴
鉱油(石油から精製した油)古くから一般的に使われてきた。安価
合成油(化学的につくった油)より低損失・高信頼性が求められる機器に使う
たとえると

天ぷら鍋の油が、具材を包みこみつつ熱を伝えるように、変圧器の絶縁油は巻線を包んで電気を絶縁しながら、巻線の熱を外のラジエーターまで運びます。

絶縁油の大敵は水分と酸化

絶縁油に水分が混じったり、空気にふれて酸化したりすると、絶縁破壊の強さが下がり、誘電正接が大きくなります。そのため、変圧器では油が外気にふれにくい構造にし、定期的に油を分析して劣化を確かめます。

POINT

「誘電正接が小さい絶縁油を使うと、油の中の発熱を抑えられる」は、過去問の空欄にそのまま出た文です。なぜ発熱が減るのかは、このあとの誘電損の計算で数字で確かめます。

固体絶縁材料:がいし・ケーブル・モールド変圧器

固体の絶縁材料は、絶縁破壊の強さが大きく、形を保って電線や機器を支えられるのが強みです。ただし、一度絶縁破壊すると元に戻らない(自己回復しない)のが弱みです。

材料使われる場所特徴
磁器・ガラスがいし雨や日光に強く、長持ち。表面の汚れ(塩分)に弱い
架橋ポリエチレンCVケーブルポリエチレンの分子を橋かけして耐熱性を高めた。誘電率・誘電正接が小さい
エポキシ樹脂モールド変圧器・計器用変成器巻線を固めて燃えにくくできる
絶縁紙油入変圧器の巻線・OFケーブル絶縁油をしみこませて使う

ボイドと部分放電:固体がじわじわ壊れるしくみ

STEP 1

固体の中に、製造時や熱・機械的な力で小さなすき間(ボイド)ができます。

STEP 2

ボイドの中の気体は誘電率が小さいので、まわりの固体より強い電界がかかります。

STEP 3

固体は壊れていなくても、ボイドの中の気体だけが絶縁破壊して、小さな放電(部分放電)が起きます。

STEP 4

部分放電がくり返されると、固体が少しずつ傷み、長い時間をかけて全体の絶縁破壊に至ります。

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架橋ポリエチレンを使うCVケーブルなど、地中ケーブルの特徴がわかります

CVケーブルでは、水分が入りこんで木の枝のような劣化(水トリー)が進むことも知られています。つまり固体の絶縁材料は、目に見えない小さな欠陥から、年単位でじわじわ壊れていくのが特徴です。

誘電損を計算する:誘電正接が小さいほどよい理由

絶縁材料に交流の電圧をかけると、わずかな電力が熱に変わります。これが誘電損で、誘電正接(tanδ)に比例します。誘電正接は、絶縁材料がどれだけ「理想のコンデンサ」からずれているかを表す数字です。

公式
誘電損(1相あたり)W = ωCV² tanδ

ωは角周波数(2π×周波数)、Cは静電容量、Vは対地電圧(相電圧)です。

例題:6.6kVケーブル1kmの誘電損

周波数50Hz、線間電圧6,600V、1相あたりの静電容量0.3μF(1km)、誘電正接0.05%(0.0005)とします。

STEP 1

角周波数:ω = 2 × 3.14 × 50 = 約314

STEP 2

対地電圧:6,600 ÷ √3 = 6,600 ÷ 1.732 = 約3,810V。2乗すると 3,810² = 約1,452万

STEP 3

1相あたり:W = 314 × 0.3×10⁻⁶ × 1,452万 × 0.0005 = 約0.68W

STEP 4

3相分:0.68 × 3 = 約2.0W(1kmあたり)

劣化して誘電正接が10倍の0.5%になると、誘電損も10倍の約20Wになります。熱は絶縁材料の中で生まれるので、温度が上がってさらに劣化が進む、という悪循環につながります。

POINT

誘電損は電圧の2乗に比例するので、電圧が高い設備ほど誘電正接の小ささが大切になります。逆に言えば、誘電正接を測ると絶縁の劣化具合がわかるので、ケーブルや変圧器の点検にも使われます。数値はケーブルの種類や太さで異なるので、実際の値はメーカーの資料で確認してください。

耐熱クラス:何℃まで使えるかの目安

絶縁材料は、温度が高いほど早く劣化します。そこで、使い続けられる最高温度によって「耐熱クラス」が決められています(JIS C 4003)。モーターや変圧器の銘板に書かれている「F種」「H種」は、これのことです。

耐熱クラス許容最高温度
Y90℃
A105℃
E120℃
B130℃
F155℃
H180℃
たとえると

食品の「保存温度」の表示に似ています。冷蔵品を常温に置くと早く傷むように、絶縁材料も決められた温度を超えて使うと、寿命が一気に縮みます。

覚え方は、低いほうから「Y・A・E・B・F・H」の順番と、「Aが105℃、Fが155℃、Hが180℃」の3つです。つまり、クラスが上がるほど高温に耐え、機器を小さくできます。

電験三種の過去問で問われているポイント

電験三種の電力科目では、令和3年度から令和7年度下期まで、問14が毎回「電気材料」の問題でした。そのうち絶縁材料は、次の4回出題されています。

年度・問題テーマ誤り・正解のポイント
令和4年度上期 問14SF6ガス(論説)「アーク放電を発生させないので消弧能力に優れる」が誤り。アークは発生するが、消す力が強い
令和4年度下期 問14絶縁油(空欄)誘電正接が「小さい」油で「発熱」を抑える。古くから「鉱油」、低損失・高信頼には「合成油」
令和6年度上期 問14気体・固体の絶縁材料(論説)「気体は抵抗率が低い」が誤り。気体の抵抗率は高く、誘電率が低い
令和7年度上期 問14SF6ガス(論説)「特有の臭いがある」が誤り。SF6は無色・無臭・無毒

ひっかけパターン1:正しい文の一部だけを変える

令和6年度上期は「気体は抵抗率と誘電率が低い」という文で、後半の誘電率は正しく、前半の抵抗率だけが誤りでした。令和7年度上期も「比重が大きく、安定した不燃性で、特有の臭いがある」と、最後の一言だけが誤りです。選択肢は、読点で区切られた部分ごとに正誤を確かめてください。

ひっかけパターン2:理由をすり替える

令和4年度上期の「アーク放電を発生させないため消弧能力に優れる」は、「消弧能力に優れる」という結論は正しいのに、理由がおかしい文でした。「〜ため」「〜ので」がついた選択肢は、理由の部分を疑ってください。

ひっかけパターン3:SF6はくり返し出る

SF6ガスは、4回のうち2回出ました。この記事のSF6の表(無色・無臭・無毒、不燃、空気より重い、絶縁と消弧に優れる、温暖化への影響が大きい)は、すべて言えるようにしておくと確実です。

よくある間違い・つまずきポイント

1. 誘電率・誘電正接も「大きいほどよい」と考える

抵抗率と絶縁破壊の強さは大きいほどよく、誘電率と誘電正接は小さいほどよい、と向きが分かれます。誘電正接が大きいと、誘電損で発熱します。

2. 気体は抵抗率も低いと思いこむ

気体は「絶縁破壊の強さ」が液体・固体より小さいだけで、抵抗率はとても高い材料です。弱いのは強さ、高いのは抵抗率、と分けて覚えます。

3. SF6にはにおいや毒性があると考える

SF6そのものは無色・無臭・無毒です。ただし、アークで分解してできる物質には注意が必要なので、機器の点検では取り扱いの決まりに従います。

4. SF6は環境にやさしいと考える

オゾン層への影響はほぼありませんが、温暖化への影響は非常に大きいガスです。そのため、漏れを防ぎ、回収して再利用することが求められています。

5. 誘電損の計算で線間電圧をそのまま使う

W=ωCV²tanδ のVは、1相あたりの対地電圧(線間電圧÷√3)です。線間電圧を入れると、3倍の値になってしまいます。

よくある質問

Q. 絶縁材料にはどんな種類がありますか?

A. 気体(空気・SF6ガス)、液体(鉱油・合成油などの絶縁油)、固体(磁器・架橋ポリエチレン・エポキシ樹脂・絶縁紙)の3つです。

Q. SF6ガスの特徴は何ですか?

A. 無色・無臭・無毒の不燃性ガスで空気より重く、絶縁と消弧の能力が空気より高い一方、温暖化への影響が大きいガスです。

Q. 絶縁油の誘電正接が小さいほうがよいのはなぜですか?

A. 誘電損は誘電正接に比例するからです。誘電正接が小さいほど、絶縁油の中で熱になる損失が減り、発熱を抑えられます。

Q. 部分放電とは何ですか?

A. 固体の中のすき間(ボイド)の気体だけが絶縁破壊して起きる小さな放電です。くり返すと固体全体の絶縁破壊につながります。

Q. 耐熱クラスF種は何℃までですか?

A. 155℃です。低いほうからY90℃・A105℃・E120℃・B130℃・F155℃・H180℃の順に決められています。

まとめ:絶縁材料は「5つの性質」と「SF6の表」で解ける

この記事の要点
  • 抵抗率・絶縁破壊の強さは大きく、誘電率・誘電正接は小さいほどよい
  • 気体:抵抗率は高いが絶縁破壊の強さは小さい。SF6は無色・無臭・無毒・不燃、絶縁と消弧に優れ、温暖化への影響が大きい
  • 液体:絶縁油は絶縁と冷却を兼ねる。鉱油が一般的、低損失には合成油
  • 固体:がいし・CVケーブル・モールド変圧器。ボイドの部分放電で長期的に劣化
  • 誘電損 W=ωCV²tanδ。誘電正接が10倍なら誘電損も10倍

まずは「5つの性質の向き」と「SF6の表」を、何も見ずに書き出せるか試してみてください。問14の絶縁材料の問題は、この2つでほとんど解けます。

この記事の理解を深める本と道具
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電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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