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絶縁材料は、電験三種の電力科目で毎回のように出題される「電気材料」の柱のひとつです。名前を覚えるだけでは、言い回しを変えた選択肢に対応できません。この記事では、それぞれの材料が「なぜその性質なのか」までつなげて整理します。
絶縁材料に求められる5つの性質
絶縁材料のよしあしは、5つの性質で決まります。論説問題の選択肢は、ほぼこの5つの「大きい・小さい」を入れ替えてつくられています。
| 性質 | 望ましい向き | 理由 |
|---|---|---|
| 抵抗率(電気の通しにくさ) | 大きい | 漏れ電流を小さくする |
| 絶縁破壊の強さ | 大きい | 薄い絶縁で高い電圧に耐えられる |
| 誘電率 | 小さい | 静電容量と充電電流を小さくする |
| 誘電正接(tanδ) | 小さい | 絶縁材料の中で熱になる損失(誘電損)を小さくする |
| 耐熱性・化学的安定性 | 高い | 長い年月、劣化しにくい |
そもそも電気を通す物と通さない物は、何が違うのかがわかります
つまり、「通さない・破れない・ためない・熱くならない・長持ち」の5つです。誘電率と誘電正接だけが「小さいほうがよい」ことを、まず押さえてください。

気体絶縁材料:空気とSF6ガス
気体の絶縁材料は、抵抗率が非常に大きく、誘電率と誘電正接が小さいのが特徴です。一方、同じ厚みなら絶縁破壊の強さは液体や固体より小さいので、圧力を上げて強くして使います。架空送電線のまわりの空気も、立派な絶縁材料です。
SF6ガス(六ふっ化硫黄)の特徴
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 見た目・におい | 無色・無臭・無毒 |
| 燃えやすさ・安定性 | 不燃性で、化学的に安定 |
| 重さ | 空気より重い(比重は空気の約5倍) |
| 絶縁の強さ | 同じ圧力の空気の2〜3倍程度。圧力を上げるとさらに強くなる |
| アークを消す力(消弧能力) | 空気よりはるかに高い |
| 環境への影響 | オゾン層への影響はほぼないが、温暖化への影響が非常に大きい |
| 使われる機器 | ガス遮断器(GCB)、ガス絶縁開閉装置(GIS)、ガス絶縁変圧器 |
SF6ガスで機器を満たすと、空気で絶縁するより機器どうしの間隔を短くできるので、変電所を小さくできます。都市部の地下変電所などで使われるのはこのためです。
SF6ガスでアークを消すガス遮断器のしくみがわかります

液体絶縁材料:絶縁油は「絶縁」と「冷却」の二刀流
絶縁油は、変圧器やOFケーブル(油で満たした電力ケーブル)に使われる液体の絶縁材料です。絶縁破壊の強さは同じ圧力の空気より高く、さらに機器の中をめぐって熱を運ぶ冷却の役割もはたします。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 鉱油(石油から精製した油) | 古くから一般的に使われてきた。安価 |
| 合成油(化学的につくった油) | より低損失・高信頼性が求められる機器に使う |
絶縁油の大敵は水分と酸化
絶縁油に水分が混じったり、空気にふれて酸化したりすると、絶縁破壊の強さが下がり、誘電正接が大きくなります。そのため、変圧器では油が外気にふれにくい構造にし、定期的に油を分析して劣化を確かめます。
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固体絶縁材料:がいし・ケーブル・モールド変圧器
固体の絶縁材料は、絶縁破壊の強さが大きく、形を保って電線や機器を支えられるのが強みです。ただし、一度絶縁破壊すると元に戻らない(自己回復しない)のが弱みです。
| 材料 | 使われる場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 磁器・ガラス | がいし | 雨や日光に強く、長持ち。表面の汚れ(塩分)に弱い |
| 架橋ポリエチレン | CVケーブル | ポリエチレンの分子を橋かけして耐熱性を高めた。誘電率・誘電正接が小さい |
| エポキシ樹脂 | モールド変圧器・計器用変成器 | 巻線を固めて燃えにくくできる |
| 絶縁紙 | 油入変圧器の巻線・OFケーブル | 絶縁油をしみこませて使う |
ボイドと部分放電:固体がじわじわ壊れるしくみ
架橋ポリエチレンを使うCVケーブルなど、地中ケーブルの特徴がわかります
CVケーブルでは、水分が入りこんで木の枝のような劣化(水トリー)が進むことも知られています。つまり固体の絶縁材料は、目に見えない小さな欠陥から、年単位でじわじわ壊れていくのが特徴です。

誘電損を計算する:誘電正接が小さいほどよい理由
絶縁材料に交流の電圧をかけると、わずかな電力が熱に変わります。これが誘電損で、誘電正接(tanδ)に比例します。誘電正接は、絶縁材料がどれだけ「理想のコンデンサ」からずれているかを表す数字です。
ωは角周波数(2π×周波数)、Cは静電容量、Vは対地電圧(相電圧)です。
例題:6.6kVケーブル1kmの誘電損
周波数50Hz、線間電圧6,600V、1相あたりの静電容量0.3μF(1km)、誘電正接0.05%(0.0005)とします。
劣化して誘電正接が10倍の0.5%になると、誘電損も10倍の約20Wになります。熱は絶縁材料の中で生まれるので、温度が上がってさらに劣化が進む、という悪循環につながります。

耐熱クラス:何℃まで使えるかの目安
絶縁材料は、温度が高いほど早く劣化します。そこで、使い続けられる最高温度によって「耐熱クラス」が決められています(JIS C 4003)。モーターや変圧器の銘板に書かれている「F種」「H種」は、これのことです。
| 耐熱クラス | 許容最高温度 |
|---|---|
| Y | 90℃ |
| A | 105℃ |
| E | 120℃ |
| B | 130℃ |
| F | 155℃ |
| H | 180℃ |
覚え方は、低いほうから「Y・A・E・B・F・H」の順番と、「Aが105℃、Fが155℃、Hが180℃」の3つです。つまり、クラスが上がるほど高温に耐え、機器を小さくできます。

電験三種の過去問で問われているポイント
電験三種の電力科目では、令和3年度から令和7年度下期まで、問14が毎回「電気材料」の問題でした。そのうち絶縁材料は、次の4回出題されています。
| 年度・問題 | テーマ | 誤り・正解のポイント |
|---|---|---|
| 令和4年度上期 問14 | SF6ガス(論説) | 「アーク放電を発生させないので消弧能力に優れる」が誤り。アークは発生するが、消す力が強い |
| 令和4年度下期 問14 | 絶縁油(空欄) | 誘電正接が「小さい」油で「発熱」を抑える。古くから「鉱油」、低損失・高信頼には「合成油」 |
| 令和6年度上期 問14 | 気体・固体の絶縁材料(論説) | 「気体は抵抗率が低い」が誤り。気体の抵抗率は高く、誘電率が低い |
| 令和7年度上期 問14 | SF6ガス(論説) | 「特有の臭いがある」が誤り。SF6は無色・無臭・無毒 |
ひっかけパターン1:正しい文の一部だけを変える
令和6年度上期は「気体は抵抗率と誘電率が低い」という文で、後半の誘電率は正しく、前半の抵抗率だけが誤りでした。令和7年度上期も「比重が大きく、安定した不燃性で、特有の臭いがある」と、最後の一言だけが誤りです。選択肢は、読点で区切られた部分ごとに正誤を確かめてください。
ひっかけパターン2:理由をすり替える
令和4年度上期の「アーク放電を発生させないため消弧能力に優れる」は、「消弧能力に優れる」という結論は正しいのに、理由がおかしい文でした。「〜ため」「〜ので」がついた選択肢は、理由の部分を疑ってください。
ひっかけパターン3:SF6はくり返し出る
SF6ガスは、4回のうち2回出ました。この記事のSF6の表(無色・無臭・無毒、不燃、空気より重い、絶縁と消弧に優れる、温暖化への影響が大きい)は、すべて言えるようにしておくと確実です。

よくある間違い・つまずきポイント
1. 誘電率・誘電正接も「大きいほどよい」と考える
抵抗率と絶縁破壊の強さは大きいほどよく、誘電率と誘電正接は小さいほどよい、と向きが分かれます。誘電正接が大きいと、誘電損で発熱します。
2. 気体は抵抗率も低いと思いこむ
気体は「絶縁破壊の強さ」が液体・固体より小さいだけで、抵抗率はとても高い材料です。弱いのは強さ、高いのは抵抗率、と分けて覚えます。
3. SF6にはにおいや毒性があると考える
SF6そのものは無色・無臭・無毒です。ただし、アークで分解してできる物質には注意が必要なので、機器の点検では取り扱いの決まりに従います。
4. SF6は環境にやさしいと考える
オゾン層への影響はほぼありませんが、温暖化への影響は非常に大きいガスです。そのため、漏れを防ぎ、回収して再利用することが求められています。
5. 誘電損の計算で線間電圧をそのまま使う
W=ωCV²tanδ のVは、1相あたりの対地電圧(線間電圧÷√3)です。線間電圧を入れると、3倍の値になってしまいます。

よくある質問
まとめ:絶縁材料は「5つの性質」と「SF6の表」で解ける
まずは「5つの性質の向き」と「SF6の表」を、何も見ずに書き出せるか試してみてください。問14の絶縁材料の問題は、この2つでほとんど解けます。


