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- 絶縁の種類が多すぎて、基礎・付加・二重・強化の違いがわからない
- 「ここは強化絶縁で」と言われたが、何をすればいいのかわからない
- 自分の製品のどこに、どの絶縁が必要なのか判断できない
- 絶縁とは何か、5種類の絶縁の違いと関係
- 機器のクラス0〜IIIと、二重絶縁の見分け方
- ACアダプターのどこに、どの絶縁が要るか
- 必要な絶縁がわかる判定ツール
絶縁とは、電気が流れてほしくない所に流れないように、導体のあいだを電気を通さない物質や距離で隔てることです。安全規格では絶縁の種類を5つに分け、回路を動かすための「機能絶縁」、感電を防ぐ1枚目の「基礎絶縁」、その予備の「付加絶縁」、基礎+付加の「二重絶縁」、1枚で二重絶縁と同じ強さを持つ「強化絶縁」があります。感電を防ぐには、二重絶縁か強化絶縁、または基礎絶縁と保護接地の組み合わせが必要です。

絶縁の種類は5つ|「城の防壁」でイメージする
5つの絶縁は、感電を防ぐためのものかどうかで大きく2つに分かれ、感電を防ぐ4つは「何枚の壁で守るか」の違いです。
| 絶縁の種類 | 役割 | 城でたとえると | それだけで感電を防げる? |
|---|---|---|---|
| 機能絶縁 | 回路を正しく動かすため | 城の中の仕切り壁 | 感電を防ぐ目的ではない |
| 基礎絶縁 | 感電を防ぐ1枚目 | 外壁 | ×(付加絶縁か保護接地が要る) |
| 付加絶縁 | 基礎絶縁がこわれたときの予備 | 内壁 | ×(基礎絶縁とセットで使う) |
| 二重絶縁 | 基礎絶縁+付加絶縁 | 外壁+内壁 | ○ |
| 強化絶縁 | 1枚で二重絶縁と同じ強さ | とても頑丈な1枚壁 | ○ |
絶縁は、年月や傷でこわれることがあります。そこで安全規格は、1か所がこわれても感電しない(単一故障で安全)ように、壁を2枚にするか、2枚分の強さの1枚にするか、1枚+アースにすることを求めています。
AC100Vで感電するとなぜ危ない?1次側と2次側を分ける理由

家電などの電気製品の安全のルールを決めている法律が電気用品安全法です。絶縁とあわせて知っておくと、製品の表示の意味がわかります。
PSEの菱形と丸の違い・特定電気用品の判定
5つの絶縁を1つずつ|定義と具体例
| 種類 | 定義 | 具体例 |
|---|---|---|
| 機能絶縁(Functional) | 機器が正しく動くためだけに必要な絶縁 | 2次側の低い電圧の回路の中の、信号線どうしの絶縁 |
| 基礎絶縁(Basic) | 感電に対する基本の保護となる絶縁 | 電源コードの被覆、1次回路とアースした金属ケースのあいだ |
| 付加絶縁(Supplementary) | 基礎絶縁がこわれたときのために足す、独立した絶縁 | 電動工具の外側の樹脂ケース、追加の絶縁チューブ |
| 二重絶縁(Double) | 基礎絶縁と付加絶縁の両方からなる絶縁 | 樹脂ケースの電動工具やACアダプター |
| 強化絶縁(Reinforced) | 二重絶縁と同じ保護を与える、1つの絶縁の仕組み | 絶縁トランスの1次と2次のあいだ、強化絶縁品のフォトカプラ・デジタルアイソレータ |
付加絶縁は、基礎絶縁と同時にこわれないことが前提です。同じ材料を2層に分けただけでは、材料が劣化したときに両方まとめてこわれるおそれがあり、独立した2枚とはみなされないことがあります。
強化絶縁は「1枚なのに2枚分」なので、耐圧試験の電圧や沿面距離・空間距離に、二重絶縁と同じ厳しい値が求められます。ただ厚くするだけでなく、材料の選び方や製造の管理まで含めて保証します。
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機器のクラス0〜IIIと、二重絶縁の見分け方
電気機器は、感電をどう防ぐかでクラス0〜IIIに分けられ、どの絶縁を使うかと強く結びついています。
| クラス | 感電の防ぎ方 | アース | 例 |
|---|---|---|---|
| クラス0 | 基礎絶縁だけ | なし | 欧州などでは認められていない |
| クラスI | 基礎絶縁+保護接地 | 必要 | 金属ケースの据え置き機器、工場の設備 |
| クラスII | 二重絶縁または強化絶縁 | 不要 | 電動工具、ACアダプター |
| クラスIII | 安全特別低電圧(SELV)で動かす | 不要 | 電池や低い電圧で動く機器 |
日本には、接地用の端子やリード線を備えた「クラス0I(ゼロワン)」という独自の区分もあります。SELVは、通常は直流60V以下・交流のピーク42.4V以下の、危なくない電圧の回路です。
二重絶縁(クラスII)の見分け方
定格の表示(銘板やラベル)に、四角の中にもう1つ四角がある「回」の形の記号があれば、二重絶縁または強化絶縁のクラスII機器です。プラグが2本だけ、というだけでは見分けられません(クラス0Iの機器も2本のプラグを使うことがあるため)。
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どこにどの絶縁?ACアダプターで考える
大事なのは、「危険な電圧」と「人が触れる所」の境目を見つけ、そこに二重絶縁か強化絶縁を置くことです。
| 場所 | 必要な絶縁 | どの部品・構造で |
|---|---|---|
| ① 1次側 ↔ 2次側 | 二重絶縁または強化絶縁 | 絶縁トランス、フォトカプラ、基板のスリットと距離 |
| ② 1次側 ↔ ケース | クラスIなら基礎絶縁+保護接地、クラスIIなら二重か強化 | 樹脂ケース、絶縁シート |
| ③ 2次側 ↔ ケース | 2次側がSELVなら機能絶縁でよい | — |
| ④ 2次側の回路の中 | 機能絶縁 | 回路が動くための間隔 |
必要な絶縁の判定ツール
Q1. その絶縁は、危険な電圧(商用電源の1次側など)と、人が触れる部分・SELVの回路のあいだにありますか?
Q2. 人が触れる金属部分を、確実に保護接地(アース)できますか?
Q3. 2つの独立した絶縁の層(たとえば内側の絶縁と外側のケース)に分けられますか?
絶縁型電源の定番、フライバック方式
なぜ2枚重ねるのか?|「冗長設計」という思想を理解する
飛行機のエンジンはなぜ2基あるのか
旅客機には通常、2基以上のエンジンが搭載されています。もちろん1基でも飛行できます。実際、エンジンが1基停止しても着陸できるよう設計されています。
では、なぜわざわざ2基積むのか? 答えはシンプルです。
これが冗長設計(Redundancy Design)の考え方です。「正常時には不要だが、故障時に人の命を守るために備える」という設計思想です。
絶縁もまったく同じです。
航空機の冗長設計
エンジン1基で飛べるが、2基積む。1基停止しても墜落しない。乗客の命を守るために「不要に見える」バックアップを備える。
絶縁の冗長設計
基礎絶縁1枚で電気を通さないが、付加絶縁を重ねる。1枚が破れても感電しない。ユーザーの命を守るために「不要に見える」バックアップを備える。
シートベルト+エアバッグ=「基礎絶縁+付加絶縁」
もうひとつ、もっと身近なたとえをしましょう。
自動車のシートベルトは、正常に機能すれば衝突時にあなたを守ります。それなのに、なぜエアバッグも付いているのでしょうか?
答えは「シートベルトが機能しなかった場合のバックアップ」です。シートベルトが切れたり、装着し忘れた場合でも、エアバッグが最低限の保護を提供します。この2つは独立して動作するため、片方が壊れてももう片方が機能します。
| 身近な例 | 1つ目の保護 | 2つ目の保護 | 絶縁に置き換え |
|---|---|---|---|
| 旅客機 | エンジン1基 | エンジン2基目 | 二重絶縁 |
| 自動車 | シートベルト | エアバッグ | 二重絶縁 |
| マンション | オートロック | 玄関の鍵 | 二重絶縁 |
| サーバー | HDD 1台 | RAID(ミラーリング) | 二重絶縁 |
IECの安全規格には「単一故障条件」(Single Fault Condition)という考え方があります。「どんな1つの部品が壊れても、人が感電しない設計にせよ」という要求です。基礎絶縁1枚だけだと、その1枚が壊れた瞬間にユーザーが感電します。これは「単一故障安全」の原則に反するため、必ず2枚目のバックアップ(付加絶縁)か、別の保護手段(保護接地)が必要なのです。

実務の判断|二重絶縁と強化絶縁、どちらを選ぶ?
構造で決まる選択
「二重絶縁と強化絶縁の安全レベルは同じ」ということがわかったら、次は「どちらを使うか?」の判断です。答えは実はシンプルです。
| 状況 | 選ぶべき方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 物理的に2層に分離できる場合 | 二重絶縁 | 2層それぞれを独立に試験できるため、品質管理がしやすい |
| 物理的に2層に分離できない場合 | 強化絶縁 | フォトカプラ、絶縁トランスなど、構造上2層にできない部品で使う |
| スペースが限られている場合 | 強化絶縁 | 1層で済むため、小型化が可能。ただし部品コストは高くなる傾向 |


絶縁は「材料」と「距離」|沿面距離・空間距離と耐圧試験
絶縁は、絶縁物の材料だけでなく、導体どうしの距離でも確保します。強化絶縁や二重絶縁では、基礎絶縁のおよそ2倍の距離と試験電圧が求められます。
| 距離 | 意味 | 防ぐもの |
|---|---|---|
| 空間距離 | 空気中を通る最短距離 | 空気の放電(スパーク) |
| 沿面距離 | 絶縁物の表面に沿った最短距離 | ほこりや湿気で表面に電気の道ができること(トラッキング) |
| 絶縁の種類 | 耐圧試験の目安 | 沿面距離の目安 |
|---|---|---|
| 基礎絶縁・付加絶縁 | 交流1500V | 約2.5mm |
| 二重絶縁・強化絶縁 | 交流3000V | 約5.0mm |
旧IEC 60950-1で、動作電圧250V前後のときの代表的な例です。実際の値は、適用する規格(IEC 62368-1など)、動作電圧、汚れやすさ(汚損度)、絶縁材料の種類で変わるので、必ず規格の表で確かめてください。
基板の上で沿面距離が足りないときは、基板に溝(スリット)を入れる、絶縁の仕切り(リブ)を立てる、コーティングで汚れを防ぐ、といった方法で距離を稼ぎます。
感電はなぜ起きる?危なくない電圧の考え方

絶縁設計でよくある間違いとチェックリスト
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 絶縁物があれば、それで感電は防げる | 機能絶縁は数に入らない。1次と2次のあいだは二重か強化が要る |
| 同じ材料を2層にすれば二重絶縁 | 同時にこわれない「独立」が必要 |
| 強化絶縁は厚くすればよい | 試験電圧・距離・材料・製造管理まで二重絶縁並みに満たす |
| フォトカプラならどれでも強化絶縁 | データシートで強化絶縁の認定と試験電圧を確かめる |
| 2本のプラグならクラスII | 「回」の記号で見分ける |
絶縁設計のチェックリスト
- 危険な電圧の部分と、人が触れる部分の境目を図に書き出した
- クラスI(アースあり)かクラスII(アースなし)かを決めた
- 境目ごとに、必要な絶縁の種類を決めた
- 沿面距離・空間距離を、規格の表から確かめて基板に反映した
- 絶縁トランス・フォトカプラ・アイソレータは強化絶縁の認定品を選んだ
- 耐圧試験と絶縁抵抗試験の条件を確かめた

よくある質問
- 絶縁は、電気を通したくない所を物質と距離で隔てること
- 種類は機能・基礎・付加・二重・強化の5つ
- 感電を防ぐには、二重か強化、または基礎+保護接地
- クラスIはアースあり、クラスIIは二重か強化で「回」の記号
- 強化・二重は、基礎のおよそ2倍の距離と試験電圧
- 危険な電圧と人が触れる所の境目を探すのが、絶縁設計の第一歩

回路や基板の設計経験は、メーカーをはじめ多くの企業で求められています。今の職場で経験を積むのも、より広く経験を活かせる職場を探すのも、ひとつの道です。エンジニア向けの転職支援サービスでは、経験を棚卸ししながら求人を探せます。
製品や設備の絶縁を確かめる試験のひとつに、絶縁抵抗の測定があります。日置電機(HIOKI)のデジタル絶縁抵抗計 IR4052-50です。DC50V〜1000Vの5つの定格測定電圧で測れるJIS認証品で、合否をすぐ示すコンパレータ機能と、200mAの導通チェック機能を備えています。
電源回路の設計を、要求仕様から短時間でまとめる実務の考え方まで知りたい人に向いています。要求仕様どおりの電源を短時間で設計するための、電源回路設計の本です(CQ出版、馬場清太郎 著)。
パワーエレクトロニクスの全体を、図でつかみたいときに向いています。パワーエレクトロニクスを、カラーの図解で解説した本です。
絶縁が劣化したときに起きるのが「漏電」です。仕組みと対策は次の記事で図解しています。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
次に読むべき記事
絶縁の種類がわかったら、それを基板の上で実現する距離の考え方に進みましょう。設計レビューで指摘されにくい基板になります。
テーマ別に、もっと深く学ぶ
気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。