機械科目の解説

熱伝導の計算|熱抵抗R=l/λSと熱のオームの法則を電気炉の過去問で図解

熱伝導の計算のアイキャッチ。高温側から低温側へ、壁の中を熱が流れる様子

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熱伝導の計算は、温度差を電圧、熱流を電流、熱抵抗を電気抵抗に見立てた「熱のオームの法則」Φ=θ/R で解けます。壁の熱抵抗は R=l/(λS) で、2層の炉壁は直列の抵抗として解く節、解き方は過去問の節へ。

結論|まず30秒でわかる答え

熱伝導の計算は、温度差θ[K]を電圧、熱流Φ[W]を電流、熱抵抗R[K/W]を電気抵抗に見立てた「熱のオームの法則」Φ=θ/R で解けます。厚さl[m]・断面積S[m²]・熱伝導率λ[W/(m·K)]の壁の熱抵抗は R=l/(λS) です。厚いほど熱は通りにくく、広いほど・熱を通しやすい材料ほど通りやすくなります。

熱伝導の計算のアイキャッチ。高温側から低温側へ、壁の中を熱が流れる様子

熱伝導とは?熱の流れは電気の流れと同じ形で書ける

熱伝導(ねつでんどう)とは、物の中を、温度の高いほうから低いほうへ熱が伝わることです。冬に金属の手すりをさわると冷たく感じるのは、手の熱が手すりへ伝わって逃げていくからです。

電験三種の電熱の計算では、この熱の流れを電気回路と同じ形で扱います。電気は電位差(電圧)があると流れ、熱は温度差があると流れます。流れる量は、それぞれ電流と熱流(1秒あたりに伝わる熱の量。単位はW)です。

電気系の量熱系の量単位
電圧(電位差)V温度差 θK(℃の差と同じ数)
電流 I熱流 ΦW(=J/s)
電気量 Q熱量 QJ
導電率 σ熱伝導率 λW/(m·K)
電気抵抗 R熱抵抗 RK/W
静電容量 C熱容量 CJ/K
公式
熱流 Φ[W]= 温度差 θ[K]÷ 熱抵抗 R[K/W]
たとえると

水道管と同じです。蛇口の水圧(温度差)が大きいほど、管が太く短いほど(熱抵抗が小さいほど)、たくさんの水(熱)が流れます。電気のオームの法則 I=V/R をそのまま熱に置きかえたものが、熱のオームの法則です。

注意|ここで間違えやすい

温度差は、℃で引き算してもKで引き算しても同じ数になります。142℃と72℃の差も、415.15Kと345.15Kの差も70です。ただし、熱放射(後の節)の式は絶対温度Kの4乗を使うので、℃のままでは計算できません。

電気回路と熱の対応の図。電圧は温度差θ[K]、電流は熱流Φ[W]、電気抵抗は熱抵抗R[K/W]、静電容量は熱容量[J/K]に対応する

熱抵抗R=l/(λS)の意味

壁の熱抵抗は、電線の抵抗 R=ρl/S(ρは抵抗率)と同じ形の式で求めます。熱伝導率λは「熱の通しやすさ」なので、抵抗率の逆数にあたる導電率σと対応します。そのため、λは分母に入ります。

公式
熱抵抗 R[K/W]= 厚さ l[m]÷(熱伝導率 λ[W/(m·K)]× 断面積 S[m²])
変えるもの熱抵抗熱流(温度差が同じとき)
壁を2倍厚くする(lが2倍)2倍半分
壁の面積を2倍にする(Sが2倍)半分2倍
熱伝導率が2倍の材料にする(λが2倍)半分2倍

たとえば、面積25m²・厚さ10cm・熱伝導率0.4W/(m·K)の壁なら、R=0.1÷(0.4×25)=0.1÷10=0.01K/W です。内外の温度差が4Kなら、Φ=4÷0.01=400W の熱が壁を通って逃げます(令和6年度下期 問12と同じ数値)。

注意|ここで間違えやすい

厚さはcmのまま式に入れないでください。10cmは0.1m、30cmは0.3mに直してから計算します。単位をそろえないと、答えが100倍ずれます。

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電験三種の過去問で確かめる

熱伝導の計算は、電験三種 機械の「電熱」で毎年のように出題されています。どれも、熱抵抗を求めてから熱のオームの法則に入れるだけです。

年度・問題条件答え
令和7年度下期 問12炉壁の外面から10cmと30cmで72℃と142℃、λ=0.94単位面積あたり約329W/m²
令和6年度下期 問1225m²・厚さ10cm・λ=0.4・温度差4K400W
令和5年度上期 問172m²・厚さ30cm・λ=1.6、低温側20℃・熱流100WR≒0.0938K/W、高温側 約29.4℃
令和3年度 問17(b)直径1m・高さ0.1mの円柱、λ=0.26、350Kと270K約163W
平成25年度 問17(a)直径1m・高さ0.5mの円柱、λ=0.26、600Kと330K約110W
令和6年度上期 問12・令和2年度 問13電気系と熱系の対応表の穴埋めθ・Φ・K/W・J/K

令和7年度下期 問12の解き方

STEP 1

温度を測った2点の間の厚さ:l=0.30−0.10=0.20m(外面からの距離の差)

STEP 2

1m²あたりの熱抵抗:R=0.20÷(0.94×1)≒0.2128K/W

STEP 3

温度差:θ=142−72=70K

STEP 4

熱流:Φ=70÷0.2128≒329W/m²

POINT

炉壁の問題では、「壁全体の厚さ」ではなく「温度を測った2点の間の厚さ」を使います。温度こう配(1mあたりの温度の下がり方)が一定なので、2点の間だけを1枚の壁と見なせます。

炉壁の熱流の計算の図。厚さ0.20m、熱抵抗0.2128K/W、温度差70Kから、熱流は約329W/m²

2層の炉壁は「直列の抵抗」で計算する

実際の電気炉は、内側に耐火れんが、外側に断熱れんが、のように材料を重ねます。熱は2枚の壁を順に通るので、電気回路の直列と同じく、熱抵抗を足し算します。

例題:2層の壁を通る熱流と、境目の温度

面積1m²の壁で、内側は熱伝導率1.2W/(m·K)・厚さ0.2m、外側は熱伝導率0.2W/(m·K)・厚さ0.1mとします。内面が1,000℃、外面が100℃のとき、熱流と、2枚の境目の温度を求めます(熱伝導率は計算用の仮の値です)。

STEP 1

内側の熱抵抗:R₁=0.2÷(1.2×1)≒0.1667K/W

STEP 2

外側の熱抵抗:R₂=0.1÷(0.2×1)=0.5K/W

STEP 3

合計(直列):R=0.1667+0.5≒0.6667K/W

STEP 4

熱流:Φ=(1,000−100)÷0.6667≒1,350W

STEP 5

境目の温度:内側の壁での温度の下がり=1,350×0.1667≒225K なので、1,000−225≒775℃

POINT

熱抵抗の大きい断熱れんがのほうで、温度が大きく下がります(900Kのうち約675K)。電気の直列回路で、大きい抵抗に大きい電圧がかかるのと同じです。

電気炉の熱損失を減らしたいときに、熱伝導率の小さい断熱材を外側に重ねるのは、この直列の熱抵抗を大きくするためです。

熱伝導・対流・熱放射の違い

熱の伝わり方には、熱伝導のほかに対流と熱放射があります。試験では、どの伝わり方の話かを読み分ける問題も出ます。

伝わり方何が熱を運ぶか計算のしかた
熱伝導物の中を、隣の粒子へ順に伝わるΦ=θ/R、R=l/(λS)(温度の差に比例)
対流温められた空気や水が動いて運ぶふつうは熱伝達率を使う(三種の計算では出題が少ない)
熱放射電磁波として空間を伝わる。真空中でも伝わるΦ=εσA₁F₁₂(T₁⁴−T₂⁴)(絶対温度の4乗の差)
注意|ここで間違えやすい

熱放射の式に出てくるσはステファン・ボルツマン定数(約5.67×10⁻⁸W/(m²·K⁴))、F₁₂は形態係数(2つの面の大きさや位置関係で決まる数)です。熱放射は温度の4乗で効くので、℃ではなく絶対温度Kで計算します(令和3年度 問17(a)・平成25年度 問17(b))。

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熱伝導の計算でよくある間違い

よくある間違い正しい考え方
熱伝導率λを分子に入れるλは「通しやすさ」なので分母。R=l/(λS)
厚さをcmのまま入れるmに直す。10cm=0.1m
炉壁の全体の厚さを使う温度を測った2点の間の厚さを使う
2層の壁で熱伝導率を足す足すのは熱抵抗(直列)
熱放射も温度差に比例すると考える熱放射は絶対温度の4乗の差に比例する
熱伝導の計算のよくある間違いの図。熱伝導率は分母、厚さはmに直す、2層の壁は熱抵抗を足す、熱放射は絶対温度の4乗の差に比例する

よくある質問

Q. 熱伝導の計算に使う式は?

A. 熱流Φ=温度差θ÷熱抵抗Rです。壁の熱抵抗はR=厚さl÷(熱伝導率λ×断面積S)で求めます。

Q. 熱抵抗の単位K/Wの意味は?

A. 1Wの熱を流したときに何K温度差が生じるかを表します。数値が大きいほど熱が伝わりにくい壁です。

Q. 熱伝導率の単位は?

A. W/(m·K)です。厚さ1mの壁に1Kの温度差があるとき、1m²あたり何Wの熱が流れるかを表します。

Q. 2層の壁の熱抵抗はどう求める?

A. それぞれの層の熱抵抗を求めて足し算します。電気回路の直列の抵抗と同じ考え方です。

Q. 熱伝導と熱放射の違いは?

A. 熱伝導は物の中を温度差に比例して伝わり、熱放射は電磁波として空間を伝わり絶対温度の4乗の差に比例します。

この記事の要点
  • 熱伝導の計算は「熱のオームの法則」Φ=θ/R
  • 熱抵抗 R=l/(λS)。λは分母、厚さはmに直す
  • 温度差は電圧、熱流は電流、熱抵抗は電気抵抗、熱容量は静電容量に対応
  • 炉壁は温度を測った2点の間の厚さで計算
  • 重ねた壁は熱抵抗の足し算(直列)
  • 熱放射は絶対温度の4乗の差に比例し、式が別
参考にした資料

法令・規格・資料は改訂されることがあります。実務で使うときは、発行元の最新版で確かめてください。

この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

「熱伝導の計算」を試験の得点につなげるなら、機械科目の教科書で前後の単元とあわせて押さえておくと安心です。TAC出版『みんなが欲しかった!』シリーズの、電験三種「機械」の教科書と問題集です。フルカラーの教科書に重要な過去問が付いています。

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電験三種の試験でどう問われるかは、過去問で確かめるのがいちばんの近道です。電験三種の過去10年分の試験問題をまとめた過去問題集です(2026年度版)。

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電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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